福島県立大野病院事件


事件の経緯:平成16年12月17日、当時29歳の経産婦が前置胎盤のため、帝王切開による出産となりました。出産時に執刀医である加藤医師が癒着胎盤を認めたために癒着剥離を試みましたが、大量出血を起こしたために子宮摘出を選択。しかし残念ながら、最終的には出血性ショックで母体死亡となってしまいました。なお、加藤医師は術前に出血に備えて保存血を5単位準備し、同時に患者さんに子宮摘出となる可能性を説明しましたが、患者さんは子宮温存を希望したと言われています。  
  平成17年3月22日、福島県立大野病院の医療事故調査委員会が執刀医に責任があるという報告書を公表しました(PDFファイル)。その後、福島県は遺族に謝罪し、加藤医師は懲戒処分(減給)となりました。  
  平成17年4月より福島県警が捜査を開始しました。カルテなどの証拠資料を押収し、任意の事情聴取が断続的に続きましたが、平成17年9月頃、事情聴取は終了。  平成18年2月18日、突然、福島県警が加藤医師を逮捕・拘留しました。容疑は業務上過失致死容疑と医師法第21条違反でした。
 平成18年3月10日、福島地検が福島地裁に、加藤医師を起訴しました。全国の医師や医師会等からの反発は大きく、3月17日には「周産期医療の崩壊をくい止める会」(代表 佐藤章 福島県立医科大学医学部産科学婦人科学教授)は、この事件に対して厚生労働大臣に陳述書を提出。翌18日には第164回国会における厚生労働委員会でも、この事件が取り上げられるという異例の事態となりました。平成19年1月26日に福島地裁(大沢広裁判長)で開かれ、現在も裁判中となっています。ちなみに、この裁判の進行状況については「周産期医療の崩壊をくい止める会」「ロハスメディカル」のHPで逐次情報提供されています。  この事件以降、訴訟リスクを嫌い、産婦人科を辞める医師が増えています。また、産婦人科医の不足は産婦人科の閉鎖を招き、平成18年8月8日に奈良県では分娩中に意識を失った妊婦を、19もの病院で受け入れができずに死亡してしまうという事件も起きています。このように福島県立大野病院事件をきっかけに産婦人科の医療崩壊は現実のものとなりつつあります。

参考資料

1)日本医師会HP「福島県立大野病院の医療事故問題について、I事件の経緯と日医の対応、福島県立大野病院の医療事故にかかわる産婦人科医師の逮捕・拘留事件について」(PDFファイル

2)周産期医療の崩壊をくい止める会
本事件の公判概要、傍聴記、メディア報道、関係団体の声明がまとまっています。

3)日本産科婦人科学会

4)日本産婦人科医会




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