静岡大学東部キャンパスには生命科学の研究・教育に携わる多くの方々がいらっしゃいます。研究は基礎から応用まで、その研究分野は生物学から化学まで、また、研究対象は微生物から哺乳類までと多種多岐に渡っています。そのため、なかなか一つの話題を話し合うことが出来ないのが現状です。しかしながら、生命科学を研究する上で、共通の話題・問題があると思います。そこで、生命科学研究を指向する方々のネットワーク作りを目的として、生命科学懇話会を発足させることにしました(96/05/24)。
第67回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年12月20日(木)14:30〜15:30 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B202教室 |
演 者 |
野田産業科学研究所, 主任研究員 亀倉 正博 博士 |
演 題 |
『古細菌をめぐる最近の話題』 1977年に提唱された古細菌は、絶対嫌気性のメタン生成菌、飽和食塩中で生える高度好塩菌、90℃以上で増殖する超好熱菌などから成る興味深い微生物群である。しかしこの数年間に、こうした極限的とは言えない環境、例えば土壌、海洋にも古細菌の存在を示唆するデータが蓄積されつつある。これら古細菌の諸性質と利用の可能性、生命の進化との関わり等についての最近の話題を提供する。 |
連絡先 |
招聘者:藤原健智@理・生地環(生物学教室)(内5707)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
農学部公開セミナー | |
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日 時 | 2001年12月17日(月)13:00〜16:00 |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B201教室 |
演 者 |
名古屋大学大学院農学生命研究科 地球水循環研究センター 大田 啓一 先生 |
演 題 |
『光と海洋地球環境』 太陽光は、地球に供給されるエネルギー源としてもっとも大きなものである。 太陽光スペクトルは、大気圏上部から海洋内部にかけてしだいに変化していき、スペ クトルに対応した働きをしている。その働きが地球表層と海洋の環境変化にどのよう に関わっているかについて、最近の研究結果も交えて考察してみたい。 |
連絡先 |
招聘者:衛藤英男@農・応用生物化学科(内7818)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
静岡大学第7回アイソトープ・放射線利用研究特別講演会 | |
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日 時 | 2001年12月07日(金)14:00〜 |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B201室 |
演 者 1 |
名古屋大学
生物分子応答研究センター
助教授 若松 佑子 先生 |
演 題 1 |
『系統保存と透明メダカ』 「メダカ」は愛嬌のある顔つきと小さくて簡単に飼えること,何より身近に泳いでいたことから日本では子供の頃から親しんできた淡水魚です.しかし残念なことに,環境の悪化により日本から「野生メダカの学校」は消えようとしています. 一方,メダカには生物学研究の重要な研究対象としての歴史があります.スペースシャトルで宇宙へ送られ貴重なデータをもたらしてくれた「宇宙メダカ」は最近のことですが,生物の体に対する放射線障害の機序を詳細に調べるためにメダカが貢献してきました.放射線を限度を超えて浴びるとお腹の具合が悪くなり,死に至ることがあるのは,消化・吸収を受け持つ小腸に「腸死」がおこるからだということが明らかになったのです.絨毛を覆っている上皮細胞は特別の場所でのみ増殖しそれらの細胞は絨毛へ移動して表面を覆い,食物の消化・吸収をした後,死滅しはがれ落ちるのです.その後は新しい細胞が補うのですが,被爆で細胞の増殖が止まったために補う細胞がなく,絨毛の表面は裸になり,消化・吸収はできなくなります.これが「腸死」なのです.ところで,名古屋大学理学部の「メダカ博士」の山本時夫先生は戦後まもなくメダカの受精や発生過程の研究をされ,魚類の発生学を世に出されました(藁半紙に印刷されたエポックメイキングな論文を学生の頃拝見し時代の反映を感じたものです).後に設置された「淡水魚類系統保存施設」でメダカの野生種から様々なミュータント系までメダカの系統保存がされ,さらにその施設は発展的に改組されて,「名古屋大学生物分子応答研究センター」に所属となりました. 