ユースメンタルヘルスとは?

ユースメンタルヘルスとは?

ユースメンタルヘルス講座 ミッション

ユース(Youth)とは,主に10代~20代の思春期青年期の若者世代をさす言葉です.

ユース期(思春期・青年期)は,生物の中で人間だけが持つ「自分が自分であるという意識=自我機能」が育まれる人間の一生の中で非常に大切な時期です.

そのため,ユース期は,何らかの原因で自我の成長が上手くいかず,自我機能が破たんして起こる精神疾患の発症が非常に多い時期でもあります.

精神的な健康を生涯にわたって保つためには,ユース期は非常に重要な時期になります.しかし,ユース期は,子どもと大人のはざまの時期に当たるため,これまでの精神医学の歴史の中で,特別に焦点を当てた研究や実践が行なわれてきませんでした.

また,ユース期は,からだ(生物学的変化)とこころ(心理的変化)と環境(社会的変化)が成長に伴って大きく変化する時期でもあります.そのため,生物学的な要因だけでなく,心理的要因・社会的要因を含めて,一体的に研究・実践を行っていく必要があります.

ユースメンタルヘルス講座では,ユース期のメンタルヘルスについて,これまでの生物学的精神医学と社会精神医学を融合させて,新たな社会精神医学を構築し,実践と人材育成を通じて成果を社会に還元していきます.

ユースメンタルヘルス講座 特色ユースメンタルヘルス 日本の現状

なぜユースメンタルヘルスなのか?

国の将来を担う若者

こころの健康はこれからの日本を支える

マネジメントで有名なドラッカーは,「将来について,ほぼ確実に言える唯一の重要な要因は“人口学的変化(出生率の低下)”である」と言っています.ドラッカーはまた,今後の世界が「15歳未満の若者の数が減り続け,世界史的前例のない人口構造へ」向かうことから「若者の存在価値が一層高まる時代」になると予測しています.世界の中でもわが国は,少子高齢化のトップを走っており,2025年には,2人の働き手が1人の老人を支えなければならなくなります.

若者が元気で働き,国を支えることが,今後の日本でこれまで以上に重要になってきます.

若者の健康をおびやかす精神疾患

こころの健康をおびやかす精神疾患

しかしながら,若者が元気で働き,人生を送る上で最も障害となるのが,実は精神疾患であることが分かっています.精神疾患を発症する時期を調べると,患者さんの半分が14歳までに発症しており,4分の3の患者さんが24歳までに発症しています.ほとんどの患者さんが,10代~20代のユース期に精神疾患を発症しているのです.

ユースの健康・人生への影響が非常に大きい

こころの健康をおびやかす精神疾患 精神疾患による損失

精神疾患を発症すると,学校へ通いづらくなったり,仕事がしづらくなったりして,健康で充実した人生を送ることが難しくなっていきます.世界保健機構(WHO)と世界銀行が,あらゆる病気が生命や生活にどのくらい影響を及ぼすかを数値化した,DALYs(障害調整生命年disability adjusted life years)という指標があります.この指標を用いると,先進国では,精神疾患のほうが,がんや心臓疾患よりも生命や生活に及ぼす影響が大きいことが明らかになっています.

見えにくいが実は身近な精神疾患

こころの健康をおびやかす精神疾患

精神疾患というと,「自分には関係ない」と思われる方がいらっしゃるかもしれません.しかしながら,一生のうち何らかの精神疾患に1回以上かかる人は,5人に1人ということが分かっています.また,日本で今この時点で精神科を受診中の方は,40人に1人いることが分かっています.40人に1人と言うと,少し人数が多めの小中学校のクラスに必ず1人はいる数になります.また,受診していないが,よくよく話しを聞いてみると何らかの精神疾患の診断がつく人は,11人に1人と言われています.精神疾患は,一般的に思われている以上に,誰もがかかりうるとても身近な疾患なのです.

早期支援の重要性

精神疾患に限らず,どんな病気も,早めに見つけて早めに手当てすることが,回復への近道になります.精神疾患についても,早期発見,早期治療,早期支援を行うことが,その後の経過や生活に大きく影響してきます.しかも,精神疾患を発症するユース期は,進学・就職・結婚などその後の人生を左右する転機の時期であることが多く,その後の人生にも大きく関わってきます.

15歳~29歳のユース世代の健康生活が損なわれる原因のうち,実に70%以上が精神神経疾患によるものであることが分かっています.しかも日本は,先進国で唯一,自殺が20~24歳の若者の死因の第一位になっています.自殺の原因は様々ですが,背景にうつ病などの精神疾患の発症があることが分かっています.自殺やうつによる社会的損失は,お金に換算すると2兆7千億円に達するとの試算もあります.これからの日本を支える若者が元気に活躍できるためには,精神疾患にかかった若者や,精神疾患にかかりそうな若者への早期支援がとても重要になってきます.

15-29歳の健康生活が行われる原因20~24歳の自殺 先進国で唯一、自殺が若者の死因の第一位

これからの日本に必要なもの

日本は,諸外国と比べて,病院受診の敷居が非常に低いと言われています.しかしながら,精神科の受診へのハードルは,外国と比べて非常に高いことも分かっています.精神疾患を発症してから,精神科を受診するまでに平均で1年以上かかっていることが明らかになっています.

精神疾患にかかると,なかなか他の人の手助けを求めにくくなることや,精神疾患への偏見があるために,精神科の受診が遅れてしまいがちです.精神疾患についての正しい情報や,精神科医療の「見える化」を進めて,必要な人が安心して早めに精神科に受診できる体制を整えていく必要があります.

また,精神科専門スタッフが,病院で待っているだけではなく,精神科医療サービスを必要な人に届ける(アウトリーチ)システムが必要になってきます.このようなシステムは,若者を対象とした早期支援の際に,とりわけ重要になります.専門家・当事者・家族の有志が集まった「こころの健康政策構想実現会議」による提言でも,地域こころの健康推進チームの設置を提言しています.今後の日本の若者向け早期支援サービスでは,このようなサービスをモデルとしてシステムを作っていく必要があると考えています.

早めの対応が非常に大切~早期支援~これからの日本に必要なもの~こころの健康政策構想実現会議の提言~

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