序
試算によると、ろうもしくは難聴のアメリカ人は2800万人以上にのぼります。
アメリカろう協会 (NAD) の、ろう患者と
難聴患者との違いは何かとい
う記事によると、ろう (Deaf) とは、聴覚によって物事を判断したり、聴覚を情報を伝達する手段に用いたりすることができない聴覚障害を言いま
す。 難聴 (Hard of hearing) とは、音をある程度聞き取ることができ、コミュニケーションに用いることができるものをいいます。
ろうという言葉は文化的な区分を指すこともあります。
この場合、共通言語であるアメリカ手話 (ASL) などの文化を共有するろう患者のコミュニティを指します。
「聾唖 (deaf-mute) 」や「つんぼ、おし (deaf and dumb) 」といった言葉は、21世紀には適さないでしょう。
聴覚消失のタイプ
聴覚消失は、音を聞く機能が低下することで、さまざまな原因が考えられます。
遺伝的な異常や妊娠期に使用した薬物の副作用で知覚機能を失う患者もいます。
小児期や成人後の疾病によっても、完全なあるいは部分的な聴覚消失が起こり得ます。
老化、不慮の負傷、極度にあるいは長期にわたり騒音に晒されたことなどによる進行性の聴覚消失なども、聴覚消失を引き起こす原因となります。
アメリカ耳鼻咽喉科アカデミーが作成した聴覚消失について (About Hearing
Loss) というタイトルの記事に、3種類の聴覚障害についての情報があります:
伝導性聴覚消失は、耳の骨、鼓膜、内耳に音を伝える膜などに問題がある場合をいいます。
神経性聴覚消失は、耳から脳へ信号を伝える神経に問題がある場合をいいます。
神経の損傷は、老化が原因であることが多くあります。
混合聴覚障害は、伝導性と神経性両方が組み合わさったものを言います。
聴覚消失の診断
聴覚学者は、聴覚消失診断の専門家です。
ヒアリングテストを実施して測定した聴覚障害を、オーディオグラムという図にすることができます。
アメリカ耳鼻咽喉科アカデミーによると、聴覚消失の度合いは、聴覚閾値によって決定します。
聴覚閾値とは、聞き取ることのできる音の大きさの限界をデシベル (dB) で示したものです。
軽度の聴覚消失は、26dBから45dBの間です。
小声での会話や、遠くからの声、雑音のある場所での会話などを聞き取ることが困難になります。
中度の聴覚障害は、45dBから65dBの間です。 静かな場所でも、会話が困難になります。
重度の聴覚消失は、66dBから85dBの間です。
あらゆる場面で音を聞き取ることが困難です。 補聴器の利用が効果的です。
最後に、高度難聴という区分があり、大きな音でも聞こえないものを言います。
この場合、聴覚を情報伝達やコミュニケーションの第一手段として利用することはできないでしょう。
聴覚消失の治療
聴覚消失の治療は、聴覚消失のタイプによって決まります。
伝導性聴覚消失を引き起こす、外耳もしくは中耳の伝導障害は、外科手術で治療可能な場合があります。 しかし、神経性聴覚消失は外科手術では治りません。
伝導性もしくは神経性の聴覚消失には、補聴器が有効な場合があります。
補聴器は効果的な機器ですが、手軽ではなく、必ずしも周囲の雑音を聞き分けたり会話内容を理解したりすることができるとは限りません。
蝸牛刺激装置の埋め込みも、治療の選択肢となります。
蝸牛刺激装置とは、外科手術によって蝸牛に埋め込み、携帯コンピュータからの信号を受信して聴覚を補助する機器です。
聴覚過敏と耳鳴りの定義
聴覚過敏ネットワークによると、聴覚過敏とは、通常の音に対する耐性が失われた状態を指します。
ダイナミックレンジの異常により、突然の音量の変化に対応することができません。
本のページをめくる音から赤ん坊の泣き声まで、大きな音だけでなく、あらゆる音が、不快な音となります。
聴覚過敏ネットワー
クは、多くの患者においてサウンドジェネレーター (特殊な聴覚支援機器:広域帯にわたるホワイトノイズを発生させる) の利用によって音に対する耐
性の向上が見られたと報告しています。 ピンクノイズの録音テープによって症状が改善する患者もいます。
聴覚過敏は耳鳴 (じめい) や「耳鳴り」を伴なうことがよくあります
ジョージア州アトランタにあるエモリー大学の耳鳴聴覚過敏センターに
よると、約
40%の聴覚過敏患者に耳鳴りの併発が見られます。
アメリカ耳鳴協会によると、
耳鳴り
は、外部から音が入ってきているわけではないのに、共鳴音や歯ぎしりのような音などが、耳の中もしくは頭の中で聞こえるものをいいます。
ニューヨーク州イサカの、耳鳴聴覚過敏センターは、一般の人の17%に耳
鳴りの症
状が見られると報告しています。
耳鳴りは症状のひとつで、病気ではないと考えられており、感情、ストレス、睡眠状態などによって悪化
します。 症状は、多くの患者に効果があることが知られている、耳鳴再訓練療法 (TRT) によって治療可能です。
ろう患者、難聴患者、聴覚過敏患者、耳鳴りの症状がある患者などは、必要な職務機能を十分に果たすた
めに、職場環境整備を必要とすることがあります。 環境整備は必ず必要になるわけではありませんし、必ずしも効果的であるとは限りません。
環境整備の必要性は、個別対応を基本に評価する必要があります。
環境整備に関する問題点を解決するには、患者本人からの意見を得ることが、有効な環境整備結果を達成するための、もっとも基本的な事項です。
以下は、環境整備の一例であり、すべての機能障害を網羅してはいません。
この文書は教育目的に用いることのみを目的としており、状況は個別対応で評価しなければならないという大きな理由から、環境整備問題の最終的な解決方法で
あると見なすべきではありません。
よくある質問
アメリカ障害者法もしくはリハビリテーション法の定める環境整備として、雇用者には手話通訳者を手配する義
務があるか?
