ドクターヘリ調査検討委員会(第5回)議事要旨


1.日 時:平成12年4月13日(木) 16:00〜17:50

2.場 所:総理府3階特別会議室

3.出席者:

(委員)小濱座長、石井委員、今井委員、大森委員、小笠原委員、小川委員、西川委員、宮坂委員、山内委員、横田委員
(事務局) 石井内閣審議官、関係省庁(オブザーバーとして、郵政省が出席)
4.議事次第
(1)開会
(2)議題
  1)ドクターヘリ調査検討委員会報告書(案)について
(3)閉会
5.議事内容
(1)議事に先立ち、人事異動による委員の交代について紹介があった。
  加藤委員 → 横田委員(警視庁理事官)
  針生委員 → 山内委員(仙台市消防局警防部長)
(2)小濱座長より、本日は報告書の取りまとめに向けた総括的な議論を行うことが述べられ、事務局より報告書の概要についての説明が行われた。

○GPSの問題と地上との通信の問題のところで少し気になるところがある。

 1つはGPSに関して、アメリカが24個プラスαの衛星を上げて世界中に使わせているが、世界のどこかの地域でアメリカが深刻な脅威を覚えるような紛争あるいは戦争が起きた場合、自国軍の運用のためにGPSについて何らかの操作を行うことが考えられる。その場合、軍事用の精度は極めて上がるが、民間の使用部分については大幅な影響が出ると思われるが、こういったことを前提にGPSを捉えないと、大変危うい不確実性がある。

 GPSを導入して使用することは賛成だが、GPSなしでも同じように飛ぶための補完的な手段や訓練としてどういったことが考えられるかお伺いしたい。

【郵政省】 GPSが本来軍事用の目的でつくられていることから、軍事で使うときに精度を落とすことがあると聞いている。したがって、GPSを使うシステムは、このような状況を踏まえて構築しておかなければならないだろう。

 もともとGPS自体、100m程度の誤差が出るシステムであるため、この誤差を補正するような技術はいろいろ開発されている。例えば、カーナビゲーションなどで既に実現されているが、一つはジャイロにより位置を補正するシステムがある。

 また、FMの多重放送の電波を使い、GPSの誤差を補正するようなことも現実に行われており、誤差の範囲が2〜3mまで狭まってくるという状況になっている。

 それから、携帯電話のシステムは、地上では建物や地形の凹凸があるために上空で電波を出した時に比較して飛ばないということを前提に設計されている。例えば東京では500mから1kmくらいおきに携帯電話の基地局があるが、ある程度距離が離れた基地局では、電波が弱くなるので、混信が起きないということで、同じ周波数を繰り返し使っている。

 ところが、これを上空で使うと、地上では1〜2kmくらいしか飛ばない電波が上空では10km以上飛んでしまうので、それをドクターヘリで使用した場合、複数の基地局の電波がドクターヘリに飛び込んでくることになり、混信して使えなくなる。そういった意味で、携帯電話はドクターヘリで使うのがもともと技術的に難しいシステムとなっている。

 公衆用のシステムは、阪神・淡路大震災では加入者が少なかったので輻輳が起きなかったが、通常、例えば有珠山の今度の火山爆発が起きたときには、携帯電話が混雑して、かからなくなるという現象が起きたようだ。政府関係の機関、特にセキュリティに関連する機関では、常に通信できるように、警察、自衛隊、消防などの機関には専用の電波を割り当てており、公衆用のシステムが使えなくても通信できるようなシステムを構築している。

 ドクターヘリの通信についても、専用の電波を使った通信システムを構築する必要があると思っている。そういった意味では、まさに通常の消防ヘリと同じような形で、業務用の無線を持つ必要があるだろう。ただし、通信は、指揮命令系統と連動しており、周波数だけを割り当てたとしても機能しない。むしろ、先に指揮命令系統をつくり、それに応じて必要な周波数を考えていくという体系になる。

