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こだまの世界

2004年4月上旬号

"Nothing I have is truly mine."

---Dido, `Life for Rent'

[T]he relation between a philosopher and somebody who is troubled about a question in medical ethics can never be like that between an old-fashioned general practitioner and his patient... Philosophers cannot give their patients pills which the patients can just swallow. Philosophy itself is the medicine, and it has to be understood, to some degree at any rate, by the patient himself, in a way that medical science does not.

---R.M. Hare, `Medical Ethics: Can the Moral Philosopher Help?'

シンガーは「居心地のよい信念に風穴を開ける」のが好きで、 明らかに自分がソクラテス的伝統に立つものと考えている。 この伝統によれば、 哲学者の役割はその時代の基本となる前提を問い正すことである。
シンガーはこの役割に適任である。 彼はいちじくの葉を見つければかならずそれをはぎとり、 その下に隠れているものを明らかにする。

---Helga Kuhse, `The Practical Ethics of Peter Singer'

「わたしが[『動物の解放』を]書いたとき、 わたしはこの本が世界を変えると本気で考えていた。 今日ではちょっと大それたことに聞こえると思うけれど、 当時はまだわれわれにとっては60年代が続いていたんだ。 本当の変革が可能であるように思えたし、 わたしはこの本によってその一つが達成されると思っていた。 ちょっと街に出てマクドナルドに行ってみるといい、 わたしがそれほど成功しなかったことがわかるから」

---Peter Singer


主な話題


01/Apr/2004 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

早朝

早寝早起き。まだ時差の影響があるようだ。

独立法人化。詳細についてはまだよく知らないのだが…。

先日からウイルスメール(WORM_NETSKY.Qとかいうやつ)が大量に送られてくる。 なんとかならないものか。

遅れていた某翻訳の推敲。とりあえず途中までを某先生らにメールしておく。 引き受けた仕事なので、面倒がらずに最後までやること。 しかし、もう本当に翻訳はこりごりだ。

お昼前

今日から新年度なので、朝から真面目に大学。 同僚が一人増える。

某さんの翻訳の推敲を手伝う。


02/Apr/2004 (Friday/vendredi/Freitag)

お昼前

昨日は昼下がりにちょっとコンピュータの買物を手伝い、 某喫茶店で一服してから、某ユニットミーティング。 夜、もう少し翻訳の手伝いをしたあと、 同僚な方々と居酒屋に行き雑談。

そのあと研究室に戻ってきてちょっと仕事と電話。 大雨の中、帰宅してまもなく眠る。

朝起きて、しばらくしてから大学へ。 赤門前にナチュラルローソンができたので、買物ついでに公共料金を支払っておく。

夜中

午前中、昼下がり、夕方は某氏の翻訳の手伝い。 三日かけてようやく論文を読み終わる。勉強になった。

お昼すぎに某氏が訪ねてきたので、二食で昼食。 夕方にいったん自宅に戻る。夜、研究室で新聞を読みはじめたが、 眠いので戻ってくる。

急にCreamの`Sunshine of Love'が聞きたくなる。 Zeppelinも聞きたくなってきたし、そろそろハードロックの季節か。

あ。ひさしぶりに一人で余裕のある時間を持てている。 ここしばらく一人でゆっくりできなかったからなあ。 ちょっと気を落ちつけてから勉強しよう。

夜中2

グーグルが、容量1ギガの無料ウェブメールを提供する予定だそうだ (朝日)。 すごいな。

長嶋氏、 巨人開幕戦をテレビ観戦(朝日)という記事もなんだかすごい。 ぜんぜん関係ないが、 モンティパイソンの番組をエリザベス2世が観賞するというネタを思い出した。

真夜中

2ヶ月ぶりに日記の整理をする。 スタイルシートはマックではずれて見えるという話も聞いたので、 外すことにする。スタイルシート、あんまり勉強しなかったな。


03/Apr/2004 (Saturday/samedi/Sonnabend)