どちらの法律の規定でも、環境整備として手話通訳士の手配が必要な場合があります。
基本的に、雇用者には、職務上のコミュニケーションを効果的になされるよう環境整備を行う義務があります。
職務の遂行に関わる、コミュニケーションの必要性の有無を判断する必要があります。
コンピュータによる議事録作成、リアルタイムキャプション、コミュニケーション補助機器など、手話通訳士以外の方法で効果的なコミュニケーションを実現で
きる場合もあるでしょう。
どのような環境整備が必要なのかを判断する際には、雇用者はコミュニケーションの範囲と複雑さを考慮
する必要があります。
社員向けの健康増進計画の説明を行う、専門的なディスカッションを行うなど、複雑なコミュニケーションが必要な場合、雇用者にとっても労働者にとっても、
手話通訳士の利用がもっとも利益のある選択肢となることが多いでしょう。
コミュニケーションの不備が重大な結果を招くような場合は、効果的なコミュニケーション手段の確保は必須となります。
しかし、、日常的な会話であれば、手話通訳者は必ずしも必要とはなりません。
たとえば、メモ、電子メール、インスタントメッセージなどで十分なコミュニケーションが可能になる場合もあります。
同僚が手話の習得に積極的な場合などもあるでしょう。
患者が利用するコミュニケーションの第一手段が、アメリカ手話 (ASL) などの手話である場合は、手
話通訳者の手配が必須になる場合があります。 ろう患者には、アメリカ手話のみを学習して、英語を学習していない人がいます。
こうした場合、言葉の壁が問題になることもあります。
スペイン語やフランス語を第一言語とする人とのコミュニケーションと同様の状況であると考えてください。
このような場合、患者には英語を第一言語とする人と同等の読み書き能力がないと考えられるため、メモなどを利用したコミュニケーションは効果的な環境整備
とはならないでしょう。
さらに詳しい情報についてはhttp:
//www.jan.wvu.edu/links/ADAtam1.html#IIIからオンラインで利用できる、雇用均等委員会のタイトル1,
技術的支
援マニュアル3章3.10.9「手
話通訳士の手配」を参照してください。
雇
用者は、面接の際手話通訳者の手配を申請した求職者に対して、その費用を負担する義務はあるか?
手話通訳士の手配が合理的な環境整備である限り、負担する必要があります。
雇用機会均等委員会 (EEOC) では、その負担が極端に大きな支障を引き起こすようなものでない限り、雇用者が環境整備費用を負担する必要があるとされて
います。
面接に際して求職者から環境整備の要求があった場合、手話通訳者の手配を検討することは重要です。
面接、採用の段階での効果的なコミュニケーションの確保は、雇用上の不備を解消する上で必要不可欠な措置です。
面接における印象で不利になることがないよう、手話通訳者は、スムーズで不快感のない会話の流れを確保しなければなりません。
ただし、どの環境整備を効果的なものとして採用するかの決定権は雇用者にあります。
手話通訳士の手配は極端に大きな支障を引き起こすもので、合理的な環境整備とはいえないと判断した場合、雇用者はそれ以外の効果的なコミュニケーションの
提供法を選択することができます。
環
境整備としてテレタイプライターを購入する義務はあるか?
テレタイプライターとは、TTYもしくはTDDとも呼ばれる文字電話で、聴覚障害や発話障害を抱える人による電話の利用を可能にするものです。アメリカ障
害者法の定める合理的な環境整備に用いられる可能性のある機器としては代表的なものと考えることができるでしょう。
患者の職務に電話の利用が必要な場合や、他の労働者が私用での電話利用を認められている場合には、その負担が極端に大きな支障を引き起こすようなものでな
い限り、環境整備としてテレタイプライターを購入しなければならないでしょう。
テレタイプライターは補助機器と見なされ、ろう患者による職務の遂行や労働者としての権利の享受に利
用可能です。 同様の目的に用いる機器として、難聴患者向けに電話の音声を増幅する機器もあります。
雇用者には、職場環境整備として、医師の処方により補聴器を購入する義務があるか?
雇用機会均等委員会 (EEOC) が発行している、アメリカ障害者法技術的支援マニュアルTitle
I Chapter IIIによると、雇用者には、個人利用が主となる環境整備を提供する義務はありません。
個人的な機器とは、補聴器や車いすなど、勤務中であるか否かに関わらず日常生活全般で利用する機器をいいます。
しかしながら、職務の遂行に関連した利用が個人的な利用を上回る場合は、雇用者が機器の購入義務を負う場合もあります。
アメリカ障害者法の定めでは、火災報知器にストロボライトを取り付けたり、聴覚障害者用の避難路を別に設け
たりする義務はあるか?
雇用者には、環境整備を必要とする労働者にも利用しやすい職場作りをする義務があります。
この規定には、聴覚障害を持つ人にも利用可能な火災報知手段の提供も含まれています。
既存の警報機にストロボライトを取り付ける、バイブレーター付きのポケベルを利用して警報機の作動を知らせるといった対策を検討しなければなりません。
新築もしくは改修を行うすべての建物について、聴覚と視覚の両方を利用した警報装置の設置を定めた、アメリカ障害者法アクセシビリティガイドライン
(ADAAG) の仕様に従う必要があります。利用のしやすさ (アクセシビリティ) の問題についての詳細は、アメリカアクセス委員会 (800-USA-
ABLE) までお問い合わせください。
聴覚障害者による車両の運転は可能か?
患者は運転免許証を持っていますか? 聴覚障害患者による車両の運転は可能です。
聴覚障害を理由に普通運転免許の取得ができないことはあまりありませんので、社用車の運転は可能な場合が多いでしょう。
運転中、緊急車両の接近を知らせる装置も利用可能です。 ただし、これらの装置の利用は任意です。
聴覚障害のために、第2種運転免許が取得できないことはありえます。
合衆国運輸省 (USDOT) の連邦自動車運搬安全局 (FMCSA) は、、第2種運転免許の取得に際して身体的な条件を定めています。
詳細については、アメリカ運輸省Policy and Program Development、Driver and Carrier
Operations事業部 (202) 366-4001に連絡してください。 医学的基準を確認したい場合は、次のウェブをチェックしてください:
「Medical Advisory Criteria for Evaluation under 49 CFR Part 391.41」http://www.fmcsa.dot.gov/rulesregs/fmcsr/medical.htm
環境整備の検討の際に考慮すべき問題
点
以下に、環境整備をはじめるにあたって問題となる項目の例を挙げました。
これはあくまで参考であり、決して環境整備のプロセスで生じる問題を総合的に網羅したものではありません。
診断と医学的条件
1. 聴覚障害の程度はどのくらいか?
補聴器の利用に効果はあるか?
発話能力はあるか?
2. 問題となっているのは聴覚消失だけか?
ふらつき、吐き気、視力低下、視覚障害、雑音への過敏症、耳鳴りなどの症状はないか?
3. 患者はどのようなコミュニケーション手段を用いているか?