○ 通信の問題だが、例えば、大規模なテロ事件が起きて、多くのけが人が発生し、そこにドクターヘリが行かなければいけない場合、あるいは、本格的なテロリスト集団による立てこもり事件などが起きている近くで、ドクターヘリの出動要請があったなどという場合、アメリカでは、中にこもっている犯人とその仲間の情報収集要員とが携帯電話など簡便な簡易通信装置で交信することを妨げるシステムがある。その場合には、通信システムは完全にブラックアウトの状態になる。そういうときに、何か補い得るようなシステムが考えられないだろうか。

【郵政省】 同じ周波数の電波を出して、通信をブロックする装置のことを指しているのだろうが、こうしたものを使われると、通常のやり方では通信はできなくなるというのは技術的な結論。

 その際には、ジャミングする装置が全ての周波数にわたって通信できないようにすることは非常に難しく、通常は、複数の周波数を持って、一つの周波数がジャミングされても使えるようにするという形になっているのではないか。

 また、ドクターヘリにおいても、ぎりぎりの情勢ではそのような状況を想定しなければいけないだろう。

【警察庁】 今までは、せいぜい公共放送の機微にわたる部分の自粛をお願いする程度で、具体的に電波が全然効かないようにしたり、携帯電話や有線もだめにするというオペレーションをやったことはないと思う。今後、こちら側がやることになる場合には、ドクターヘリが混乱して事故を起こすことのないように、あらかじめ何にかけるかということは検討すればいいのではないかと思う。

○ ドクターヘリの電波に関して、指揮命令ができればそれに対してどう対応するかと考えられるという発言があったが、運航側がそういうものを用意すれば、郵政省として考えてもいいということか。

 というのは、実際にドクターヘリを飛ばしていて、一番困っているのは無線。医療機関と消防、消防とまた他の医療機関とのつながりが全然できなくて、それを何とかならないかと考え、現在中国電波監理局に相談しているところ。

【郵政省】 具体的なお話があれば、事前に早めにお知らせいただければと思う。

 我々としてはどういった周波数が使えるのかどうか、あるいはそれを使う形態としてどういう形態になっているのかということを把握する必要がある。例えば地上系に割り当ててある周波数を上空のヘリで使うとなれば技術的な問題も生じてくるので、技術的な側面からも検討を行うことになる。

 あとは、どういう相手と通信をするのかということで、特定の相手という話になると、その特定の相手に割り当てている周波数を使うことが一番合理的だろうし、我々としてはそういったところを見ながら検討するという形になる。

○ 結局、この報告書では財源の問題が今後の検討ということになっているが、実際に実行ということになるとどういうことになるのか、何のためにやったのかという感じになってしまったのではないか。例えば、委員会が関係する役所に向かって「ぜひこうしてください」という表現ではどうなのか。

 時間的なことが書いていない計画というのは計画ではない。世界的に見ても、明日やればいい、明後日やればいいということではなく、今日からやらなければいけないこと。

【厚生省】 試行事業は12年度末までで、まだ始まってから1年もたっていない。そういう中で、13年度以降どうしていくのかというのは、非常に大きな検討課題だと思う。

 ただ、残念ながら、現在の時点では13年度の予算要求については、議論が始まっていない。従って、役所の立場としてはこのくらいの記述でやむを得ないのかと思う。

 規制緩和だけすれば飛ぶという状態であればよいが、これまでの経験から見て、ある程度の財政的な裏付けのあるスキームを一方で用意していかないと、長続きはしない。

【内閣内政審議室】 日本で本格的に全国展開するときにどういう考え方の整理をして、国の予算なら国の予算をどのように用意していくのかということについては、まだ検討の緒についたばかりなので、今回、具体的にいつまでにと明記しても、成果の方が伴わないのではないかということから、事務局としてはこういう表現でご提案したところ。

○ このドクターヘリ調査検討委員会が発足したことが、各方面にかなり早くから伝わっており、特に病院関係、医者の間では、全国的に医者たちの間で検討会が始まっていたり、ヘリ会社では技術的な問題に関する検討会も熱心に行われている。

 世の中のニーズは非常に大きいし、関係者の検討がスタートしているのに、このままの状態で、財政的措置ができないからいつになるかわからないというのでは非常に問題だと思う。

