序
21世紀に入って、企業は機能障害の問題により大きな注意を向けるようになり、多様な労働環境を実現
することの利点を認識するようになりました。
アメリカ障害者法 (ADA) やリハビリテーション法などの雇用関連の市民権法規が、職場での差別廃止や合理的な環境整備を必要条件として定めている一方、
多くの企業が、たとえ義務付けられていなくても、いろいろな能力を持った労働者に対して環境整備をすることの価値を知るようになりました。
環境整備によって、職場の全員に利益を与えることが可能です。
The Job Accommodation
Network (JAN) は、企業、機能障害患者、リハビリテーションの専門家、その他の人の、機能障害に対応した職場環境整備についての意識向上を支援
します。 特に、企業が環境整備についての知識を深めることで、機能障害患者の雇用や地位の改善を推進することができます。
環境整備は、大抵は、費用が安く実行も簡単です。
JANが収集したデータでは、機能障害患者のために環境整備をした企業は、収支面で実質上利益を得ているという結果を示しています。
報告書によると、環境整備全体の3分の2は費用が500ドル以下であり、調査対象企業の半分以上が5000ドルを超える効果を報告しています。
環境整備のプロセスには、機能障害患者にとって効果的な環境整備を選択するための、いくつものステッ
プがあります。 このプロセスは、個別対応を基本に管理しなければならないものです。 環境整備の最初のステップは、状況の把握です。
状況把握のためには、それぞれの患者、機能障害、必要な職務機能について、さまざまな問題点を考慮する必要があります。
たとえば、ある患者が香料の添加された製品にどのような反応を起こすのかということや、ある患者が内装の新しい職場では働くことができないということを知
るだけでは、効果的な環境整備は行えません。 患者の技能、能力、機能障害を把握して、情報をそれぞれの職務環境に応用することが必要です。
以下に化学物質敏症もしくは環境病患者への環境整備を決定する際に検討が必要だと思われる問題点について、基本的な情報を示します。
環境整備に関する問題点を解決するには、患者本人からの意見を得ることが、有効な環境整備結果を達成するための、もっとも基本的な事項です。
まったく同じ環境整備を必要とする患者は2人といないということと、機能障害をもつ患者すべてが環境整備を必要とするわけではないということに注意してお
くことは、非常に重要です。 以下は環境整備の例です。
この文書は教育目的に用いることのみを目的としており、状況は個別対応で評価しなければならないという大きな理由から、環境整備問題の最終的な解決方法で
あると見なすべきではありません。 ここに列挙されていない環境整備の例も、もちろんあるでしょう。
それぞれの環境整備例、機能障害患者に関わる法律、問い合わせ先などについての、より詳しい情報は、JAN ( (800) 526-7234) までお問い合わ
せください。
診断と医学的条件
化学物質複合刺激反応 (MCS) や環境病 (EI) は、診断が困難です。 Archives of
Environmental
Healthが発行した出版物 (Nethercottらの研究) によると、専門家の間で一致した意見として、化学物質複合刺激反応の診断には、以下の条件
を満たすことが必要であるということです。:
1. 化学物質に晒されると症状が何度も再現されること。
2. 症状が慢性的であること。
3. 低レベルの従来の、あるいは一般的な許容量よりも少量の曝露で症状があらわれる。
4. 刺激物を取り除くと、症状が緩和もしくは解消する。
5. 無関連名複数の薬品から症状が起こる。
6. (1999年に追加された条件) : 症状が複数の器官にあらわれる。
化学物質複合刺激反応は、一般に、化学物質に曝露することで起こり、ごく低レベルの曝露に対しても過
敏症が起こるようになります。 症状はひとつもしくは複数の器官系 (神経系、呼吸器系、脈管系 (心臓の障害) など) におこります。
刺激物質は、空気、水や食べ物、皮膚などから体内に入ります。
