ドクターヘリ調査検討委員会(第2回)議事要旨
1.日 時:平成11年9月17日(金)13:00〜15:00

2.場 所:通商産業省別館946号室

3.出席者:

(委員)小濱座長、石井委員、大森委員、小笠原委員、小川委員、加藤委員、西川委員、針生委員、宮坂委員
(事務局) 石井内閣審議官、関係省庁
4.議事次第
(1)開会
(2)議題
 1)高速道路での離発着について(警察庁)
 2)高速道路での離発着について(建設省)
 3)ヘリの運航と航空法について(運輸省)
 4)消防・防災ヘリによる救急搬送について(大森委員)
(3)閉会

5.議事内容

(1)警察庁から、高速道路でのヘリコプター離発着に関わる交通規制についての説明があり、それに関する質疑が行われた。

  •  高速道路での交通事故が発生した場合、通常事故現場に1車2名の体制でパトカーが先着し、二次的事故の防止のための第一次規制を実施するが、1車だけの体制では処理が難しいので、引き続き応援車両がやってくる。応援車両の到着を待って、実況見分等の本格的な活動のための二次規制を実施する。
  •  高速道路上で発生する交通事故処理の多くは車線規制で対応しており、通行止め規制を伴うものは約10%程度。車線規制とは、路肩規制、走行車線規制、路肩走行規制、追越車線規制などの総称であり、片側を全止めにすることなく、いずれかの車線を生かしながら事故処理に当たるものを言う。
  •  あらかじめアラームを与えつつ減速させることが高速道路上の二次的な事故を防止するために非常に重要になってくるので、車線規制の場合には、特にその車線を走ってくる車があるから、なるべく手前の方から矢印板とかセーフティーコーン、あるいは発炎筒などを置いて、かなり遠くから車線規制中であるということをわかるようにしていく。
  •  多くの危険を伴う全止め規制をする場合には、原則として、現場手前のインターチェンジで閉鎖する。やむを得ずインターチェンジ閉鎖をしない場合にも、停止車両への追突事故の発生を考えて、現場手前からパトカーが赤色灯を点灯させ、本線上の通行車両に車載マイク等で指示しながら徐々に減速させ、事故現場の前で一時的に走行車両を停止させ、規制線を設定する。
  •  以上が高速道路上における交通事故の場合の規制の方法だが、勿論、非常に大規模な事故で中央分離帯を乗り越えて事故車両が反対車線の方に飛び出すというような場合には、上り下りとも全面通行止めというようになり、それは今言ったようなことを両方向で行うというような規制になる。
  •  高速道路上では、通常100km程度、実勢速度だと場合によっては120km程度の車が走っており一番事故処理上心配なのは二次的な事故の防止なので、一番近いパトカーが第一次規制に入るわけだが、本格的な実況見分等の活動は、規制線が確実に確保されてから開始することになる。

(質疑)

○道路の実態はいろいろあるだろうが、パトカーが先着するには何分ぐらいかかるのか。また、その間には救急車のようなものも来るのか。
[警察庁] 場所によってかなり違うが、10分以内で第一規制に入っていると思う。救急車の方が早く着いているということもあるが、高速道路交通警察隊は常時高速道路上におり、救急車は平場から来るというケースがほとんどなので、救急車よりもパトカーの方が大体9割以上先に着く。

○高速では実勢140kmから150kmで流れていることもある。それを警察官が実感を持ってわかっていないと、規制に当たっては相当危険が生じてくる。120kmが実勢だと思っていると140kmが実勢である場合には大変な問題が出てくる。

○実際に人身事故が起こった場合にパトカーや救急車を呼ぶにはどういった手続が必要となるのか。
[警察庁] 認知する方法としては電話。今多くなっているのは携帯電話、それから、道路管理者が高速道路に設置している非常電話。それから、インターを降りてから普通の加入電話や電話ボックスの110番というケースがある。いずれにしても、非常電話の場合には、いったん道路管理者の方につながるが、交通事故だということで、高速道路交通警察隊も同時に聞いている。

○一般の人の場合、人身事故だとまず119番に電話するという気がするが、消防から警察に連絡が行くのか。
[警察庁] 110番と119番は相互に連絡をとっている。

○やはり警察が時間を掛けて規制をしなければ、追突事故などの二重、三重の事故が起きてしまうのか。
[警察庁] パトカーが現着するまではそこで救助に当たっている者もいるが、そのまますり抜けて行く車もおり、非常に危険な状態になっている。
 警察官が事故現場の安全を確保して規制に入らなければ、二次的な事故の可能性があると言える。残念ながら、毎年、高速道路交通警察隊の警察官が、1名ないし2名くらい、事故処理中に車にひかれている。従って、これは絶対に必要なことで、更に今よりもっとよくならないかと常に考えている。