現在同センターでは,新しい解析方法と技術の進展で,遺伝子改変メダカが次々作られ,それらは新しい系統として代を重ねながら,世界中の研究に貢献しています. 「透明人間」も真っ青な,全身内臓が透けて見える「透明メダカ」が誕生し,特別の 臓器だけ遺伝子発現をする様子が透けて見える姿が最近テレビで放映されています.外国で樹立され「魚類のショウジョウバエ,魚類のマウス」として,遺伝子発現の解析に 使われているゼブラフィッシュに肩を並べるところへちかずいている日本産メダカは今後が期待される実験動物になろうとしています.系統保存と基礎研究更には応用研究に携わっていられる先生からの御講演を楽しんでください. |
連絡先 |
招聘者:野口基子@理・生地環(生物学教室)(内5710)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第66回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年12月03日(月)16:00 〜17:00 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
Stowers Institute for Medical Research, Kansas City, MO, USA 川瀬 栄八郎 博士 |
演 題 |
『生殖系列細胞の増殖機構の解明と臨床を目標とした基礎研究』 (1)クローン技術を用いての神経細胞由来のES (embryonic stem) 細胞株の樹立 (2)マウスの始源生殖細胞 (PGCs) のFGFsによるParacrineとAutocrine な増殖機構 (1)1998年にhumanのES細胞株の樹立の発表以降、再生医学の現実性が高まってきている。またクローン技術と組み合わせると、患者自身の細胞からES細胞を樹立することが可能になり、免疫拒絶などの問題を解決できるため、より有用であることが期待される。しかしながらクローンを用いたES細胞株が、ES細胞としての特性だけでなく、もとの細胞の特性をも保持している可能性があり、この場合臨床に用いると副作用が起こりうる危険性がある。そこでわれ我々はマウスの神経細胞由来のES細胞株をつくり、このような可能性が生じているのか否かを検討した。 (2)PGCの増殖因子はいくつも見つかってきている一方で、それらが生体内でどれだけ機能しているかどうかはいぜんとして不明であった。我々はFGFsのマウス胚での発現とPGCを追跡し、FGFsは移動期ではparacrineに働き、生殖隆起内ではautocrineにPGCの増殖に関係していることを見つけた。 注:川瀬 栄八郎 博士は,静岡大学大学院理学研究科生物学専攻修士課程を修了され,現在米国でポスドクをされています.ヒトES細胞やPGC関連の研究にあたっていますので,否応なく発展が見込まれているこの分野の米国の実状など伺えると思います.急なことですが,皆様へもセミナーのお知らせを送らせていただきます.ご参加ください. |
連絡先 |
招聘者:野口基子@理・生地環(生物学教室)(内5710)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
生物工学セミナー | |
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日 時 | 2001年11月30日(金)12:45〜14:15 |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B211教室 |
演 者 |
農業技術研究機構・
素材特性研究チーム
主任研究官 宮澤 光博 博士 |
演 題 |
『バイオテクノロジーにおける昆虫の利用及び今後の展望』 昆虫を用いた組み換え蛋白質の大量生産技術、昆虫のホルモンと変態のメカニズム及びその応用、昆虫のフェロモン受容蛋白質とそのメカニズム、クモの糸を作る弾力性蛋白質の構造及びその応用の4サブテーマについて、先生の研究結果を交えながら分かりやすく講演してくださいます。学部4年生をはじめ、大学院生の来聴を期待します。このセミナーは大学院講義「生物工学特論」単位の1部としますので生物工学特論受講者は必ず受講すること。 |
連絡先 |
招聘者:朴龍洙@農・応用生物化学科(内8221)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第65回 静岡ライフサイエンスセミナー, 第8回遺伝子実験施設セミナー | |
