第30回
2006年2月1日

千葉大学医学部付属病院 Ai 事始め ー
Ai大学モデル始動(2)病理の立場から

千葉大学医学部腫瘍病理学教室
小豆畑 康児

平成17年11月より、臨床各科・放射線科・各病理学教室の協力のもと、千葉大学医学部でAiが開始されました。同時に、千葉大学附属病院はAi学会認定施設A(大学附属病院としては初)となりました。開始に至る経緯に関しては、第28回配信分で千葉大学放射線科の山本先生が詳しく報告なさっていますので、私は実際に症例にあたった病理学教室の立場から書いてみたいと思います。

Ai導入を放射線科から持ちかけられた当初は、画像撮影という新たなステップが入ることによって剖検開始時間が遅れ、また、手続きの上でも煩雑さが増すのではないかという不安がありました。一方で、Ai自体の有用性については異論を唱える者はなく、大いに興味はありました。そのような中、第一号の症例を私が担当することになりました。症例は突然死の女性で、臨床では大動脈解離を疑っていました(具体的な所見に関しては第三回Ai学会にて呈示致します)。突然死の症例の病理解剖では、死因を見つけなくては、というプレッシャーがあります。しかし画像情報があったため、プレッシャーがかなり軽減されたように思います。また、この症例では通常とは異なる順番で臓器の摘出・検索をしましたが、これも画像の情報を元にしてその場で判断した結果です。剖検手技・手順を効果的に変えて大事な病変部を損壊なく詳細に検索できればより良い結果が得られます。これはAi実施によって得られた予想外の収穫でした。心配された手続きに関してですが、撮影を行う時間が変更になり混乱が少しあったものの、病理側としては連絡をきちんとしてもらい、開始時間を守っていただければ十分対応できる、という印象でした。

剖検の検索範囲には限界がありますし、執刀者の力量も結果に影響してしまいます。また、剖検も医療現場での検査のひとつだと位置づけるならば他の検査に比べて技術的な進歩が目立っていないのが現状です。さらに、病理学教室の人員は不足気味な上、業務も多様化して剖検にかけられる人・時間は相対的に減ってきています。これらのいわば剖検の弱点というべき部分をAiが補完してくれれば、最終的には患者や医療の利益につながると思われます。とりとめの無い文章になってしまいましたが、剖検とAiのコンビネーションが、想定されうる剖検の進化形のひとつで、しかも実現しつつある、ということは事実です(もちろん、画像情報に剖検がひきずられてはいけませんし、時には批判的に眺めることも必要ですが)。今後さらに千葉大学でスムーズな実施がなされるよう私たち病理学教室の側でも努力していきたいと考えています。