○ヘリというのは大きいものも使わなければいけないこともあるので、そういうことを全然意識しないで行くと大変なことになる。

(2)建設省から、高速道路、パーキングエリアにおけるヘリコプターの離発着に関しての説明があり、それに関する質疑が行われた。

  •  高速自動車国道の事故で、負傷者の速やかな救助は極めて重要であり、管理者の日本道路公団においても、昭和49年の交通安全基本計画や、高速道路の救急業務に関する調査研究委員会の答申などに基づいて、高速自動車国道で救急業務を行っている市町村に対して、財政援助も行いつつ実施している。
  •  そのほか、救急病院や消防署の位置、インターチェンジの配置にもよるが、緊急活動所要時間の短縮効果ということで、通常は閉じておりますけれども、緊急開口部の設置ということもやっており、これは現在全国で543か所、東名で72か所に開口部を設置している。また、救急業務用の路肩の拡幅についても、3.25m化にするということで東名でも100kmほどもう既にやっている。
  •  非常電話の増設については、従来1kmに1か所というのを500m間隔に設置しており、全国で2万708か所、東名だと998基。また、最近携帯電話の通報も多いということで、これも既に12年度の概算要求で出しているが、トンネル部などの携帯電話を使えない不感知地帯への対策を考えている。
  •  ドクターヘリによる救急業務についても、人命の救命率向上、あるいは後遺症発生の抑制等に関わるので、道路管理者としても可能な限り協力していくというのが基本姿勢。
  •  幅員構成などについて、諸外国と比較すると、特にアメリカなどは非常に広いが、ドイツなどは日本とそう大差はない。一番違う点は、都市部、平野部だけではなく、山岳地帯や横断が多く、現在、6,453km供用しているうち、約9%がトンネル、橋梁が約14%ということで、トンネルは全然ヘリは着陸できませんし、橋梁も形式等によってできないといった、構造上の問題が1点。
  •  それから、ドイツやアメリカと違い、非常にカーブが多いために、横断勾配が基準では2%から8%というかなりきつい区間があるといった特殊性がある。
  •  そのほかに、高速道路上には、ガードレール等の防護柵あるいは照明灯、標識、樹木、日本にかなり多い遮音壁といった構造物も設置されているということで、対向車線への影響などから、救急ヘリコプターが離発着可能な箇所が非常に限られている。
  •  ヘリコプターBK117でロータが11mと想定すると、単純に垂直に降りてきて、操縦の支障などの制限がないということで落としても、1車、2車では非常にきつい。3車でそのほかの要件が可能であれば、幅員的には何とか可能だが、その6車線の区間というのは、全国で今約8%、515kmであり、その中にトンネルなどもある。
  •  こういった片側3車線以上の本線、あるいはサービスエリア、パーキングエリアの障害物がない箇所に限定されてしまうというのが実態。ただ、交通規制等、いろいろな諸条件が整えば、救急ヘリが着陸するのに支障のない箇所については勿論、関係機関と調整の上、また自治体等への情報提供もしていきたい。
  •  ただ、片側3車線以上であっても、ヘリコプターが運転手に与える心理的影響、あるいはダウン・ブロウによる影響といったものを考慮すると、救急業務のために新たな被災者が出ないか非常に危惧される。
  •  従って、日本の今の実態からすると、仮に諸条件が整ってもどうしてもポイントが限られてしまうので、現在の救急車との連携といったものも1つの方法。
  •  サービスエリア、パーキングエリアにおいても、事故は突発的に生じるので、例えばお昼どきや渋滞時等々で利用者の車の排除にかかる時間も考慮しなければいけない。
  •  高速道路利用者に対する理解あるいは周知なども非常に重要な課題であり、関係機関の見解、御提案も踏まえ、建設省、道路管理者としてもできるところは勿論、検討していく。

(質疑)

○これは既存の高速自動車国道を使うことが前提なので、これはこれで大変意味があると思うが、道路の横に張り出すようにヘリバントを付けていくとか、上につくるとか考えれば大分改善できるのではないか。特に都市部などはそういったことをやらないと余地がない。
高速道路を走っているドライバーがヘリが発着するのを見て、気を取られるという問題については、何らかの有効な対策が必要。ただ、下向きに吹きつける風、ダウン・ウォッシュの問題については、よっぽどの大型ヘリでないと影響はない。

○緊急開口部はヘリコプターのためのものか。
[建設省] 救急車両用である。

○ヘリコプターのプロベラは上に回っていて下に落ちてこないので、中央分離帯に少しぐらい木があってもうまく降りられるのではと思うがどうか。

○使う機種によって違う。中型から大型機になるとヘリのプロペラの高さが1m80ぐらいでも下を人が歩ける。

○分離帯の木の高さというのは、道路建設上規制というか、この高さまでというのはあるのか。
[建設省] 一義的には夜間のライトとか美観上のため遮蔽する効果がある。高さは大体1.8mである。