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日 時 | 2001年10月26日(金)17:00 〜18:00 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
農業技術研究機構・
野菜茶業研究所・
機能解析部 今西俊介 先生・永田雅靖 先生 |
演 題 |
『トマト果実の成熟生理:エチレンによる制御機構に関する形質転換トマトを用いた解析』 トマト果実の成熟は農業的に重要な特質であり、生長の中で強度に制御かつ高度にプログラムされている。成熟の生理機構を明らかにすることは、農業利用だけでなく植物の生長の制御機構を理解する上でも有意義であると考えられる。生化学および分子生物学的解析から、成熟を制御している内的因子としてエチレンが大きな役割を果たしていることが知られている。エチレン生成制御において重要な役割を示すACC合成酵素(ACS2)は多重遺伝子族を形成し、それぞれ異なったステージや外的要因で発現しエチレン生成を制御している。当グループでは、ACS2の発現を特異的に抑制した形質転換トマトを作製した。この形質転換体ではエチレン生成レベルが非常に低く、成熟の速度も抑えられている。これらを用いて明らかになりつつあるトマト成熟の生理機構について紹介する。 |
連絡先 |
招聘者:三田 悟@遺伝子実験施設(内8652)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第64回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年10月10日(水)15:00〜16:00 ★日時変更★ |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
UCCR/LME/NICHD/National Institute of Heath 東 義明 先生 |
演 題 |
『SUMO1ペプチドによるタンパク質の翻訳後修飾: その制御機構と被修飾タンパク質の解析』 タンパク質の翻訳後修飾の一つとして、近年同定されたUbiquitin類似ペプチドであるSUMO1は、その構造のみならず、修飾時の反応機構等の生化学的性質も、Ubiquitinと相同点が多い。SUMO1修飾は、真核生物において、非常に保存された反応であり、正常な細胞周期の維持に必須であることが酵母の遺伝学より示唆されている。また、培養細胞の細胞生物学的研究より、核内構造体の制御に関わることも示唆されている。 我々は、SUMO1修飾の制御機構とその生物学的意義を明らかにするため、SUMO1修飾を触媒する酵素の解析と、SUMO1被修飾タンパク質の同定、言い換えれば修飾機構の上流と下流の解析を行っている。 SUMO1修飾に必須な酵素のうち、最初の反応に関わる活性化酵素(以下E1とする)の解析により、何らかの未同定の活性化因子が存在する事が示唆され、基質特異性を含めた新たな問題点が明かとなった。さらに、E1を構成するサブユニットが、細胞周期に依存して、その細胞内蛋白量が制御されている結果が得られ、Ubiquitin経路には無いSUMO1独自の活性制御機構の可能性が示された。現時点では、反応系に用いる基質が一種類に限られているため、基質特異性の有無等の活性化因子の性質が明確にはできていない。反応特異性に関する疑問に答えるため、現在、SUMO1修飾されたタンパク質の分離、同定を行っている。新たに同定されたタンパク質を解析することで、反応機構のみならず、SUMO1修飾の生物学的意義、特に細胞周期における役割に対する疑問についても、何らかの答えが得られることを期待している。 |
連絡先 |
招聘者:徳元俊伸@理・生物(内5709)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
SCS公開シンポジウム「ゲノム、老化、脳」 | |
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日 時 | 2001年09月01日(土)14:00〜17:00 |
会 場 |
名古屋大学鶴舞キャンパス医学部第4講義室の他 静岡大学 図書館6階 SCSメディアルーム などで衛星中継を視聴可能 |
演 者 |
JT生命誌研究館
吉川 寛 先生 東京工業大学 石川冬木 先生 北里大学 養老孟司 先生 |
演 題 |
『様々なゲノムから進化を見る』 吉川 寛(JT生命誌研究館) 『ゲノムと老化』 石川冬木(東京工業大学) 『ゲノムと脳の狭間』 養老孟司(北里大学) |
連絡先 |
http://www.med.nagoya-u.ac.jp/mm/sympo.html
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第63回 静岡ライフサイエンスセミナー, 第7回遺伝子実験施設セミナー | |