機能障害の症状
化学物質複合刺激反応の症状には、さまざまな程度のものがあります。
基本的には、頭痛、めまい、疲労、吐き気、呼吸困難、息が詰まる、集中力が乱される、記憶障害、学習障害、湿疹、関節炎様の症状、筋肉痛などの症状が特徴
です。
化学物質複合刺激反応もしくは環境病患者が、香料、クリーニング溶剤、煙、殺虫剤、かび、オフィス機器や車の排気、塗料、新しいカーペット、溶剤、室内の
汚れた空気などの刺激物質に曝露した場合、上記の症状のうちいくつかがあらわれる恐れがあります。
化学物質複合刺激反応患者への環境整備は、個別対応を基本に行う必要があります。
アレルギーの起こり方や症状の重さは、患者によってそれぞれ違うということを肝に銘じてください。
したがって環境整備も個々人でそれぞれ異なるものとなります。 それぞれ違った症状を持つ患者には、それぞれ違った環境整備が必要になります。
診断
化学物質複合刺激反応や環境病などを抱える人には、毒性学、神経学、神経心理学、臨床心理学、免疫
学、アレルギー学、環境医学などをはじめ、これ以外にもさまざまな専門医の診察が必要になる場合があります。
治療
化学物質複合刺激反応の治療にはさまざまなものがありますが、環境管理と刺激物質の回避がもっとも有
効な治療法であるという報告がなされています。
よくある質問
化学物質複合刺激反応や環境病などによっておこる機能障害に対して、アメリカ障害者法やリハビリテー
ション法はどのように適用されるのか?
どちらの法律も、すべての事例を網羅するような一覧を設けてはいません。
そのため、ある人が障害を持っているかどうかを判断するには、アメリカ障害者法の障害の定義を参照するしかありません。
アメリカ障害者法の障害の定義では、ある人に、ひとつ以上の主要な生活行為を相当程度制限する疾病もしくは健康状態があるとき、そのような機能障害の前歴
があるとき、あるいはそのような機能障害があると判断されるときに、その人は障害をもっている可能性があるとしています。
各個人に対しては、個別対応を基本にしなければなりません。
障害をもっているという判断には、さらに、障害の定義を満たしているだけでなく、不可欠な職務機能を発揮することができないと見なされることが必要です。
化学物質複合刺激反応や環境病とアメリカ障害者法について、これまでに出ている裁判の判例はあるか?
法廷では、化学物質複合刺激反応や環境病などに関連したケースがいくつか審理されてきました。
多くの場合、法廷の判断は障害者の認定について前向きではありません。
しかしながらいくつかのケースでは、、このような障害を持つ人をアメリカ障害者法の定める障害者であると認める判例も出ています。 例えば、Davis v. Utah State Tax Common, No. 2:98CV224K; 2000 WL 566897 (D. Utah May 8, 2000)では、同僚の使用する香水や匂いの強いハンドローションが原因で化学物質過敏症を発症したとするユタ州の公務員の主張が認められ、アメリカ障害
者法の定める障害者であるとする判断が下されました。
職場環境整備とは?
職場環境整備とは、職務、職場環境、常時行う職務の遂行方法などを、障害者の認定を受けた人が、平等な職務上の権利を得られるよう調整することです。
環境整備の目的は、その人の最大能力と、必要とされる職務機能との差を埋めることです。
環境整備のプロセスには、障害者本人だけでなく、雇用主も共に参加し進める必要があります。
JANなど、外部機関に問い合わせて助けを得ることも必要になるでしょう。
環境整備の検討の際に考慮す
べき問題点
以下に、環境整備をはじめるにあたって問題となる項目の例を挙げました。
これはあくまで参考であり、決して環境整備のプロセスで生じる問題を総合的に網羅したものではありません。
診断と医学的条件
1. 医師の診断結果は? 症状や機能障害があっても、明確な診断結果が出ない場合があります。
化学物質複合刺激反応
シックハウス症候群
環境疾患
科学物質過敏症
嗅覚過敏症
2. 患者に見られる症状は?
