オーケストラの配置、楽器についてはすでに述べたが、ではオーケストラの人数構成はどうであろうか。ではまず一番小さい編成から見ていこう。
弦楽オーケストラ
その名の通り弦楽器だけのオーケストラ。モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークやチャイコフスキーの弦楽セレナーデはその代表曲。それぞれのパートが2人ずつという小編成のものから第1ヴァイオリンが14人くらいの大編成のものまでいろいろある。但し、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジークやディヴェルティメント(K.136〜138)はコントラバスなしやそれぞれのパートが一人ずつでも出来るので合宿ネタにはよいかもしれない。逆に弦楽四重奏曲を弦楽オーケストラでやるのも面白いかもしれない。
チャンバー・オーケストラ
和訳は室内管弦楽団。いわゆる古典派前期(ハイドン、モーツァルトの初期)の時代に盛んであった編成。オーボエ2本、ホルン2本、弦楽器の編成が多い。弦楽器の数は6-6-4-2-1(第1ヴァイオリン−第2ヴァイオリン−ヴィオラ−チェロ−コントラバス)から8-8-6-4-2くらいが標準。時にファゴットやトランペット、フルートも加わる。バロックオーケストラとも呼ばれる。また現代でもこの編成を好む傾向がある。
最近はやっているのは古楽器演奏で大体この編成か2管のオーケストラでやっている。主なものはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンを始め、シューベルトやメンデルスゾーン、ベルリオーズなどで、昔の楽器あるいは復元した楽器を使っている。フルートも木製で金管はナチュラルと呼ばれるピストンなしのものを使っている。ピッチも低く今の半音近く低いところさえある。正直な話、ベートーヴェンの変ホ長調のエロイカ交響曲が半音低いニ長調に聞こえてしまうほどだ。こうした演奏はホグウッド/エンシェント室内管弦楽団やブリュッヘン/18世紀オーケストラで聴くことができる。
オーケストラ
いわゆる2管編成で、オーケストラというと大体この編成を指す。フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽器から成る。時にコントラファゴットやピッコロを加えることもある。弦楽器は大体12-10-8-6-4くらい。ベートーヴェンで確立され、シューベルト、メンデルスゾーン、シューマンなどのロマン派前期に受け継がれた。近代でもプロコフィエフの古典交響曲といって、わざとこの編成で書いた曲もある。ブルックナーやブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザークも基本的にはこの編成で書かれているが、効果をねらうために弦楽器を増やすこともよくある。
フルオーケストラ
ピッコロ、4本のフルート、4本のオーボエ、イングリッシュホルン、4本のクラリネット、バスクラリネット、4本のファゴット、コントラファゴット、6本以上のホルン、4本のトランペット、3本のトロンボーン、チューバ、多数の打楽器、弦楽器は14-12-10-8-6以上という4管の大編成が主流。ワーグナー、マーラー、R.シュトラウスなど後期ロマン派に数多く見られる。
時には木管楽器を3本ずつに減らすこともあり、3管編成と呼ばれる。
また、近年は打楽器が数多く使われており特殊な管楽器も使われたりする。例えば打楽器ではティンパニ、大太鼓、シンバル、トライアングルに加え、グロッケンシュピール、チェレスタ、シロフォン、タンバリンなど、またオルガン、ハープを始め鍵盤楽器、ワーグナーではワーグナーチューバというホルンの一種、マーラーの交響曲ではマンドリン、ギターやカウベル、ハンマーまでが使われる。また、管楽オーケストラも一般的ではないが存在する。管楽オーケストラとブラスバンドはよく混同されるが、両者の境ははっきりしない。但し、管楽オーケストラはオーケストラに分類しない説もある。
オーケストラはクラシックやポップスまで幅広く活躍している。ここではオーケストラが使われているクラシックの代表的な曲を紹介したいと思う。
交響曲
オーケストラを語る上でまず語らなければならないのはこの交響曲である。クラシックの作曲家達はこの交響曲を最終目標に作曲をしていた、と言っても過言ではない。ハイドンが交響曲の形式を完成し、それ以来現在までそれが続いている。代表的な交響曲作曲家にハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、ブルックナー、マーラーがいる。
交響曲や後述の協奏曲は第1楽章がソナタ形式という形式を基本にしている。これは2つの主題を展開していく、というものだ。このような曲の総称をソナタと呼び、他に器楽ソナタや弦楽四重奏などがある。交響曲は基本的に4つの楽章から成り、第1・2楽章がソナタ形式、第3楽章がメヌエット、又はスケルツォ、第4楽章がロンド、あるいはソナタ形式で第2楽章は緩徐楽章が基本である。
管弦楽曲
一口に管弦楽曲といってもいろいろある。セレナーデ、ディヴェルティメント、カッサシオン、組曲、交響詩、バレー組曲、序曲(前奏曲)、間奏曲など。映画音楽もこれに入れることがある。
ディヴェルティメントは6楽章くらいの室内的な器楽曲、セレナーデは元来歌曲で、8楽章くらいの室外的な器楽曲を指すが、交響曲と未分化の部分を残している。アイネ・クライネ・ナハトムジークやチャイコフスキー、ドヴォルザークの弦楽セレナーデが有名。序曲ではワーグナーの“ターンホイザー”や“ニュルンベルクのマイスタージンガー”、組曲ではビゼーの“カルメン”、“アルルの女”、バレーではチャイコフスキーの三大バレー組曲(白鳥の湖、胡桃割り人形、眠りの森の美女)などが有名。交響詩は形式もソナタ形式などにとらわれず自由であり、スメタナの“モルダウ”、リヒャルト・シュトラウスの“ツァラウストラはかく語りき”などが有名。
協奏曲
オーケストラのほかに独奏楽器を必要とする管弦楽曲。独奏楽器が複数の場合には協奏交響曲、あるいは二重協奏曲と呼ばれることもある。これはバロック時代からあったもので初めはヴァイオリン、チェンバロなどが独奏楽器であった。現在ではピアノやヴァイオリン、チェロが主流。まれにフルート、オーボエ、クラリネット、ホルン、ハープ、ヴィオラなども使われる。中間部に独奏者の自由に任されるカデンツァという部分がある。昔は演奏者が即興をするために設けられたが、最近は既にだれかが作曲したカデンツァを演奏する傾向にある。
基本的に3つの楽章から成り、第1・2楽章が協奏風ソナタ形式、第3楽章がロンド形式である。三大ピアノ協奏曲はベートーヴェンの第5番「皇帝」、チャイコフスキーの第1番、リストの第1番、三大ヴァイオリン協奏曲はベートーヴェン、メンデルスゾーン、チャイコフスキーといわれているが、ブラームスも有名。チェロではドヴォルザークが有名。
歌劇
いわゆるオペラのこと。初期ではオーケストラは歌手の伴奏をするだけのものであった。しかし、ワーグナーが楽劇を考案し、オペラは伴奏集団から歌手とともにドラマを築く集団となった。あまりにも長いので序曲(前奏曲)や間奏曲、あるいは組曲として単独に演奏されることも多い。モーツァルトの“フィガロの結婚”、“魔笛”、ビゼーの“カルメン”、プッチーニの“蝶々夫人”、ヴェルディの“アイーダ”などが有名。
その他
その他ポピュラー曲としてジョン・ウィリアムのスター・ウォーズ、E.T.、アンダーソンの“トランペット吹きの休日”などもある。特にアンダーソンはアンコール曲として最適の長さであるため、考慮に入れても良いと思う。