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日 時 | 2001年07月24日(火)15:00〜16:00 |
会 場 | 静岡大学大学会館研修室 |
演 者 |
東京大学大学院総合文化研究科
広域科学専攻生命環境科学系
教授 石浦 章一 先生 |
演 題 |
『塩基の繰り返し多型とヒト認知機能』 私たちの認知機能が遺伝的素因を伴う例が多い。その中の1つ筋強直性ジストロフィーは、非翻訳領域に存在するCTG3塩基の繰り返しが増幅することによって発症する。この3塩基の増幅が発症にどのように結びつくかを議論したい。また、いくつかの塩基の繰り返しがADHDをはじめとするヒトの行動異常や性格・気質に関係するという報告がなされてきた。私たちはこれら認知機能を分子生物学的に解明することを目的に研究を行っているが、その一端を紹介する。 ヒトのこころが遺伝子によって解明できるでしょうか? |
連絡先 |
招聘者:石川勝利@理・生物(内8233)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第62回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年07月19日(木)14:25〜15:25 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
東京大学
大学院農学生命科学研究科
生物有機化学研究室
教授 長澤 寛道 先生 |
演 題 |
『バイオミネラリゼーション:ザリガニの胃石形成』 生物が無機鉱物を形成する反応をバイミネラリゼーションという。骨,歯,魚類の鱗,貝殻,甲殻類の殻,有孔虫の殻,円石藻の円石,磁性細菌の磁鉄鉱などさまざまなものがある。ザリガニは脱皮に先立って外骨格から炭酸カルシウムを溶かし出し,胃の前面に1対の大きな炭酸カルシウムの石(胃石,gastrolith)を形成する。胃石は脱皮した後,消化され,次の新しい外骨格を硬くするのに再利用される。すなわち,脱皮に同調して炭酸カルシウムは殻と胃の間を行き来する。この現象は内分泌的に制御されている。一方,炭酸カルシウムの沈着にはその胃石に含まれる微量の有機物(有機基質)が重要な働きをしていると考えられてきた。われわれは主要な有機基質(タンパク質)を抽出,精製し,得られた部分アミノ酸配列を基にcDNAをクローニングした。このタンパク質は胃石形成を担っている胃石板の細胞で特異的に発現しており,その発現は脱皮ホルモンによって誘導されることがわかった。脱皮の制御機構についても概説したい。 |
連絡先 |
招聘者:鈴木雅一@理・生物(内5700)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第61回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年07月18日(水)16:00〜17:00(★7/19から変更しました★) |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B201教室(★参加人数により変更の可能性あり★) |
演 者 |
国立遺伝子研究所
人類遺伝研究部門
教授 佐々木 裕之 先生 |
演 題 |
『哺乳類の発生を調節するゲノムインプリンティングの分子メカニズム』 哺乳動物ゲノムのインプリンティングは,雌雄の配偶子のゲノムに機能的な差異を賦与し,単為発生を妨げる現象として知られる.インプリンティングは胎盤の形成,胎児の発生成長,繁殖行動を司る遺伝子群の発現を調節する.また,体細胞核移植クローンの生存率が低いのは,インプリンティングを始めとするゲノムの修飾が完全に初期化されないこと,または異常に変化することが一因と考えられている.本セミナーでは,ゲノム修飾の分子的基盤であるDNAメチル化を中心に,最近明らかになってきたインプリンティングの分子メカニズムについて,我々の成果を含めて紹介する. |
連絡先 |
招聘者:野口基子@理・生物(内5710)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第60回 静岡ライフサイエンスセミナー, 第6回遺伝子実験施設セミナー | |
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日 時 | 2001年07月18日(水)11:00〜12:00 (★時刻が変更されました★) |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
帝京大学
