12月中旬号 / 2003年1月上旬号 / 最新号

こだまの世界

2002年12月下旬号

若い、哲学の初心者にとっては、美しい女の子は釣り合いのとれぬ戦いである。 いわゆる陶製の壷と岩塊とは釣り合わない

---エピクテートス


主な話題


21/Dec/2002 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中

今日は嵐山に行く予定だったが、雨だったので断念。 四条で買物をする。香港人はデジカメなどを購入していた。

昼下がり、京都駅のそばで開かれていた某研究会に遅れて出席。 税金の話を聞く。「どうやって取るのか」という話ではなく、 「そもそもなぜ取るのか」という話。利益説、保険説、 義務説というのがあるそうだ。

車を運転する気なら
道路に課税するさ
腰を下ろすつもりなら
椅子に課税するさ
寒くなってきたら
暖房に課税するさ
散歩するつもりなら
足に課税するさ

---Taxman by the Beatles

夜、香港人と一緒に食事をする予定だったが、気分が悪いというので中止になる。 というわけで買物をしたあと、下宿に戻っていろいろ作業。


22/Dec/2002 (Sunday/dimanche/Sonntag)

早朝に起きて、香港人のいるホテルへ。彼女が(いつもどおり)遅刻してきたので、 急いで地下鉄に乗ってJR京都駅へ。と思ったら、 自分でもあきれるが、国際会館行きに乗ってしまい、北大路まで行ってしまう。 絶望してJR京都駅に着くと、ぎりぎり予定通りの新快速に乗ることができた。 好運だ。しかし、階段を駆け上ったり駆け下りたりしたため、 二人ともノドが痛くて、 大阪に着くまで病人のように咳をしていた。 結局、無事に関空に着くことができ、彼女は香港に戻っていった。 忙しい10日間だった。

昼から京都駅のあたりでやっている研究会に参加。 日本もグレゴリー・ペンスの著作のような医療の現代史が必要だという話と、 優生保護法とGHQの関係についての話。二つ目がとくにおもしろかったが、 寝不足と風邪のせいでフラフラになり、 発表が終わった時点で早引けさせてもらう。 忘年会も行きたかったのだが。

下宿のそばのイタリアンレストランで一人で食事をし、 帰宅。寝よう。

そういえば、昨日の産経抄(12月21日朝刊)に、 北朝鮮について次のような比喩がなされていた。

道にひっくり返って大声でわめいている子供がいる。 あれが欲しい、これが欲しいとダダをこねている悪ガキに、 甘やかしのアメを与えるのか。それともごつんと頭をたたいて厳しいしつけを するのか。韓国はアメをしゃぶらせようとしている。 率直にいって賛成しかねると申し上げたい。

秀逸な比喩だが、「ごつんと頭をたたいて厳しいしつけをする」 の正確な意味を考えなければならないだろう。 悪ガキの場合は頭を叩いてもまず死にはしないが、 北朝鮮の場合、 食糧援助や経済援助を差し控えれば数百万の市民が飢餓に苦しむ可能性がある。

机に向かっている時間…5.5hr
今日の勉強時間…4.0hr
マルクス係数…0


23/Dec/2002 (Monday/lundi/Montag)

真夜中 (午前)

すこし寝る。起きてからカントの勉強。 目的の国における元首(主権者)と成員の区別について。以下メモ。

ところで一理性的存在者が目的の国において、 普遍的に立法するものでありながら、 彼自身それらの法則に服従してもいる場合、 その理性的存在者は目的の国に、 成員として所属する。 それが立法者でありしかもどの他の存在者の意志にも服従していない場合、 それは目的の国に元首として所属する。

野田又夫訳「人倫の形而上学の基礎付け」(『世界の名著カント』、279頁)

上の文の解釈で、 「われわれは成員であって元首でない」という理解があるようだが、 それは元首という訳が悪いからで(「元首は一人」という含意がある)、 英訳のようにsovereign(主権者)と訳せば 「われわれはみな一般市民であると同時に主権者でもある」 ということだ。 この区別の要点は、 われわれは(自己立法をしつつも)法に従うという意味では 一般市民であるが、 その法が自己立法であるがゆえに他人の意志に従うわけではない という意味では主権者である、というところにあるように思える。 「われわれは法に従うが他人の意志には従わない」 というのが理想的な(そしてルソー的な)民主国家なのだ。 ルソーについては『社会契約論』第一部第六章を参照のこと。

