ドクターヘリ調査検討委員会(第1回)議事要旨


1.日 時:平成11年8月4日(水)10:30〜12:30
2.場 所:通商産業省別館902号室
3.出席者:
(委員)小濱座長、石井委員、大森委員、小笠原委員、小川委員、西川委員、針生委員、宮坂委員
(事務局)森山内閣審議官、関係省庁
4.議事次第
(1)開 会
(2)救急医療の立場から見たドクターヘリの課題について(小濱座長)
(3)欧米におけるドクターヘリの現状について(西川委員)
(4)意見交換
(5)閉会

5.議事内容

(1)始めに事務局より、委員会設置要綱の規定に従い、本委員会の座長を川崎医科大学救急医学教室の小濱教授にお願いする旨の連絡があった。

(2)事務局より、本日の資料の説明と検討日程等についての説明があり、今回を含めて4回程度の会合を開催し、1月を目途に報告書を取りまとめるというスケジュールにて合意が得られた。

(3)小濱座長より、救急医療の立場から見たドクターヘリの課題について説明が行われ、それに関して以下のような意見交換が行われた。

○ 資料に「警察庁、防衛庁、海上保安庁等がヘリコプターを有しているが、日常発生して交通事故に対して常時出動することは、まず不可能と考えられる」とあるが、運用の実際と保有機数を見ると、ドイツ方式あるいはフランス方式で、システムの中に組み込んでいけば相当有効に使える。
 一般に割と評価が難しい問題として、ヘリコプターのパイロットの技量を含む問題、ソフトの問題がある。日本のヘリコプターの訓練において一番高度な技量を要求される飛び方を訓練しているのは陸上自衛隊。陸自の基準というのを目安にしながら、陸自の演習場などを使って訓練をするというのは考えられていい。
 日本のヘリの発着場を見ると、日本的で公共事業のためとしか思えないような立派なものが多い。これに比べ、ロスアンゼルス市では、消防が使うヘリスポットの大部分はダートのままで、柵もないし、ほこりだらけであるが、消火栓は必ずある。基準というものは、国際的に要求が満たされるものであればよく、立派なものをつくる必要はない。

○ 先ほど唯一の例として挙げられた北海道の場合、高速道路上に下りたときには、除雪の待避所が6mから10mあったにもかかわらずヘリコプターのプロペラが中央分離帯の防護柵の上にあるという非常に厳しい状況だった。今の基準では、高速道路上にすっと下りるというのは物理的には難しい状況ではないか。

○ 実績が挙がっていけば、国民的な認知は、極めて急速に高まるだろう。ロスで空中消火の現場を見ていたが、周りの住民はみんなダートの中で見ているけれども、そんな近くに寄る人はいなかった。

○ 半年の試験期間中に91件運んだが、周囲を巻き込むような事故は1件もなかった。
 消防とか警察の方が事前に整理していただいたのもあるが、住民の方も協力していただいて、この半年間何もなかった。むしろ何故やめるんだという意見の方がほとんど。

○ ヘリが直接災害現場に下りた事例は何例くらいあるのか。また、調査の中で、着陸地点の民家からの苦情などがあったか。

○ 岡山県の西大寺で交通事故が起こり、運転手さんがはさまれ、ちょうど300mくらいのところの臨時ヘリポートで下りたというのが唯一現場に近い症例。苦情については、砂地に下りて、砂が民家の中に入り苦情があったという報告が1件あった。

(4)西川委員より欧米におけるドクターヘリの現状について説明があり、それに関して以下のような意見交換が行われた。

○ イギリス、ドイツで夜間飛行が行われていない理由は。

○ 基本的には安全の問題。特にロンドンの場合は、町の中にどんどん下りるので、夜はどうしても問題がある。
 また、夜になれば無理して現場に行かなくても、比較的道路がすいているから、ロンドンの町の中は救急車で走ってもそれほど時間的に差はない。
 さらに、ヘリコプターが1機しかないので、これを1年365日使うためには、夜は整備などをする必要がある。ドイツの場合も似たようなことだと思う。

○ これからスムーズに運用するには、パイロットの技量が重要ではないかと思うが、諸外国で主要事業のほかのパイロットに比べて、各段に技量のいい人を配置するといったことはあるか。

○ イギリスなどの場合は、降りるからには、パイロットのライセンスを取った人をすぐ飛ばすわけにいかないので、例えば1500時間以上とか、計器飛行の資格を持っている人とか、そういった制限は勿論付けている。イギリスの場合は、役所の方が制限を設けてやっている。
 アメリカの場合、国はそういう規制は設けていないが、民間会社が病院とチャーター契約するので、ヘリ会社の方が社内規定を定めて病院の方にオファーしている。

