INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON DIETARY TREATMENTS
FOR EPILEPSY AND OTHER NEUROLOGICAL DISORDERS
(難治性てんかん等の食事療法についての国際シンポジウム)

 ケトン食やアトキンス変法をはじめとする難治性てんかん、GLUT-1異常症等の治療のための食事療法について、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国等世界各国でこれらの食事療法に取り組んでいる医師、栄養士、患者会などが一同に会して、情報交換や意見交換を行う国際シンポジウムが、2010年10月5日〜10月8日にイギリス・エジンバラのシェラトンホテルで開催されました。(下に事前にインターネットで配布されたパンフレットの表紙を添付しています。

 このような国際シンポジウムは、過去、2008年にアメリカ・フェニックスで開催されましたが、今回が第2回目であり、イギリスでケトン食等食事療法の普及活動に取り組んでいる「Mattews Friends」と、アメリカで同様の活動をしている「Charlie Foundation」等の後援で開催されました。
 このシンポジウムでは、難治性てんかんやGLUT-1異常症などの代謝異常症の治療として最近注目を集めているケトン食をはじめとする食事療法について、基礎科学や臨床分野からこれらの食事療法のメカニズムや効果等が話し合われ、最新の医療情報を知るための貴重な機会だったと思います。
 私の体験記は、日本てんかん協会の機関誌「波」2011年1月号に「フリートーク」として寄稿していますので、ご一読ください。
 また、私が見てきたものをここに少しご紹介したいと思います。

2010年10月5日(火)午後 
 レセプション
2010年10月5日(火)午後
 会場の雰囲気
2010年10月6日(水)午前
 基礎科学からケトン食の考察
 
 国際シンポジウムが開催された「シェラトン・ホテル」です。
この日は、世界各地域の代表者がケトン食等の食事療法への取組み状況の報告をしました。
 驚いたのは、アフリカ大陸以外には、ケトン食をチーム医療として実施するセンターが存在するということです。日本にはこのようなセンターがあるのでしょうか?
 アジアからは、韓国とインドの代表者が発表を行いました。
 韓国では、年間約300事例の食事療法の実施実績があるとのことでした。
 インドでは、24時間対応可能なケトン食専門のチームがあるそうです。また、南アジアでの指導的立場にあり、マレーシアからの医師の受入れを行っているそうです。
 
 「シェラトン・ホテル」内の会場入り口です。
 「Mattews Friends」のポスター等が展示されています。
 
 基礎科学の専門医が、ケトン食等の食事療法により産生されるケトン体が人間のエネルギー代謝にどのような影響を与え、てんかん発作を抑制していくのか等を基礎科学の観点から講義を行い、最後にパネルディスカッションが行われました。

2010年10月6日(水)午後
 臨床分野からケトン食の考察
2010年10月6日(水)午後
 休憩時間での一コマ
2010年10月6日(水)夜
 ポスターセッション
 
 実際にケトン食等の食事療法を実施している病院の栄養士、医師が

・食事療法の導入に絶食は必要か
・食事療法の実施期間の決定は
・栄養補助の必要性
・ケトン食と副作用
・ケトン食に代わる食事療法

について講演を行い、最後にパネルディスカッションが行われました。
 
 アメリカで販売されている、ケトン食用のフォーミュラの一つ「KetoCal」の新製品である液体状のフォーミュラの販売促進活動をしていました。
 「KetoCal」は、専属シェフを派遣して、粉状のフォーミュラを使ったピザ、カレー等のレシピ紹介もしていました。
 このほかにも、韓国で販売されている、液体状のフォーミュラ「KETONIA」の販売促進活動も行われていました。
 
 各国で取り組まれているケトン食等の食事療法についての研究報告が「ポスターセッション」の中で行われました。
 日本からも静岡てんかん・神経医療センターから今井先生、滋賀県立小児保健医療センターから熊田先生が参加されていました。

2010年10月7日(木)午前
 ケトン食が脳神経細胞保護や代謝異常症にもたらす効果
2010年10月7日(木)午後
 ディベート
2010年10月7日(木)午後
 腫瘍学とケトン食
 
 ケトン食等の食事療法が脳細胞を保護する仕組み、睡眠を改善する(REM睡眠の増加等)仕組み、代謝異常症への治療効果、カロリー制限との組み合わせによる効果の増大、ミトコンドリアにおける代謝への影響などについて発表が行われ、続いてパネルディスカッションが行われました。

・「ケトン食は抗てんかん剤に比べてより経済的か」
・「修正アトキンスなどの代替食事療法がケトン食の前に最初の選択肢として試みられるべきか」
という2議題について、ディベートが行われました。
 ケトン食を扱った国際シンポジウムですから、ケトン食の方が経済的という肯定派が勝利するのは予想できましたが、楽しい議論でした。
 
 癌治療としてのケトン食の効果について、専門医から講義がありました。
 癌は細胞が突然変異することで代謝異常になった病気であり、ケトン体をエネルギーとして活用できないので、ケトン食による治療効果があるとの発表がありました。
 腫瘍を小さくして外科的手術を行ったり、放射線治療を行うなどケトン食との組み合わせに期待があるようです。

2010年10月8日(金)午前
 ケトン食の今後(親からの視点)
2010年10月8日(金)午前
 Cason's Story (成功体験談)
2010年10月8日(金)午後
 ケトン食の効果、各国の臨床症例の紹介
 
 ケトン食の認知度を上げ、普及率を向上させるためには、
・政治的なロビー活動
・メディアの力の活用
・保険適用できるように保険会社への働きかけ
・国際的なネットワークの構築
・国際シンポジウムの継続的な開催
等が必要であるとの発表がありました。
 
 生後5ヶ月で点頭てんかんを発症した女の子の最初の治療法としてケトン食が試みられ、8ヵ月の治療で何の後遺症もなく完治した体験談が紹介されました。
 ご両親は、難治性てんかんの治療法として、ケトン食も最初の選択肢に加えられるベきとの主張をされていました。
 
 ケトン食等の食事療法による効果があった臨床症例の発表があり、ケトン食の効果や実施上での参考事項が話し合われた。


 また、国際シンポジウムに続いて、2010年10月9日(土)に行われた、ケトン食等の食事療法を行う親のための講演会が行われました。
少しご紹介します。

2010年10月9日(土)午前 チャーリー財団
 ジム・アブラハム氏からのメッセージ
2010年10月9日(土)午前
 GLUT-1異常症の特別講義
2010年10月9日(土)午後
 世界各国におけるケトン食等の食事療法への取組み
 
 今回の国際シンポジウムに参加できなかった、チャーリー財団のジム・アブラハム氏からのビデオメッセージが紹介されました。
 
 ドイツでGLUT-1異常症の治療としてケトン食等の食事療法を行っている専門医であるDr. Joerg Klepperから特別講義がありました。
 GLUT-1異常症の子供を持つ両親からは、切実な質問が多くされましたが、Dr. Klepperは専門的な知識を使い、丁寧に質問に答えていました。
 Dr. Klepperは、「親の会」の重要性を力説されていました。
 
 世界各国でのケトン食等の食事療法への取組み状況が専門医から説明がありました。
 アメリカ・ボルチモアにあるJohns Hopkins 病院のケトン食等の食事療法の専門医であるDr. Eric Kossoffは、日本での取組みについても説明され、日本で使われているケトンフォーミュラについても紹介されました。(写真右上端)