教官から

 

  この記録は、まだ医学の専門教育を受けていない一人の医学生が、一人の重症頭部外傷患者の歩みを、自分の足で調べて綴ったものである。将来、医師となった時に、患者さんを単に、医学的診療対象としてみなすのではなく、患者さんの立場から、物事が考えられる医師を養成したいというのが、医学教育に携わる我々の願いである。専門教育を受ける前に、医療を体験する試みは、早期臨床体験として行われつつあるが、現在は、医療の現場でボランティアとして活動したり、患者さんとお話をしたりして病棟で時間を過ごすことが一般的である。今回の試みは、このような従来の早期臨床体験とは異なり、一人の患者さんの経過を病院の外に出て、学生が調べた結果である。学生は大学病院の中では、病んだり、怪我をした患者さんのある時点のみを見ている。しかし、実際の患者さんの病気や怪我は、時間経過をもった一つの過程である。この試みにより、学生が患者さんの歩んできた時間を知ることができればと考えた。その内容については、医学的な内容はともかくとして、長年、医師として医療に携わっている我々にも、はっとすることが盛り込まれている。むしろ医師の目からは、うかがうことのできないエピソ−ドばかりである。課外活動として、一人でがんばった担当の学生に拍手したい。

  この記録の内容や、こうした試みについて、あるいはどのようなものでもけっこうですので、一般の方々の感想や意見をお待ちしています。

 

大阪大学医学部附属病院総合診療部
平出敦
hiraide@hp-gm.med.osaka-u.ac.jp

大阪大学医学部医学科2年次
(1998年12月当時)
飯塚徳重
nori-osk@umin.ac.jp

 

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