アメリカ手話などの手話や、その他の視覚的なコミュニケーションを利用しているか?
英語の読み書きは可能か?
介助者、紙とペン、コミュニケーション補助具などを必要としているか?
発話能力はあるか?
4. 補聴器の利用をしているか?
補聴器を利用している場合、補聴器以外の音声増幅装置にも効果が見込める。
この場合、電話機に利用可能な補聴器、ネックループ、誘音ループなどの聴覚支援機器 (ALD) を利用可能な環境にあるということでもある。
5. 補聴器にはテレホンコイル (Tスイッチ) もしくはライン音声入力機能がついているか?
Tスイッチとは、補聴器に取り付けてアンテナのような役割を果たす小型のスイッチです。
Tスイッチをオンにすると、補聴器で電話機からの磁気信号を受信でき、補聴器で直接相手の声を受信することができます。
職業や職務に特有なこと
1. 職業および役職は?
事務員
肉体労働者
セールス
専門職
医療関係
教員など
2. どのような職務を受け持っており、機能障害によって困難になるのはどのような仕事か?
どのような職務を行っているのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする。
たとえば、利用可能な機器、実際に利用した機器、仕事のやり方など。
3. 普段、どのようにして職務をこなしているか?
どのように職務を行っているのかについてはっきりとしたイメージを得るのに十分なだけの質問をする。た
とえば、利用可能な機器、実際に利用した機器、仕事のやり方など。
4. 職場の雑音は問題になっているか?
機
械音
話
し声
音
楽
座
席付近のホール、会議室、エレベーターなどが混み合うことによる雑音
5. コミュニケーションに支障はあるか?
コ
ミュニケーションが必要な相手は誰か?
上
司
同僚
顧客
コ
ミュニケーションの種類は?
1対1
電話
コンピュータ
6. 職場において障害となりうるものは何か?
どのような予防策をとったか?
アメリカ障害者法アクセシビリティガイドライン (ADAAG) の適用をうける場合、その検証は行った
か?
7. すでに実施済みの環境整備は (あれば) ?
8. 管理職職員や、場合によっては同僚職員への教育は必要か?
患者の職務に影響を与える機能障害などについての一般的な教育が、職場環境の改善につながることがある。
この場合、教育の内容を、機能障害患者を特定するために利用されないようにする。 全体として、機能障害に対する意識向上を導くのが最もよい。
職場環境整備案
一対一でのコミュニケーション
一対一でのコミュニケーションには、障害の程度と状況によって、さまざまなものがあります。
注意
日常コミュニケーションのもっとも基本的な方法は、文字を使ったものでしょう。
紙とペンであれば常時持ち歩くことができますし、小型のホワイトボードや黒板が利用できる場合もあるでしょう。
どの手段を用いるかは、周囲の状況やコミュニケーションの目的によって異なるでしょう。
忘れてはならないことは、ろう患者には読み書きのできない人がいると言うことです。
コミュニケーションの第一手段としてアメリカ手話などの手話を利用している場合や、手話だけに頼ってコミュニケーションをしている場合は、いわゆる言葉の
壁が存在することになります。 読み書きが十分にできない患者の場合、文字によるコミュニケーションは効果的な方法とはいえないでしょう。
この場合、手話通訳士などを手配する必要があるでしょう。
一対一でのコミュニケーションに利用可能なコンピュータ技術
一対一のコミュニケーションにコンピュータを利用する方法には、さまざまなものがあります。
ひとつのコンピュータにかわるがわるタイピングする、電子メール、インスタントメッセージ、チャット、音声認識ソフトウェアなどを利用するといった例が考
えられます。 コンピュータを利用したコミュニケーションは、筆談よりも便利なことが多く、手書きの文字を使用するよりも読みやすいでしょう。 例:
電子メール
電子メールは、多くの職場で利用可能なものとなってきています。
電子メールを利用した文字によるコミュニケーションは、同僚や上司とのコミュニケーション方法として有効でしょう。
インスタントメッセージ
インスタントメッセージは電子メールと似ていますが、リアルタイムのコミュニケーションが可能で、古いメッセージから順に消えていくという違いがありま
す。 インターネットを利用したサービスや、インスタントメッセージソフトをインストールした内部 (イントラ) ネットを利用して通信を行います。
インターネットチャット
インターネットチャットを利用すると、離れた場所からでもリアルタイムの文字コミュニケーションが可能です。
同じ場所にいて話をしているかのようなリアルタイムのコミュニケーションが可能な点が特徴です。
音声認識ソフトウェア
音声認識ソフトウェアは、多人数での会話には適しませんが、一対一でのコミュニケーションでは効果的でしょう。
上司が指示を与えるときなどに利用するとよいでしょう。
音声認識ソフトウェアについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください: http://www.jan.wvu.edu/media/speechrec.html (日本語ページはこちら)
聴
覚補助具 (ALDs)
聴覚支援機器は、拡声器の利用に効果がある聴覚障害者向けの機器で、周囲の雑音の影響を受けずに音源
の音をそのまま聞くことができるため、会話への集中を邪魔されることがなくなります。 選択肢として、FM、赤外線、誘導ループなどが考えられます。
マイクや送信機に向かって話した音声を、補聴器に取り付けたTスイッチもしくは単体の聴覚支援機器で受信します。
聴覚支援機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を
参照してください:
../cgi-win/Sol420
手
話通訳者
手話通訳者一般に、ろう患者は手話によるコミュニケーションしかできず、そのため手話通訳者は必須で
あるという思い込みがあります。 しかしながら、、必ずしもそうではありません。
手話を使わない聴覚障害者も多く、それらの患者は文字などを利用して効果的なコミュニケーションを実現しています。
しかしながら、場合によっては、手話通訳者を介したコミュニケーションが有効な場合もあります。
手話通訳者の必要性を判断する際は、コミュニケーションの範囲と複雑さを評価することが重要です。
たとえば、長期にわたる専門的な会議、面接、労働者の権利についての説明会、研修や勉強会などには、手話通訳者の利用がもっとも適しているでしょう。
基
礎的な手話の訓練
同僚や上司が、手話を利用している労働者とのコミュニケーションを向上させるために、基礎的な手話の
訓練を受けることに意欲を持っている場合も考えられます。
職場での講習会開催の希望がある場合には、参加のための時間を設けることを認め、ビデオテープや教科書を用意して自宅での学習ができるようにします。
職務上とくに必要がない限り、手話の訓練は自主性に任せて行います。