お昼

起きる。洗濯、新聞。

お昼すぎ

今日の産経朝刊の正論はすごい(中村勝範「国民的教育改革運動をおこそう」)。 あまりに印象的なフレーズが続くので、抜き書き的に引用しておく。

ラッセルがカントを評して「彼はヒュームを読んで独断のまどろみから目覚めたが、 睡眠薬を作ってまもなくまた眠りについてしまった」 というようなことを述べていたが、 この「痴呆症者は自分の痴呆に気づかないように」という枕詞も痛烈だ。 こういうことを言われないように気をつけよう。

ちょっと寝た。マルクスの勉強。

The Clashのボーカル、ジョー・ストラマーが心臓発作で死んだそうだ (BBC News)。 享年50才。合掌。

そういえば、今日はなぜか郵便物が届いていた。郵便局は心を入れかえて 祝日にも配達するようになったのだろうか (いや、たぶん以前から祝日にも配達していたのだろう)。

その郵便物の中に、半分使ったテレフォンカードだけの入った封筒があった。 謎のプレゼントにしばらく悩んだあと、某香港人が使い残したカードを 関空から送ってくれたのだという結論に達した。感謝。 けど、せめて一言書いてくれよ。

机に向かっている時間…5.0hr
今日の勉強時間…3.5hr
マルクス係数…0


24/Dec/2002 (Tuesday/mardi/Dienstag)

真夜中 (午前)

クリスマスイブ。 クリスマスイブにマルクスを教えるというのはなんというか。 某大学は今週末まで授業があるそうだ。冬休みは一週間。無茶だ。

インドネシアは厳戒態勢でクリスマスを迎えるようだが、 今日ぐらいはテロのない一日であることを望む。

日記の整理

真夜中2 (午前)

朝日のハッピーシングル宣言!のエッセイがおもしろいので、 つい全部読んでしまった。 この年頃の女性は実存的な選択を迫られていて大変だよなー。

真夜中3 (午前)

マルクスのお勉強。 資本主義でも共産主義でも教師は労働の産物は手にしないと思うのだが、 やはり疎外されてるのかな。あ、だから団結して日狂組を作ってるわけか。 目的は労働の産物たる学生の共有? アブないなあ。

起きる。マルクスマルクス。

今日は余裕で某大学に行くはずだったが、 いつもどおりぎりぎりになってしまい、 結局タクシーを使ってしまった。う〜ん。

授業はマルクス。クリスマルクス。 疎外とかイデオロギーとか使いなれない言葉をしゃべったので、 舌がもつれてしまった。というか、 さいきん朗読しようとすると舌がもつれることがよくあるのだが、 何かの病気の徴候だろうか、 それとも滑舌の修業が足りないだけだろうか。

バスに乗って戻ってくる。途中、にしんそばを食べる。 よく考えたら朝にコーンスープ、 昼下がりに柿を一つ食べただけだった。

ようやく今年の授業は終わり。論文を書こう。 あ、年賀状も書かねば。

デリーに地下鉄が走り出したそうだ。 この記事にあるバスの姿がすごい。みんな屋根の上に乗っている。

夜2

う〜ん、つかれて何をする気にもならない…。本でも整理するか。

真夜中

海親子丼。

なんか、「談合の倫理学」というテーマで論文を書かないといけなくなりそうだ。 何を書けばいいんだろう。困った。「万国の労働者よ、談合せよっ」って?