 この件については、報告書に書かれている「ドクターヘリ運航検討委員会」で検討されるのではないか。今、地方分権の流れの中で、そういうものも地方に任せて、そこで財政のことも含めて検討されるべきではないか。

【内閣内政審議室】 報告書案には、運航体制、スタッフの問題、高速道路への着陸地点の調査などいろいろなことを書いているが、都市部や地方など、いろいろ地方の特性に応じた形でさらに詳細に詰めるべき点があることから、都道府県単位で、専門家なり関係者が集まっていただいて検討する場として設定しようという趣旨である。

 地方分権は趨勢として進んでいるが、財源まで地方ごとに検討して決めてもらうというところまでは考えていない。

○ 一番最初にこの委員会を開くときに、前の森山審議官が「この委員会は実現するための委員会。決して、実現しないための委員会ではない」と断言されましたので、それを心に持ってこの会をずっとやってきたつもりだし、今後も最初のご発言が生きていくものと信じている。

 このドクターヘリをやりだして今年でもう19年。その間に、欧米諸国では車と同じように走っているし、発展途上国ですら高速道路に自由に降りている。その中にあって、我が国でまだ救急ヘリが1機もなくて、災害時対応もすぐにこれだというのがないというのは、本当に残念だ。実際に僕らがこれをやり出したのは、警察庁の初代の交通局長が昭和56年に私どもの大学に来られて、交通事故死がどうしても減らない、やはり減らすのは絶対ドクターヘリだということで、私たち医者以上に熱心だった。医者でない人がこれだけ人の命を救うのに一生懸命されているのに、それは私としてもぜひ何とかやりたいということでやり始めた。

 今年初めて厚生省が試行的事業ということで1年半の事業を実施していただいたことには、本当に非常に感謝しているし、これがこのまま終わるとは全然思っていない。

○ 今までこのドクターヘリの話が出て、いつも飛ばす飛ばすと言っていまして飛ばない。「今度は飛ばす委員会ですか、議論する委員会ですか」という話をしたことを覚えている。「飛ばすためだ」ということでこの検討会は始まったと思っている。

 報告書に委員の名前が書いていないが、検討委員会は省庁が入っている。この委員と書いてあるのを見ると、行政の方もいるが、財政の問題のところだけ省庁が書いたような感じだ。

 報告書を出して、省庁も努力してもらいたい。財政の問題について、省庁に「これらにおいて検討が進められることを期待する」というのではなくて、飛ばすんだということでこの報告書をまとめていただきたい。

○ これを眺めると、もう少し工夫して、読んで面白い中身にする必要があるだろうと思う。こんなに世界はやっているのかということを、ファクト&フィギュアズ、事実とデータで示す。ドイツの場合はこのくらい命が助かっておると、日本の試行事業でもこういう結果が出ているよというのをコンパクトに、わかりやすく示せば、国会議員だろうとマスコミだろうと面白く読んでくれる。

 アメリカの政府機関やシンクタンクの報告書は、最初のエグゼクティブサマリーを読んだだけでも相当わかりやすいし、これくらいヘリを展開すればこれくらいの人命は助けられる、ついては、これくらいのヘリの展開に当たってこれくらいの財源が必要だといったようなことを、算出して示している。ヘリの機材、人件費、燃料、それに関する簡単な施設に関する費用。機材は、消防・防災ヘリを使っていく、あるいは民間のヘリをチャーターするということがあるが、民間のヘリだったらチャーター費用になるし、消防・防災ヘリについては、自治省消防庁と話し合いながらどのくらい増強していき、それに伴う運航費用についてどういう補助の財源を確保して行うかといったことが出てくるだろう。

 そういったものを概算すると、ドクターヘリを持つためには1機当たり幾ら必要かということも浮かび上がってくるし、全国的にどれくらいの機数が必要かということも、国際的な活動をもとにたたき台をつくることができる。そういったものをもとに全国展開計画を大ざっぱに立ててみて、財政面での目標を示し、同時に問題提起を行うといったことができないだろうか。