頭痛
吐き気
呼吸困難
頭
がぼうっとする
記憶障害
めまい
筋肉痛
3. 過敏症を起こすのは?
香料
クリーニング溶剤
溶剤
ペンキの匂い
殺虫剤
4. どのような場合に過敏症が起こるか?
肌に直接触れた場合
吸入した場合
経口摂取した場合
5. 患者の機能障害や職務遂行能力について、医師からの説明文書は出されているか?
6. 医師に禁止されている事項はあるか?
職業や職務に特有なこと
1. 職業および役職は?
事務員
肉
体労働者
セー
ルス
専
門職
医
療関係
教
員など
2. どのような職務を受け持っており、機能障害によって困難になるのはどのような仕事か?
どのような職務を行っているのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする。
たとえば、利用可能な機器、実際に利用した機器、仕事のやり方など。
3. 普段、どのようにして職務をこなしているか?
どのように職務を行っているのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする。
たとえば、利用可能な機器、実際に利用した機器、仕事のやり方など。
どのように職務を行っているのかを知ることは、計画中の環境整備が現実的なものであるかどうか判断する上で必要。
4. 過敏症の原因を取り除いたり、より毒性の低いものに変更したりすることは可能か?
5. すでに実施済みの環境整備は (あれば) ?
6. 環境整備の効果は上がっているか?
効果が上がった、もしくは上がらなかった理由は?
7. 管理職職員や、場合によっては同僚職員への教育は必要か?
患者の職務に影響を与える機能障害などについての一般的な教育が、職場環境の改善につながることがある。
この場合、教育の内容を、機能障害患者を特定するために利用されないようにする。
多くの場合、機能障害への一般的理解の第一歩として教育を行うのが最善です。
環境整備に関する基本的な検討事項
空気清浄機を設置する。
屋
外の空気に触れたり、薬を服用するための休憩を認める。
喫
煙や香水の利用のない職場環境作りをする。
自
宅勤務など、勤務場所の変更を検討する。
病
状が悪化した場合には、勤務場所の変更を認める。
害
虫駆除方法を、殺虫剤を利用しないものに変更する。
勤
務中に人工呼吸マスクを着用することを認める。
患
者の身体的負担を避けるために、コミュニケーションの方法を変更する。
考慮すべき環境機器
携帯式の空気清浄器
排
気ダクト用のフィルタ
窓
を開ける
レ
スピレータマスク
個
人用の空調
Borax
およびBaking Sodaのような非毒性の清掃用品
機
密性の高い個人専用オフィススペース
在
宅オフィス
非
毒性の事務用品
非
毒性の建築材料
香
水利用のない環境作り
職場環境整備案
化学物質過敏症もしくは環境病向け
以下の環境整備案は、教育目的に用いられることを意図したもので、完全な解決策ではありません。
すべての環境整備は、本人を交えて、個別対応を基本に決定する必要があります。 さらに詳細な情報については、JANまでお問い合わせください。
換気と室内の空気の汚れの問題
職場に開閉可能な窓を導入する。
空
調設備を、湿気や汚れがたまらないよう保つ。
屋
内や屋内の汚染物質が、空調設備によって職場内にまき散らされることがないよう確認する。
空
調のダクトを清潔にする。
可
能であれば、HEPAフィルタを空調に取り付ける。
ま
た専門家による空気の清浄度テストを行って、室内の空気の汚染度、ほこりの量、かびの繁殖度、揮発性有機化合物の含有率などを評価する。
American Industrial Hygiene
Associationなどの、オープンな情報機関に問い合わせて紹介状をもらい、産業衛生学の専門家に相談する。
建