よく寝た。

東京新聞ではないが、 こないだニューヨークに行ったときに、 The Onionというフリーの 週刊紙を見た。これは毎回ガセネタの記事ばかりで、こないだのトップ記事は 「コカコーラがスポンサーの火星探査機が、 火星上にダサーニ(コカコーラが販売しているミネラルウォーター) の痕跡を見つけた」というもの(The Onion)。なんともアメリカっぽくて笑える。

今日は昼下がりまで某引越しの手伝い。 ラジカセと卓上蛍光灯をいただく。

夕方は東横線でみなとみらいに行ってみる。 タイ料理を食べて汗をかく。

帰宅。一息したら勉強しないと。


04/Apr/2004 (Sunday/dimanche/Sonntag)

お昼前

朝遅くに起きる。何か悪い夢を見ていた気がする。

帰国してから何もしていなかったが、 そろそろ呆けている場合ではなくなってきたので、 まじめに仕事をしよう。

お昼すぎ

わ、ひさしぶりに文章を書いてみたら、すこし書いただけで猛烈に頭が疲れた。 やっぱり脳の退化を少しでも防ぐためには、毎日書くようにしないとな。

昼下がり

今日はくもりで風も強く、寒い。

上の引用でヘアの言いたいことは、最初、 哲学は実践を通じて身につけなければならないということかと思ったが、 むしろプラトンの哲学王(philospher king)ならぬ哲学医者(philosopher physician) になれということだろうか。

夕方

新聞を読むために某喫茶店に二時間ほど。 ガーディアンがまだ二週間分たまっている。

大学に戻ってくるときに、雨に降られる。

ひきつづき真面目に勉強中。

夜中

雨、降り止まず。外は寒い。近くでインド・カレーを食べる。 そろそろ自炊を再開せねばと思う。


05/Apr/2004 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

大学で真夜中まで勉強し、少し電話で話しをしてから帰宅。 もう寝よう。

朝起きて、真面目に大学へ。お昼前から某氏らに明日の発表の予行を聴いてもらう。 まだまだ勉強が足りないところ多し。お昼は二食で。

夕方まで勉強。ユニットで新聞の切り抜きを回覧することにしたので、 その方法(回覧の仕方、保管の仕方など)を考える。

夕方、某氏らが大学病院のあたりで花見をするというので、 お付き合いさせてもらう。寒くて震えながらビールを飲んだり。

夜中

まだ明日の準備中。なんだかとても真面目に勉強している。

真夜中

帰宅。イギリスのアマゾンからLove ActuallyのDVDが届いていたので、 つい見入ってしまう。ほんとにおもしろい。

こないだの東京都教職員が国歌斉唱のときに起立しなかったかどで 懲戒処分になった件に関して、産経と朝日が社説でやりあいをしているようだ。 おもしろい話なので、近いうちにコメントしよう。


06/Apr/2004 (Tuesday/mardi/Dienstag)

昨夜は遅くまでLove Actuallyを見る。 朝起きて大学へ。

午前中から昼下がりまで某勉強会。医療資源の配分の話と、 研究倫理の話。ようやく一冊本を読み終えたので、 次回からは別のことをやる予定。

昼食は二食で。そのあと、某ミーティング。 「倫理学の基礎1」というタイトルで、 事実と価値の区別、道徳的に有意な違い、 公平性(impartiality)の要求というような話をする。 もっとおもしろくしないとだめだ。 図も使わないと。 どうにもテキストベースの人間なので困る。