○2mはない。そうすると、例えば、このBKだと高さが3.85だから上のメインロータが引っ掛かることはないと思う。

○ 建設省では、将来、高速道路の事故に対して、ヘリを使って救急をやろうという基本的な方針が今あるのか。例えば、パーキングエリアに若干人が出入していてもヘリが着陸できるような施設を設置し、人だけが避難すればヘリが降りられるとか、あと、高速道路の脇に何km単位かわからないが、ヘリが着陸できるほどのスポットでいいが、そういうのを将来つくる考えがあるのか。
[建設省] 道路公団が策定した交通安全対策5か年計画というのがあり、これは平成8年度からの計画だが、この中に救急医療体制支援推進というのがあり、遮音壁に開けて、いざというときに乗り入れることができる緊急開口部や非常電話、それから路肩確保。ここに自治体等のヘリコプター緊急医療計画と併せたヘリポートの整備ということで、これは道路管理者として積極的につくるという意味ではなくて、地方自治体の緊急体制等の計画に応じてヘリポートの敷地として活用することも意識している。

○路肩については、幅に含まれているのか。
[建設省] 11mに含まれている。

○1車、2車、3車とあるが、例えば、3車の場合2.5 から3.25と、結局今日の説明はできないという説明だったのか。
[建設省] いろいろな諸条件を踏まえ単純に考えるとそうなる。

○私はこういう関連省庁の入ったヘリの会、今まで相当出させていただいたが、まず、だめですよということから話が始まる。特に建設省の場合、だめですよという話から始まって、そして二次災害を必ず最後におっしゃって、二次災害が起こるから困るんだということでだめだという結論になる。実は、日本で高速道路に最初にヘリが降りたのは北海道の多重衝突事故。あれは許可なしに降りた。それで、降りた道警のヘリが後で本部長から怒られたと聞いたが、その後に、関わった方にずっと聞いて回ったら、次は絶対にヘリを下ろすとおっしゃる。道路公団の担当課の方も、東京で聞くとだめだとおっしゃるが、現地の方は、いいとは言っていないけれども、次は絶対にヘリを下ろすのが最良でしょうとおっしゃる。
 この会は、何とかドクターヘリをうまく飛べるようにしようという会なので、前向きに考えていただきたい。

○外国などは、正常な方も止めてしまってヘリを下ろす。日本ではそんなに簡単に止められないのだろうが、考えないといけない。

○ブラジルでもドイツでもアメリカでも、どこでもできていることが何故日本でできないんだろうという話。

○降りられるようにするにはどのように法を変えていけばいいのかという視点で検討してもらいたい。
 例えば、ヘリコプターならば、今までのようなヘリコプターの発着場をつくるのは大変だから、臨時に降りるにはどの程度のものでいいのか、そこはどこを改定していけばいいのかということを行政の人にやってもらいたい。
 また、運輸省でも、規制をどういうふうに変えれば動くかと提案していただき、それに対して建設省や警察庁が改善点を指摘するといった議論をしていかないと前に進まない。

○高速道路のもう一つの問題は夜間の照明灯。あれはたしか25m置きについているが、ある距離をおいて、1か所外して低くした照明灯にするなど照明灯の障害は取れていく。事故が起こってはいけないのは大前提だが、やはりどうやったらできるかということを是非御検討いただきたい。

○ヘリの運用についても、危機管理ということを視野に入れて道路の計画というのが立てられてしかるべき。
日本の高速道路は強度が弱いため、戦闘機が全然下りられない。韓国の場合だったら7か所にハイウェー・ストリップがあって、完全にコンクリートになっており、直線4km中央分離帯なし。北朝鮮は同じものを13か所持っている。これは救急の場合や大災害の救援のためにも使えるし、そういった意味で、危機管理ということを念頭に置いて、道路の計画というのを今後やっていただけるとありがたい。