物全体もしくは患者の個室座席で空気清浄機を利用する。 The National Air Filtration
Associationなどの情報機関に問い合わせて紹介状をもらい、空気清浄化の専門家に相談する。
香
料、有害なクリーニング溶剤、殺虫剤、排気ガス、タバコの煙など、汚染物質のない職場環境を保つ。
適
切な排気装置を設置し、コピー機などのオフィス機器からの排気を排出する。
建物の新築や改築に関する問題
建物の改築、塗装、殺虫剤散布、フロアのワックスがけ、カーペットのクリーニングなどについて、掲示、印刷物、電子メール、社員名簿な
どを利用して、事前に知らせておく。 通知を希望する人のために、任意登録の名簿を作成しておいてもよい。
こ
の場合、化学物質過敏症の人に対して、別の事務所を用意する、建物内の別のフロアもしくは別の建物で勤務する、自宅で勤務するなど、勤務場所を変更するこ
とを認める。
建
材、家具、消耗品などに、毒性のないものを利用する。
毒
性のないカーペットを利用するか、タイルや綿の敷物など、床に敷くものを変更する。 新しいカーペットから出るガスを抑える製品も利用可能。
溶
剤、下塗料、塗料、潤滑油などの工業製品を扱う場合、化学物質複合刺激反応や環境病などを引き起こさない製品への変更が可能かどうか検討する。
労
働者の曝露量を減らすため、可能であれば、清掃、保守、改築などの作業は、建物を利用する人がいない時間に行う。
クリーニングの問題
建物の改築、塗装、殺虫剤散布、フロアのワックスがけ、カーペットのクリーニングなどについて、掲示、印刷物、電子メール、社員名簿な
どを利用して、事前に知らせておく。 通知を希望する人のために、任意登録の名簿を作成しておいてもよい。
カー
ペットのクリーニングやフロアのワックスがけなどに、毒性がなく香料を使用していないものを利用する。
毒
性がなく香料を使用していないクリーニング溶剤を使用する。 詳しい情報に関してはJANまでお問い合わせください。
労
働者の曝露量を減らすため、可能であれば、清掃、保守、改築などの作業は、建物を利用する人がいない時間に行う。
殺虫剤の問題
毒性のある殺虫剤の利用をやめ、別の害虫駆除方法を用いる。 害虫駆除に関する詳細はNational Pesticide
Telecommunications Network*やNational Coalition Against the Misuse of
Pesticides*などに問い合わせてください。
化
学合成された芝生の手入れ剤の利用を止める。
喫煙の問題
建物内での喫煙が問題になる場合、禁煙の場所を設ける。
こ
れが不可能な場合、喫煙場所を定める。 過敏症患者が容易に煙を避けられる適切な場所であれば、建物の中であっても屋外であってもよい。
喫煙場所として、共同で利用する通路、建物のエントランス部分、ロビー、食堂などは適さない。
建物の中に喫煙場所を設ける場合、窓を開けるなどして良好な通気を確保し、煙が建物内に広がらないようにする。
喫煙場所もしくは建物全体に空気清浄機を設置する。 煙の出にくい灰皿を利用する。
座
席での喫煙を許す場合は、十分離れた場所に、喫煙可能な区域と禁煙の区域を設定する。
禁
煙の会議室を作り、その部屋は完全に禁煙にする。 これが不可能な場合、オンライン会議、テレビ会議、電話会議など、会議の方法の変更を検討する。
喫
煙をする労働者には、コミュニケーション方法の変更を許可する。 会議室内に、空気清浄機と十分な換気を備えた、禁煙区域を設ける。
電話、電子メール、ファックス、書面、喫煙をしない伝言係などを利用したコミュニケーションを認める。
その他
ディーゼルエンジンや車両からの排気ガスが問題になる場合、職務と職務環境について検討する。
職務上排気ガスに接することが避けられない場合、人工呼吸マスクの利用は可能か?