コ
ミュニケーション拡張機器
コミュニケーション機器を利用することで、聴覚障害や認知障害を持つ人のコミュニケーションへの参加
が可能になります。 文章をタイプしたり、絵柄のついたボタンに触れることで、合成音声や絵柄を用いてのコミュニケーションを実現できます。
これらのコミュニケーション機器を使用することにより、文章や絵柄などを通じて、聴覚障害のある人が直接顔を合わせてコミュニケーションすることが可能と
なります。 カードや絵を利用したローテクなものから、携帯式や電子式のハイテクな機器まで、さまざまなものがあります。
現在、iCommunicator (http://www.myicommunicator.com/)
やSignTel
Interpreter (http://www.signtelinc.com/)
といったシステムが、手話翻訳表示機器を提供しています。 詳しくは、ウェブサイトにより提供される情報をご覧下さい。
コミュニケーション拡張機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください:
../cgi-win/Sol267
テ
レタイプライター
テレタイプライター (TTY) を利用すると、聴覚障害を持つ人でも、文字を使って電話を利用すること
ができます。 直接顔を合わせての一対一のコミュニケーションにも利用可能です。
テレタイプライター接続機器を利用して、電話回線を介さずに2台のテレタイプライターを接続することも可能です。
テレタイプライターについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Hea84
グループ、会議、講義におけるコミュニケーション
聴覚障害を持つ人にとって、グループでのコミュニケーションは困難な場合があります。
さまざまな環境整備の案が考えられます。
聴覚補助具 (ALDs)
マイクロフォンの利用に効果がある場合、会議、セミナー、研修など、グループでのコミュニケーション
において、聴覚支援機器の利用に効果が見込めます。 聴覚支援機器には、主に3タイプがあります:
FM電波信号、赤外線、誘導ループの3タイプです.FMタイプの機器は音声を電波で伝えます。
FM帯 (周波数72MHzから76MHz) を利用する設計になっています。赤外線タイプは、光線を利用して電気信号を受信機 (光線を電気エネルギーに戻し
た後音声に復元する) に送ります。 誘導ループは、電磁気を利用して、座席の周りにめぐらせたループワイヤを通して音声を送ります。
携帯用アンプ機器も、一対一の会話や家庭でのコミュニケーション向け聴覚支援機器の選択肢のひとつとなります。
携帯アンプ機器は、非常に小型で、小型マイクと受信機がついています。
聴覚支援機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を
参照してください:
../cgi-win/Sol420
コミュニケーション参加同時通訳 (CART)
聴覚障害を持つ人がコミュニケーションへ参加する場合で、リアルタイムでの会話が必要なときは、会議
の規模の大小に関わらず、コミュニケーション参加同時通訳 (CART) サービスの利用に効果が見込めます。 National Court
Reporters
Association (NCRA) では、「速記タイプライター、ノートパソコン、同時通訳ソフトウェアなどによって、会話内容を英文にリアルタイムで置
き換えることで。 英文はコンピュータ画面などのディスプレイに表示されます。
この技術は、主に、聴覚障害を持つ人や外国語として英語を学んでいる人が利用するものである。」と定義している
CARTとは、話し言葉を文字に置き換えるもので、速記の技術を持った専門技術者がこの変換を行います。
多くの字幕サービス業者は、速記者がその場にいなくても、電話回線を通して通訳を行う、遠隔CARTサービスやインターネット経由字幕サービスを提供して
います。
CARTは聴覚障害者への環境整備として利用可能です。
月例会議、全体会議、ワークショップ、セミナー、表彰式などの場面で、聴覚障害者の参加を可能にするための有効な環境整備になりえます。
CARTサービスの利用には予約が必要なのが一般的なので、環境整備の申請や計画を事前に行うことが必要です。
CARTの有効性を判断するために、患者とのコミュニケーションを常に欠かさないようにします。
状況によっては、CARTよりも手話通訳者の方が有効なコミュニケーション手段となる場合があります。
聴覚支援機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を
参照してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Sol491
コンピュータを利用した議事録作成
コンピュータを利用した議事録作成によって、グループでのコミュニケーションの効率化が可能です。
コンピュータを利用した議事録作成には、ノートパソコン、一般的なワープロソフト、可能であればPCプロジェクタなどを用います。
入力担当者が、会議と同時進行で議事録を作成します。
記録係が会話内容を要約してタイピングすると、それが患者のコンピュータ画面 (PCプロジェクタを利用している場合はプロジェクタのスクリーン) に表示さ
れるので、これを読み取ります。 コンピュータを利用した議事録作成は、比較的安価な環境整備ですが、リアルタイムの情報は伝わりません。
環境要因
グループでのコミュニケーションでは、環境要因も考慮に入れる必要があります。
周囲の雑音、照明、位置関係や姿勢に注意してください。 聴覚障害者にとっては、話し手の近くに座った方が都合がよい場合があります。
唇を読む場合は、四角いテーブルではなく丸いテーブルを利用して口元が見えやすくします。
会議は、雑音の発生を抑えるため、カーペットを敷いた、オフィス機器のない、交通 (人も車両も) の多い通路から離れた部屋で行います。
手話通訳者
グループでのコミュニケーションには、手話通訳士の利用も考えられます。
アメリカ障害者法によると、手話通訳者は十分な能力を備えている必要がありますが、免許は必要ありません。
会話内容を正確に、効果的に、公正なやり方で伝えなければなりません。 手話通訳士は会話内容に含まれる専門用語に精通している必要があります。
手話通訳者の手配にかかる費用は、州によって違います。
ほとんどの場合事前の予約が必要で、料金は時間あたりでの請求になるでしょう。
2時間を超えた利用をする場合は、手話通訳者の派遣人数を2人にするよう求められることが多いでしょう。
オプションとして、通訳者がカメラを通して通訳を行う遠隔通訳サービスを提供している場合もあります。
さらに詳しい情報については、それぞれの地域の手話通訳サービス事業者に問い合わせてください。
ウェ
ブミーティング
すべての参加者を同じ部屋に集めて行う従来の会議や講習は、すでに過去のものとなっています。
多忙なスケジュール、広い地域に広がった職場、学習すべき内容の違いなどのため、遠隔地から行事に参加することで効率を向上させる時代になりました。
