各種研究に関する解説

E. coliKlebsiella spp.、P. mirabilis

ESBL産生性の調査研究

◇ 背景および目的

 基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(Extended spectrum β-lactamase:ESBL)産生菌は1980年代半ばに初めて欧州で報告され,わが国においても2000年以降,徐々に増加を認め,近年では急激な勢いで検出数が増加している。ESBLはAmblerの分類でクラスA,Bush & Jacobyらの分類ではサブグループ2beに属する酵素であり,ペニシリン系薬やセファロスポリン系薬,モノバクタム系薬を加水分解することに加え,clavulanic acid(CVA)やsulbactam(SBT),tazobactam(TAZ)などのβ-ラクタマーゼ阻害剤により酵素活性が阻害されるという特徴を持つ。
 ESBL産生遺伝子はプラスミド上に存在するため,他の菌株や菌種を超えて伝播することが可能であり,院内感染上大きな問題となる。産生遺伝子のタイプにより抗菌薬の分解能に差があり,ceftazidime(CAZ)を効率良く分解するSHV型,TEM型などのセフタジジマーゼと,cefotaxim(CTX)を効率的に分解するCTX-M型などのセフォタキシマーゼに分類される。現在,わが国で分離されるESBL産生菌の多くはCTX-M型であり,世界的に広がっている型もCTX-M型である。CTX-M型はCTX-M1やM2,M8,M9,M25型の5つのグループに大別され,さらに100種類以上のバリアントに分類されており,地域により検出頻度が高い遺伝子型は異なる。世界的にはCTX-M15 O25 b3 ST131株が猛威をふるっているが,アジア地域においてはCTX-M9 groupに属する遺伝子型が多く検出される傾向にあり,世界的に問題となっている型とは相違がある。また,最近ではCTX-M1 groupとCTX-M9 groupの2種類の遺伝子が融合したキメラ形CTX-M型ESBLの検出も報告されており,本研究会においてはこれらESBL産生菌の流行状況を把握するために疫学調査を実施している。

◇ 対象菌種

 Escherichia coliKlebsiella pneumoniaeKlebsiella oxytoca および Proteus mirabilis を対象とする。

◇ スクリーニング基準

 cefpodoxime(CPDX)のMICが≧2μg/mLあるいはcefazolin(CEZ)のMICが≧16μg/mL,
 もしくはディスク法でCPDX ≦22mmあるいはCEZ ≦15mm



◇ 確認試験

・ESBL産生性の確認
 Clinical and Laboratory Standards Institute(CLSI)によるESBL産生菌検出指針に則り,CVAによる阻止円の拡大を確認する試験としてCAZ,CTXにcefepime(CFPM)を追加したDouble disk synergy test(DDST)を実施(図1,2)



・ESBL産生遺伝子の遺伝子型の確認
 特異的プライマーを用いたPCR法によりESBL産生遺伝子の遺伝子型をgroupレベルで検出(図3)


◇ 調査成績

◇ 年度別ESBL産生菌の検出状況


◇ ESBL産生菌の遺伝子型の内訳


◇ 報告論文