講師 下河原 浩行 先生 |
演 題 |
『モデル植物クラミドモナスを利用したリン酸欠乏順化機構の解明』 リン酸は植物の3大栄養素の一つであるが,自然環境下では,しばしば植物の生育を律速する要因の一つとなっている。植物は,リン酸欠乏環境下でも生き残るチャンスを高めるため,それに適応するような様々な順化的調節機構をもつ。しかしながら,このようなエッセンシャルな生理現象であるにもかかわらず,この調節の分子的なメカニズムは,これまでほとんど解明が進んでいない。我々は,酵母と同様の分子遺伝学的アプローチが可能なモデル植物として,近年注目されている,単細胞緑藻クラミドモナスを利用し,この問題の解明に挑んでいる。 これまでに,クラミドモナスのリン酸欠乏順化調節能変異株を利用して,遺伝子相補法により,その原因遺伝子のクローニングに成功した。本遺伝子の産物は,Myb転写因子様のモチーフをもち,リン酸トランスポーターおよび分泌型フォスファターゼの構造遺伝子の発現制御に関わる転写因子であると考えられた。また,本遺伝子産物は,リン酸欠乏条件下で誘導され,細胞核内に特異的に蓄積することもわかった。さらに本遺伝子のホモローグは,高等植物にのみ多数みつかった。このことは,クラミドモナスが高等植物と同等のリン酸欠乏順化調節機構を持つこと,および,この機構が植物界に固有なものである可能性を示唆している。我々は,さらに最近,高親和型リン酸トランスポーター,低親和型リン酸トランスポーターや,分泌型フォスファターゼをコードする遺伝子のクローニングにも成功した。これらの遺伝子の発現調節のネットワークを解析してゆくことで,植物に固有なリン酸欠乏順化の分子機構の全貌解明を目指している。 |
連絡先 |
招聘者:天野豊己@理・生物(内5718)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第59回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年07月16日(月)16:30〜17:30 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B202教室 |
演 者 |
京都大学
エネルギー理工学研究所
生体エネルギー研究分野 科学技術振興事業団さきがけ研究21 森井 孝 先生 |
演 題 |
『DNA認識能をもったスモールプロテイン』
遺伝子の発現を制御するためには、まず、染色体中の膨大な塩基配列の中から特定の遺伝子に特有の調節塩基配列を選出することが必要である。この厳密な識別機構についてこれまでの研究から、転写される遺伝子の調節領域に転写調節因子などのDNA結合タンパク質が数多くの結合し、DNA−タンパク質間およびタンパク質−タンパク質間という異なった種類の認識様式を協同的に重複させながら超分子複合体を形成して特定の遺伝子を選出しているということが明らかになってきた。このDNA塩基配列特異的な超分子形成は、2種類の非共有結合性相互作用、即ち、DNA−タンパク質間およびタンパク質間相互作用の協同的作用により支配されている高度な分子認識過程であると言える。 非共有結合によるタンパク質間相互作用は、タンパク質群が特定のDNA塩基配列を認識し、超分子複合体を形成する際に、その選択性の向上および協同性の発現に重要な役割を果たしていると考えられているが、その詳細は未だ明らかとなっていない。そこで我々は、DNA−タンパク質間およびタンパク質−タンパク質間相互作用をあわせもつ最小の系として、塩基配列選択的にDNAと複合体を形成するペプチド二量体に注目してきた。このペプチド二量体は、DNA結合ドメインとして天然のタンパク質のDNA結合ドメイン由来のペプチドを、二量化部位(=ペプチド間相互作用部位)としてb-シクロデキストリン(Cd)とそのゲスト分子からなるホストゲスト包接化合物を有しており、天然のタンパク質GCN4のDNA複合体のX線結晶解析結果を基にデザインした。本講演ではペプチド二量体を用いて、ペプチド間相互作用の熱力学的安定性はどのように影響するのか、そして二量体形成が平衡反応であることが、ペプチド二量体の特定DNA塩基配列上での超分子複合体形成にどのような影響を及ぼすかについて検討した結果をもとに、特定のDNA塩基配列上で複数のタンパク質が超分子複合体を形成する際のタンパク質間の相互作用の役割ついて論じるとともに、生体内でもDNA認識能を発揮できる新しいDNA結合スモールプロテインのデザインとその機能について議論する。 |
連絡先 |
招聘者:上野勝@理・化学(内5611)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第58回 静岡ライフサイエンスセミナー, 第5回遺伝子実験施設セミナー | |
