第155回例会 開催記録

日本動物心理学会第155回例会のご案内(名古屋)

標記の例会を以下の要領で開催します。今回は、薬理学・解剖学あるいは行動学的な立場から、うつ病や依存症といった臨床的な問題に関する研究を進めておられる方々に発表をお願いしました。多数の方々のご参加をお願いします。

日時:2011年3月30日(水)14時~17時ごろまで
(その後、1時間程度の懇親会を予定)
会場:ホテル新名 1階会議室: 名古屋駅新幹線口(西口)徒歩2分
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/8191/8191_std.html を参照)

発表題目および発表者

  1. 覚せい剤依存および認知障害についての行動学的基礎研究
    溝口博之(名古屋大学環境医学研究所近未来環境シミュレーションセンター)
    山田清文(名古屋大学大学院医学系研究科医療薬学・附属病院薬剤部)
  2. マウスの水迷路学習場面における行動的絶望―うつ発症の個人差を検討可能な動物モデル―
    土江伸誉(株式会社 行医研・兵庫医科大学)
  3. 側坐核に関する精神薬理学―薬物依存と大うつ病モデルの接点―
    井口善生(金沢大学医薬保健研究域脳情報病態学)

なお、発表終了後に同会場で簡単な懇親の場を設ける予定ですので、そちらにもぜひご参加ください。大会、懇親会ともに参加費無料です。

お問い合わせ先:
名古屋大学環境学研究科 石井 澄(i45086b[at]nucc.cc.nagoya-u.ac.jp)
または、
名古屋大学情報科学研究科 川合伸幸(kawai[at]is.nagoya-u.ac.jp)
([at]を@に変えて下さい)


日本動物心理学会第155回例会報告
報告者:石井 澄(名古屋大学環境学研究科)

動物心理学会第155回例会は、名古屋大学の担当で3月30日14時から名古屋駅前の「ホテル新名」の会議室で開催された。今回の例会では、うつや依存症といった臨床的な問題に関する基礎的な研究をテーマとして、薬理学・生理学そして行動学の複合的領域において研究活動を行っている3名の研究者に発表をお願いした。参加者は関東から来られた方も含め15名であった。

最初に名古屋大学環境医学研究所の溝口博之氏から「覚せい剤依存および認知障害についての行動学的基礎研究」と題して、放射状迷路様の装置を用いた行動研究により、覚せい剤を投与されたラットではリスク選択行動の増大などが見られるようになるが、ニコチンの摂取によりそれらが非投与群に近づくといった所見が提示された。

続いて行医研・兵庫医科大学の土江伸誉氏が「マウスの水迷路学習場面における行動的絶望」というテーマで、水迷路課題において訓練途中から目標への遊泳をあきらめ浮遊するようになる個体が、表現型やその病理・病因そして治療処理の有効性といった点において、ヒトのうつ病のモデル動物となり得る可能性について詳細な検討を報告した。

最後に金沢大学医薬保健研究域の井口善生氏が「側座核に関する精神薬理学」というタイトルで、薬物依存と大うつ病の動物モデルが共通して欲求性道具的行動の目標志向性や報酬に対する快の情動表出を低下させることを報告した過去の研究を総括し,これらの表現型に関与する側坐核が両疾患の病態を統合的に理解する上で重要であることを指摘した。

それぞれの発表に対して非常に活発な質疑や討論が行われ、予定の時間を超過して18時前に終了した。