○ 日本の場合、気軽にヘリを使えないという環境がある。1つは、燃料代がやたらと高い。これを救急ヘリや消防ヘリが使用する分は全部非課税にするという考え方もあるかもしれない。あるいは日本の場合、ヘリはどこへ行ってもぴかぴかであるが、アメリカなどは中古機、軍隊の払い下げを使っている。日本の場合、中古機を活用するという発想はないのか。
 そういったことまで考えていくと、安上がりに気軽にヘリを使えるようになるのではないか。その中から国民の命を救うという実績が国民の支持をより高めるだろう。

○ 燃料税については承知していないが、基本的にはアメリカなどでは燃料そのものが安く、日本の3分の1とか5分の1の値段になっている。
 日本が新品ばかり買うというのはそのとおり。アメリカなどの場合には、軍の機体をロスアンゼルスの警察などは1ドルで払い下げを受けて手直しして使っている。確かにその辺は気軽だと思う。

○ 日本の自衛隊は基本的に払い下げをしない。20年か何年か使うことで買うから、もう20年経ったら使えないということをきちっとするために払い下げをしない。だから、わざと壊すなどして、あとはくず鉄か何かで売る。

○ 欧米では、現場にジャスト・ポイントに下りているという話だが、救急専用ヘリの機種はどうなっているのか。非常に小型であったりしないのか。

○ 日本の消防・防災ヘリに比べて、特に小さいということはない。しかし、救急ヘリは多少小型機を使っている方が多い。特にアメリカでは、単発機でもいいということになっている。しかし、現場では、交通の遮断や、管制官が空域のほかの飛行機をホールドさせて、そこに救急機をまっすぐ飛ばすなど、周囲のとっさの協力が行われているということではないか。

○ 今消防が持っているドーファンは大き過ぎる印象を受ける。外国で余りドーファンを使っているというのはないのでは。BKや今度新しくなったMDの902というのは、ひと回り小さい。その方が機動力があるし、道路上にも降りやすい。私が見た範囲では余り大型機は救急ヘリになっていないように思う。

○ 専用機と兼用機の両方あるが、専用機というのは、救急ヘリ、ドクターヘリの用途にしか用いられないのか。

○ 原則として用いられない。特に救急用のために、いろいろな救急の装置を設置したり、床、配線、電気系統、酸素の配管など機体の内部まで改造しなければいけないので、ほかの用途に使えなくなる。

○ 北九州の病院の大変積極的な方にお話を聞いたら、我々はジェットレンジャーくらいの小型が便利でいいとはっきり言っていた。これはお医者様の立場だと、身軽さということが優先するのかなと思った。

○ ジェットレンジャーではちょっと小さ過ぎるのではないか。

○ 搬送だけだったらそれでよいが、医療の立場からすると中での処置がしにくく少し狭く感じる。

○ 最近アメリカでは407というジェットレンジャーをひと回り大きくしたロングレンジャーというのがあって、浜松でも使っているが、アメリカの場合には更に胴体の幅をもう少し広くしたものが多い。
 ヨーロッパの場合には、ユーロコプターのEC135というのがあって、これは現在BK−117より小型の機種が少しずつ増えている。
 なお、ドーファンが大き過ぎるかどうかという問題だが、ロンドンはドーファンを使っている。

○ 用途によって、発揮する特性というのが変わってくる。ドーファンが悪いというわけではなくて、ドーファンは用途によってはすごくいいヘリだが、空中消火には向かない。

○ ドイツやアメリカでは、夜間に事故が続発したので途中から夜間をやめた。昼間だけ、日の出から日没までやっている。
 不特定なところに下りるならば、自分の目では電線などは全然見えないので、電線に引っ掛かってしまう。スイスなどでも事故が何件か起きている。そういう実態を踏まえて、これからの検討委員会で日本の国情に合った体制を検討すべき。
 運航機種や運航時間帯、また、体制をどう構築するか。
 例えば、現場に着陸しないで、救助と救急をコンビネーションしてやる方法もこの中に入れていくのか。原則、着陸でやるのか。その着陸も不特定なところまで下りていくのか。それともある一定のところを指定しておいて、そこまでは救急車で運ぶとなると、時間帯にリンクされていく。

(5)本委員会における検討課題について、以下のような意見交換が行われた。

○ 運航体制について決定しないと先に進んでいかない。それに関連して運航時間帯とか、機種も絡んでくる。私は不特定なところに下りるならば、小型、中型くらいのものがいいと思う。
 また、搭乗スタッフの訓練も重要。訓練はアメリカもヨーロッパも相当やっているが、ドクターとパイロットの連携が必要となる。

○ 運用機構などの細かい検討はこれまでの検討会でもやってきた。今回の検討に際しては、まずドクターヘリを飛ばすことを担保してもらわなければ困る。

○ 実際の病院間搬送というのは、今まで相当数実績がある。現場からの搬送というのが実績がない。厚生省の試験的事業の中で、現場に実際下りてみたらどうなったんだということを是非やりたい。

○ 例えば引っ掛かりそうな電線には蛍光塗料を塗る対処も可能。基本的には昼夜、場所を問わず離着陸できるような体制を目指すべき。

(6)次回の会議は委員の日程を調査した上9月に開催することとし、閉会した。



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