朝日新聞朝刊によると、自宅で使える人工透析装置が開発されたそうだ。 小型の冷蔵庫大とのこと。現在、人工透析を必要とする人は国内で約21万人で、 透析にかかる費用は国民医療費の約30分の1で、約1兆円。 週に何回も病院に通うのは大変だから、もっと研究に投資して、 安価で容易に使える透析器の開発をするべきだろう。

真夜中2

談合三兄弟。

…つかれている。寝よう。

机に向かっている時間…9.75hr
今日の勉強時間…8.75hr
マルクス係数…0


25/Dec/2002 (Wednesday/mercredi/Mittwoch)

お昼すぎ

(クリスマスイブだったけど)よく寝た。 シャワー。

人生をチャプター(章)で表すと、 いま第何章ぐらいだろうと考えたり。 そろそろ自伝でも書くか(ウソ)。

さ、新聞読んだら勉強しよう。

う、ストーンズの東京コンサートのチケットは先週末から販売されていたのか。 まあ小人が動くのを見るのに13000円も出すのもなんだし、いいんだけど…。

夕方

もう夕方。某所でパスタを食べながら新聞を読んだあと、 本屋で雑誌を立ち読み。買物をしてから帰宅すると、 もう夕刊が届いている…。

新聞記事にあった「至上命題」という言葉が気になったので、 ちょっとネットで調べてみると、誤用と書いているページがいくつか出てきた(下記)。 やはり「至上命令」の方が正しいだろう。もちろん、 「正しい使用法とはなにか」という議論になるかもしれないが。

夕方2

夕刊を読んでいると、新聞の集金に来る。

厚生省は喫煙率を下げたいようだが、 財務省は「税収の観点から」喫煙率の引き下げには反対のようだ。 邪悪だな。

年賀状を買うのを忘れた。ローソンにまだ売ってるかな。

部屋も片付けないと。う〜。

夜2

とりあえず部屋の片付け。読んでない本が山ほどあるので、 これも片付けないといけない。たいへんだ。

うどん。ダシしかなかったので、しょうゆとみりんで味つけ。薄い。

机に向かっている時間…2.0hr
今日の勉強時間…1.0hr
マルクス係数…0


26/Dec/2002 (Thursday/jeudi/Donnerstag)

真夜中 (午前)

ちょっと文献検索。 国会図書館のOPACは雑誌記事が網羅的に調べられてすばらしい。 もっとちゃんと文献は検索しないとな。

お昼前

早起きするつもりが。

うちのゴミもついにカラスにやられた。こないだ食べた柿の皮が向かいの家の 塀の上にちょこんと乗っている。う〜ん。後片付けしていたら、 ちょうどゴミ回収車が来る。なんとかしないとなあ。

国立国語研究所が外来語の言い換えを提案しているそうだが、 インフォームドコンセントは「納得診療」だそうだ。 患者の立場からすればこの翻訳がわかりやすいと説明されているが、 どうも気になるのはconsentの部分を表に出さずに、 診療という言葉でごまかしているような感じを受けることだ。 この「ナットクシンリョー」という軽い響きもかなわん。 まあ慣れたら平気なのかもしれないけど。

あれ、もう附属図書館は閉まってるのか。 ルネは明日までのようだ。 どっちも次に開くのは6日。

机に向かっている時間…4.5hr
今日の勉強時間…3.5hr
マルクス係数…0


27/Dec/2002 (Friday/vendredi/Freitag)

真夜中 (午前)

昨日は昼下がりから某メタ倫理学勉強会。スタージョン。以下メモ。 ハーマンによれば、 ある人が下した道徳判断を説明するさいに必要なのは自然的事実と 当人の道徳的な感受性だけであり、 そのさいに道徳的事実を持ち出すことは「完全に無関係だ」とされるが、 スタージョンは「完全に無関係ならば、 道徳的事実が真でも偽でも判断は左右されないはずだが、 実際にはそんなことはない。だから完全に無関係とは言えない」と論じている。 いつものことながら修業不足。

それから忘年会。

真夜中2 (午前)

新聞。

う〜、腹が減った。死ぬ。寝よう。

お昼前

朝遅くに起きていろいろ下準備。今日は忙しい。

アマゾンから。

みぞれ気味の雨。いろいろ仕事を片付ける。

ようやく帰宅。どっとつかれた。

しまった、一枚年賀状、裏だけ書いて住所を書いてないのを出したようだ。 ばかっ。

地震怖いなあ。バイオレンス・ジャックみたいになるんだろうか。やだなあ。

北朝鮮では600万人が飢饉の危機。人口が約2400万人だとすると、 4人に1人が飢餓に苦しむことになる。

夜2

ついアマゾンの戦略に乗せられて、いくつかCDを注文してしまう。 北朝鮮では飢餓と寒さに苦しむ人がいるというのに。

勉強しよう。

新興宗教団体「ラエリアン・ムーヴメント」のフランス人科学者が、 昨日26日に初のクローン人間の誕生を確認したそうだ。 ほんとかどうかわからないが。

机に向かっている時間…5.5hr
今日の勉強時間…1.5hr
マルクス係数…0


28/Dec/2002 (Saturday/samedi/Sonnabend)

