山口大学大学院医学系研究科病理形態学講座
池田栄二
2020 年度より日本病理学会中国四国支部長を拝命いたしました。よろしくお願い申し上げます。
私は長く関東支部に所属しておりましたが、2008年10月から中国四国支部の一員に加えていただきました。初めて中国四国支部学術集会に出席した際、支部所属病理医の直面している事情を早々に垣間見た思いがいたしました。これは中国四国支部に限ったことではありませんが、地方では病理医が少ないです。人口に対する病理医数といった数値の問題とは別に、1人で診断業務を抱えざるを得ない要因にも目を向ける必要があります。都会では、病院内や講座内に症例について相談できる病理医がいる場合が多く、また数分おきにやってくる電車に乗ることを厭わなければ、より多くの病理医とも物理的に繋がっております。しかし、地方ではそうはいきません。勿論、都会にも地方にはない解決すべき問題があります。こうした支部独自の事情を前に、改めて支部活動の重要性を痛感した10年間でした。
中国四国支部には、先輩の先生方が築き上げてこられた素晴らしい活動基盤があります。年3回開催される支部学術集会(スライドカンファレンス)には、演題症例の事前診断投票など会員参加型の開催手順が確立されています。最近では、臨床研修医さらには学部学生の発表演題も増え、筆頭演者として発表した臨床研修医と学部学生には学術奨励賞を授与しております。受賞者の中からは病理学の道に進んだ者も出ています。支部学術集会の特別講演(年2回は病理領域別講習、1回は共通講習として認定)も素晴らしい内容です。夏に開催される病理学夏の学校は、10大学の持ち回りで開催し、今年度から3巡目に入り引き続き開催する方向で進めておりますが、多くの医学部学生が参加し盛況な会となっています。こうした素晴らしい活動が進行中ではありますが、時代とともに変遷する病理学分野における‘学術’への対応など、支部長として何か新しい風を吹き込めたらと模索しております。今後、病理診断業務に遺伝子診断や人工知能が導入されることには皆さまも異論がないと思います。若手病理医が、それらに正しくかつ柔軟に対応するためには、日頃から最新の研究動向に触れていることが重要であり、日常診断業務に追われる日々を送っている多忙な支部会員に、そうした場を提供できたらと考えております。
さて、支部長としてスタートを切った矢先、新型コロナウィルス感染拡大問題が立ち塞がって参りました。最前線の医療現場で大変な苦労をされている方々には、本当に頭が下がる思いでおります。一方、社会の変革期の出来事と捉え、前を向いて進む姿勢も重要です。5G時代の通信インフラを有用に活用した新たな支部活動体制の構築にも目を向けたいと思います。
皆さまには、今後とも支部活動にご支援ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。