【内閣内政審議室】 この検討委員会の中の関係省庁の位置づけは、学識経験者としての委員の先生方とそれから関係省庁の方々、両者が委員会の構成員ということ。

 それから、本委員会でもし工夫することが可能であれば、これまで4回開いた中で、例えば岡田先生にお見えいただいて三方ケ原の例に関するいろいろなデータのご紹介があったが、そういったものを報告書本文とは別に、この検討委員会でヒアリングをしたり、議論をするベースになる事実として考えたのだということを別冊で用意することが考えられる。

○ 世界のドクターヘリの状況について言うと、例えばもう5年くらい前、『自治研究』という雑誌に自治省消防庁の当時の補佐が詳しい論文を書いている。そのデータだけでも、現在の数値と置き換えるだけでそのまま使える。『自治研究』というのはあまりなじみのない雑誌だが、実際に事実とデータが並んでいるから読んでしまう。

【内閣内政審議室】 ドクターヘリ事業には、いろいろなかかわり方で多数の省庁が関係している。それぞれの所掌事務の中で、規制緩和や試行的事業など、いろいろご検討いただく場面があるわけだが、そういう中で11年度の事業としてこの検討委員会を当室で主催したというのは、総合調整するセクションが、専門家の知恵も借りながら、飛ばすためには何を詰めていけばいいかということをまとめていこうということ。

○ イギリスでは、エアーアンビュランスくじというのがあり、自治体が売り出している。

○ 今後このヘリコプターについて、例えば国会で問題になったときなどは、このヘリコプターの調査検討委員会のことで聞かれたときに誰が責任を持つことになるのか。一番ここに書いてあるのは金の話だから、金さえあれば飛ぶのかと。金は面倒見るから飛ばせよと言ったときに、飛ぶようにうまくいくのか。

 勿論、行政にだけ責任を負わせるのではなくて、我々も飛ばせるように努力しなければならないと思っている。

【内閣内政審議室】 今回、新しいシステムの骨格をまとめていただいたのだから、これで、大きな骨格が整理できた。その後から財源が伴ってくれば、それは飛ぶということ。

○ ドクターヘリは決して運ぶための手段ではなく、いかに早く治療するかのための一つの方法。重症患者を運んで、しかもその患者をいかに早く治療するかということから必要なのであって、命を救うということに立てば、関係省庁も学識経験者も意見は全部一緒だと思う。そういう発想に立てば、これはそう難しい問題ではないと思うのだが、日本はなかなかそういうふうにならないというところが、非常に難しいところ。

○ 報告書の頭のところに、結論をどのように結ぶかというところで議論がまだまとまらなかった、そこに財源問題が影を落としたということをもう少しわかりやすい表現で入れておいたらどうだろうか。

 同時に、いろいろなマスコミの人や政治家、経済人と話をしていても、ドクターヘリというのは何となく聞いたなという程度で、こんなに効果があるのか、しかもこれだけの金でこれだけの人命を救えるのかということについては無知。

 防衛予算よりはるかに少ない桁で、多くの人命が助かる。それを具体的に示すことによって、「だからやろう」という話がいろいろなところから生まれてくるのではないかと思う。そういった意味で、眺めて面白そうな報告書にしていく加工を最後の段階でできればという感じがする。

○ 試行的事業において、ヘリに乗った患者とか付添いの方、消防にアンケートを出している。そのアンケートを見ていると反対の意見が一つもない。非常に安心して乗れたとか、一回救急車に乗ったことのある人は、こんなに楽だったら何でもっと早く導入しないんだとか、非常に前向きの意見がたくさん出ている。国から見た国民の意見を少し載せていただくとか、100人以上集まれば相当数としては信頼性が高いと思うのだが、そういうデータもとっているので、利用していただいてもいいかなという気はする。

