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こだまの世界

2004年5月下旬号

近年、ポコック、スキナー、あるいはダンをはじめとする研究者たちは、 政治思想史の古典的テクストが生み出されたその時代の言語的慣習 (コンヴェンション)やテクストの間のコンテクスト (インターテクスト)を強調して、 政治思想の「新しい歴史」を提示しようとしてきた(…)。 われわれは、そのような「新しい歴史」の意義は「自己認識」にあると考えている。 それは、われわれ自身の生きている政治社会の当り前とされている慣例や取決めを、 歴史的、社会的偶然の結果として一度相対化し、多様なる他のあり方の可能性に ついて考えてみようとする。

---佐藤正志・添谷育志、『政治概念のコンテクスト』

平等という言葉はやっかいな言葉です。 平等を守らない者は弱者いじめの印象があるからです。 そして自分を弱者と主張する人たちがたくさんいます。 自称弱者が多いため、誰が本当の弱者なのか分からないほどです。(中略) 「もらえるものは、もらわなければ損」という日本人の意識があるので、 ばらまき行政の弊害により自称弱者が多くいます。 本当の弱者には手を差し伸べなければいけませんが、 本当の弱者が誰なのかよく分からないのです。 誰でも自己負担はいやですから他人へのオンブを期待します。 しかし他人への甘えは、社会の負担を増し、 自分さえも見失うことになります。

---鈴木厚、『日本の医療に未来はあるか』

闇の中にいると闇に沈みこんでしまう。

---浦沢直樹、『Monster』

利他心じゃ間に合っていない。臓器の不足はどんどん大きくなるばかりだ。

---David J. Undis, the founder of LifeSharers


主な話題


21/May/2004 (Friday/vendredi/Freitag)

昼下がり

昨晩は研究室で椅子に座ったまま2時間ほど寝てしまう。 風邪を引きそうだったので、大雨の中帰宅し、 少し勉強してからちょっとだけ寝た。

朝はよっぽどサボろうかと思ったが、 道徳法則への尊敬の念の力(と、サボるとあとでまずいことが起きるんじゃないか という不安感)によってなんとか起きだし、南大沢へ。 ヒュームやベンタムの勉強をする。

それからまっすぐ帰宅。洗濯をしたら研究室に行って仕事せねば。

夕方、某ファーストキッチンでジャンクを食べてから神保町へ。 スキャンロン。自分の担当部分は回ってこないだろうとタカをくくっていたら、 授業が終わる30分前に自分の担当のところにまわってきてしまったので、 顰蹙を買う。深く反省してまっすぐ研究室に帰ってくる。 来週の予習を済ませよう。

夜2

スキャンロンの勉強中。

業務連絡。今年の日本功利主義学会は7月10日に一橋大学で行なわれます。 まだ発表者を募集している模様です。


22/May/2004 (Saturday/samedi/Sonnabend)

早朝

最近、日記を書くのが億劫になってきている気がする。 ので、あんまり書くべきこと(完全義務とか)を増やさないようにしよう。

昨晩は真夜中までスキャンロンを勉強したあと(終わらなかった)、 某マンガ喫茶に行き、明け方に帰宅。『ギャラリーフェイク』とか、 『あずみ』とか読む。

帰宅して新聞。起きたらまた勉強しなければ。 ちょっと南山は行けそうにない。

夕方

さっき起きた。

北朝鮮から拉致被害者の家族が帰国。一部の家族が帰ってこれなかったというのは、 なんとも残酷な話だ。今後の人間関係が心配される。


23/May/2004 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中 (午前)

昨日は夜にジムに行ったあと、某氏らと居酒屋で歓談。 戻ってきてからスキャンロンの予習。やっと終わった。 たいへん。

明日の研究会の準備をしなければ。

お昼すぎに起きて大学へ。湯島天満宮で祭りをやっているというので 某氏らと連れ立ってそれを見に行ったり、 学生がカレーを恵んでくれるというのでそれをいただいたりしていると、 あっというまにこんな時間になってしまう。 まだ明日の準備がぜんぜん出来てないのだが。どうしよう。