「この日記にも写真や図は使わないのか。音とか色とかもなくてつまらんぞ」

「プレゼンの修業をしないといけませんよね。あんまり派手すぎないけど、 効果的な印象を与えるようなプレゼンができるように」


07/Apr/2004 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

お昼前

昨夜は某氏と夕食を食べてから帰宅。新聞を読んでから寝る。

今日は朝起きて洗濯をする。春服がなくて困るので、 何か買いに行かなければ。

夕方

昼下がりまでまじめに勉強。昨日の発表の手直し。

夕方、生協の購買部に買い出しに行く。おにぎりその他。 そのあと、卒論生の話を聞く。

夜、後楽園のあたりで母と食事。

東京都教育委員会の指針はやはりおかしい。 今日も数十人の先生が学校の入学式で起立して歌わなかったために、 処分されるとのこと。 委員会の人がニュースのインタビューで、 「オリンピックではみな国旗に向かって国歌を歌っている。 正しいことを教えてやらなければならない」 なんてことを主張していたが、 「教える」ことと「強制する」ことは別だ。 より正確には「正しいことを『処分するぞ』 と脅迫してでもやらせなければならない」 であり、 大人に「礼儀」を強制して教えるというのはおかしい。

「だけど、会社とかだと、スーツを来てこなかったり不精髭を伸ばしていたら クビにできるんじゃないの?」

「私企業の職員と公務員だと違うんじゃないでしょうか。 仮に同じだとしても、 スーツと日の丸とでは政治的な意味合いの大きさが違います。 結局、これだと英国国教会に対する宣誓をしないとオックスフォードに入学できない というのと同じじゃないですか。強制して「礼儀」を身に付けさせる、 と言いますが、 それは強制して「信仰」を身に付けさせるというのとほとんど同じじゃないですか」

「なるほど、しかし、 君に反対する人は国旗や国歌は「信仰」の問題ではないと主張するだろうな。 国旗に向かって国歌斉唱するというのが、マナーの問題なのか、 信仰(良心)の問題なのか、そこが争点になっているようだな」

「首都大学東京にしても、渦中にいないのでこれまで気付きませんでしたが、 なんだか東京都はポリティカルな場になりつつありますね」

夜中

メールで一太郎ファイルを送ってきた御仁がいたので、 ワードで開けるようにコンバータをインストールして 一太郎ファイルを閲覧していると、初めてウィンドウズXPが落ちた。 一太郎を使わせないようにするためのマイクロソフトの陰謀の気がしてならないが、 まあおそらくそういうわけではないのだろう、きっと。

そういえばこないだの花見のときにリキュールを飲んだのだが、 炭酸で割っても、かき氷にかけるシロップのように甘かった。 かなり薄めなければならないということか。


08/Apr/2004 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

ひさしぶりにメタ倫理学の勉強。ほんとに抽象的で難しいので、 よっぽど集中して考えないと何が書いてあるのか理解できない。

もう寝るべし。

お昼前

なんとか朝に起き出して、大学へ。 途中、家の近くの酒屋に寄り、Yahoo! BBのモデムなどを宅急便で送る。

靖国参拝の違憲判決の是非はともかくとして、 小泉首相の「なんで外交に影響あるか」という反論はいただけない。 このような主張は、靖国参拝を毎年ずらす彼の行動と一貫していない。 また、「首相は公人でもあるが私人でもある」というのは、 まるで憲法九条の無理な解釈を聞いているようで、 それなら参拝のときに「内閣総理大臣」と書くのはやめるべきだろう。

「けど、内閣総理大臣って書くのは、「八百屋」とか「酒屋」とか 書くようなものじゃないですか? 別に本人のアイデンティティを示している というより、単に職業欄に職業名を書きこむというだけの行為であって」

「アイデンティティがどうたらといわれてもよくわからんが、 職業欄に「新撰組 切込隊長」とか書けば、やはりその立場で来ているものと 考えられるだろう。まあ賢明な妥協策としては、 「小泉純一郎」と書けば誰だかわかるんだから、あとは何も書かなければ いいんじゃないのか。それにしても、あの判決に対する答え方は、 いかにも保守派に対する受け狙いっぽくていやらしいな」

「それは読みこみすぎじゃないんですか」


09/Apr/2004 (Friday/vendredi/Freitag)

昨夜は某氏らと居酒屋で雑談してから帰宅。 長電話をしてから就寝。

朝、昨日宅急便を出した酒屋から電話。 私書箱には送れないと言われる(自分でもそう思ったので、 念のために尋ねたはずなのだが)。 Yahooのモデムなのだが、解約手続のハガキをもう一度読むと、 宛先が間違っていたことに気付く。 酒屋に行って宛名を書き直し、再び発送をお願いする。

