第87回
2011年4月1日

英文学会誌創刊を

福井大学医学部病因病態医学講座分子病理学領域
稲井 邦博先生

誌面の都合で月並みではありますが、東北太平洋大震災に被災された皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、復興に携わっておられる皆様に心から敬意を表します。

福井大学医学部ではAiセンター開設に伴いそのデーターを医学資源として活用すべく独自のネットワークシステムを構築しました。その概要は第8回Ai学会総会で報告しました。また、Ai後に解剖を行った症例で興味ある知見もいくつか得られてきました。しかし、これら知見を論文にする上で、フリーズしてしまいました。一体どの学術誌に投稿したら良いのかという問題です。

Aiは解剖部門、放射線医学分野、医療情報分野をcoreとして、その背後にある臨床医学、とくに救急医学、医療安全分野が絡み合う新学際領域です。今回の大規模災害の経過によっては、今後生命保険医学や公衆衛生をも巻き込むかもしれません。換言すれば、既存学術分野のニッチ的な集合知から成り立っていると言えるでしょう。そのためAiでの知見をどこに発信すればよいのか、はたと困ってしまうのです。筆者は血液内科・感染症内科医で、現在病理を専攻している変わり者ですが、Aiに関するネットワークの論文を医療情報分野に投稿するのは、筆者には敷居が高すぎるし、放射線医学分野ではちょっと違うかな、ましてや病理学雑誌では???。Ai followed by autopsyで新鮮な発見があったとしても、基礎疾患が比較的経験されるものであった場合、既存の臨床系学術雑誌にはacceptされにくいと危惧されます。

PubMedで”virtopsy”と入力すると既に数十の文献が検索できますが、”autopsy imaging”で検索しても残念ながらEzawa H. et al.の論文すらヒットしません。Ezawaを中心に各諸兄が理論的背景を確立されたAiという概念も、学際分野では極東の一国でしか通用しない「井の中の蛙」や趣味人の集まる「サロン」的な扱いなのです。そこで提言ですが、Aiという概念を国際的に広めるために、Ai学会で英文学術雑誌の刊行をできないかと思うのです。雑誌名は、ずばりAutopsy imagingが良さそうに思われます。Nature、Science、Blood、Circulation、Immunityなど、世界に冠たる雑誌はまさに直球勝負のネーミングです。筆者の分野ではBone Marrow Transplantationという一目で内容が分かる雑誌があり、IFは3に満たないものの、骨髄移植の基礎、臨床、看護、システムなどを網羅したonly one雑誌として燦然と輝いています。それらに匹敵するか追従する雑誌は、JBC、JCB、JIしかり、Journal of・・であることから、Journal of Autopsy imaging (JAi)も検討に値するかもしれません。一方、新たな紙媒体を刊行するには莫大な費用負担が予測されますので、電子ジャーナルとするなどの知恵が必要でしょう。いずれにせよ、Ai学会雑誌を刊行して”Autopsy imaging”という概念を、”Tsunami”や”Mottainai”と同様に、日本発の国際語として世界に発信していくことが、Aiの発展に不可欠と思われるのです。