スキナーについて勉強してみたり。「合理的再構成」「歴史的再構成」 という言葉を初めて知る。う〜ん。


24/May/2004 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

まだ大学。今日の勉強会の準備中。終わらん。

最近ちっとも論文を書いてないので、 まともな論文を書けないような気がしてきた。 先行研究も不十分だしなあ。

「あ、これが論文恐怖症というやつか。 なんとか克服しないといかんなあ。 オレは天才だオレは天才だオレは天才だオレは天才だオレは天才だ…」

「何ブツブツつぶやいてるんですか」

「いや、プレッシャーがあって、論文が書けないから」

「いいじゃないですか、プレッシャーなんて感じなくても。 駄作を書いて紙資源の無駄遣いしたってかまいませんよ。 スキナー的にも、 名著だけでなくその背景を形作る一連の駄作がないと、 そもそも名著の思想史的意義はわからないわけです。 だから、駄作が書かれることにも十分意味があるわけですよ」

「またわけのわからんことを…」

早朝に帰って仮眠を取り、また大学に来る。う、まじでやばい。

午前中から夕方までベンタム勉強会。 無内容な発表をしてしまう。 ああ。ばか。ばかばか。ばかばかばか。 う〜ん。来月はもっとがんばろう。

勉強会終了後、某会館のビアガーデンで少し飲む。 まだちょっと寒かったが、なかなか快適だ。

某気の国屋から本が数冊届く。Kluwerの`Handbook of Bioethics'(Philosophy and Medicine 78)、ハードカバーとはいえ、一冊4万円近くするとは何ごとだ。

夜中

届いた本をつらつらと読んでいると、あっという間にこんな時間になってしまった。 明日の勉強会やミーティングの準備をしなければ。


25/May/2004 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中 (午前)

弁当を買って帰宅し、新聞。 明日の予習をすべきところだが、いったん寝てからやろう。

なんとか起きる。

朝から大学へ。お昼前からお昼すぎまで某倫理理論の勉強会。 ビーチャムとチルドレスのPrinciples(第五版)の四原則の正当化のあたりを 勉強する。要するに、トップダウン型も整合性型も満足がいかないので、 「共通道徳」によって四原則を基礎づけてしまえ、ということのようだ (ロールズ流の整合性型は、considered judgmentsの内容があいまいなのが 気にいらないようだ)。

共通道徳というのは、実質的には、 ロス流の「義務や原則に対する直観」のことで、 四原則は直観的に明らかだから、 あとは整合性の要件を用いて理論的な磨きをかけていこう、ということのようだ。 基本的には今でもロールズとロスをくっつけたような感じで、 「ロールズ・ロス型」と命名してもいいんじゃないかと思う。

昼、海鮮丼屋で食事を買うついでに、家賃を払いに行く。

昼下がりから某ミーティング。 臨床倫理の症例検討法(例の四分割法)と医療従事者・患者関係の勉強をする。 つかれたが勉強になった。

これからちょっとジムに行く予定。

夜中

ジムに行ってきた。腹筋や背筋は、 かなり負荷を強くすると効果があることに気付いた。 やはり楽をしていては鍛えられないわけだ。

某海鮮丼屋で鰹たたき丼を買い、研究室で食べる。そこそこ。

眠い。帰るか。

真夜中

帰り、なぜかお腹の調子が悪くなる。

マンガ喫茶に寄りたいという激しい欲求を抑えて、買物して帰宅。 ちょっと勉強しよう。


26/May/2004 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

真夜中 (午前)

テレビを見ながら勉強。ひさしぶりに深夜テレビを見ると、 いろいろおもしろい番組がやっている。アニメ、K-1、B級映画など。

お昼すぎ

昨夜は夜が明けてから寝たが、なんとか朝起き出し、急いで大学へ。 ほんの少し朝の勉強会に遅刻してしまう。反省。

さて、火曜日に発表が二つあるので、その準備をしなければ。

夕方

寝不足のせいもあり、昼食のあと、勉強しようと椅子に座ったところ、 一時間近く寝てしまう。いびきもかいていたようなので(三度、 自分のいびきで目覚めた)、ひんしゅくだ。

日本歯科医師会の倫理規範(1987年制定)を見ていたら、 「基本精神」に続く「遵守事項」のところの第一に、 「歯科医師は、他の歯科医師の行った診療につき、 正当な理由のない批判及び中傷をしてはならない」 とある。なんだかすごいな。

「いや、WMA医の倫理の国際綱領を見ても、 『医師は、同僚医師が自分に対してとってもらいたいのと同じような態度を、 同僚医師に対してとるべきである』とかあるので、 どれも同じようなものなんじゃないの?」

