ドクターヘリ調査検討委員会(第4回)議事要旨

1.日時:平成12年2月1日(火)14:30〜16:30
 
2.場所:総理府3階特別会議室
 
3.出席者:
(委員)小濱座長、石井委員、今井委員、大森委員、小笠原委員、小川委員、加藤委員、西川委員、針生委員
(事務局)石井内閣審議官、関係省庁
 
4.議事次第
(1)開会
(2)議題
  1)ドクターヘリコプターについて(小濱座長)
  2)ドクターヘリ導入に当たっての検討課題について
(3)閉会

5.議事内容

(1)小濱座長より、ドクターヘリの定義についての提案があり、それに対する質疑が行われた。

定義:「ドクターヘリコプターとは、消防本部からの出動要請、傷病者発生現場の救急隊からの出動要請、及び医療機関からの重傷救急患者の緊急転院要請に対し、直ちに(5分以内)、救急医療に精通した救急医等の医師、看護婦等が専用ヘリコプターで出動し、救急現場等から高度な救急医療機関に至るまで、迅速かつ連続的に高度の救急医療を提供するシステムをいう。従って、使用されるヘリコプターは、重症傷病者の治療に必要な医療機器や医薬品等を搭載した専用機であり、救命救急センター等の高度な救急医療機関の敷地内に配備されるものである」

○ 理想形としてはこのとおりなのだろうが、いろんな資源を活用して、ドクターヘリを実際に運用していくときに、消防機関の消防・防災ヘリを活用する場合には、ドクターをピックアップしていくやり方というのも考えられる。

○ 最終的には、全国的にヘリを配備するのだから、配備するヘリの数や、配備の単位(都道府県ごと、救急救命センターごとなど)などについても規定すべきではないか。

○ 今回はアウトラインということでまとめたので書かなかった。将来的には都道府県に1機とか、半径50キロに1機とか、いろんな考え方があると思う。
 当面、100キロ範囲内であれば大体16、17か所くらいでカバーできる。100キロというのは大体30分以内。それを更に50キロにすれば、その倍の32、33か所、都道府県単位でいくと47か所といった数になる。

○ 小濱座長一般的には、救急隊から消防本部へ連絡して、消防本部から依頼するという手法が取られると思う。救急隊からドクターヘリのところへ直接要請するということは現実的にあり得ないのではないか。

○ 原則としては消防方面に連絡されるのだが、現場から通報されることもあるのではないか。前回の委員会で、岡田先生もそういったケースがあると報告していた。

○ この定義に当てはまるものに特例措置や支援策を講じるというのであれば、定義はもう少し広めにした方がよいのではないか。例えば、直ちにと言っても、現実に5分以内でないものもあるかもしれないし、配備する場所も必ずしも救急医療機関でないかもしれない。これに必ずしも合致しないものについても、救急医療のためであれば、幅広く支援策をすることとした方がよいのではないか。

○ 小濱座長確かに、医療機関がないところは、その近くの場所に設定されたり、空港の中に設定されるなど、いろいろなケースが考えられる。これはあくまで大体のベースになる文章と考えてほしい。

(2)次に、前回までの議論も踏まえて、ドクターヘリ導入に当たっての検討課題について更に議論が進められた。

「1.はじめに」この検討委員会の目的は、ドクターヘリを前向きに検討していくというものであり、救命救急事業の中でドクターヘリを全国的に導入していきたいという趣旨のことを規定したい。

○ 消防庁の消防・防災ヘリとドクターヘリとの関係や、あるいは諸外国のように全部専用機にするなど、全体の構成をはっきりさせておく必要があるのではないか。

「2.運航体制(1)運行形態」:例えばドクターヘリの常駐は、原則として救命センター等の医療機関にするとか、事業を全国展開するに当たっては、民間のヘリコプターの積極的な活用に加え、ピックアップ方式で消防・防災ヘリをドクターヘリと同じラインで運用しながら、全体としての事業を展開していく。
 厚生省の試行的事業では民間機を使っているが、それプラス現在ある消防・防災ヘリとか、警察庁のヘリも、もしも医者が必要であればピックアップして、ドクターヘリと同じ形で運用する。

○ ベースになる飛行機の数を想定することが大事。どれくらいあれば日本の救命救急のために役に立てるのかという数字をはじき出した上で、どういう組織のヘリコプターで当面は組み立てていけばよいのかという形を出す。それぞれの場、組織からヘリコプターを提供してもらうという形ができ上がれば、その中に専用のドクターヘリとしての機体といったような指定も行うことができる。
 この委員会では、あえて防衛庁、自衛隊を外に置いたわけだが、一番沢山ヘリコプターを持っているのは陸上自衛隊で450機以上。そのうち、これから陸上自衛隊の中心的なヘリとなるブラックホークという大型の機種がある。アメリカのメーカーの資料を見ると、高度な医療システムを積んだ高価な機体もあるが、例えば陸自のブラックホークの中に、各方面航空隊ごとに1機ずつ医療機器も入れながら、全体を支える形をつくるといったことも考えていいのではないか。

○ ドクターヘリがブロックごとに確実に配置できるという見通しがあるのであれば、体制的な面から議論してもよいのだろうが、足りないところに消防、警察、自衛隊など行政側のヘリを何らかの形で配備するというのが前提であれば、単純に全国展開の規模から議論を進めるというのは危険ではないか。まず各省庁におぃて、果たしてそういう飛行機の提供が可能かというのが大変な問題となる。
 全国展開というのは徐々に整備されていけばよいのであって、できるブロックから始めていくという姿勢の方が適当ではないか。