ついでに郵便局に行って書留も受け取る。 京都で作ったカードの有効期限が切れたので、 新たに頼んでいたTUOカードが届いた。

それから大学へ。朝食はコーヒーとキットカット。

イラクの人質事件。「人命は地球よりも重い」と判断すべきか、 あるいは…?「功利主義的には3人を犠牲にするのが正しい」という判断は 浅はかだろう。なぜなら、 3人を犠牲にする選択がもっともよい帰結を生み出すかは よく考えてみないといけないし、また、 それより帰結主義的に優れた解決策があればそちらが優先されるからだ。 結論を出す前によく事実と取りうる可能性を考える必要がある。 これについてはまたあとで書こう(たぶん)。

本日の産経抄は (当然ながら)靖国参拝違憲判決について。 「国のために死んだ人びとは英霊となり、 靖国神社にまつられて"神"となる。それは欧米でいう"ゴッド" とは違う。おまいりすることはいわゆる宗教的活動ではない。 先祖をうやまう人間的で自然な儀礼なのだ。 そのことが裁判官にはわかっていないのではないか」 と批判している。

これは「真のスコットランドの男性」論法に似ている。

A: 「スコットランドの男性は誰も妻をなぐったりけったりすることはない」

B: 「わたしの知り合いのスコットランド人男性のアンガス・マクスポーランさんは、 妻に対するDVで逮捕されてたよ」

A: 「ああ、そう。だけど、真のスコットランドの男性は 誰もそんなことをする人はいないよ」

これは定義を勝手に変えることによって自分の主張の正しさを維持しようとする 論法だが、「いわゆる宗教的活動ではない」という発言も、これと同様に思える。 すなわち、アンガス・マクスポーランさんが「真のスコットランド人男性」 ではないから自分の主張を反駁する理由にはならないと論じるように、 靖国参拝はそもそも「宗教的活動」ではないので、 政教分離の原則には反しないと主張するわけだ。 しかし、英霊にあいさつに行くために神社におまいりに行くことが 「いわゆる宗教的活動」ではないとすると、 何が宗教的活動なのかをきちんと定義してもらう必要がある。

昼下がり

新聞を読んだり、利益相反について勉強したり、 パワーポイントのアニメーションについて試行錯誤したり。 捗らず。

6月の米国行きの手配を進める。

夕方、某氏らと某喫茶店に行き、尊厳死の話など。

夜、シンガーのお勉強。 シンガーとベンタムの比較なんてのもやるべきだな。 QALYとか利益相反とか、これもベンタム的だ。 『ベンタムと現代生命倫理』というタイトルの本を書き、 「ベンタムはまだ越えられていない」という帯を付けるか。

(冗談です。関係者の方は怒らないでください)

真夜中

昨夜も行った某居酒屋で某氏らと飲む。 いろいろ議論したかったのだが、 たちの悪い酔っぱらいにからまれてしまい、 結局ほとんど何も話せず。 食事のおいしい居酒屋なのだが…。


10/Apr/2004 (Saturday/samedi/Sonnabend)

夕暮れ

お昼前に電話で起きる。昼食を買って大学へ。新聞を読み、ちょっと勉強。 昼下がりに某喫茶店に行ってさらに新聞を読む。 眠くなったのでいったん帰宅して昼寝。それからまた大学に来る。

WHOによると、 毎年交通事故で約120万人が世界中で死んでいるそうだ。 「1896年にロンドンで起きた最初の自動車による死亡事故において、 検死官は『これは決して繰り返されてはならない』と述べた。 それから2500万人が交通事故で死んだ」そうだ。

某氏に頼まれた翻訳の推敲を少ししたり、 インドカレーを食べに行ってロールズを少し読んだり。 〆切が近くないと集中して勉強する気にならないというのは、 ほんとに困ったものだ。

夜2

山岸俊男を少し。


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Mon May 31 02:16:33 JST 2004