患者の仕事場所を排気ガスの届かない場所に移すことができるかもしれない。 排気ガスに触れることを必要としない役職への配置転換も考えられる。
方針と手順
建物の改築、塗装、殺虫剤散布、フロアのワックスがけ、カーペットのクリーニングなどについて、掲示、印刷物、電子メール、社員名簿な
どを利用して、事前に知らせておくことを、方針として明記する。 通知を希望する人のために、任意登録の名簿を作成しておいてもよい。
労
働者の曝露量を減らすため、可能であれば、清掃、保守、改築などの作業は、建物を利用する人がいない時間に行う。
職
場の方針を柔軟にし、上記のような場合には、化学物質過敏症の人に対して、別の事務所を用意する、建物内の別のフロアもしくは別の建物で勤務する、自宅で
勤務するなど、勤務場所を変更することを認める。
一
時的もしくは継続的に、自宅勤務を許可する。
喫
煙および香水の使用をしないことを職場方針として定める。
柔
軟な休憩時間の利用を方針として定め、外の空気を吸ったり薬を服用したりできるようにする。
会
議室内に喫煙および香水の使用をしない区域を設ける。
これが不可能な場合、患者が電話会議やテレビ電話を利用してはなれた場所から会議に参加することを認める。
柔
軟な勤務スケジュールを方針として定め、建物内に人が少ない時間を選んで勤務できるようにする。
人
工呼吸マスクの着用、服薬などのための休憩、診察をうけるための休暇取得などを認める。
す
べての人が支障なく働けるような職場環境作りについて、上司や同僚への教育を行う。 いかなる嫌がらせも許すべきではない。
意識向上と障害への理解の浸透によって、他者を受け入れる風潮を強化する。
香水について
JANには、職場や公共の場での香水過敏症に関する問い合わせが数多く寄
せられています。 香料への曝露がきっかけとなって化学物質複合刺激反応や環境病が発症することはよくあります。 Fragranced
Products Information NetworkのBetty
Bridges、RNによると、香料がおよぼす健康への影響は、一般的な健康問題であり、室内の空気環境の問題であり、通勤の問題であり、環境問題でもあ
るということです。
彼女は、その他の場所で使われる香料と同様に、職場で用いられている香料にも、アレルギー、ぜん息、偏頭痛、化学物質過敏症などの患者に悪影響を与えるこ
とが多いと述べています。
嗅覚過敏症についてのさらに詳しい情報については、JANまで問い合わせるか、以下のページを参照し
てください:
嗅覚過敏症患者への職場環境整備案
http://www.jan.wvu.edu/media/fragrance.html
嗅覚過敏症に関する職場環境
整備案
「香水を使用しない方針」の実践。 この方針は、既存の服装規定に追加する形で盛り込み、服装規定に順ずる運用をするべきである。
このような方針が「合憲」であるかどうかについては、かなり議論の余地があります。
そのため香水をつけて出勤しないよう要求することをためらう企業もあります。
しかしながら、香水過敏症の問題を重大に受け止め、「香水を使用しない方針」を定めている企業の方が多数派である。
さらに詳細な情報についてはJANまで問い合わせのこと。
宣
言書を出して禁止するのが不可能な場合、すべての社員に対して、香水をつけて出勤しないよう求める呼びかけをする。
このような呼びかけであれば、社報、電子メール、掲示板などを利用して行うことができる。
ト
イレで、消臭剤、香料入りの清掃洗剤、香水、ポプリ、アロマキャンドル、化粧水、ヘアケア用品などを利用することを禁止する。
これらの製品の利用が避けられない場合は、「香水を使用しない」トイレを別に設けて、過敏症患者が安心して利用できるようにする。
香水を使用してもよいトイレと使用してはならないトイレの区別がはっきりとわかるよう注意する。
換
気設備がきちんと機能するよう調整を行う。 空調の吹き出し口が患者の座席の近くにあるのは望ましくない。 空調に消臭剤や香水を用いてはならない。
香
