牧野班からの新しい論文がNature Communications誌に掲載されました。
短期記憶は、周囲の気を散らす刺激によって影響を受けやすくなります。アルツハイマー病(AD)では短期記憶の低下が行動面から示唆されていますが、その背後にある脳の仕組みはよく分かっていません。本研究では、AD モデルマウス(APP-KI)を用いて、短期記憶が感覚的な妨害に対してより脆弱になることを明らかにしました。遅延反応課題中に8つの脳領域を同時に観察する2光子カルシウムイメージングを行ったところ、APP-KI マウスでは妨害刺激によって、単一ニューロンから神経集団に至るまで「どの情報に反応するか」という神経選択性が乱れることが分かりました。また、APP-KI マウスの脳活動を再現した再帰型ニューラルネットワークモデルでは、背側皮質の機能的結合が弱まっていることと一致して、ネットワークの安定性が低下していました。さらに、複数の脳領域間での情報伝達を解析したところ、APP-KI マウスでは背側皮質における活動の「時空間的な多様性(時空間的縮退)」が減少しており、これが感覚情報を運動へとつなぐ過程のロバスト性低下につながる可能性が示唆されました。これらの結果から、APP-KI アルツハイマー病モデルにおける短期記憶障害には、機能的結合の低下と時空間的縮退の障害が中心的な役割を果たしていることが示されました。

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