○ 本来こうあるべきだというところを目指して、それに向けて実現可能なものからやっていくというプロセスをとるべき。最初から落としどころを決めてしまうと、日本の官僚が幾ら優秀でも、百点満点で60点しか書けない。アメリカの場合だと、落としどころを決めないで、理想的なものはどのレベルかというところから入るから、出てくる答案は高いという差がある。
 従って、できれば望ましい姿から1つはじき出す数字があって、具体的には日本の実態を踏まえて、どこからやっていくのがいいのかという形から入っていくことがいいのではないかと思う。

○ 理想形である将来像を描くにしても、当面、救命救急センターがその地域にはないとか、中核となるような医療施設はあっても、ヘリコプターが用意できないというケースで、例えばある県警で持っているヘリコプターを、事例が発生した場合のドクターヘリ候補機といった形で指定するということになると、恐らく十分な活用はできないだろう。
 理想形を思い描くのはよいが、その理想形で足りないところをどうするのかという議論が同時に行われないと、数字だけが一人歩きをしてしまう。ほかの用務に使っているということも多々あるだろう。警察もほとんどの県警では1機しか保有していないし、ほとんど休みなく飛んでいる。

○ ドイツなどでも最初はADACという組織が1つのモデルをつくって、それを動かすことによって国境防衛隊などの関係機関も参加していった。日本でも民間のドクターヘリによるモデル的なものをつくっていって、すぐに消防・防災ヘリが入ってくると思うが、警察や自衛隊に徐々に広がっていけばと思っている。

○ そのとおりだが、警察の機体が70数機全国にあるが、どれくらい使えるかというのは機材にもよるし、広域の災害など相当な状況の際には出動していただくことになるのだと思う。

○ ドイツのような密度で配置していけば、日本の場合には55機の配備になる。スイスと同じように配備すると110機くらい。ただしスイスの場合は、始まりはアルプスの山岳救助だから、密度は濃くなっている。55機から100機くらいの間が、理想的な形になるのではないか。
 それから、機体が足りるかという問題、これは勿論、国の予算で配置していくのか、あるいは民間ヘリコプター会社の事業という形で配備していくのかによって変わってくると思うが、ある程度金銭的なことがはっきりしてくれば、民間会社の方から希望が続出するのではないか。

「(2)出動基準」:1つは、消防本部の指令室からの出動要請。それから、現場に到着した救急隊員からの要請。それと、病院が重症なので、これをより高度な医療機関に送りたいという病院間搬送。その3つが出動基準の方法。
 ヘリが出動したものの、結局救急車で搬送するといういわゆる「から振り」も当然ある。ドイツなどでは、大体10%〜15%がから振り。車とヘリが同時にスタートして、先に救急車が着いたからそれで運んでいるとか、そういうから振りも当然あると思うが、それを無駄と捉えないことが必要。

○ 病院間の輸送はドクター同士だからいいとしても、現場の救急隊員から消防本部を経由し、または直接要請する場合、出動基準を明確にして、119番を受けている人が即ドクターヘリを要請できるようにしておかないと時間的ロスが非常に大きくなる。

○ ドクターヘリの基地には当然医師がいるから、その医師の判断も加わって、トータルで行くか行かないという議論になると思う。例えば東京都などには消防に指導医がいる。そういう二重チェックでいくので、基本的には余り問題は起こってこない。

○ 現状では、119番が入っても、要請の基準がない。それをつくれば、担当者がすぐドクターヘリに連絡できる。

○ 傷病程度を区分して、交通事故等でどういった状況になったときにヘリコプターを要請するのかという具体的な基準について、消防庁において作業しており、近々発表したい。

○ 恐らく119番には警察や一般の方が電話をかけることとなるが、とくに一般の方はけが人の容態がわからない。消防の方はどんな具合ですかと聞いて判断していくと思うが、そのときに一般の方は、ヘリの出動に該当しないような場合でも、重く感じてしまうことがある。詳細な基準を予め設定することが必要だ。
 また、ヘリがから振りだった場合でも、批判しないというようにしないと、要請ができなくなってしまうので、そうした配慮をお願いしたい。

「(3)運航許可」については運輸省から説明していただきたい。

○ 運輸省2月1日施行で航空法施行規則の一部改正を行った。現在は176条の第1号において、運輸省、防衛庁、警察庁、都道府県警察、又は地方公共団体の消防機関の使用する航空機であって、捜索または救助を任務するものが除外されていたが、民間機だとこの範疇に入らない。今までも電話連絡等で迅速に許可を行っていたが、今回ヘリを全国展開すると、それに対して電話で100%即応できるかどうか疑問も出てきたので、更にこれを広げて、第2号で、前号に掲げる機関の依頼、または通報により、捜索または救助を行う航空機とした。
 当初は内部の議論でも、とりあえずは現在ニーズのある消防機関からの出動要請だけに限定してもよいのではという意見もあったが、なるべく幅広めにという観点から、救急医療、あるいは大規模災害等にも対応できるようにした。また、必ずしも出動要請ではなく通報だけの場合もあり得るのではないかというので、要請という言葉ではなく通報とした。
 それから、一般的には消防機関からの要請または通報で出動することになると思うが、例えば今後高速道路等の事故を考えると、場合によっては警察からの事故の通報ということもある。あるいは大規模災害だと、その他の省庁からの大規模災害の発生の通報があるということも考え、前に掲げる機関の依頼、または通報ということにした。
 これにより、2月1日より民間のドクターヘリについては許可は要しないということになった。