○ 先ほどから出ている高速道路に死亡事故等もあるが、大分記述が具体的に書かれている。いよいよ後は財源問題のところまで議論が来たかなという印象。

 いろいろな体制だとか、整備の手法ができれば、最後は財源ということで、この報告書はそれなりにうまくまとまったのではないかという気がしている。

○ 報告書の中身は、運航体制だとか、搭乗者のスタッフの教育だとか、在り方だとか、救急現状の安全管理などでは、相当きめ細かにいい報告書ができていると思う。

 ただ、2つの医療機関で行われている試験事業のデータを後ろにつけるとか、海外の実態がついていないというのが残念ながらインパクトに欠けるのではないかと思う。

 今後、一番大事なのは、関係省庁の今後における検討、これがうまくいくかいかないかによって具現化するかしないかが決まる。その辺に期待している。

○ 現在、日本も民活に進もうとしている。規制の部分は国が負うけれども、あとは保険会社と相談して民間保険を新たにつくるという方法もあるのではないか。そうすれば、意識の高い人は保険に入ると思うし、脳卒中その他の疾病において手当てが早ければ非常に早く治癒するということは結構世の中の人は知っているわけだから、或いは中高齢者になったら自分は何かの際に1回ヘリが呼べるということになれば保険に加入する可能性も高いと思う。

 そういったことも含めて、財源さえあれば飛ばすことができるという話だったし、安全管理や技術面ではかなり綿密に検討したのだから、「今後別委員会を設定し、検討する」などとすべきではないか。

【内閣内政審議室】 公費を全く当てにしないという意味で、完全民活でいくということで割り切るのであれば、今のお話のような方法も浮上してくると思う。一方、ある程度国費で手当てしていくとすると、専門家の知恵を借りる部分もあるものの、新しい別委員会が報告書を集約できたからといって、それがすぐ行政ベースの予算編成の過程に乗っていけるということでもない。

 行政ベースで予算編成の中で実際に予算を獲得するというプロセスは、新しい別委員会で結論を出してもらうということとは別の話ではないかと思う。

○ 救急業務というのはほとんど公的なお金で100%やっている。従って、ドクターヘリだけを民営というのは難しいと思う。

 基本的には国のお金をベースとして、プラスそれに例えば損害保険協会のお金とか自賠責の特会とか、そういうものを付け加えて背負っていきたい。民間が中心になってしまうと、国の立場というのが中途半端でおかしくなるので、国をベースにやるということだと思う。

○ お金がどのくらいあればどのくらいのことができるかという見積りは、あった方がいい。

 宮沢内閣の時、カンボジアPKOに自衛隊を出す際に、たまたま大蔵省の人たちと話していたら、30歳そこそこの係長が「私が首を縦に振れるのは100億まででございます」とかパッと言っていた。実際に七十何億で済んでいるわけ。ドクターヘリ事業は、1年にそんな金を食う話ではないし、長期計画さえ立ててあれば、彼らの感覚で見たら、微々たるもの。

 本当は財源の話をする上で、何かもとになるデータがあれば、こんなに国民が感謝することに対して自分たちが何かできればという思いを持ってもらえるのではないか。

【厚生省】 特に救急医療の場合には、公費中心ということで国、自治体のお金を工面されている、それに医療費ということで保険財源を組んでいるという状況なので、私どもが責任を持ってきちんと物事を進めていく覚悟はできている。

 私どもは行政システムの中で、従来の救急医療とのバランス或いは財源構成について、救急医療を預かっている立場として、一番中心になってきちんと考えなければいけない。

○ 運航面とかあるいは安全面とか出動の面では、この委員会は相当の効果があったと思っている。

 ただ、今まで4回やってきて、最後に急にこの財源の問題が出てきたが、実質的には審議が全然なされていないのだから、ここで結論めいたものを出すということ自体がまず無理ではないか。

 普通ならば運航分科会と財源分科会みたいなものがあって、そこで相互に関連をとりながら検討が進められる。確かに、これはほとんどが公費の援助なくしては成り立たないわけだから、仮に分科会をつくって結論を出しても、その結論がそのまま財政的な支出にはつながらないとは思うが、やはり一応の議論をして、それを参考に厚生省なり、各省が検討いただくということが必要ではないか。