(3)運輸省から、高速道路での離発着についての航空法上の問題と技術的な面からの説明があり、それに関する質疑が行われた。

  •  ヘリコプターが降りるときに、正規のヘリポートでない場合でも許可する制度があり、その許可基準は一般の基準、民家があまりないような山岳地帯とか農地(特殊地域)の基準、災害が起きた場合等に認める防災離着陸場と3種類に分かれている。ドクターヘリについては、今年の5月から、防災対応離着陸場の適用も認めることとしている。
  •  一般の基準で認める場合には、離着陸地帯の長さは基本的に、使用機の全長以上、幅は使用機の全幅以上で、ただ、この基準を適用してなかなかこれまで認めることができなかった例があったのは、いろいろ障害物があったから。例えば、離発着経路の前方に林などがあったりすると、そこに引っかかる可能性がある。一般的に障害物がそれ以上の高さにあってはならないと制限される仮想的な表面のことを進入表面とか転移表面と言っている。
  •  ヘリコプターの縦の長さ、横の長さ以上の面積の場所からヘリコプターが離陸するときには、8分の1の勾配の離陸側の進入表面の上に突出するものがあると、離陸に障害があるということで認めることができないことになっていた。ヘリポートの国際基準でもだいたいこうなっている。
  •  それから、ヘリコプターがまっすぐに離陸しないで、脇の方にずれる場合も考えているのが転移表面であり、この上にも突出するものがあってはいけないということになっていた。これによって、例えば、小学校や中学校の校庭では、グランドのフェンスなどがこれに引っかかってしまって認めることができないということになっていたので、防災対応離着陸の基準の適用を行うこととした。
  •  一般基準の進入表面は、着陸方向に対しては4対1の勾配、それから離陸方向に対して8対1の勾配、ここに物が突出すると認められないが、防災対応離着陸場の基準の適用により、垂直離発着する能力のヘリコプターについては、高さ15mの仮想的な着陸の地帯のところに向かって進入し、垂直で離発着するということとして、これによる進入表面に突出しなければ離発着を認めることとした。これにより、小学校とか中学校のグランドは、ほとんど認められることになった。
  •  ただ、これは条件があり、離着陸地帯は、ヘリコプターの全長に20mの余裕を持たせている。その理由は、垂直に離発着するときには全長ぴったりでは障害物にぶつかる危険性があるからである。従って、高速道路では、全長プラス20mを満たすことができない場合には、防災対応基準ではなく一般の基準を適用した方が認めることが可能な場合があるのではないかと思う。ただし、この場合にも離陸方向前方に照明施設があるなどいろいろな危険性があるので、更に検討する必要がある。
  •  航空法は、航空機の運航の規制については非常に広範な内容になっているが、ドクターヘリの運航は有視界飛行方式により、正規の飛行場以外を使用して行われることが想定されるので、有視界飛行方式に適用される気象条件、最低安全高度、場外離着陸許可制度について説明する。
  •  気象条件については、ヘリコプターの場合は、通常パイロットが他機との安全間隔などに責任を持って飛ぶ有視界飛行方式で行われている。この場合は、気象条件は有視界気象状態、すなわち視界が一定以上よくなければいけない。有視界気象条件とは、航空交通管制区や管制圏など計器飛行方式で航空機が飛んでいることが想定されるような空域では、飛行視程、すなわち見渡せる距離が5,000m以上であること、航空機からの垂直距離で上方に150m、下方に300mである範囲に雲がないこと、航空機からの水平距離で600mに、雲が航空機から上方150m、下方300m、水平距離ある範囲に雲がないこと。管制区、管制圏以外を飛行する場合には、飛行視程が1,500m、1.5km、雲が航空機から上方150m、下方300m、水平距離600mにないこと。これは国際基準に基づくが、ヘリコプターには例外規定があり、管制区とか管制圏以外の空域を300m以下の低空で飛行する場合には、ヘリコプターが雲から離れて飛行でき、かつ地表面を視認できれば、そのほかの要件はない。
  •  最低安全高度については、ヘリコプターも普通の固定翼飛行機も、市街地上空で飛ぶ場合には障害物件の600mの範囲では、障害物件から高さ300m以上の高度をとらなければいけない。それから、人とか家屋のない地域では、物件から150m以上離れなければいけない。過疎地では150m以上の高さを維持しなければならないとなっている。ただし、当然ながら離発着の場合にはこの最低安全高度の規制は適用されない。
  •  場外離着陸許可の制度については、日本では正規のヘリポートをつくることは公聴会などもあり難しく、一般にヘリポートと言われているものの大多数は、ヘリポートではない場外発着場である。ただ、これを認める場合にも、やはり騒音や安全の問題がクリアされなければならない。それから、先ほども説明したように、安全に離発着するためには、最低でもヘリコプターの縦横の大きさ以上の広さが必要であるとか、出発する経路には、電線等の障害物がないことが必要。ドクターヘリについては、今年の5月から防災対応の離着陸場というものを認めることにしており、浜松では、場所の問題によって出動できないことは、5月以降はなくなったと聞いている。
  •  ただし、実際に浜松で行われている実績では、飛んで行ったら下に見物人が多くいて危険性があるのでやむを得ず戻ってきたとか、事前に消防機関とヘリコプターを運航している運航者の間で事前に決めていたランデブー・ポイントで会合をすることにしているのだが、うっかりして救急車の方がランデブー地点を過ぎてしまった事例などいろいろな問題があったようである。これからも運航実績を踏まえ、また、いろいろと御意見を伺って、更に何ができることがないのか考えていきたい。
  •  なお、離着陸の許可や最低安全高度の規定は、運輸省、防衛庁、警察庁、都道府県警察又は地方公共団体の消防機関の使用する航空機であって、捜索または救助を任務とするものなどについては適用されない。消防機関の使用する航空機の解釈については、現在ではまだ実例が出ていないが、仮に将来消防機関が民間に対して委託をし、その民間のヘリが消防機関の指揮命令系統に入るという実例が出てくる場合は、この条項の適用は可能ではないかと考えている。