○ 病院間搬送の場合も要請は不要になったのか。

○ 運輸省一番安全性が高いのは、事前に場所をチェックして、離発着の場所を確保すること。病院間搬送について見ると、今後いろいろニーズが出てくれば検討の余地もあると思うが、双方とも場所は決まっているので、その周辺の場所を網羅的に調べて、事前に安全な場所を申請してもらうことになる。

○ 近くの学校の校庭でもよいのか。

○ 運輸省救急医療機関と小学校の間での合意が前提で、もし小学校の方で問題がないのであれば、認めていく。

○ 例えば医師が現場に行って、これは早くヘリで運んだ方がいいという判断をした場合に、その医師からの要請はこれに該当するのか。例えば通行中に交通事故があって、医師の立場上放置できないので下りて診た場合にこれは重症だからすぐというのは、結構あると思うが。

○ 運輸省病人が発生した、事故が発生したというと、ヘリコプターがその現場そのものに降りられるということは普通はないから、まず消防機関に連絡して、救急自動車が付近の広い場所まで行くということになるので、最初に現場から、警察・消防に通報があるのではないかと思っている。
 ただし、今後そういうケースが出てくるということであれば、我々の目的は救急医療のために一人でも多くの人命を助けるということだから、検討の余地はある。

○ 別の仕事をしていたヘリに急に患者を運んでもらう場合はどうか。

○ 運輸省捜索救助を任務とするようなヘリが、たまたまほかの業務をしていた場合であれば、ドクターが乗っていなくても、搬送することは可能。
 ただし、捜索救助を主たる任務としている航空機を念頭に置いているので、例えば木材運搬みたいなものでは、現場への着陸や患者の手当などについて専門知識が必要なので、無理だと思う。今回の改正の範囲外の場合には、許可を電話で取っていただくということになる。

○ アメリカなどの外国では、救急が優先で、定期便も待たせて先に降ろすということをやっているが、そういう優先権というのはどう考えているか。

○ 運輸省それは一般航空機が降りる正規の空港についての問題であるが、人命が関わっている場合には管制官は優先して降ろす。今でも大型旅客機で急病人が発生して、救急医療をしなければいけないという場合は、管制官に連絡すると、ほかの航空機に優先して降ろしている。

○ 東京タワーから管制官を呼ぶ際に、例えばレスキューだとか、メディカルとか、そういう言葉を付けられれば、管制官も状況が即座にわかると思うが、そうした方法を管制基準上とることはできないか。

○ 運輸省そのような符号を言わなくても救急患者が発生していることを言えば管制官はすぐに対応する。

○ 管制の処理基準の中に優先基準が入っているので、その中で十分処理できる。

「(4)他機関との連携(通信体制等)」:現在、厚生省の試行的事業でヘリを飛ばしているが、空から一般の電話回線への通信手段がなくて、非常に困っている。我々としては共通電波とか、機上から病院にも消防にもつながる手段があればと思う。例えば、消防無線を、ドクターヘリに乗せるといった方法が考えられる。

○ 基本的には県内波を装備すれば、県内の消防全部とは通じる。あとは法律の問題。

○ 携帯電話を使用できれば一番ありがたいのだが、電波法に違反するとのことである。一昨年消防庁で電波の検討会をしたときの結論は、イリジウムを使うのがいいという話だったと記憶しているが。

○ 航空機電話が一番いいということだが、高高度で飛ぶエアライン用に開発したものなので、基地局が日本に4、5か所しかなく、低空ではほとんどカバーできない。東京消防庁には2機種の救急ヘリに航空電話がつながっており、関東一円ではちょうど筑波に無線局があるから使えるが、日本全国で航空機電話が使えるとは限らない。そこでイリジウムがいいのではないかということだったが。

○ 実際に使ってみたところ、つながることはつながるが、携帯電話よりずっと音が悪い。また、ローターの下にいくと通話できない。携帯電話が使えれば一番ありがたい。現在、ドクターヘリの試行的事業の中においても非常に困っている問題なので、いい方向でできるようにお願いしたい。

「(5)代替機」:ヘリはオーバーホールで大体1年の間に1か月か1か月半使用できなくなるということであるが、土日も含めて確保しないといけない。民間であれば会社がヘリをたくさん保有しているので問題ないが、消防の場合は隣接したところで助け合いながらということが基本になる。

○ ドクターヘリを民間に委託するような場合には、契約の中で年間を通して1機提供するという契約を結べば、解決できる。

「(6)大規模災害時の対応」:実際に大災害が起これば行政の傘下に入って行動する。災害が起これば、例えば大阪で起ころうが、九州の鹿児島で起ころうが、直ちに現地出動する。

○ 災害時には、それぞれの統制の下に消防ヘリ、防災ヘリ、警察ヘリが来ており、ドクターヘリが来た場合、統制下に入ってもらわないと困る。

○ 大規模災害時の対応ということでは、国土庁が中心となって、阪神・淡路大震災以降のことを踏まえ、ヘリコプターの統合運用や、全体の需要と供給をどのように考えているかについての検討を南関東、大阪を中心に進めている。ドクターヘリも、そういう全体のニーズ、大きな可能性の1つとして入ってくる。