火曜日の勉強会の準備。あともう少し。

真夜中

夜中まで真面目に仕事をしたあと、某氏らと某居酒屋で飲む。 酔っ払っていたわけではないが、いろいろ笑い話をする。

帰宅してマシューTVを見て、また笑う。この人おもしろいなあ。


27/May/2004 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

驚くほど爆睡。昨日はよほど疲れていたようだ。

お昼すぎ

お昼前から大学へ。午前中は雑用。

業務連絡。昨日メールをしていただいた高田馬場の助手の方、 メールアドレスの確認をしたいので教えてもらえませんか。

真夜中

昼下がりまで雑用。 それから某ミーティング。 インフォームド・コンセントについて勉強。

そのあとジムに行き、汗を流す。 あんまり負荷を強くしすぎるとふらふらになるので、 それも問題かもしれない。 あまり無理をしないようにしよう。

その後、某氏らと飲み会。 耳かき棒がいかに危険かという話で盛り上がる。 「ちょっと痛いかいたくないかのあたりが気持ちよくて…」 という話をしていると、ソクラテスの疥癬の話を思い出した。 あれは『ゴルギアス』の快楽説批判の文脈だったか。 あの話や、穴の空いた甕の話は、身につまされるものがある。

それはともかく、明日からはまた資源配分の勉強をしなければ。

再び業務連絡。高田馬場の方、 メールアドレスの相性がよほど悪いのか、 どうしてもメールが届きません。 そこで、確実に返信ができるように、 フォームからじゃなくて、 お使いのメールソフトを使ってkodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp宛てに メールしてもらえませんか。


28/May/2004 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

まだ大学で勉強。マンガ喫茶に行きたい衝動に駆られるが…、 そんなことをしている場合ではない。

お昼前

二度寝してやっと起きた。学校に行かねば。

頭が少し痛い。

そういえば、頭がハゲになる夢を見て、ひどい恐怖を感じて目覚めた気がする。 やはりハゲになることは恐いのか。


29/May/2004 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

昨日は夕方から神田のゼミに出席し、発表。予習したのが先週だったこともあり、 B級な発表をしてしまう。発表するときはもっとしっかり予習をしなければ、 先生だけでなく出席者にももうしわけない。といいつつ、つい忙しさにかまけて いいかげんになってしまう。もうちょっと完璧主義者を目指すようにしよう。

そのあと、某先生と某氏らと築地に行き、寿司。ビールと焼酎を飲み、 いささか酔っ払う。さらに銀座に行ってワインを飲み、ふらふらになる。 タクシーに乗ってなんとか大学まで戻ってきたが、無事に帰れるかどうか。 大学は五月祭の前夜祭のようで、学生が道端のあちこちで寝ている。 数人死んで、数人新しい生命が生まれるのだろうか、とか考えたり。

帰ろう。明日からは資源配分の発表の準備をしなければ。

昼下がり

お昼前に起き、さきほど大学に来る。 赤門のあたりは文化祭で盛り上がっていたが、 うちの研究室がある建物のあたりはbusiness as usualという感じ。

昨日の神田のゼミ用に作ったパワーポイントファイルをアップしておく。

こんなパワーポイントファイルとか作ってるからD論が書けないんだよな…。

真夜中

夕方、五月祭の様子をちょっと見に行き、ビールを飲む。

夜、某氏や学生らと飲み会に行き、ビールと赤ワイン、白ワインを飲む。 今日は明らかに飲み過ぎだ。

さて、勉強できるかどうか。

その前に、気になってた訳を。

The First Cut is the Deepest

きみにすべてをあげたいけれど
ぼくの心は切り裂かれたまま
彼女がすべてを奪っていった

けど、その気だったら試してみるよ
その気なら、もう一度試してみるよ
だけどね、わかってるんだ

最初の傷が一番深いって
そう、最初の傷が一番深いんだ
ツイてないよ、彼女に惚れるなんて
愛しちゃくれず、ひどいもんさ

ぼくのそばにいてほしい
流した涙が渇くように
もちろん、きみが試すのはかまわないよ
その気なら、ぼくも試してみるよ
その気だったら、もう一度やってみるよ
だけどわかってるんだ

最初の傷が一番深いって
そう、最初の傷が一番深いんだ
ツイてないよ、彼女に惚れるなんて
愛しちゃくれず、ひどいもんさ

ぼくのそばにいてほしい
流した涙が渇くように
もちろん、きみが試すのはかまわないよ
その気なら、ぼくも試してみるよ
その気だったら、もう一度やってみるよ
だけどわかってるんだ

