第143回例会 開催記録

日本動物心理学会第143回例会
第143回日本動物心理学会例会(中部地区)
「動物心理学研究の多様性」

日時:2007年3月3日(土) 13:00~18:15
場所:ホテル新名(JR名古屋駅)
参加費無料、事前登録不要
オーガナイザー:友永雅己、田中正之、林美里(京都大学霊長類研究所)

  • はじめに 友永 雅己(京都大・霊長研)
  • 日本人の動物観と動物心理学 渡辺 茂 (慶応大、日本動物心理学会理事長)
  • チンパンジーによる複数オブジェクトの追跡 松野 響(京都大・霊長研)
  • チンパンジーにおける3次元空間知覚:絵画的手がかりで定義された面の知覚
  • 伊村知子(関学大)
  • 動物の連合学習における事象表象―知覚・イメージ・行為― 井口善生(名古屋大)
  • 老齢ザルにおける学習と記憶の特性 久保(川合)南海子(京都大・霊長研)
  • コメント:谷内 通(金沢大)、浅野俊夫(愛知大)、齋藤洋典(名古屋大)、辻 敬一郎
  • 5歳のニホンザルにおける生後2年間の対象経験についての再認記憶 村井千寿子(玉川大)
  • テナガザルの発達─思春期をむかえて─  打越万喜子(京都大・霊長研)
  • テナガザルの音声の変異性 親川千紗子・香田啓貴・杉浦秀樹(京都大・霊長研)
  • 笑いの起源と進化 松阪崇久(滋賀県大)
  • 野生チンパンジーの広域調査から見えてくるもの 大橋 岳(京都大・霊長研)
  • コメント:竹下秀子(滋賀県大)、宮本邦雄(東海女大)、三宅なほみ(中京大)
  • 閉会の挨拶  松沢哲郎(京都大・霊長研)

日本動物心理学会第143回例会報告
友永雅己助教授(京都大学霊長類研究所)

第143回日本動物心理学会例会は、中部地区担当分として行われた。中部地区 では、これまで中部地区の大学が持ち回りで企画・開催してきたが、今回は京都 大学霊長類研究所の松沢哲郎、友永雅己、田中正之、林美里らにより企画・運営 が行われた。

最近の動物心理学研究は、その対象とする種、用いられる研究手法、隣接する研 究領域との関連など、さまざまな側面から多様性が深まってきている。そこで、 今回の日本動物心理学会例会では、動物心理学およびその隣接領域において精力 的に研究を行っている若手研究者の方々、特に最近学位取得されたか、近いうち に取得予定の方々を招いて、自身の研究について紹介していただき、動物心理学 研究の多様性の一端に触れることを目的とした。また、冒頭では、本学会理事長 の渡辺茂先生にレクチャー講演をお願いした。さらに、若手の研究発表に対し て、さまざまな領域ですでに活躍している研究者の方々を数多くコメンテータと してお招きし、それぞれに、自由闊達にコメントをしていただいた。

主催者の想像を越える40名以上の方々が中部地区だけでなく東京、関西からも参 加していただいた。発表者の方々も20分という短い時間の中で自らの研究をコン パクトにまとめていただき、動物心理学が近接領域と密接な関連をもちつつその 裾野を着実に広げていることが実感できた。

内外の学会では、今回の例会のように、博士学位取得前後の研究者を集めて議論 を行う「博論コンソーシアム(Doctoral Consortium)」が活発に行われているら しい。最近の学会発表は、ポスターが主流で口頭発表も、非常に短い時間しか与 えられない。比較的長い時間の中で、自身の研究をまとめて紹介するという経験 が、若い研究者たちにはほとんどないのが現状だろう。日本動物心理学会として も、学会大会前後の自由集会、サテライトシンポジウムや例会などを活用して、 若手研究者の支援をさまざまな形で進めてはどうだろうか。