○ 以前、国土庁が災害拠点病院のヘリポートの所在を地図にして配布するというニュースがあったが、我々にとって非常にありがたい。

「3.搭乗員ほかスタッフ(1)医師その他スタッフの資格」:ドクターヘリに乗る医師、看護婦、救急隊は、実技・実習も含め、航空医学について相当訓練を受けなければいけない。医師に関しては、外傷であろうが、急病であろうが、とりあえず現場で対応できるという観点からは、原則は救急医ではないか。日本救急学会において救急医としての認定委制度があるので、そういう資格を有する者がドクターヘリに乗るべき。
 看護婦も、救命センター等で働いている看護婦が乗るべきであり、救命士についても、救命センターやドクターヘリ事業に参加して訓練を受けた人が、搭乗する。
 例えば、今、自分のところでは原則週2回県下の救命士に交替で来てもらい、ヘリに一緒に乗って、中で行う作業や患者とのやり取りなどについて体験参加していただいているが、そうしたことも必要。

○ スタッフについては、日替り部隊編成では危ないので専属的な人が常駐するべき。
 「教育訓練内容」については、ドクターとかナースとか救急救命士に対しては、定期的に反復して教育をしないとだめで、東京消防庁では年に一回行っている。
 運用に必要な簡単な航空法規とか気象学、航空力学とか構造について、また、無線機器の取扱要領や簡単な通信用語、通信の設備の概要等教育をした方がいい。騒音の中で行動するので、統一的な手信号の要領の教育も必要。それから、万が一事故があった場合の脱出要領等についても教育をした方がいい。例えばテール・ローターの中にプレスが飛び来んで亡くなった事例が過去に数多くある。
 あと、個人ではなく、医療機関のチーフ、またはヘリ運航機関のメンバーが連携してチーム活動をやって、安全管理をする必要があるのではないか。
 ヘリの運航機関については、操縦士と整備士と運航管理、通信担当も含むが、先程とは逆に医学的な知識や専門用語を覚えておかないと、機内での意思疎通ができない。救急患者に対しての飛行要領、運航区域内の医療施設に関する情報、消防や警察機関の組織などについてドクターから教育するべき。
 部隊運用がどのように活動しているのか。それによって無線をどのように送ったらいいのか。こういう簡単なことも教育しておく必要がある。
 夜間、自動操縦装置で飛んでいるときに機内で除細動器を使うと自動操縦装置が外れてしまうので、オペレーターがオペレーションの前に機長の了解を取るなどのプロセスを決めておいた方がいい。
 あとは統一的な手信号、そしてチーム活動で年に何回かの訓練をすることも大事。

「(2)チーム編成、(3)パイロット・整備士、(4)教育訓練等資質向上」:チーム編成というのは、医師と看護婦が乗るとか、医師と救急救命士が乗るとか、現場で救命士がいない場合は救急隊の方が乗る。
 それから、パイロットや整備士に関して、医療用のヘリを運航するに当たっては、ある程度の医学知識や患者の出し入れに伴う注意とか、どの程度の飛行時間が必要かとか、どの程度の特殊技能が必要かとかいったことを訓練したり実習したりすること。

○ 医師が乗れば救急救命士が搭乗する必要はないのか。

○ 基本的には医師と看護婦か医師と救命士の方の組合せ。

○ ヘリ運用機関に操縦士と整備士と運航管理者の3人が必要なのはなぜか。

○ 航空法における定義と、若干違うところがある。国家資格の運航管理者を置く義務を課すと、運航会社によっては過大な要求になることもある。
 安全という観点からは、木材を運搬して狭隘な場所に降りる場合も、病人を救命センターに下ろす場合も似たようなもので、技能があるかどうかをチェックすることになる。パイロットは定期的に訓練し、狭隘な場所についても安全に離発着できる技能を有することというように、安全性の観点から認可基準を設定している。ミニマムの安全性については基本的に運航規程や整備規程で担保し、例えば、整備士についてはヘリコプターに装備されているすべての機器について十分熟知するということなどを要求している。
 ただし、過大な要求をしてしまうと、それに適合しないものを全部だめになり全国展開に支障が生ずる可能性があるので、安全については決して妥協するつもりはないが、事業者からもよく意見を聞きながら、安全を担保するような規定を整備している。

○ 医療スタッフはともかくとして、ヘリ運用機関について、こういった教育は誰が行うのか。

○ 昨年6月の航空法の改正が2月1日から施行されることとなっているが、例えば、狭隘なところに降りるときには、ハイレベルな査察操縦士という訓練担当の操縦士をまず任命して、その人が個々のパイロットの技量についてチェックするような体制を設けさせるようにする。
 ただし、猶予期間が数か月あるので、その間に事業者と相談しながら、そういったパイロットが自分の会社にいない場合には、別の会社に委託するということなども検討することが必要なので、そういうことを含めて、新しい制度の具体的運用方法をつめている。

○ 全国的に展開するとすれば、パイロットや整備士のほかに運航管理者、あるいは119番の電話を受けてヘリが出るか出ないかを判断する人間も含めて、救急医療の面で統一的な基準を設け、教育訓練をしたり、一種の資格を付与する体制を整えるべきではないか。