 財源の問題というのは一番大切な問題だから、委員会なり、分科会をつくって検討する、あるいはいろいろな資料を揃えて検討いただくことは、ぜひ積極的に取り組んでいただきたい。

○ 今回、航空法の改正により、民間でもドクターヘリが現場に降りられるようになったことが具体的な最大の成果だったと思う。

○ 運航体制等々についてはいろいろ議論をしていただいて、実際にやっていく上での調整の必要な部分はあると思うが、大分前に進むことができるのではないか。

【自治省消防庁】 今回、この報告書案を受け、財源問題の他にもいろいろこういうことが必要だという指摘をたくさんいただいていると思う。

 私ども、実際に消防・防災ヘリ、救急ヘリを飛ばしているのだから、その辺りについても実例をもとに、さらに検討しろという宿題を与えられたと認識しているので、この点についてはこれからも重々やっていきたいと考えている。

 消防庁報告書基準については、各圏域における作成のお願いを2月に課長名で通知したところ、早いところでは既に3月中に基準をつくり、実際に飛ばしているという地域もある。また、ヘリコプターが救急車に比べて実際にどれくらい早いかという時間の計算をしてくれた県もあり、各地域においてかなり取組みが前向きに進んでいると認識している。

 実際に私どもで示した基準のほかに、各地域の特色がどのようなものかというのは現在調査中である。

○ このドクターヘリの問題が具体化してから、全国の消防庁の関係者が相当アクティブに取り組んでおられるということは私も聞いている。それもこの委員会の具体的な成果の一つではないかと思う。

○ 8ページに「操縦士及び整備士は〜医療機器の基本的な仕様とか電磁波干渉等による知識を持っていなければいけない。」とあるが、この報告書の中ではあまり難しいことを言わない方がよいのではないか。

○ 以前本委員会で発表したように、医療機器が、特に除細動を使ったときに、航空機の計器に異常を来している。こういう現実的なことが出ているので、航空機に積んでいる医療機器からする電磁波による航空機の影響度を一定の期間試験し、マニュアルをつくるべきという案を示した。

 例えば「除細動を使うときに機長の了解を得て」と東京消防庁のマニュアルには書いている。オートパイロットで飛んでいる場合は、それが切れてしまうので、故障したというウォーニングがつく。従って、これから使うときには自動操縦装置を外して、マニュアルで飛ぶといった、そういうマニュアルをつくっておきなさいということを入れたつもり。

○ 「ドクターヘリが事故等に遭遇した場合の問題」──これは実際に事故を目撃した場合とかいうような話だろう。ただ、日本の場合、役所の間の問題があって、こういうことが必要かなと思うが、ロサンゼルス市の消防局のベル412で飛んでいて、ハリウッドの邸宅が燃えているのを見たことがある。消防車が駆けつけ、ヘリも来た。上から下の消防車に「空中消火をやるかやらないか」と聞いている。そうすると、「消防車が今6台届いたから、ほぼ鎮火できる体制だからいい」とか、その場で判断する。「マニュアルはどうなっているのか」と聞いたら、「そんなもの、できるかどうか聞くのが普通であって、そんなマニュアルでやることではない」と言われた。

 すべてにおいて彼らはそういう感じ。誰が指示を出すことなく、下からやっていくわけだから。ただ、この辺は日本の場合かなりきちんと決めておかないと難しいか。

○ この報告書の中にマニュアルをつくるとか、協議をするとかという文章がいっぱい書いてあるが、関連省庁が作成するという意味か。

 もし試行的事業において作成するということであれば、検討委員会に対して、例えばこういうマニュアルを想定して実験をしなさいとかといった、具体的な指示を早く出していただきたい。

【厚生省】 試行的事業の中で検討を詰めるというものもあるし、いずれにしても試行的事業のノウハウを使って最終的には厚生省が責任を持って詰めていく必要があるという認識。

(3)小濱座長より、今回の報告書に関しては基本的には了解いただいたということで、後は座長に一任ということでよいかとの提案があり、了承された。なお、具体的には、今回の議論を整理し、座長と相談の上、最終案を委員に送付して確認することとされた。


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