遠隔地からの会議は、聴覚障害を抱える労働者への環境整備にもなりえます。
インターネットやイントラネットでのチャット、もしくはNetMeetingなどのオンラインソフト
を利用して、会議や講習を行うことが可能です。
NetMeetingは、Microsoftのリアルタイムのコミュニケーションツールで、一対一のコミュニケーションからグループコミュニケーションに
まで対応した、インターネットやイントラネット上での、音声、動画、データなどのやり取りができます。
文字によるリアルタイムのコミュニケーション (すべての参加者が、他の参加者がタイプした文字を読むことができる、もしくは送信されたデータを即座に表示
できるもの) のみで会議を行うこともできます。
少人数のグループによる会議や講習であれば、インターネットもしくはイントラネットを利用したインス
タントメッセージが有効な場合もあります。
予
定表その他の文書作成
会議ごとに、予定表などを作成することにも環境整備効果があります。
会議や講習の前に、予定表や参考資料を用意しておけば、話し合いの内容を事前に理解しておく時間を作ることができます。
必要であれば、会議終了後に、会議に参加した上司や同僚から、疑問点について説明を受けるのもよいでしょう。
予定表をただ配布するだけでは、効果的なコミュニケーションを実現するのに十分ではない場合がありま
す。 こうした形では会議に能動的に参加したとはいえないからです。 効果的なコミュニケーションを実現するには、患者との相談が必要です。
テープレコーダによる会議
聴覚障害を抱える人の会議への参加に、テープレコーダーによる会議 (後で会議の内容を聞き返せる) が
役立つ場合があります。 環境を整えてから聞き取りを行うことができる、理解できなかった部分を巻き戻して再生できるなどの利点があります。
テープからの聞き起こしを行ってもよいでしょう。
ビデオ会議
ビデオ会議は、一対一のコミュニケーションで手話通訳者による通訳を利用している患者に、有効なコ
ミュニケーション手段となりえます。 ビデオ会議の成否は、会議の規模と利用する機器の性能にかかっています。
テレタイプライタービデオホンも、ビデオ会議を行う際の選択肢になるでしょう。
テレタイプライタービデオホンは、人物やグループを丸ごと写すことができるだけでなく、テレビモニタへの直接出力にも対応しています。
音声認識ソフトウェア
音声認識ソフトウェアは、静かな環境での一対一のコミュニケーションや、講義形式の講習会などにおい
て効果的なコミュニケーション手段となりえます。
音声認識ソフトウェアで音声を文字に変換してコンピュータ画面に表示するには、話者がコンピュータのマイクに話しかける必要があります。
話者がマイクを身に付ける必要があり、音声ファイルの設定も必要です。
また、認識率を高めるには、普段の話し方以上に発音に気をつけて話す必要があります。
音声認識ソフトウェアについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください: http://www.jan.wvu.edu/media/speechrec.html (日本語ページはこちら)
電話でのコミュニケーション
電話を利用したコミュニケーションは多くの場合、聴覚障害を抱える人にとって困難です。
従来から用いられている、電話を利用したコミュニケーションを支援する技術には、文字電話 (TTY/TDD/TT) と拡声器の2つがあります。
拡声器の利用で十分な効果が得られる場合は、拡声器を利用します。
拡声器を利用しても、相手の声が聞き取れない場合は、TTY (テレタイプライター) TTYの利用が考えられます。
拡声器
難聴の人であれば、拡声器で音声を拡大することで、会話が可能になることもあります。
拡声器の種類としては、ハンドセット、ヘッドセット、インラインアンプ、携帯式アンプ、電話機の調整機能などを用いたものがあります。
聴覚支援機器を電話の音声の拡大に利用できる場合もあります。 携帯電話の拡声機能を利用することも可能です。
明瞭さ
音声の拡大に加えて、音声周波数の調整を行うことで電話が利用しやすくなる場合があります。
相手の声の周波数を調整して音声を明瞭化すると、拡声器よりも効果的な場合があります。
音声の明瞭化は、電話機からの音声の周波数や音色を調整することで実現可能です。
拡声器などについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を参
照してください:
../cgi-win/Sol449
ヘッドホン
職務上、ヘッドセットを着用して電話を操作することが必要な場合、補聴器を利用している人は職務の遂
行が困難になる場合があります。
補聴器をの上から、もしくは補聴器の周辺に装着するタイプのヘッドセットを利用すると、装着したときにすわりが悪い (もしくはハウリングを起こす) という
報告が多く寄せられています。 補聴器を利用していない場合にも、ヘッドセット使用時に電話の声が聞き取りにくいという問題が起こることがあります。
HATIS
Corporationは市場で唯一、聴覚消失患者 (軽度から重度まで) とTコイル付き補聴器 (BTE) 利用者向けに専用設計されたヘッドセットを製造し
ています。 HATIS製品に関する詳しい情報に関しては、http://www.hatis.com
をご覧下さい。
Tコイル付きの補聴器を利用していない人が電話機のヘッドセットを有効に利用するには、いろいろなヘッドセットを試してみて、着用方法を工夫してみるしか
ないようです。
以下のような環境整備について検討するとよいでしょう:
周囲の雑音によって聴き取りが困難、もしくは音声増幅器が必要
雑音除去機能つきのヘッドセットを用いて、周囲の雑音の影響を軽減する。
音量調節、内蔵アンプ、音声明瞭化フィルタなどの機能がついたヘッドセットを利用する。
両耳を完全に覆うタイプのヘッドセットを利用し、周囲の雑音の影響を軽減する。
イヤホン型のヘッドセットを用いて、周囲の雑音の影響を軽減する。 (VXI Corpの紹介を参照) 。
職場の背景雑音を軽減する。
不快感やすわりが悪いためヘッドセット着用が困難な場合
ヘッドセットを着用したときにすわりが悪い、もしくはハウリングを起こす場合Tコイル付きの補聴器を利
用している場合、補聴器利用者向けに専用設計されたヘッドセットを利用する。 (HATIS Corp.の紹介を参照) 。
ヘッドセットのイヤピースを耳のすぐ前に装着してみる。
イヤピースにクッションを追加する。
電話機用ヘッドセットでは、クッションの追加や交換が可能なことが多い。 (Hear MoreもしくはHarris
Communicationsの紹介を参照) 。
耳あな式補聴器を利用している場合は、耳への圧迫を軽減するため、耳かけ式の補聴器を試してみる。
通常の電話器を使う方が、ヘッドセットよりも問題が少ないが、手ぶらの電話利用の利益を得たい場合に
は、受話器を耳に固定する装置を試す。