○ 第1回の委員会の際に、消防大学校に全国消防のパイロットとか整備とかレスキューを集めての課程を設けるいう話も出たが、それはちょっと無理だとか、ちょっと話が、そういうところに入れて、運航上ではなくて救急医療上でしょう、言っているのは。そういう面での基礎教育。

○ 操縦士なども必要だと思うが。

○ 発展してやるということが大事だということを言っている。

○ 日本でそういう意味での体制はまだない。ただ、実は、厚生省の事業で、去年、今年と、ドイツの基地に1か月とか、私のところの医師も2週間行って、現場で実際にヘリに乗ってやってきた。向こうでどういうことをやっているかも一応全部資料を持ってこさせたが、そういう人も含めて、教育体制について1回検討する必要があるのではないか。
 それからアメリカなどでは、フライトナースの養成所があって、3か月コースのプログラムを消化すると、フライトナースの資格を与えるという制度がある。日本でもそういうプログラムを取り寄せて、わかる範囲内のところはプログラムをつくって、わからないところは専門家を呼んで、教育プログラムについて今後していかないといけないと思う。
 それから、教育、訓練に関係あるのだが、医者も吊り上げたり吊り下げたりの訓練をしなければいけないか。

○ スイスなどでは行われている。ドクターが医療機器のリュックサックを背負って降りて、安定したところでホイストで上げる。もしドクターヘリは着陸だけに限定するとすれば、高速道路上に降りられないところにフライングドクターを下ろすことになる。東京消防庁では東京災害医療センターの協力の下に実施しようとしているところ。

○ 吊り上げ吊り下ろしを行うこととすると、医者のなかには搭乗をやめると言う人もいる。だから、ある程度専任にしていかないといけない。

「4.救急現場における安全の確保(1)救急現場における離発着場の確保」:例えば、全国の市町村に1か所ずつ公設のヘリポートをつくることが非常に大事。そこに、夜間照明を整備しておけば、夜間搬送にも活用できる。
 降りるか降りないかの判断はパイロットが下す。パイロットが天候上飛べないと判断した場合には、医学的には必要であっても、それに従うことを前提とする。

○ 離発着場の確保について、どのような条件であれば安全に降りられるかという内部基準を各機関で持っておくべき。二次災害の防止という観点からは、事前に場所を網羅的に調べておいて、障害物がなく安全であるということを確認したところに降りるのがベスト。
 ただ、それでも調査から漏れることがあるかもしれないし、救急現場に行ってみたら、案外こんなところがあったということがあるかもしれない。そのときには、地上からある程度の広さがあることを確認して、電線がないことなどを地上から確認した上でそこに降りるということではないか。

○ そのためには、やはり現場の救急隊の協力が必要。天候でも、山を越えると天候が全然変わっていることがあり、現地の救急隊の情報が非常に大事。
 降りるときも、砂地などの場合には、水をまいてもらうのとそのまま降りるのと全然違うので、やはり現地の救急隊の協力を得たい。

○ 臨着場については、少なくとも市町村ごとに1か所ということで推進している。消防・防災システムなどに各県の離着場の地図情報などを入力しており、今は三千数百であるが、一応は全国で確保されている状況で、今後とも推進していきたい。

○ 実際、交通事故ではまだ道路上に降りたことはないが、警察にも交通整理が必要な場合は協力いただきたい。

○ それは勿論であるが、降りる場合には必ず地上の誘導員が必要なのか。

○ パイロットの判断が大前提。現地に誘導員がいなくても、パイロットの判断で降りる場合もあり得る。

○ 東京消防庁の場合は、原則、現場に地上部隊がいない場合は一応レスキューを下ろし、安全を確保する。地上部隊がいる場合は下と無線でつながっているので、そのまま降りる。
 日本では、高速道路などにヘリが降りるということを一般のドライバーは考えていないから、接触する可能性もある。1車線だけ動いているような状況では危険。

○ 地上誘導員がいることが望ましいのは、事前調査が行われていない場所の場合や、基準と合致しているかが事前に判明していない場合。例えば、高速道路の現場で、地上で何らかの公的機関が交通整理をし、見物人を排除するようなことができれば、必ずしも上から下ろす必要はないが、地上にどうしても人が確保できないような場合は、ホイストでおろす必要も出てくるかもしれない。

○ 警察官、消防隊員が地上におり、ドクターヘリと地上との連絡を消防本部、警察の本部、経由でもいいからつながるようにしておかないと、事故の可能性が高くなる。下の部隊と通信がつながっていると、ドクターヘリから消防本部を経由して交通の通行を止めてくれと要請することができる。

○ 今のところ、ドクターヘリは必ず救急隊がいる場所に降りることになっている。

○ イギリスやドイツではヘリは下にいる警官と直接話しているが、警察の無線機はドクターヘリに積めないのか。

○ 無線は警察及び消防ヘリは全然メガが違うので積んでいない。救急要請の場合でも指令室同士の有線電のホットラインでやっているので、一切メガはわからない。また、法律的な問題もある。

○ 最初に事故現場にいる事故関係者から119番が入ったとして、それから警察や消防が地上からも行くということになるが、勿論、交通整理が行われる前にヘリが着いてしまうということがあるので、その場合には、地上の警察なり消防なりが確実に交通整理をした上でないと、ちょっと危険である。