(質疑)

○会合についてはGPSの活用などにより可能になるかもしれない。ただ、ドクターヘリが真価を発揮するのは、どれだけスピーディーに患者を収容できるかという点だから、現状ではヘリの機数や、要員の技量の問題などで無理かもしれないが、できればヘリの機数をたくさん備えて、特に高速道路上などは交通規制の問題、二次災害が起きないように、2機体制で飛んで行って1機はラペリング、つまり上からロープで下りていって全部交通規制をやれればよい。
 その場合に例えばドクターが乗って患者を治療しながら搬送するというのは、消防機関が民間に委託したヘリでもいい場合もあると思う。ただ、同時に飛んで行って先にラペリングというロープで隊員を下ろして規制をやるのは、民間に委託することはできないので恐らく国の機関、あるいは消防の機関などがやることになると思う。

○救急車とヘリがランデブーできないのは、最初はヘリの速度が全然わからないから、車の感覚でいくとどうしてもヘリが先に着いて、上で5分、10分待たないといけないというもの。慣れてくると大体タイミングが合うようになる。それから、病院間搬送はほとんど向こうの都合を聞きながらこちらが飛びたつので、どうしても離陸する時間が遅れていく。緊急の場合は私のところでは大体3分から5分以内にもう上がっており、実際に現場という問題になれば、相当早く対応はできる。
[運輸省] 朝日航洋とか中日本航空の作成した資料によれば、最初は離陸までの時間が10分以上のケースが多いのが、だんだん早くなっている。

○日常的に行われるようになれば、2分、3分で行けるはず。
[運輸省] 理想的には、現場に着陸できるのが望ましいが、日本の国土条件では必ずしも可能ではなく、消防機関とヘリコプターの間で、会合ポイントについてよく打ち合わせをしておかないと、行ったり来たりし、かえって時間がかかる。

○私も具体的な例は聞いているが、無線で番号を言い間違えたようなことなど、システムそのものというより慣れの問題だと思う。
 もう一つ、適用除外規定、これはドクターヘリには適用するのか。
[運輸省] 消防機関が使用すると解釈することは今のところなかなか難しい。ただ、今後、消防機関の指揮命令系統に入れば可能かもしれない。なお、現在でも救急車とヘリコプターの間のランデブー・ポイントは何か所も決められているので、その場所について事前に網羅的に出していただいて、許可が出たら1年でも自由に使っていいということになっている。
 従って、今の時点では、ランデブー・ポイントは事前を決め、それを提出していただければ包括して許可をするので、そんなに支障はないのではないかと思っている。ただ、勿論人命にかかわることであり、事前にわかっていない場所もあるかもしれないので、そういうときには電話によって緊急に許可をするということも考えている。

○高速道路はランデブー・ポイントも何もないので、要するに事故現場に救急車も行くし警察も行くし、ヘリということになればヘリも行くこととなるのか。
[運輸省] もし高速道路で認めるということであれば、高速道路全体を包括的に許可をするということ。ただ、それも曲がりくねっているところとか、ヘリコプターの長さよりも小さい場所ではちょっと無理だと思う。

○ドクターヘリを全国展開するとすると、1省庁だけでは年に2、3機で何十年も掛かるので、民間活用ということを考えないといけない。その場合に、市とか県とか国が委託した民間機のドクターヘリに関して、適用除外規定の対象にはならないか。
[運輸省] 高速道路というのは我々も念頭になかったので、正直言って勉強しているところ。現時点では明言できないが、やはり公的な機関がある程度関与するような場合には、認め得るかもしれない。

○これは航空法の問題だが、我が国とアメリカとの同盟関係において米軍機は航空法適用除外になっているのはなぜか。航空機の長さとかスピードとか飛び方とかそういうことでは適用除外にできないわけで、これは政治的な判断であるのか、安全保障上の問題でなるのか。
[運輸省] 米軍のほかに防衛庁も航空法の一部適用除外を受けている。防衛庁と運輸省の間に覚書があり、防衛庁の自主的な安全規制について委ね、航空法の一部の条文が適用除外されている。
 米軍については、アメリカ軍は世界中でそうなっているようだが、米軍は条約上、日本の国内法は尊重するが、その実行は自主的に行うということになっている。