この装置は頭部に取付けるか、または、鳥の首型の受話器置きにより耳の近くに受話器を固定することができる (LS&SとSammons
Prestonを参照) 。
ハンドセットでなく、スピーカーフォンの使用を検討する。
個室以外でスピーカホンを利用する場合は、周囲の環境を整える必要があるかもしれない。
テレタイプライター
TTYは電話コミュニケーションに利用可能です。
テレタイプライターでは、会話は音声ではなく文字で行います。
テレコミュニケーションリレーサービスを介して、もしくはテレタイプライター互換機器を持っている人となら直接、コミュニケーションを取ることができま
す。 通信にコンピュータを利用できるものもあります。
ASCIIコードセットが組み込まれているテレタイプライターは、コンピュータとの通信が可能です。
組み込まれていない場合は、コンピュータの側にBaudotコードセットへの変換に対応したモデムが必要になります。
テレタイプライターについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Hea84
音声認識
今日、電話の音声を文字に変換する音声認識機器は、特別な準備をしなくても利用できるようになってい
ます。 店舗検索や電話番号案内など、電話を利用した音声認識が商業的に用いられている例もあります。
しかし、こういった例は、聴覚障害患者が電話を利用したコミュニケーションを行うために音声認識を日常的に利用する場合とは、大きく事情が異なります。
ボイスメールの利用
ボイスメールメッセージが利用できないということは、聴覚障害患者にとって、大きなストレスになりま
す。
音声増幅器の利用に効果がある場合は、音声明瞭化機能やイコライザのついた拡声器の利用で、メッセージの聞き取りが可能になることもあるでしょう。
少なくともできる限り、ボイスメールの利用を避けます。 メッセージのフィルタリングは、自動ではなく手動で行うのが望ましいでしょう。
他の人が代理受信ができない場合、メッセージサービスかポケットベルサービスで代用できます。
メッセージサービスからメッセージを取り出したり、ポケットベルで文字メッセージを受け取ることができます。
患者がテレタイプライターを利用している場合、ボイスメールの受け取りにテレコミュニケーションリレーサービスが利用できる場合があります。
屋外でのコミュニケーション
普段勤務している職場から離れた場所で勤務しなくてはならない場合というのは、珍しくありません。
聴覚障害者による屋外でのコミュニケーションは頻繁に取り上げられる問題です。
双方向無線
双方向無線やCBラジオの日常的な通信手段として使用には、問題が生じる可能性があります。
遠距離通信における障壁を避けるには、他の通信手段の使用を検討する必要があります。
携帯電話は無線に変わる通信手段となり得ますし、ろう患者であれば携帯テレタイプライターを、難聴患者であれば拡声器を併用すれば、利用が可能になりま
す。
携帯テレタイプライター
携帯テレタイプライターは、公衆電話での利用が可能で、昼間人が働いているような場所であればどこで
も利用可能です。 携帯電話と併用すれば、必要なときはいつでも、テレタイプライターが利用できる電話機を探すことなく電話が受けられるようになります。
テレタイプライターについてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備
(SOAR) を参照してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Hea84
ポケットベルなど
バイブレータ付きのポケットベルは、すばらしい遠距離通信手段といえるでしょう。
ポケットベルの多くは電話回線通して通信を行っていますが、より通信範囲の狭いスタンドアロンの通信ユニットを利用するものもあります。
ポケットベルは英数字を完全に表示でき、組み込まれた定型文を利用して直接返事を送ることもできます。
双方向ポケットベルなら、完全なテキストメッセージを送受信できます。
その他のワイヤレス通信
携帯電話はテレタイプライターと、拡声器の利用に効果があるのであれば拡声器とも併用できます。
ワイヤレステレタイプライターを利用すれば、ワイヤレスデータ通信網の中であればどこにいても、すぐにテレタイプライタ通信が利用可能です。
これらのテレタイプライター製品は、電子メール、ファックス、文字と音声の相互変換などにも利用可能です。 携帯式メッセージ機器も、非常に有用です。
携帯式コンピュータ
ノートパソコンやPalmなどの機器は、緊急のコミュニケーションが必要でない場合には、すばらしい
コミュニケーション手段といえるでしょう。 電子メール、ファックス、インスタントメッセージ、チャットなどを利用したコミュニケーションが可能です。
火災もしくは非常警報への対応
周囲の音を知らせる機器の利用が可能です。
非常警報などの音を振動や光などで知らせることができます。 送信機が特定の音を検知して、振動や光を発生させる受信機に信号を送ります。
視覚もしくは触覚による警報
Visual or Tactile
Alertingシステムでは、従来の音声による警報を、視覚もしくは触覚による警報装置に変更することが可能です。
警報には、警告灯があるものや配線によって警告灯を追加できるものがあります。
これは、聴覚信号による警報を監視してこれを視覚または触覚手がかりに変換し、仕事場の周りの受信機や身につけている受信機などに変換信号を送信するもの
です。
既存の火災報知器と連動させることが可能な、バイブレーション機能付きのポケットベルを利用すれば、聴覚障害患者に緊急事態を知らせることができます。
警報機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を参照
してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Sol419
バディシステム
「バディシステム」の利用は、警報を聞いた同僚が聴覚障害者に緊急事態を知らせる場合に適しています
が、安全な手段ではありません。 「バディシステム」を、聴覚障害者への単体の緊急警報手段として信頼してはなりません。
その他の音への対応
職場において、上記以外の音への対応が必要な場合があります。
利用可能な機器の種類は、対応が必要となる音の種類によって異なります。
コンピュータの音
コンピュータは、エラーが発生したとき、電子メールの到着時、デバイスに問題があるときなど、さまざ
まな場合に音声による合図で、ユーザーに警告を送ります。 音声による警告を画面やカーソルの点滅に変更するソフトウェアが利用可能です。
Microsoftの製品には、アクセシビリティオプション機能があり、上記のような変更が可能です (サウンド表示とサウンド解説) 。
マッキントッシュにもビルトインオプションが組み込まれています。
聴導犬
聴覚障害者に音声による情報を提供する手段のひとつとして、特別な訓練を受けた、聴導犬の利用が考え
られます。 聴導犬は、電話の呼び出し音や室内に入ってくる人の立てる音、場合によっては機械類の異常音などの情報を知らせます。
