研究項目:A01-1
アストロサイトによるシナプス強度不均衡の創発と学習における役割
合田 裕紀子
沖縄科学技術大学院大学 教授
研究室ウェブサイト:https://www.oist.jp/ja/research/research-units/sbu
Researchmap:https://researchmap.jp/yukikogoda?lang=ja
研究内容
シナプスは脳機能に必須な神経細胞間のシグナル伝達を担う。特に長期シナプス可塑性(LTP)は、記憶の素過程として長年活発に研究されてきたものの、シナプス可塑性が回路全体としてどのように制御されているのかはよく分かっていない。近年、シナプス可塑性は、活性化されたシナプスのみならず、近傍のシナプスでも生じることが明らかになり、ヘテロシナプス可塑性として知られている。本研究では、コネクトームの動的変化を担う重要な役者として、アストロサイトに着目する。アストロサイトは同時に多数のシナプスと「三者間シナプス」をつくってシナプス機能を調節しており、しかもヒト脳ではその寄与が更に大きいとされる。研究代表者らは、マウス海馬の電気生理学的な解析とシミュレーションを組み合わせ、アストロサイトがシナプス強度の高い不均一性を積極的につくりだしていること、そしてこの不均一性が高いシナプス可塑性の基盤となっていることを明らかにした(eLife 2021)。本研究では、マウス海馬とヒトオルガノイドの実験系において、イメージングと電気生理学の手法を使い、個々のシナプス強度とアストロサイトの突起活動を計測し、アストロサイトによるシナプス強度不均衡の動的制御と学習機能創発の原理解明に取り組む。