○そういうことで言えば、人命救助を旨とするドクターヘリについても、柔軟に航空法を考えることができないのかと思う。
[運輸省] 実を言うと、我々も今まであまり高速道路での交通事故というのは念頭になかったというのが正直なところで、それ以外では、小学校の校庭などを利用するのが一番ということになる。
 ヘリコプター運航の安全からは、事前に調べ確認を取りランデブー・ポイントを決めていただくのが一番だろうと思っていたのだが、ドクターヘリの運航が広がってきたので、我々も少し考えてみたい。

○私は民間機を使った方が全体として安上がりだと思う。今民間は機体をたくさん持っているのだから、それを活用すべき。
 その場合に、民間だったら、適用除外の対象になかなかならないので、公的な委託であってしかもドクターヘリということであるならば、人命ということにおいて、その範囲内に入れていただけないか。そうすると、全国展開もそう時間を掛けないでいけると思う。
[運輸省] 現在の規定では、事前の調査の範囲外の場所については、地上の状況を消防機関等が確認し、大丈夫だということを運航者に連絡して、運航者が飛び立つことができるなら、それを電話で連絡をいただければいいということになっている。

○それならば警察がよいと言えば、道路でも可能ということになるのではないか。
[運輸省] それは今でも構わない。ただ、我々は道路管理者ではないし、二次災害と交通事故の問題もある。高速道路については十分検討しておらず、照明灯の問題とかいろいろあるが、そういう問題が全部クリアーされるのであれば可能である。

○島根の県立中央病院の委員長の瀬戸山さんのところでは、隠岐島や急患に対して、防災ヘリを3年前からかなり夜も飛ばしている。ドクターヘリにつながる動きを実際にやってきたということで、彼のところのデータというのは参考になると思うがどうか。

○同感である。島根県立病院は今度全面新築になり、屋上に非常に立派なヘリポートを持っているし、院長も非常に馬力のある先生なので、相当アクティビティー高くやられるのではないかと思う。あそこは24時間やっており、深夜の午前1時から朝の6時、7時ごろまでに全体の3分の1の運航件数がある。あそこは洋上で行けるから、深夜も危険度は少ない。どちらかという離島中心の搬送をやっておられると思うが、内陸に向けるとドクターヘリとしても運用できるのではないかと思う。

○日本の場合は電線があるとか、狭小な地域の問題もあるからか、いわゆる未熟なパイロットだけではなくて、結構なベテランが事故を起こすケースがある。このとき、近所の住民の方等から、行政の監督が甘いのでこんな事故が起こるのではないかと指摘がたびたび出る。
 運輸省も、だんだん規制を緩和しているが、最終的には、安全との関連でいろいろ考えなければならないのではないか。管理体制としてもきちっとしたところでやっているという説明がないと、なかなか住民の方の御納得も得られない。

○ヘリの事故の主な原因は何か。
[運輸省] この10年ぐらいでヘリコプター事故は100件ぐらいあるが、機材が故障して、不時着を試みた場合は、ヘリコプターが転覆してけが人が出るもののあまり死亡事故には至らない。死人が出るような場合は、障害物との衝突、接触が多く、電線とか索道の障害物に引っかかるというのが平均して年2件ぐらいある。
 もう一つ非常に大きな事故になりやすいのは、雲の中に入って無理をして飛行を継続したような場合であり、かつて1回で10人ぐらい死んだような事故がある。
 特に電線とか索道というのは、飛行機とかヘリコプターから見えずらく、日本の場合、一般道路上は電線が相当あるので、事前に地上から電線などの確認をして、電線などのないところを選んで運航していただくのがいいのではないかと思う。ただ、ドクターヘリは人命救助のためなので、安全が担保される限りにおいては我々も最大限努力をしたい。

○パイロットのベテラン度を見るのに普通飛行時間を使うが、飛行時間だけ超ベテランで、技量は初心者に近いのもいる。そこで判断ができるのかどうか。
[運輸省] かつてアメリカで事故を起こすパイロットの飛行時間について統計をつくったことがあるが、それでは、例えば最近何時間飛んでいたかということと事故率とは関連があると言われている。御指摘のように総飛行時間だけでは判断できないと思う。

○アメリカの場合、救急ヘリが始まった1980年は事故が多かったが、基本的にはだんだん減ってきており、最終的には10万時間辺り2件程度である普通のヘリと現在はほとんど変わらない事故率になっている。
 従って、こういう仕事そのものが危険だからやめるのではなく、パイロットの資格とか機材の問題とか発着の場所などの安全の方策を考えていけばよい。怖いから、危ないからやめておこうということではもういけない。