雇用者は、職場環境整備として聴導犬の利用を認めることができます。
聴導犬は、特殊な職務のために訓練されており、単なるペットではありません。
聴導犬が「勤務中」である場合は、他人になつくことはありませんし、もしなついたとしたら適切な訓練がなされていません。
飼い主の承諾を得ずに「勤務中」の聴導犬をペットとして扱うことは絶対に避けてください。
現在のところ、介助動物についての連邦単位の規定はありませんが、介助動物は一般に「職務を持った犬」であることを示すハーネスやケープを着用していま
す。
その他
電話、玄関チャイム、目覚し時計、ブザー、設備の誤動作音など、上記以外に聴き取りが必要となる音に
ついては、視覚や触覚に訴える信号に変換して代用します。
この変換は、受信機と送信機を備えた機器や、場合によっては音源に電球を配線して視覚情報を提供することで実現できます。
職場環境においては、振動による伝達も非常に有用です。
振動による情報提供であれば、他の労働者への影響を最小限に抑えつつ、音声に代わって情報伝達を行うことができます。
警報機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を参照
してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Sol419
外部の雑音の問題
外部の雑音が、気を散らす大きな要因になることがあります。
ラジオ、オフィス機器、交通、話し声などによる周囲の雑音によって、重要な音の聞き取りへの集中を乱される場合があります。
外部からの雑音を遮断するために、カーペット、防音床、壁面パネル、個室の座席などの防音製品が利用可能です。
可能であれば、個人用のステレオの利用を中止するか、コピー機、ファックス、プリンタなどの音が届かないスペースを用意します。
職場内の車両への対応
聴覚障害を持つ人が、フォークリフトなどの重機の近くで働いたり、運転したりすることの危険性につい
て、多くの企業が懸念を持っています。
聴力保護用具を着用しなければならない場合が多く、その結果、聴覚障害があるなしに関わらず、作業現場内の音が聴き取りにくくなります。
そこで、これらの懸念を解決しうるアイデアを以下に示します:
フォークリフト、車両、その他の重機などが通行する通路を定めます。
粘着テープ、ペイント、ロープなどを用いて経路をつくります。
交差点では車両が一時停止をしなければならないという規則を定める。
ライトや鏡を乗り物に装備し、周囲の環境から視覚的手がかりを得られるようにします。
道路鏡のような鏡を設置するという案もあります。
聴覚障害を持つ人の中には、色分けされた安全帽もしくはジャケットを着用することで、自分が聴覚障害を
持っていることを知らせるようにしたい人もいるでしょう。
振動式ポケットベルの利用も考えられます。
ポケットベルのコントローラーを車両内部の利用しやすい場所に設置して、運転手がバイブレーターを作動させられるようにする。
車両内に携帯用のCCTV (閉回路テレビ) を設置して、運転手が周囲の状況を視覚的に捉えられるように
する。
聴力保護具
聴覚障害を持つ人が聴力保護具を利用する必要がある場合、多くの問題が発生します。
同僚の声を聴き取れなくなるのではないかという懸念もあります。
携帯式の電子聴力保護具が効果的な場合があります。人間の声と同じ周波数 (800Hzから4000Hz) の音だけを通し、それ以外の雑音を遮断する聴力保
護具の利用が効果的な場合があります。 ボリューム調整機能を使えば、特定の周波数の音だけを増幅することも可能です。
聴力保護具についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を参照してください:http:
//www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Sol54
ビデオテープの利用
環境整備として、ビデオテープの利用方法を検討しなければならない場合があります。
キャプション
研修用ビデオを業務に利用する場合、キャプション処理済みのものを購入するか、購入したビデオにキャ
プション処理を施します。 オープンキャプションとクローズドキャプションは、テレビ画面に音声情報を文字にして表示する仕組みです。
オープンキャプションの字幕が自動で表示されるのに対し、クローズドキャプションの字幕を見るためには、デコーダーを作動させる必要があります。
これらの字幕は、外国映画でスクリーンの下部に表示される字幕とほぼ同じ物です。オープンキャプションの利用に特別な機器は必要ありません。
ビデオのキャプション処理は、適切な機器を購入すれば社内で処理が可能で、キャプションサービスに料金を払って依頼することもできます。
一般的な慣例として、雇用者はキャプションのある研修用テープを購入する努力をすべきです。
通訳者
患者が手話を理解もしくは唇を読むことができれば、キャプションのないビデオを見る場合に、手話通訳
者や口話通訳者を利用することができます。
文書による内容説明
最後の手段として、ビデオテープの内容を文書で説明することが考えられます。
ビデオの映像を見ることに集中できないため、リアルタイムでの理解という点からみると効果的ではありませんが、映像そのものにはあまり重要な情報が含まれ
ていない場合には役に立つ場合があります。
録音テープの内容の書き取り
口頭による情報の書き取りによる環境整備には、あまり多くの選択肢はありません。
PZM (Pressure Zone
Microphone) を録音機器に接続してテープ録音の精度を上げると、聴覚障害を持つ人が再生して書き取りをする際に、手助けとなるでしょう。
これらのマイクロフォンは各種量販店で入手できます。
ダイレクトオーディオインプット (DAI) 機器、インラインアンプ、イコライザ、アンプ内蔵ヘッドセットなどが役立つこともあるでしょう。
耳の穴よりも前にずらしてヘッドセットを着用して、さらにTコイルを併用すると聴き取りが容易になることもあります。
顧客とのコミュニケーション
接客担当として聴覚障害者を雇用した場合、顧客とのコミュニケーションができなかったり、顧客の質問
に答えなかったときに失礼であると見なされたりしないかどうかについて、多くの企業が不安を持っています。
ろう患者は、自分がろう患者であり、顧客が話しかけるときには顔を正面に向けることを必要としていることを示す、バッジもしくは小さなマークをつけての勤
務を希望する (必ず自発的な希望でなくてはならない) ことがあるでしょう。
メモ用紙や携帯用のホワイトボードを常に持ち歩けば、それを利用して質問を受けることも可能でしょう。
利用しやすい位置に反射鏡を設置することも、聴覚障害者への環境整備になりえます。
患者が顧客に背を向けていた場合に、鏡に映った顧客の様子を見ることで、話し掛けられていることに気づくことができるでしょう。
それぞれの状況によって、これ以外にもさまざまな選択肢があるでしょう。
生命兆候の診断