○ 試行的事業においては、地元の消防との話し合いにより、大体何時ごろにということで示し合わせて行くことになっているが、ヘリが先に着いて下にまだ救急車が来ていない場合には空中で待機し、救急車が下に来てOKをもらってから降りるという形で処理している。

○ ホイストも、事故現場といってもすり抜けてくる車があるので、高速道路上のどこかに降りるというのは相当危ない。やはり地上員が行くまで待ってもらわないと、現実的には難しいのではないか。

○ 平場だとある程度は流れもゆっくりだし、結構余裕をもってやれるが、高速道路などだと、要員的な面もあり、全止めになっていれば絶対反対から来ないので降りることは可能だと思う。1車線だけつぶして右側が通れるようになっていると、いくら大きく「この先事故車線規制中」と示しても、速度を落とさずに高速で抜けていくのが現実。そこで旗を振っている方に突っ込んできてはねられる殉職事案等もある。また、ヘリの方に要員を割いていくというのは、大都市みたいに警察が充実されているところは問題ないが、地方では高速隊員はわずかしかいないので、ヘリの方が先に来てしまい、誘導する要員を確保するのが非常に困難となることが懸念される。
 また、救命は優先するのだが、交通事故の場合、事故原因の究明なども必要なので、体制が整わないと非常に難しいところがある。

「(2)医療機関からの転院」、今のところ、病院にヘリポートがあるところはヘリポートを使うが、大体は地元の消防で指定した医療機関に一番近いヘリポートに降りることを前提としている。
 2月1日以降であっても、病院間搬送に関しては原則として事前に申請したヘリポートを使って患者の搬送をやるという解釈でよいか。

○ 安全の観点から言うと、やはり事前調査をして問題がないことを確認してもらうのがベスト。場所が事前に特定されている場合は、網羅的に調べて、離着陸に適した場所を知らせていただきたい。

○ 今のところ試行事業については地元の消防と医療機関との関係は非常にうまく行っている。
 転院については、地元の医療機関で対応できない重傷患者しか運んでいないので、当然医師が同乗していくということになる。
 病院から救急の医者が乗って現地に行って、現地の先生から引き継いでつれて帰ってくる。だから、大体皆、例えばショック状態とか呼吸不全で具合が悪いという患者。
 最近、交通事故の患者を運んだが、現地の医療機関から重傷なので転送するという連絡があって、実際に行ったら気胸で、行った医者が現場で処置して乗せて帰ってきた。従って、これから現場ということがもっと増えてくれば、当然現地で治療するということが起こる。現地の先生が内科の先生で外傷の患者が来た場合にはお手上げだから、我々が行って現地で処置をしてから乗せるということになる。

「(3)交通整理、(5)高速道路における緊急離発着」:当然、交通事故の場合は警察の方で交通整理をしているわけであるが、特に高速道路上においては、この委員会でもしばしば議論のあったところだが、サービスエリアとかパーキングエリアをヘリの離着陸場として警察の協力を得たいと考えている。

○ サービスエリア、パーキングエリアで使えるところを事前の届けによりヘリポートにするのは、道路管理者なり施設管理者でどのくらい使える個所があるか判断する問題。
 高速道路の路面上にヘリを降ろすというのは、一つには道路構造の問題で片側2車線ぐらいの所に降りられるのか、中央分離帯、壁面の木なりがある場所に降りられるのか、といった物理的な条件の整理がある。そうした条件をクリアしてヘリが降りられるのであれば、警察としても交通整理に現場でかかるようにしていこうと思っている。
 ただ、高速道路と言ってもそんなにたくさんの人数がいるわけではない。交通事故の現場に臨場したパトカー1台の要員だけで離発着対応ができる場合は別として、交通整理に多くの人員を要するとなればこれに加えた人員が必要であり時間もかかる。

○ サービスエリアから離れた道路上で事故が起こった場合は、事故現場からサービスエリアまでは車で運び、救急車が来るのを待つことになる。そうすると、ヘリで運ぶ意味がなくなってくるので、できるだけパーキングエリア、サービスエリア以外の道路上のどこだったら降りられるかということを明らかにしてほしい。

○ それは資料をいただいて、どういうところで降りられるか調べているが、少なくとも2車線では物理的に幅が狭い。3車線が最低必要だろうということと、それから遮音壁や照明灯があるところもだめ。それから鉄塔が上を渡っているようなところはだめ。そうすると、余り降りられるところは実際本線上はない。
 それから、実際降りるとなると、反対方向の車線も止めることが交通安全上必要になってくる。そうなると、時間を要することになる。やはりサービスエリア、パーキングエリアに降ろして、そこまで救急車で搬送するというのが現実的ではないか。

○ 最近は高速道路で事故が起こった場合、携帯電話からの110番通報により、平場の警察を経由して高速隊に連絡があって、現場対応に当たるケースが多くなっている。通報は通行している車に乗っている人などから入ってくるが、ドクターヘリが必要かどうかの判断をどこで行うか、非常に問題になるだろう。現場に第一に到着するのは高速隊か道路公団の交通管理隊かだが、ドクターヘリを要請した方がいいかどうかの判断というのは非常に難しいのではないか。
 一般的に現場から各高速道路の管制室に非常電話が入って、その管制室から常駐している高速隊に連絡があって交通整理に入るということになるので、ドクターヘリをどういう時点で誰が要請するかをしっかりしておかないと現場は非常に困ることになると思う。

