聖マリアンナ医科大学 小池 淳樹
Intravascular large B-cell lymphoma (IVLBCL)
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Figure 1 HE | Figure 2 PAS |
HE染色弱拡大 (Figure 1)で,写真にみられる3個の糸球体のうち,左上の糸球体に病変を指摘できないが,左下と右端の糸球体に軽度の管内細胞増多がみられる.左下の糸球体のPAS染色強拡大像 (Figure 2)では,糸球体毛細血管内に大型異型核細胞の集積が観察される.これは,intravascular large B-cell lymphoma (IVLBCL) の所見である.腎に浸潤するIVLBCLは本例のような糸球体毛細血管 (glomerular capillary; GC) に限局する場合と尿細管周囲毛 (peritubular capillary; PTC) 細血管に限局する場合,およびGCとPTCの両方にみられる場合がある.PTCに病変が存在する場合は腫瘍細胞の認識が容易であるが,GCに限局する場合は増殖性糸球体腎炎との鑑別が問題となる場合がある.本症は予後不良の高悪性度B細胞性リンパ腫 (1-2週間で患者の全身状態が悪化する可能性がある) であることから,観察者が病理医であれば主治医である腎臓内科医に即座にその情報を伝えること,観察者が腎臓内科医であれば,この段階で血液内科医へのコンサルテーションを行う必要がある.
追加検索:
追加検索は,IVLBCLの確認とlarge B-cell lymphomaとしての生物学的特徴の分類という2つの観点で行われる.
ここで,腎生検は微小検体であることから,悪性リンパ腫の診断に際しては,1回で確定診断と病型分類ができるようにオーダーする必要がある.そこで,本例はdiffuse large B-cell lymphoma (DLBCL) の診断とCD5,CD10,IRF4/Mum1の発現状態を検討する必要がある.IVLBCLでは,CD5陽性は40%程度,CD10陽性は10%程度,CD10陰性例ではIRF4/Mum1陽性である(WHO classification of Tumours of Haematopoietic and Lymphoid Tissues, 4th ed. ).
本例の結果は,CD20陽性 (Figure 3),CD5陽性 (Figure 4),CD10陰性 (Figure 5),IRF4/Mum1陽性であった (Figure 6).
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Figure 3 CD20 | Figure 4 CD5 |
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Figure 5 CD10 | Figure 6 IRF4/Mum1 |