医療分野の専門家は、ヴァイタル・サインの診断に際して、聴覚障害を補うための環境整備を必要とする
ことがあります。
アンプ付き聴診器
アンプ付きなので、呼吸音や心音などの音を、電気的に増幅することができます。
アンプ付き聴診器は、一般的には、救急救護室など雑音の多い環境で用います。聴覚補助具を利用している場合、聴診器の利用が補助具によって妨げられること
があります。 ほとんどの医療専門家は、聴診器を使うたびに聴覚補助具を外すことに抵抗があるでしょう。
このような場合、特殊な耳型 (ウォークマンのイヤホンような形で、聴診器やオーディオ機器のライン出力に接続できるヘッドセット) を利用することで改善す
ることが可能です。
警報機器についてのさらに詳しい情報は、JANの検索機能付きオンライン環境整備 (SOAR) を参照
してください:
http://www.jan.wvu.edu/cgi-win/OrgQuery.exe?Sol292
グラフィック聴診器
グラフィック聴診器を利用すると、心音を映像化することができます。
この機器を利用すると、心音を映像化して保存したり、携帯ディスプレイに表示したりできます。
心音をデジタル化して、画面に表示させておいたり、プリントアウトしたり、心臓病の兆候を分析したりできます。
血圧測定器
携帯式のデジタル読み上げ式血圧測定器が利用できる場合もあるでしょう。
これにより、心拍や血圧を画像化することができます。
状況別の解決案
状況
ある看護士は両極性の聴覚消失患者で、アンプ付き聴診器を利用していたため、聴診器を使用するたびに補聴器を外したり元に戻したりしなければならなかっ
た。 そこで、JANに補聴器をつけたまま利用できる聴診器がないかどうか問い合わせた。
解決法
JANでは、補聴器のライン入力端子を利用できる補聴器を製造しているメーカーへの紹介状を提供した。 その聴診器を購入した。
状況
ある専門職職員は難聴患者で、「即応態勢」時の応答が困難だった。
雇用者は「即応態勢」を取ることができないのは、患者が夜間に補聴器を外しているために電話の呼び出し音が聞こえないことが原因だと主張した。
雇用者は患者と雇用者の両方の利益が守られるような環境整備案を求めてJANに相談をした。
解決法
バイブレーターつきのポケットベルもしくは個人用報知器を利用するとともに、患者の役職に不可欠な職務が何であるのか明確にすることを提案した。
雇用者はバイブレーター式の目覚ましと電話の子機を購入し、目覚ましを遠隔操作することにした。
夜間でも電話の呼び出し音に応答することができるようになった。 費用は125ドル。
状況
ある事務所職員は耳鳴と聴覚過敏による聴覚障害を持っていました。 彼女は事務所の中にいると、長時間雑音に悩まされていました。
解決法
個室を与えて一人で仕事ができるようにした。 この環境整備は非常に高い効果を上げたという報告がなされた。 費用は0ドル。
状況
ある企業は、重度の聴覚障害患者について資材運搬担当としての雇用を検討していた。
雇用者は安全面でいくつか不安な点があり、フォークリフトの周囲での勤務と機械の操作についてJANに環境整備案を求めた。
解決法
フォークリフトと歩行者の通路の区分け、反射鏡の設置、すべての交差点で車両が必ず一時停止するよう定めた規則の制定、機器へのストロボライトの取り付
け、明るい色の服装や安全帽の着用に抵抗はないかどうかについての患者からの意見聴取、危険が迫った場合に同僚がスイッチを入れられる個人用のバイブレー
ター付きポケットベルの利用などの実施を提案した。
雇用者は患者を採用し、JANが示した提案は非常に有益で、結果として患者は非常によく働いているという報告があった。
状況
ある法律事務所は、ろう患者であるが発話は可能な弁護士を雇用した。
事務所では、同僚とのコミュニケーション、電話の利用、会議への出席のために必要な環境整備は、なんでもする用意があるということだった。
解決法
聴覚障害患者とのコミュニケーションに関する情報を提供し、テレタイプライター関連の製品を紹介し、テレコミュニケーションリレーシステムの利用法を指導
し、手話通訳サービス事業者への推薦状を用意した。
事務所では、患者と職場を共にするスタッフのために手話の講習を行いたいと考えているということだった。
コミュニケーション手段としてとくに電子メールを広く利用したという報告も届いている。
状況
ある雇用者がろう患者の従業員についてJANに助言を求めた。
患者の職務には出張が必要であり、就労規則で一定時間自宅に電話をすることを認めて、その埋め合わせにすることになっていた。
他の従業員が自宅に電話をかけているときに、患者は電話の場合の平均よりも手間のかかるテレタイプライターを利用する必要があったので、雇用者は患者が出
張に出た場合にはどのようにすればよいのかを問い合わせた。
解決法
通信方法に応じて時間の延長を認めるよう就労規則を改めた。
患者には電話を利用している従業員の1.5倍の時間を与え、テレタイプライターモデムと通信ソフトウェアを購入したという報告があった。
費用は500ドル。
状況
ある州の機関には聴覚障害を抱える職員が何人か勤務していました。 彼らは、緊急信号への対応と緊急連絡を行う必要があった。
解決法
すべての職員に警報システムに接続されたバイブレーターつきのポケットベル支給した。 警報が鳴るとポケットベルも呼び出しを行う。
連絡内容を書いたラミネート張りのカードと、手話や読唇を助けるための懐中電灯も支給した。
状況
ある銀行の採用担当は、ろう患者の求職者の採用に関心があり、JANに助言を求めた。
その役職には顧客の話を聞いてコミュニケーションを取ることが必要だった。
解決法
テレタイプライターを利用してコミュニケーションを行うことを提案した。
テレタイプライターは電話回線を利用して通信を行うことが多いが、JANには電話回線を介さずに2つのテレタイプライターを接続する機器についての情報が
あった。
テレタイプライター接続機を利用して、テレタイプライターのキーボードタイピングをすることで、顧客や同僚とコミュニケーションが取れるようになった。
状況
ある医療関係者はろう患者で、ある研究で実験に必要なタイマーのブザーの音が聞こえなかった。
解決法
タイマーにインジケーターランプを取り付けた。 費用は26.95ドル。
状況
ある地質学者はろう患者で、単身で遠隔地でのフィールド調査を行っていたが、双方向無線を利用した研究成果の報告ができなかった。
解決法
文字電話を利用することで、携帯電話を使ったコミュニケーションが可能になった。 費用: 400ドルと月々の電話料金。
状況
ある電話通信サービス技師は補聴器を利用していました。
彼は、テスト用の「回線割り込み」携帯電話を利用した電話回線の敷設や修理などを担当していた。 しかし、テスト機材と補聴器が干渉してしまっていた
_。
解決法
テスト機材にスピーカを取り付けて、機材を耳もとに持って行かなくても回線テストができるようにした。
この装置は補聴器を利用していない場合にも有効なものである。 さらに、アンプつきのトーンロケーターも用意した。 費用: $200.
問い合わせ先リスト
(完全なリストではありません)