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日 時 | 2001年07月06日(金)17:00〜18:00(★変更) |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
静岡大学
遺伝子実験施設
助手 道羅 英夫 先生 |
演 題 |
『ゾウリムシの核内共生細菌ホロスポラに関する分子細胞生物学的研究』
現在の真核細胞は原始真核細胞の中に別の細胞が共生することによって生じたものであると考えられている。すなわち、ミトコンドリアや葉緑体などのオルガネラはもともとは共生生物であり、これらと宿主が共進化することによって現在の真核細胞を形成したというものである。これを「共生説」という。細胞内共生は今なお自然界に多種多様に起こっている現象であり、その中には今まさにオルガネラへの途をたどっている共生体がいるかもしれない。原生動物であるゾウリムシはさまざまな細胞内共生体を持っていることで知られている。中でもゾウリムシの大核内に共生するグラム陰性細菌 Holospora obtusa はその特有な生活環と大核への特異的な感染性を示すという点で非常に興味深い共生細菌である。今回の講演ではこの核内共生細菌を紹介し、これまでの研究成果を発表する。 |
連絡先 |
招聘者:田中滋康@理・生物(内5716)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第57回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年07月02日(月)13:00〜14:00 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 |
Head, Hormone and Metabolic Research Unit Christian de Duve Institute of Cellular Pathology Louvain University Medical School, Brussels, Belgium Prof. Dr. Guy Rousseau |
演 題 |
『The transcription factor HNF-6: role in liver function and development』
肝臓の機能ならびに発生における肝特異転写因子HNF-6の働きについて、ノックアウトマウスを用いた解析から概説していただきます。 |
連絡先 |
招聘者:塩尻信義@理・生物(内5711)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第56回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年07月02日(月) 10:00〜11:30 |
会 場 | 静岡大学 大学会館 研修室 |
演 者 |
金沢大学理学部生物学科
教授 植田 邦彦 先生 |
演 題 |
『植物系統地理学のトピックについて』 |
連絡先 |
招聘者:増澤武弘@理・生物(内5702) 招聘者:吉永光一@理・化学(内5609) 「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
応用生物化学科学科講演会 | |
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日 時 | 2001年06月18日(月) 13:00〜14:30 |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B207教室 |
演 者 |
名古屋大学大学院農学生命研究科 教授 坂神 洋次 先生 |
演 題 |
『ペプチド性植物細胞増殖因子』 ペプチド性植物細胞増殖因子ファイトスルフォカイン(PSK)は,アスパラガス葉肉細胞の培養上清液より得られた5アミノ酸からなるペプチドで細胞分裂促進活性を示し,硫酸化されたチロシン残基が2個存在するという特徴的な構造を有する.また双子葉,単子葉を含む多くの植物がPSKを生産していることが判明した.イネよりクローニングしたPSK前駆体遺伝子は,アミノ酸89残基をコードしており,N末端から22アミノ酸はシグナルペプチド領域と考えられ,PSK配列はC末端付近に存在していた. またPSKと特異的に結合する部位が細胞膜上に存在することが判明し,光アフィニティーラベルにより分子量を明らかにした. |
連絡先 |