○この前、日本で事故が頻発したときに、原因の1つの大きな要素として、管理者の体質が非常に大事ではないかと言われていたし、そういうところをきちんとしておかないとやはりだめではないか。
 現在既に、場外離着場の申請でも、継続的なものだけでも約7,000件近くあるわけだから、そういうものを日本全国完全に網羅しておいて、そして、ランデブーの地点をきちんとあらかじめ特定しておき、更にいろいろ実験してみて、将来こういうものを適用除外にするかどうかという方向へ持っていくという段階的な手順を踏んだ方がいい。

(4)大森委員から、消防、防災ヘリの救急搬送について説明があり、それに関する質疑が行われた。

○全国の消防、防災の実態

  •  平成元年に自治省消防庁が全国都道府県に1機以上のヘリを配置しようという全国整備計画を策定してから11年、1995年の1月の阪神・淡路大震災ののち防災活動をするヘリが急激に伸び、98年現在で14大都市27機の消防ヘリ、35道県39機の県の防災ヘリが全国に配備されている。全国的に見た場合には、救助、救急、特に救急が伸びている。
  •  東京消防庁は6機、大型2機と4機の中型ヘリを持っているが、全体として災害は39%、訓練は32%。当庁航空隊はパイロットを自前で養成しているので、訓練時間が多い。運航エリアとしては全体で市街地が40%。洋上が30%ぐらい、山岳地域、その他の地域が約30%ぐらいのエリアで飛行している。
  •  はしご車が届かないような高層建物のビルが燃えた場合、建物の脇にホバリングして火を消すという、高層建物用の消火ヘリが昨年運用を開始した。

○救急活動の実績

  •  東京消防庁の患者輸送は年間約250件弱、その中でも離島が200件弱。これからその他の内陸の救急の詳細について報告する。
  •  東京消防庁のヘリを活用しての救急活動のプロセスについては、災害が発生すると、119番が入ります。そして、航空隊に出場の予告が入ってくる。119番が入るのと同時に出動指令が掛かるときもある。また、航空隊では、消防隊と119番の指令室が常時交信している無線機をモニターしているので、ヘリを使った方がいいような災害があった場合、逆に119番の指令室に対してサゼスチョンをしてヘリを出動することもある。
  •  救急車が現場に到着して、ヘリの要請が必要だとなると、ヘリの要請が入る、または119番と同時にヘリの要請が掛かるときもある。ヘリが出動して、着陸できないような山岳地域等については、レスキューと必ず連携させる。または、救急車が患者を着陸場まで持ってくる。そこから患者をヘリに乗せて病院の屋上、または病院の近くに下ろしている。
  •  ヘリが着陸できない場合については、原則として、パイロット2名、整備士1名、救急救命士2名、レスキュー1名の6名体制、着陸できる場合は、救急救命士2名とパイロット2名と整備士1名、計5名の体制を取っている。ドイツにおいては、BK117の場合は4名、その他の機体については3名でやっている。
  •  ヘリの有効性については、航空隊の内陸における傷病者搬送159例について検証すると、救命・社会復帰8.9%、明らかにヘリで運んだのがよかったというのが24%、有効だったというのが46%、全体的に約80%ぐらいがヘリで運んだ方がよかった。参考までに、山からの救急・救助について、地上で運べば1時間とか1時間半掛かるのが、離陸してから東京災害医療センターに運ぶまでには10分以内で着く。それが、80%というデータが出ていると思われる。
  •  病院の屋上のヘリポートの使用実績についてはまだまだ少ない。これは、やはり災害活動であれ、都民とか国民の騒音苦情とか、相手の理解を得ないとできないということで検討課題の中で非常に重要な問題。
  •  救急ヘリの資格別の搭乗者状況については、当庁鉱区謡では島嶼地区からの救急患者搬送について、ほとんどが医師が搭乗している。国立災害医療センターでお医者さんをピックアップして、災害現場に行くというピックアップ方式も今後検討していたたきたい。

○離着場の問題

  •  東京消防では原則、不特定な場所には着陸しない。例えば、救助と救急が絡む場所であって、河川敷等以外については、原則、事前に臨着場を指定している。また、地上から飛行中に臨着場に適したそれらしきものがあったら相手の管理者と了解を取りながらヘリポートにすることもある。
  •  ドクターヘリについても、定期的な訓練をやっている。屋上にヘリ離着施設がある病院のドクターやナース等を集めて騒音の中での患者を取り入れる訓練、また、隊員に対しては、ヘリコプターの模型にクルーを入れて実際に5m水の中に入り360度回して出てくる訓練、水の中に強制的に入っても5分間ぐらい息ができるフィードを使う訓練などを行っている。
  •  東京消防庁は首都高速道路については、機体の大きさからして着陸できないので、ホバリング、ホイストでレスキューと連携した訓練をしている。風圧が他の反対車線にどう影響するかということと、騒音の調査も行っている。
  •  救急ヘリは輸液ポンプ、吸引器、患者監視装置、除細動等々の医療機器を積んでいるが、これがヘリコプターにどのぐらい影響するのか、またヘリコプターからこの医療機器がどのように影響するのかも実験している。除細動とヘリコプターの影響度合を調べた結果、異常があった。航空機の位置、高度、湿度、気温、いろいろなものが重なったときにこういう影響が出るということで、内部基準では、除細動をやるときには、オペレーターは機長の了解を必ず得るように定めてある。