最初の傷が一番深いって
そう、最初の傷が一番深いんだ
ツイてないよ、彼女に惚れるなんて
愛しちゃくれず、ひどいもんさ

最初の傷が一番深い
そう、最初の傷が一番深いんだ

もう一度、試してみるよ

---Sung by Sheryl Crow


30/May/2004 (Sunday/dimanche/Sonntag)

真夜中 (午前)

ちょっと勉強。 火曜日の準備、早くしないと間に合わなくなってきたな。やばい。

早朝

昨晩は真っ直ぐ帰宅するつもりだったが、 マンガを読みたいという欲求(注意が向かうという意味での欲求)に負けてしまい、 マンガ喫茶で朝を迎えてしまう。

メモ。医師は生命倫理学を学び医療を行ない、 倫理学者は生命倫理学を学び倫理学を行なう。 生命倫理学の「学際性」を真剣に受け止めること (taking seriously the interdisciplinary nature of bioethics)。

洗濯。新聞。そろそろ寝なければ。

浮気を「生物学的に」正当化する議論がこれほど腹立つのはなぜだろうか。 別に人間が完全に理性的な存在だとは信じていないが、 鳥とか犬とかと違って、欲求を退ける自由があるのは確かだ。 セックスしたい欲求が本能であろうと、社会的なものであろうと、 その欲求を承認endorseするかどうかは、自分にかかっているのだ。 「生物学的に正当化されるから…」という理由で、 自分で決めたことをあたかも「自然と決まっている」ように語るのは、 自己欺瞞だ。科学の権威を借りてそのような口実を与えるやり方に、 腹が立つのだろう。

こういうことを述べると、「こだまさんは倫理的だから…」 と片付けられそうだが、これは倫理的かどうかという問題ではなく、 端的に「生物学によって浮気は正当化される」という発想は間違っている、 ということだ。生物学的に、 いろいろな人とのセックスしたいという(注意が向かうという意味での)欲求が あることがわかったとしても、 だからといってそのように行為するのがただちに合理的になるわけではない。 結婚制度は正義の問題であって、 正義は自然的徳ではなく人為的徳なのだとかなんとか。

昼下がり

やっと起きる。ぐうたらきわまる。

夕方

散髪をしてから大学へ。 本当に散髪屋では適当に切ってもらう「おまかせ散髪」だ。

まじめに勉強中。パワーポイントはたしかに凝りだすと時間がかかる。 要領よく作成すること。

夜2

お腹が減ったのでインドカレーを食べる。 今日は酒が入らなくて済みそうだ。

とにかく蒸し暑い。 湿度が高いと汗疹が出そうで困る。 早く冬にならないものか。


31/May/2004 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

わ、もう月曜日か。勉強中。

日記の整理をすべきなのだが、めんどうでついつい先延ばしにしていると 二ヶ月分もたまってしまった。ちょっとやるか。

真夜中2 (午前)

というわけで、日記の整理。 ちゃんと見直してコメントすべきところだが、 それはまたいつかやることにしよう(と言って、やるといいのだが)。

真夜中3 (午前)

ロールズの勉強中。

あ、(1)正義の形式的原理と実質的原理という区別と、 (2)ロールズのconcept of justiceとconception of justiceと、 (3)ネーゲル、ドゥウォーキン、セン、 キムリッカその他がいうegalitarian plateau (平等の土俵--みんな平等が良いか悪いかではなく、 平等の解釈で争っているという話)があるが、 これらがみんな同じ区別について言及していることに今ようやく気がついた。 (1)と(3)が同じことだということはちょっと前に気がついていたが、 ロールズの(2)の区別も同じだということまではわからなかった。 「そのぐらい、うちのネコでも知っとるで」と言われそうだが、 これでまた見通しがよくなったのでメモ。

ロールズとかエンゲルハートとか勉強していると朝になってしまう。 なぜかまだそれほど疲れていない気がするが、 とりあえず帰ってきた。ちょっと寝よう。

お昼すぎ

なんとかお昼前に起き出して、大学へ。

暑い。夏だ。

お昼前に大学へ。昼下がりに銀座の姉の画廊を観に行く。 夕方は某ロールズゼミの顔見せに出てくる。夜、ジムで汗を流す。 初めてシャワーを使ってみたが、 運動したあとのシャワーは快適だ。


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sat Jul 3 17:47:01 JST 2004