真夜中 (午前)

ひさしぶりにベンタム(とミル)の勉強。おもしろい。 公共の福祉と個人の自由および権利の関係について、 もっともっと深く考えなくてはならない。

真夜中2 (午前)

ルソーを読んだり。

真夜中

朝起きて、某論文草稿を読み、お昼に某氏と相談。 自転車がパンクしていたので走っていったが、 かなり遅刻(下宿を出る前にすでに遅刻していた)。すいません。 すぐに太ももが筋肉痛になる。

そのあと、ちょっとJR京都駅に人を迎えに行ったあと、 夜は某所でミニ忘年会。楽しく飲み食いした。

机に向かっている時間…6.45hr
今日の勉強時間…5.75hr
マルクス係数…0


29/Dec/2002 (Sunday/dimanche/Sonntag)

比較的早起き。

机に向かっている時間…2.0hr
今日の勉強時間…2.0hr
マルクス係数…0


31/Dec/2002 (Tuesday/mardi/Dienstag)

お昼前

今年の疲れを癒やすため、 ちょっと城崎に行ってきた。 芋を洗うがごとく混雑した温泉に入り、 もう当分カニは見たくないというほどカニを食べ、 城崎マリンワールドでトドやセイウチの姿に癒やされ、 昨日の夕方に帰ってきた。それから朝まで爆睡。

大晦日。電話代を払う。洗濯。

夕方までさらに寝てしまう。シャワーを浴びたあと、 パンクを直してもらうために自転車を押して自転車屋へ。 しかし、三軒回ってもどこも閉店で、 大晦日までパンクを放っておいたことを激しく後悔する。 が、ようやく四軒目にしてやっている自転車屋を見つけ、 なんとか修理をすることができた。

銀行に寄り、米などの買物をしてから帰宅。 新聞。自分は「進歩的知識人」なのかどうか。

進歩的知識人
愛国心がなく、「ジェンダーフリー」を説き、 去年まで拉致問題は存在しないと主張しており、 GHQ主導の戦後教育には特に問題はなかったと考えており、 産経も正論も読んでいない、メディアで跳梁跋扈する人種。 保守主義者が用いる蔑視語。左翼文化人とも。

一年を振り返る

今年の抱負の評価

  1. 議論をすること…まったくダメ。
  2. 愚問をすること…まだまだ努力が足りない。
  3. 平明に書くこと…それなりに努力はした。
  4. 新聞を読むこと…Guardian Weekly、ネット、雑誌、産経など。Well done.
  5. 逃避しないこと…けっこうしてしまった。努力が足りない。

来年の抱負(原案)

  1. D論を書くこと
  2. 議論すること
  3. 逃避しないこと
  4. 知らないことは知らないと言うこと
  5. むやみにタクシーに乗らないこと

今年の研究成果…業績のページを参照。

○外国には行かなかったが、東京や広島や愛媛などの学会・研究会に出席した。 某投稿論文も無事採用された。某奨学金もなぜか合格した。 非常勤もなんとかやっている。

×D論が進んでいない。後半は研究会の量が減った。人間的成長が見られない。 日記に笑いがない。

総合評価: 研究においても人生においてももっと修業を積むこと。 「他の或る者は自分の田地をより立派にした時に悦び、 また他の或る者は馬をより善くした時に悦ぶように、 私は毎日私自身がより善くなるのがわかる時に悦ぶ」(ソクラテス)。

死んだ人…ノージック(01/23)、ヘア(02/17)、ロールズ(11/24)、 ジョン・エントウィッスル(06/27)、ジョー・ストラマー(12/22)。合掌。

机に向かっている時間…0hr
今日の勉強時間…0hr
マルクス係数…0


何か一言

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KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Sun Jan 12 01:15:03 JST 2003