料を使う場合は、できる限り刺激性の物質が患者に届かないようにする。
窓が開けられる個室の設置、患者もしくは香水を使用する人を別の部屋に移す、電話ボックスのように座席を囲う、在宅勤務を認めるなど作業場所の変更をする
といった対応で実現できる。
空
気清浄機の利用に効果が見込める場合は、空気清浄機メーカーと相談して、症状緩和に効果のある空気清浄機を探す。
建
物内に人が少ない時間に働けるよう、勤務スケジュールの変更を行う。
人
工呼吸マスクなどの着用を認める。
「香
水を使用しない部屋」という札を患者が勤務している部屋の入り口に掲げる、もしくは香水をつけている者が立ち入らない小部屋を用意してコミュニケーション
手段を別途用意する。
同
僚とのコミュニケーションが必要不可欠な場合、電話、電子メール、ファックス、伝言係、メモなど、コミュニケーション手段を別途用意する。
患
者が出席する会議には、必ず「香水を使用しない」会議室を利用する。
それが不可能な場合、電話会議やテレビ電話などを利用して離れた場所から会議に参加することを認める。
継
続的あるいは一時的に自宅勤務を認める
屋
外の空気に触れたり、薬を服用するための休憩を認める。
診
察を受けるために休暇を取得することを認める。
す
べての人が支障なく働ける職場作りを目指した、社員の教育と管理を行う (これがもっとも大切) 。 いかなる嫌がらせも許すべきではない。
意識向上と障害への理解の浸透によって、他者を受け入れる風潮を強化する。
状況別の解決案
状況
ある医療従事者は、同僚の使用する香水や新しいカーペットから出るガスのため、呼吸が困難であった。
解決法
同僚に、香水の使用を止めるか、量を減らすよう頼んだ。 患者の座席を板で囲い、空気清浄機を取り付けた。
カーペットの防毒加工、もしくは木のタイルなど毒性のない床材の利用を提案した。
座席が遠くなったことによる時間のロスは、同僚との連絡手段として電話、電子メール、ファックスなどを用いることで解消した。
状況
ある教員はシックハウス症候群の診断を受けていたが、校内で毎週開かれる会議に出席する必要があった。
普段の授業は校舎の外に設置した仮設教室で行っており、校舎の中にはまったく入ることができなかった。
解決法
JANでは、スピーカホンもしくはPA機器を利用して、普段授業を行っている仮設教室から会議に参加することを提案した。 議事録の提供も提案した。
ごく短時間の校舎内への立ち入りを試みる場合には、窓を開け、空気清浄機を設置するよう提案した。
患者にその意思があれば、人工呼吸マスクの着用も選択肢になる。
状況
あるグラフィックアーティストは、建物の改装関係の職場で働いており、塗料や建材から発生するガスのため、建物内での勤務が困難だった。
職務と密接に関わりのある部分で、利用する材料の変更が困難だったため、材料の変更以外の環境整備を考える必要があった。
解決法
特定の工程を処理する期間中、一時的に自宅勤務を認めることにした。
患者は自宅にコンピュータを持っていたので、必要なあらゆるソフトウェア、モデム、仕事にのみ利用する新規の電話回線などを用意した。
現場と患者の自宅との間でデザイン画をやりとりできるように、ファックスも用意した。
作業の進み具合をチェックするために、会社から定刻に送られる電子メールへの回答と、仕事に関するすべてのログの提出を求めた。
スピーカホンを利用して、毎週行われる会議に参加した。
状況
ある屋外労働者は、操作を担当しているディーゼル機械の排気のため、職務を遂行することが困難だった。 重機の操作と肉体労働の両方を担当していた。
肉体労働をしているときには、排気ガスに晒されることがないので、重機を操作しているときよりも円滑に職務が遂行できた。
解決法
JANでは、ディーゼルの排気を排除する、人工呼吸マスクの利用を提案した。
マスクの利用に効果がない場合は、より円滑に職務が遂行できる肉体労働に専念させるか、ディーゼルの排気に晒されることのない、空席のある役職への転属を
検討するよう勧めた。
問い合わせ先リスト
(完全なリストではありません)