東海大学ドクターヘリ試行的事業報告書 |
|
平成13年4月 |
東海大学ドクターヘリ試行的事業検討委員会 |
|
ドクターヘリ試行的事業検討委員会(2000年度) |
|
|
所 属 |
職 名 |
氏 名 |
委員長 |
東海大学病院 |
病院長 |
谷野 隆三郎 |
副委員長 |
東海大学病院救命救急センター |
センター長 |
猪口 貞樹 |
〃 |
神奈川県医師会 |
理事 |
芦川 和高 |
委 員 |
神奈川県病院協会 |
常任理事 |
近藤 脩 |
〃 |
神奈川県消防長会 |
会長 |
三品 秀夫 |
〃 |
神奈川県県西地区消防行政協議会 |
会長 |
塩塚 喜六 |
〃 |
北里大学病院救命救急センター |
センター部部長 |
大和田 隆 |
〃 |
神奈川県衛生部医療整備課 |
課長 |
大崎 逸朗 |
〃 |
神奈川県防災局防災消防課 |
課長 |
畑 山 紀 郎 |
〃 |
秦野伊勢原医師会 |
監事 |
増田 隆一郎 |
〃 |
伊勢原市保健福祉部 |
部長 |
岩崎 栄 |
〃 |
東海大学病院 |
副院長・事務部長 |
平野 悦治 |
〃 |
東海大学病院救命救急センター |
次長 |
山本 五十年 |
〃 |
東海大学病院看護部 |
次長 |
川瀬 菊 |
事務局 |
東海大学病院事務部総務課 |
課長 |
園山 浩 |
|
|
・報告書概要 |
1999年10月1日より2001年3月31日まで、東海大学病院を基点としてドクターヘリ試行的事業を行った。期間中の実搬送症例は総計485例で、ドッキング方式による消防機関からの直送367例、他院からの転院搬送118例であった。直送例342例の、出動要請から離陸までの平均所要時間は5分、平均飛行時間6分、現場(臨時ヘリポート)での平均滞留時間9分であった。 |
実搬送485例のうち外傷等外因性のものが259例(53.4%)、疾病が226例(46.6%)とほぼ同数であった。外因性の259例の中では外傷が186例と多く、次いで中毒24例、熱傷12例で、疾病226例の中では脳血管障害を中心とする脳神経疾患が78例と最も多く、次いで心筋梗塞などの循環器疾患52例、消化器疾患23例であった。また485例中56例(11.5%)は病院到着前心肺停止症例であった。 |
期間中の全搬送例485例中365例(75.3%)に何らかの医療処置が施行され、処置内容としては末梢静脈確保312例、薬物投与132例、気管内挿管81例、中心静脈確保21例などの頻度が高かった。その他胸腔ドレナージ(6例)など、生命予後に大きくかかわる処置が行われた。 |
時間短縮効果の検討から、救急車による現場からの予想搬送時間が概ね10分以上であれば、ドクターヘリによって治療開始までの時間が短縮され、また予想救急車搬送時間が長い場合ほど治療開始時間の短縮効果は大きく、平均的には治療開始までの所要時間が半分以下になることが判明した。 |
実搬送例のうち482例について効果検証を行ったところ、ドクターヘリ搬送によって回復症例が85例(17.6%)増加し、重度後遺症状を残した症例が30例(6.2%)減少し、死亡症例が55例(11.4%)減少した可能性があるものと推計された。転院搬送では搬送時間短縮効果、直送では搬送時間短縮効果に加えて早期に適切な治療を開始した効果が予後に大きな影響を与えていた。 |
期間中実搬送を行った消防機関にアンケート調査を行った結果、ドクターヘリの最大の価値は、医療スタッフによる迅速な初期治療の開始、搬送時間の短縮によって傷病者の救命率が向上することにあり、参加した全ての消防機関が本格導入を望んでいることが明らかになった。また同時に救急隊の負荷軽減と様々な心理的効果が得られることが判明した。一方、臨時ヘリポートの不足、救急隊とヘリの交信手段や現場での引継ぎなど情報交換の不良、使用器材や家族への対応などの多くの問題点が残されており、今後改善に向けた努力が必要である。 |
結語:ドクターヘリを用いると、医療スタッフの同乗とヘリの迅速性によって初期治療開始までの時間が大幅に短縮され、特に重症直送例に対する救命効果が得られる。この点においてドクターヘリには他の救急ヘリとは異なる価値があり、様々な解決すべき問題は残されているが、早期本格実施が望まれる。 |