アメリカ障害者法(Americans with Disabilities Act、ADA)Title Iでは、雇用主が障害に関連した質問を行う能力や、健康診断を要求する能力に3つの段階を規定している: 求人前、求人後、雇用期間中。 本出版物は、特に従業員が正当な環境整備提供を要請した場合の、雇用期間中の問診と健康診断の制限に関する情報を提供する。
従業員に対する障害に関連した質問と検診は、「業務に関連し、業務上の必要と一致」していなければならない 障害者法の執行を所管する連邦機関である雇用機会均等委員会(Equal Employment Opportunity Commission、EEOC)によれば、医学的質問や健康診断は、次に述べる場合に、業務に関連し、業務上の必要と一致する:
1.雇用主は、客観的な証拠に基づき、従業員の本質的業務機能を遂行する能力が病状によって障害されるという妥当な信念をもっている、または
2.雇用主は、客観的な証拠に基づき、従業員が病状のために直接的な脅威を与えるという妥当な信念をもっている、または
3.従業員が妥当な環境整備提供を要請しているが、従業員の障害や環境整備提供の必要が不明である、または明らかでない、または
4.警察や消防士など、一般の安全に影響を与える立場で要求される。
追加情報については、以下を参照のこと: 執行指針: アメリカ障害者法(ADA)に基づく従業員に対する障害に関連する質問と健康診断(http://www.eeoc.gov/policy/docs/guidance-inquiries.html)。
アメリカ障害者法は医学的質問の範囲を制限しているが、これには医学的情報を要求する書式は含まれない。 以下の頁では、環境整備提供の要請を受けて認められる医学的質問の範囲を議論し、従業員が妥当な環境整備提供を要請したときに、使用できる医学的質問のサンプルを提示する。
本出版物に含まれる情報は、指針としての使用を意図したもので、法的な助言ではないことを十分留意していただきたい。 法的助言が必要ならば、法務官庁に連絡されたい。 本出版物に含まれる情報の多くは、雇用機会均等委員会(EEOC)による指針から採用したものである。(http://www.eeoc.gov)。
更に情報が必要ならば、JANまでお電話ください(800-ADA-WORK)。 本出版物は米国労働省の政策声明を表すものではない。
環境整備提供要請を受けての医学的質問の範囲
医学的質問の書式サンプル
従業員が環境整備提供を要請し、かつ障害または環境整備提供の必要が明らかでないとき、雇用主は従業員がアメリカ障害者法のいう障害を負い、要請した環境整備提供を必要とすることを証明する医学的証拠文書を提出するよう従業員に要求することができる。
A.従業員が障害を負っているか否かを決定する。
アメリカ障害者法に基づいて障害と見なされる病状を列記した一覧表はない。 もし実質的に主な生活活動をひとつ以上制限する身体的または精神的機能障害があれば、その人は障害を負っていることになる。 したがって、特定の従業員が障害を負っているか否かを決定するために、雇用主は、従業員が障害を負っているか否か、またその障害が実質的に主な生活活動をひとつ以上制限するか否かを示す医学的証拠文書を要求することができる。
雇用主は、障害と制限に関する証拠文書が適切なヘルスケアやリハビリの専門家によって作成されたものであることを要求することができる。 適切な専門家とは、医師(精神科医を含む)、心理学者、看護師、理学療法士、作業療法士、言語療法士、社会復帰専門家、認可を受けたメンタルヘルス専門家を含むが、これに限定されるものではない。
従業員が障害を負っているか否かを決定する第1段階は、従業員が身体的または精神的機能障害を負っているかどうかを決定する作業である。 身体的機能障害とは、次に示す身体系の1ヶ所以上に影響を及ぼす生理学的障害、状態、美容を損なうもの、解剖学的喪失を意味する: 神経、筋骨格、特殊感覚器官、呼吸器(音声器官を含む)、心臓血管、生殖、消化、生殖器-泌尿器、血液とリンパ、皮膚、内分泌。 精神または心理学的障害は、知的障害、器質脳症候群、情緒障害、精神障害、特異学習障害などの状態を含む。
従業員が機能障害を負っているならば、次の段階はその機能障害がひとつ以上の主な生活活動で従業員を実質的に制限しているか否かを決定する作業である。 主な生活活動とは、自分の世話をする、手による課題を遂行する、歩く、見る、聞く、話す、息をする、学習する、働くといった諸機能を含む。 これは主な生活活動をすべて網羅したリストではない。 むしろ、主な生活活動といえる活動のタイプを表している。 実質的に制限するという用語は、一般的母集団の平均的な人が遂行できる主な生活活動を遂行することができない、または遂行することが著しく制限されることを意味する。
個人が主な生活活動を実質的に制限されているか否かを決定する際は、次に掲げる要素が検討されるべきである: 機能障害の特性と重大度; 機能障害の期間または予想される持続期間; 機能障害の実際の影響、予想される永久的影響、長期的影響。
ADAによる障害の定義に関するより詳しい情報については、次のサイトをご覧ください: 「用語-障害の定義」(EEOC指針): http://www.eeoc.gov/policy/docs/902cm.html
B.環境整備提供が必要であるか否かを決定する。
米国障害法に基づき、従業員はその障害のために環境整備提供が必要とされる場合のみ、環境整備提供を受ける資格を有する; 従業員がその他の理由で要求する環境整備提供については、雇用主が提供する義務はない。 したがって、雇用主は、要請された環境整備提供が従業員の障害ゆえに必要であるとことを示す医学的証拠文書を要求することができる。
より詳しい情報については、次のサイトをご覧ください: 「アメリカ障害者法に基づく合理的な環境整備提供と過度の困窮に関する施行指針」EEOC: http://www.eeoc.gov/policy/docs/accommodation.html#requesting
C.効果的な環境整備提供の選択肢を決定する。
もし従業員が障害を負い、その障害ゆえに環境整備提供を必要としているならば、雇用主は環境整備提供が過度の困窮を呈しない限り、妥当な環境整備を提供しなければならない。 一般的に、環境整備とは、職場環境または習慣的に物事が行われる方法における修正または調整であり、障害をもつ従業員が雇用機会の均等を享受することを可能にする。 修正または調整は、それが表面上妥当のように見え、実現可能である、又はもっともであることを意味するなら、「妥当である」。 妥当であることに加え、環境整備は個人のニーズを満たす上で「効果的」でなければならない。 従業員が仕事の必須機能を遂行できるようになったとき、あるいは障害のない従業員が享受する雇用の恩恵と特権に均等のアクセスを享受できるようになったとき、環境整備は効果的であるといえる。
多くの場合、妥当な環境整備は明確であり、困難もなく、費用もほとんど又は全くかからずに実行可能である。 頻繁に、障害のある個人は自分の生活や職務経験に基づき、簡単な変更や調整を提言することができる。 環境整備を検討する際は、雇用主は第1ステップとして、常に障害のある人と協議すべきである。 多くの場合、従業員は環境整備のアイデアを提供することができる。 しかしながら、従業員がどんな環境整備が適切であるか分からないときは、従業員の医師が有益な環境整備案を提案することができる。
環境整備提供のプロセスに関する詳しい情報については、次のサイトをご覧ください: 「職場環境整備の手順 (JobAccommodationProcess.html)」
従業員がアメリカ障害者法による障害の定義を満たしているか否かにかかわらず、雇用主は環境整備提供の問題に関する情報について、JANに問い合わせることができる。 JANのフリーコール800-ADA-WORK(V/TTY)、またはウエブサイト(http://www.jan.wvu.edu)をご利用ください。