○操縦士の技能評価

  •  ドクターヘリというのは、どのような技能を持っていた方がいいのか。これは、ヘリコプターの事故が増加したときに運輸省の委員会の中で検討されたものだが、操縦士の技能というのは、飛行技術というスキルベースと知識、航空法とか、気象学というのがある。もうひとつは飛行思考つまりエアマンシップ。この中には、自己管理能力とか情報処理能力とか問題解決能力とか予知能力とか指揮統率能力。耳や目から入った情報を情報処理して、いろいろな選択肢の中から、デシジョン・メイキング(意思決定)して、ドゥー(動き)に移って行動に移る。
  •  ドクターヘリの場合は、不特定な場所での離着陸、悪天候、一人での運航、患者の容態に応じた運航、有視界飛行、運航情報がエアラインみたいに刻々と情報が入ってこないという中で飛ばなければならない、そして、航空援助施設も余り使えない、患者の搬送に伴う緊急性というプレッシャーが掛かる中で飛ばなければならない。だから、ドイツの場合も、そういう資質を持ったパイロット、例えば、飛行時間で言えば1,500時間以上、そして計器飛行を持っていること、こういう体験を持っており、訓練も定期的にやっている、そういう人がドクターヘリのパイロットとして選定されている。

(質疑)

○我々通常の路上の救急業務をやっており、大体70件から80件の平均の救急があるが、医者に収容の問い合わせをして、毎日5、6件は10分以上掛かっている。ドクターヘリに本当に医者が対応してくれるのか。
 それから、この9月に、アメリカのライフコート社のEMSを購入して、救急ヘリをスタートしたが、その機器の脱着に当初は10分から15分位時間が掛かると見ていたが、この間隊員の方に聞くと、10分以内にできるという話だった。
 そうすると、医者の側でもそうであれば、10分ぐらい何とかお互いに合わせられるのではないか、全国的に展開してある消防・防災ヘリコプター、これを活用するのも1つの方法ではないのか。

○結局ドクターヘリというのは病院ベース。病院が受けるのだから、ミスマッチの問題は起こらない。
 ピック・アップ方式というのはピック・アップの時間がロス。患者の収容に関しても、医者が現場に行って現場から治療を開始するというのが前提なので、医者が乗っていくのが現状では一番早いと言える。
 私のところの場合は直接要請が私のところに来て自分の判断で飛ぶので、3分あれば大体飛び上がれる。そういうスピードが必要だというのが世界的な認識。

○以前、島嶼に対して夜間飛行の内訳を出せと言ったら東京消防庁は出してこなかった。それで東京都から出させたら、悪天候と夜間は海上自衛隊に回しているデータが出てきた。その辺は改善されたのか。
[大森委員] 昼間飛んでいって、夜の時間帯になるケースもある。例えば今ごろ飛んでくると夜になったり、勤務時間が午後の5時15分までなので、その時間に離陸して夜の8時ごろに帰ってくるデータはかなりある。残念ながら今の内部基準では真夜中に行って真夜中に帰ってくるということはできない。
 今、東京消防庁のヘリもやっと海上自衛隊ぐらいのレベルまでの性能のある機体になってきた。計器飛行もほとんどパイロットが今持っており、機長になる条件が計器飛行を条件にしているので、かなりの悪い天候を飛ぶときがある。

○東京消防庁の場合当時16人のパイロットのうち10人は計器飛行証明を持っており、相当レベルが高いにもかかわらず、何で夜飛ばないんだという疑問があったのだが、答が東京消防庁自体から戻ってこなかった。
 その後、95年6月の全日空機ハイジャック事件のとき、犯人がサリンらしきものを持っているというので、科学防具を機動中隊のものを借りるということになったが、自治省消防庁からのナイトフライトの依頼を東京消防庁が断った。それでパトカーで入間基地まで行って、C−1の輸送機でフライトしようとしたところで一件落着したという説明を自治省消防庁から受けた。あの時の天候を見たらノープロブレム。それは当時内部で相当いろんな問題があったのだと思うが、せっかくの東京消防庁なのでその辺を改善していってほしい。



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