○ 交通整理の問題と関連して、高速道路の緊急離発着で、資源の活用という観点から、警察のヘリを使うことはできないか。
 例えば、事故が起きたときに、交通を止めるためにヘリの下に電光掲示板のようなものを付け、地上の車に対してシグナルを出すような手立てを講じるなど、研究の余地があるのではないか。
 また、ドクターヘリが高速道路に出動するような場合には、広域で大規模災害の場合もあるだろうが、上空の空域の規制として、どこかの組織のヘリコプターがATCをやらなければならない。その空域には報道も絶対に入れないといったような規制をしないと、相当危くなることがある。

○ 犯罪捜査についてはスピード違反等も含めて研究を進めているが、今まで警察ヘリそのものを高速道路上に降ろすという発想はなかったので、ほとんど検討していない。
 警察ヘリでスピード違反等の悪質な車両を追尾したり、地上に連絡を取って先で待ち構えてというようなことをしているが、ヘリから信号を出して、車に止まってもらうというのは、かなり難しいのではないか。
 一番最初に小濱先生の定義を読んだときに、事故関係者からの119番の段階で消防本部が要請すると捉えていたが、119番が入って現場に消防なり警察なりが着いてから要請するということか。

○ 119番が指令台に入った段階で指令が判断するのが1つ。もう一つが、現場に着いた救急隊が判断するというもの。
 ところで、厚生省の試行的事業のヘリを使ってどこかの高速道路のパーキングエリアかサービスエリアに降りる訓練を行うことは可能か。

○ この前、消防庁と一緒に行った訓練は、まだ建設中の道路を使用した。今度あれを発展させた考えで、サービスエリアとかパーキングエリアに降りる可能性も考えることになっている。

○ できたらアグスタなどの割と小型で入りやすい機体を使って試行的事業の範囲内で実施していただきたい。

「(4)夜間の離発着」:夜間はドイツもしていなかったが、やっと最近始めた。これは病院間搬送が原則。アメリカが24時間ずっとやっている。日本の場合は、原則は取りあえず昼間行って、できたら夜間に広げていくということになると思う。
 現在試行的事業をしているので、その中で検討をする。

「(6)地上救急体制」:常に救急隊に現場に出動をお願いしたいということと、ドクターヘリが行って、ヘリではなくて救急隊でいいということであれば、車でそのまま地元の医療機関に行っていただくし、ドクターヘリで運ぶべきだということであれば、ヘリで運ぶ。

○ 天候で行けない場合もあるし、トラブルで行けないときもあるので、やはりヘリと地上部隊と両方出動するのがよい。

○ 警察のパトカーがまず現場に行った場合には、警察から直接要請されることになるのか、それともやはり一旦消防に連絡をして、消防から要請されることになるのか。

○ 110番であっても、けが人が伴うような事故については必ず119番に転送しているが、警察にも人命救助という任務があるので、警察のパトカーが現場に先着した場合に、警察の方から要請するというのも可能性としてはあるかもしれないので検討してから回答したい。ただし、実際の場面では、けが人が伴う事故については、警察だけで動くということはなく、常に消防と警察は連動して活動しているので、慣れている消防の方から要請してもらうのが、一番スムーズにいくと思う。

○ アメリカでは、緊急時の電話先について、911で全部やってしまう。そのメリット、デメリットを考慮した上で、日本で導入することについてどう考えるか。

○ 現在消防が119で火事と救急と両方やっていて、それについても救急専用コールがあった方がいいんではという議論もある。しかし、119で同時に入ってくるので、火事あるいは救助事案に伴う救急がすぐにできるというメリットもあるので、どちらがいいかというのは、結論は出ていない。

○ 「地上救急体制」という言葉は、地上の支援体制とした方がいいのではないか。と言うのは、救急車は必ず出動するし、場合によっては消防車が行って水をまいたりということもあるから。

「5.出動拠点における安全の確保」:基本は、現地とヘリと消防、など関係機関の連携、通信体制等ということで、2の運航体制の(4)と絡むが、ヘリがどこに行って、いつごろ帰ってきて、どこに何時ごろ降りてとかといった情報をシェアすることが安全管理上非常に大事だと思う。

○ ヘリコプターと局との交信については必ず録音しておくべき。患者が亡くなったとか、処置が悪かったとかといった後の問題も解決できるし、このように運航していたら追跡もできる。
 東京消防庁の遭難対策では、何か起きたときの初動処置が早目にできるようにということで、義務的に15分間隔ごとにヘリを追掛けており、時報を含めて録音が全部入っている。それは、報告書をつくるのに、またいろんな事案が発生したとき、救難体制のためにも非常に活用される。

○ 通信のところでも出たが、消防無線をドクターヘリに乗せられるようになれば、少なくとも消防とヘリと現地の救急隊と我々の拠点がつながることとなる。

○ これは、郵政省の電波の管理の管轄になるので、直ちには何とも言えない。

「6.搬送先医療機関の体制整備」:基本は高度医療機関、これは制度上は救命救急センターということで、全国に現在142か所ある。主要な都市には一応救命センターがあるが、実際都会の真ん中にある救命センターには、降りる場所がなかったり、地域住民からのクレームでなかなか降りられないとか、救命センターにヘリポートがあるからOKというわけにはいかない。
 実際にどれだけ使えるかというのは自分の方でも調査したいと思っているが、受入医療機関としては、やはり高度救急医療機関、つまり救命センターということになると思う。

