ホームページの閉鎖のお知らせ〜ケトン食の普及活動を振り返って〜

 ケトン食普及会とは、千葉県松戸市に所在する松戸クリニックの丸山博院長が理事長として運営する特別非営利活動(NPO)法人小児慢性疾患療育会の「一分会」として、平成20年(2008年)に発足し、主に、難治性てんかん患者向けに実施されるケトン食等の食事療法について、複数の抗てんかん剤の併用でもてんかん発作をコントロールできず、将来への夢を見失いかけている患者さんやそのご家族に対して知ってもらうための普及活動を行ってきました。
 当会の活動は、大きく「体験談の説明会」、「冊子の無料配布」、「ケトン食の本発行のお手伝い」、「国際シンポジウムの紹介」、「他の団体のお手伝い」、「新しい食材の紹介」等に分かれます。

 「体験談の説明会」とは、3年半にわたるケトン食の体験談である「我が家のケトン食メニュー」を使い、家族目線で、ケトン食とはどのような食事療法か、ケトン食のやり方、ケトン食の効果等について約1時間で説明するもので、ケトン食の実施に前向きな病院や患者さんからのリクエストで実施していました。主な説明会は以下のとおりです。
これは静岡てんかんセンターでの説明会の様子です。ほかにも多くの病院で説明会をさせて頂きました。 これは松戸クリニックでの調理実習の様子です。ケトンフォーミュラを小麦粉の代替品として使い、クッキー等の作り方を実践しました。 これは特別支援学校等で働く先生や栄養士への説明会です。神戸市内の学校には2年連続で行かせていただきました。
「冊子の無料配布」とは、当会の発足前に姫路市総合福祉通園センターの岡崎由有香管理栄養士が作ってくださった冊子「はじめてのケトン食」を無料配布する活動です。
脂っこい、美味しくないとのケトン食のネガティブなイメージを払拭してもらうため、また、ケトン食の具体的なイメージを持って頂くための冊子です。
この冊子では、ケトンフォーミュラを小麦粉の代わりに使い、クッキー、パンケーキ等を作る方法を具体的に紹介しています。

一方で、ケトンフォーミュラの紹介文において不適切な表現があったとのご指摘が製造元の竃セ治からあり、暫くは不適切な表現を黒塗りしていましたが、この度、増刷することを断念し、無料配布活動を止めることとなりました。
「ケトン食の本発行のお手伝い」とは、1973年に発行され、第2版までで絶版となっていた「小児のけいれん治療のためのケトン食の手引き」について、当会が「ケトン食療法を体験して」、「ケトン食の学校給食への応用」、「ケトン食に関するQ&A」の執筆を担当するとともに、出版社である第一出版との調整を行い、2009年11月30日に「ケトン食の本〜奇跡の食事療法〜」として生まれ変わり、第2版まで増刷しています。、
「国際シンポジウムの紹介」とは、当会が2009年に修正アトキンス食について勉強するために訪問したアメリカ所在のJohns Hopkins Hospitalや、帰国途上でロサンゼルスでお会いしたMr. Jim Abrahamから教えていただいた、2年毎に開催される「ケトン食等の食事療法についての国際シンポジウム」についてホームページを通じて紹介させていただいたことです。

今年は、韓国・チェジュで、10/4〜10/9に開催されます。
2010年にイギリスのエジンバラで開催された第2回国際シンポジウムの様子です。世界各国からケトン食等の食事療法に取り組む著名な医師と直接お話できる貴重な機会でした。 2012年にアメリカ・シカゴで開催された第3回国際シンポジウムの様子です。この時はJohns Hopkins Hospitalで長年ケトン食を実施してこられたDr. John Freeman先生(故人)にお会いすることができました。 2014年にイギリス・リバプールで開催された第4回国際シンポジウムの様子です。開催に先立ち、世界各国でケトン食等の食事療法に取り組む栄養士の集いがありました。
「他の団体のお手伝い」とは、主にケトン食等の食事療法を唯一の治療法としているGLUT1欠損症の家族会である「GLUT1異常症患者会」の支援活動です。第1回総会からお手伝いさせていただいており、今年は10周年だそうです。
また、てんかん学会がケトン食等の食事療法を取り上げてくださった際には、ブースを開設させていただきました。
「新しい食材の紹介」とは、ケトン食等の食事療法が「高脂質、低タンパク質、低糖質」であるために使用できる食材が限られてきます。ご飯、麺類、パン等の高糖質食は食べられません。一方で、エネルギー量の多くを脂質から摂取するために多くの脂質を摂取しなくてはなりません。
日本においては、竃セ治が製造するケトンフォーミュラ(右写真)を使うこととなるのですが、難治性てんかん患者向けは「登録外特殊ミルク」扱いとなり、乳業メーカーの善意に頼ることとなっています。
当会では、ケトンフォーミュラを効率的に使用する方法として「ケトンクッキー等の調理方法」をご紹介するとともに、低糖質な新しい食材の開拓・紹介に取り組んできています。
2010年の第2回国際シンポジウムで韓国ナムヤン社が展示していたケトニアを求めて、2011年に韓国を訪れ、翌年に日本国内で「GLUT1異常症患者会」へ紹介しました。 兵庫県加古川市に所在する崇高クリニック・アスター薬局が販売する断糖食用の食材やその調理法を実践する料理教室の様子を紹介しました。 2014年の第4回国際シンポジウムで日本の日清オイリオが展示していた中鎖脂肪酸を使った食材を紹介しました。

 このように当会では、2008年以来、約10年間にわたって、コツコツとケトン食等の食事療法の普及活動を行ってきましたが、ここ数年に2つの大きな動きがありました。
 一つ目は、平成28年(2016年)4月1日から、難治性てんかん患者等向けに実施されるケトン食等の食事療法が特別食である「てんかん食」となったことです。このことで、当会が普及活動をしなくても、「てんかん食」としてのケトン食等の食事療法の認知度がてんかん専門医や管理栄養士の間で上がり、難治性てんかん患者の治療の選択肢が増えることとなりました。
 二つ目は、平成27年(2015年)12月13日に東京で「第2回治療用ミルク安定供給のためのワークショップ」が開催され、特殊ミルクの課題と現状が議論され始めたことです。つまり、ケトン食等の食事療法で使用されるケトンフォーミュラについて、現状の「登録外特殊ミルク」として安定供給を続けること、ケトンフォーミュラを乳業メーカーの善意のみではなく安定して供給していく仕組み作りが今も検討されていることです。このような検討には、患者の立場を代表できる患者会である日本てんかん協会は参加できますが、患者会でもない当会は参加することはできず、このような立場でケトン食等の食事療法を普及することは「無責任である」との指摘がある乳業メーカーからありました。

 このような大きな2つの動きを踏まえて、当会では、暫くケトン食等の食事療法の普及活動を休止するとともに、ホームページを閉鎖することとします。
 これまで、このホームページを見てくださった方々には、アクセス数という数字で大変支援して頂きました。この場をお借りして、御礼申し上げます。本当に長い間ありがとうございました。

ケトン食普及会