第141回例会 開催記録
日本動物心理学会第141回例会
“認知鳥類学の可能性”
場所;慶應義塾大学・東館4階セミナー室
日時;平成18年3月16日(木) 14:00~16:30
オーガナイザー;渡辺茂・伊澤栄一(慶應義塾大学)
スケジュール;
14:00-14:20 「イントロダクション-認知鳥類学-」
伊澤栄一(慶応義塾大学)
14:20-15:10 「悩まずに生きる鳥と悩みながら生きる鳥」
中村浩志(信州大学)
15:15-16:05 「チンパンジーの母子間交渉に見られる社会的知性」
田中正之(霊長類研究所)
16:05-16:30 総合討論
(敬称略)
<共催;慶應義塾大学・魅力ある大学院教育イニシアティブ・心に関する研究科横断プロジェクト型教育>
連絡先:伊澤栄一
E-mail: izawa@psy.flet.keio.ac.jp
Tel: 03(5443)3896
日本動物心理学会第141回例会報告
伊澤栄一特別研究助教授(慶應義塾大学)
2006年3月16日、慶應義塾大学三田キャンパスにて、動物心理学会141回例会「認 知鳥類学の可能性」を開催した。社会的知性仮説の検証は、もはや霊長類に限ら ず、同様の生態学的・生理的諸条件を持つカラスやオオムなどの鳥類にまでに及 び、「収斂としての知性」の理解へと広がりを見せている。一方で、野外での研 究、いわゆる鳥類学において、個体の認知機能は、研究対象であったとは必ずし も言い難い。2006年初頭にPhil. Trans. R. Soc. B誌に発表された総説” Cognitive ornithology: the evolution of avian intelligence (Nathan Emery 著; 361, 23-43)” は、近年の鳥類の脳に関する比較解剖学的な理解の深まりに も後押しを受け、鳥類の認知研究の意義を論じると同時に、更なる展開へ向け て、野外研究における「認知」という視点の必要性を述べている。本シンポジウ ムは、鳥類、霊長類の比較心理学の先生方だけでなく、鳥類学の先生にもご参加 いただき、鳥類の認知研究に比較対象としての霊長類、そして鳥類学という視点 を加える試みとして行われた。会はインフォーマルであったこともあり、いずれ の講演にも活発な議論がなされ、予定時間を大幅に過ぎてしまうということも あったが、何よりも、このような会を企画することで、鳥類学を専門とされる方 々に来聴していただき、それらの方々に認知研究という視点を発信できたこと は、何よりも本例会の一つの収穫であったと言える。本シンポジウム開催に当た り、ご参加いただいた先生方、並びにご後援いただいた本学会、及び、慶應義塾 大学「魅力ある大学院教育イニシアティブ」プログラムに、この場借りて謝意を 表したい。