○ 傷病程度によっては、もうちょっと弾力的なという感じもしないでもない。

○ 試行事業では今、災害拠点病院の指定を受けたところはすべて受入医療機関ということで、その医療機関の先生方にも是非よろしくという解釈でやっている。

「7.全国展開とその財源(1)必要経費(運航費、医療機関に必要な費用等)」:これはその運営のやり方によって、例えば民間航空会社を使う場合、厚生省から1年間で1億の運航費が、民間の会社にいっているが、民間の会社は赤字で、これは機種によって値段が違うが、1年間ヘリを置く場合には大体1億7000万〜1億9000万の費用がいるということで、一応見積書は出している。
 医療機関の方は、現在運用補助は受けていないが、医師1名、看護婦1名、事務担当1名は是非専任にしてもらいたい。
 ヘリに搭載する医療機器、運航会社と医療機関のどちらで購入するのかという問題はあるが、民間の場合は運営費としては1億5000万〜2億円の間、医療機関の場合はそういう人件費、医療施設、設備等を入れて3000万円前後かなと思っている。
 消防ヘリの場合、最近は運航そのものは委託されているところも多いが、市の職員で操縦士から整備士からみんな雇っているところもある。大体委託運営の場合の総経費と実際に操縦士まで雇った場合、いくらくらいかかるか。

○ 防災ヘリの場合、地方交付税で算定している経費は、年間2.5億である。

○ それは、民間の方が安いに決まっている。それと、財源の議論はどうするのか。

○ いろいろな案があって、例えば厚生省の救命センター補助金は、県が3分の1、国が3分の1、医療機関が3分の1となっているが、今回のドクターヘリに関しては、国が3分の1、県が3分の1、それから損保、特に交通事故も絡むので、自賠責特別会計から補助金が出ないか、損保、生保から補助金をもらえないか、その辺を考えながらやっていかないといけない。
 いずれにしても、現在、救急車が全国の市町村が中心になって一応無料で搬送しているのだから、ヘリも原則は無料で運ぶべき。

○ 自賠責特会を道路以外のものについて使用するのは、負担者からすると、いろんな問題が起こってくるのではないか。

○ 実は、平成4年に日本交通科学協議会でドクターヘリ、名前は救急医療ヘリとしていたが、そのときに、大体搬送している患者の3分の1が交通事故だから、全体の3分の1を出す分には問題がないという返事をもらったことがある。

○ 展開の規模にもよるし、ヘリで搬送する患者のうち交通事故の部分がどのくらいになるかという問題がある。さらに、高速道路などが現実に難しいという話になれば割合は更に下がる。報告書に書くのであれば、十分話し合う必要がある。

○ 恒常的にこれからずっとドクターヘリをやるとなれば、ドイツやアメリカと同様、簡単な格納庫や休養施設等も考えに入れておいた方がいい。

○ それは先ほどの必要経費の中で当然考えないといけないと思っている。運航会社がつくるのか、医療機関がつくるのかでまたもめそうではあるが。

○ 財源に関して、健康保険は考えられないか。全国展開を早く進めるためには、そういうことも考えてやる必要があるのではないか。

○ 現在ドクターカーを病院が保有して、救急患者を収容するという場合には、医療機関に健康保険から診療報酬が出るという制度があるので、健康保険でこのドクターヘリの費用は出せないということにはならない。
 ただ、財源構成についての具体的な検討はまだどこの省もやっていない。従って、報告書を年度内にまとめるということになると、財源措置については、これからの課題ということになろう。

「(2)調整官庁」:ドクターヘリの場合は医療機関に基本として置くとすれば、厚生省の管理になる。消防・防災ヘリの場合は当然消防庁が管理しているので、運航そのものは消防庁の方で担当する。厚生省と消防庁の両省庁では100%の協力体制を構築する。

「(3)広域調整方法」:消防・防災ヘリの場合は広域の応援体制をつくり、オーバーホールの間は隣接の消防・防災ヘリの応援を得る。

「(4)財源措置」:委員会としては今後検討するということとしたい。

○ 現状の高速道路での着陸については、道路構造上非常に難しいということなので、今後建設する高速道路についてはドクターヘリが交通事故で活躍できるような設計思想でお願いしたい。
 また、アメリカなどのように、天候不良や将来夜間に行う場合は、病院の基地ごとにGPSを使っての計器着陸方式を認めていただけるように検討してほしい。

○ 既存の高速道路についても、例えば、場所によっては道路から張り出す形でヘリスポットをつくっていくことが可能ではないか。

○ 構造上絶対不可能ではないが、簡単に出来ることではない。財源上誰が負担するのかという問題が出てくる。
 また、新設道路の設計思想については、高速道路への着陸が、交通を全部遮断してやらなければならないということを考えると、サービスエリア、パーキングエリアに降りられるように整備する方が運用上適しているかもしれない。

○ ヨーロッパなどでは、吊り降ろし吊り上げでホバリングで処理している。勿論二次的な事故への対応など安全の確保が必要ではあるが、特に高速道路の場合には、ドクターが降りていって、処置をして、吊り上げて帰られればスペース的にも少なくて済むし、交通整理上も対処しやすく、現場に近いところに行けると思う。


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