招聘者:衛藤英男@農・応用生物化学科(内7818) 招聘者:渡辺修治@農・応用生物化学科(内7800) 「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第55回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年05月24日(木)10:00〜 |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B207教室 |
演 者 |
北海道大学大学院農学研究科 教授 吉原 照彦 先生 |
演 題 |
『塊茎形成および花芽形成に関わるシグナル物質の解明と機能解析』 植物の生活環を制御する外的環境要因には温度、日長、水などがある。そのなかでも季節の変化を日の長さで伝える日長は植物の生長に大きな影響を与えている。栄養生長における塊茎形成、栄養生長から生殖生長への変化となる花芽形成は日長によって制御されている。これらの現象を物質レベルで説明するには内容を二つの過程にわ けることが出来る。まず、植物は日長の光エネルギーをいかなる化合物にかえシグナルとして伝えるか、次に、その現象はいかなる物質が機能することにより発現しているかである。バレイショは秋になるとどうしてイモをつくるのか?アサガオは夏の盛りにどうして咲くのか?この二つの現象について述べる。 |
連絡先 |
招聘者:河岸洋和@農・応用生物化学科(内7819)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第54回 静岡ライフサイエンスセミナー | |
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日 時 | 2001年03月19日(月)13:30〜(約45〜60分) |
会 場 | 静岡大学農学部B棟B201,202教室 |
演 者 |
ミシガン工科大学 教授 Vincent L. Chiang先生 |
演 題 |
『植物リグニンの生合成とその改変』 Vincent Chiang 先生は,樹木の主要構成成分であるリグニンの生合成経路について生化学,遺伝子工学的に精力的に研究を展開され,リグニン生合成経路の解明に大きく貢献されてきました。また,最近では,これらの知見を基にリグニン生合成を制御したトランスジェニック樹木の創出へも研究を展開しています。多数の参加をお待ちしております。 |
連絡先 |
招聘者:堤 祐司@農・森林資源科学科(内7700)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |
第52回,第53回 静岡ライフサイエンスセミナー (講演会「生命科学の最前線」講演1,2) | |
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日 時 | 2001年03月16日(金)15:00〜17:30 |
会 場 | 静岡大学理学部B棟B212教室 |
演 者 1 |
15:00〜15:40 工業技術院 大阪工業技術研究所 高分子表面化学研究室 主任研究官 近江谷 克裕 先生 |
演 題 1 |
『ポストセントラルドグマを目指した細胞内プローブとしての生物発光』 ポストゲノム時代の次には一体何がくるのか? 新版Molecular Cloningの表紙を飾った発光クラゲAequorea victoriaの持つ発光タンパク、蛍光タンパクは新しい生命科学の扉を開きつつある。 そんな分子プローブとして注目されつつある生物発光の現状と未来を語ってみたい。 |
演 者 2 |
16:00〜17:30 福井医科大学医学部生化学第2講座 教授 宮本 薫 先生 |
演 題 2 |
『ゴナドトロピンと生殖内分泌(GnRH II、インヒビンから環境ホルモンまで)』 卵巣の発達(卵胞の発育)は第一義的には脳下垂体からのゴナドトロピン分泌により調節されている。 私どもは新たなゴナドトロピン調節因子として、ニワトリ視床下部 からGnRH IIを、さらにブタ卵胞液からインヒビンの単離精製に初めて成功し、ゴナドトロピン分泌の機序を明らかにした。 またゴナドトロピンは卵巣に発現するLH受容体、FSH受容体を介して作用する。 私どもはLH受容体、FSH受容体をクローニングする とともに、最近これらの受容体の発現が極微量のダイオキシンによって抑制されることを見いだした。 現在、サブトラクションクローニングを利用して、低濃度の内分泌かく乱物質の卵巣に対する影響を遺伝子レベルで検索している(平成12年度より戦略的基礎研究推進事業CREST課題に採択)。 |
連絡先 |
招聘者:田中滋康@理・生物(内5716)
「生命科学懇話会」世話人 竹内浩昭@理・生物(内5704) 山内清志@理・生物(内5708) 天野豊己@理・生物(内5718) |