広域災害時における救急患者対応能力について、群馬県内の54の救急告示病院に対してアンケート調査を行ったところ、そのうち40の施設(74%)から回答を得た。全体で、年間16,734件の患者がこれらの施設に救急車による搬送をうけた。46%の施設が100床以下であり、ほとんどの病院が夜間に当直医1人であったが、血液検査やX線検査は24時間可能であった。
大きな災害によって、ライフラインが遮断された場合に、約半数の施設で入院患者に対する食料の自給が維持できないように思われたが、ガーゼや綿球等の医療材料の備蓄は7日以上の施設が大部分であった。40のうち19の施設で、近くにヘリコプターの着陸可能な場所があったが、緊急用無線を所有しているのは、2施設しかなかった。80%の施設に自家発電装置があったが、75%は6時間以下の燃料しかなかった。
我が国は多くの火山帯を有し、世界でも有数の地震国で、噴火や地震、津波による災害が多く、台風の通り道でもあることから、風水害も多い。広域災害が起きた場合、国や自衛隊が救援活動を開始するまでの間、実際にはその地域が自力で救援活動を行わねばならない。特に、その地域の中核病院には患者(負傷者)が集中することになる。最近は、地方自治体主催の広域災害訓練が行われるようになってきたが、発生した負傷者を収容する医療機関の能力についてはあまり検討されていない。
今回の調査では、一般の救急患者を受け入れる能力については問題はなかったが、近隣と交通が全く遮断された場合、救急病院の能力は極端に低下することがわかった。医薬品の備蓄は十分と言えるが、食料、自家発電用の燃料はすぐに欠乏状態に陥る。救援物資の供給が遅れれば、被災者を救護することはおろか、入院患者自体の治療を継続することが困難となる。また、昨今の医療費削減の状況を考えれば、個々の医療機関が、災害時の機能を維持する目的のために医薬品等の蓄えをすることは困難とおもわれる。それ故に、国はもちろんのこと、都道府県が救急病院の現有能力を把握しつつ、備蓄計画、搬送体制の確立などの大災害時の対策を常日頃からたて、災害時指揮系統の明確化といった非常時を想定した連絡、協力体制の確立が重要である。
ガスや水道の供給は保たれたが地震直後に停電した。停電は直ちに自家発電装置により復旧したが、屋上タンクへの給水が行えなくなったためその後水使用が制約を受けた。そのため厨房や手術室の機能に支障が生じた。また、地震直後より通信状態が悪化し始め通話が困難になった。
地震直後より負傷者の搬入が始まり、救急医療に従事した。病院の性格上小児患者の来院を想定して準備していたが連絡の不通、交通の寸断、負傷者は高齢者に多かったことなどから重症患児の入院は皆無であった。
病院の体制
○医療
○運営
麻酔科医としての対応
【問題点】
表.診療の実態
*注:web担当者が付図から読みとった数値です。
震災後9日間の転院患者24例の搬送手段は、救急車17例、ヘリコプター7例
【問題点】
【ヘリコプター搬送の問題点】
震災から4日間に13名の自主参加あるいは派遣の形で医師の応援(17日6名、18日4名、19日3名)
【問題点】
*国際赤十字とは
第2次世界大戦後、武力紛争・自然災害の増加
*災害救援
*災害対策
*災害医療
1980年代 ピラミッドアプローチ
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1999年代 緊急救援ユニット(ERU: Emergency Resonse Unit)構想
*メンタルヘルスケア
国際救援のためのNGO行動規範
援助の品質管理が問題とされ、活動の最低基準づくりが始まっている(The Sphere Project)
医療サービス
はじめに
英国医療保険制度は、英国国民健康保険執行部により運営されていて、現在8ヶ所の地域国民健康保険医療局が医療保険の提供を監督している。ケアは契約を結んだ購入者に医療提供者(医療機関)単位で提供されることになる。救急医療(災害時の対策を含む)は、個々の医療提供者のレベルでは契約をなす一部分であり、契約の過程においても災害対策は抜かりなく行われなければならない。個々の委託の運営はそれぞれの委託された責任で行われ、そのため様々なバリエーションが存在するが、組織がどのようなものでも、大災害に対する応酬はそう変わり無い。関係する機関やチームは、日常の救急対応を行いつつ、非常時の大災害への応酬にも熟知しておかねばならない。大事故対策のプランとは医療提供者単位によってはその準備体制であり、プランの鍵となる主要部分は応酬に対する指揮とコントロールの部分であり、大災害計画の成否の大部分は良好なコントロールである。
病院側の対応策
事故の一報が入ったら、直ちに病院を通常の診療体制から、負傷者の受け入れ可能な体制に変わる必要がある。病院全体を上手く運営すると同時に、多数の患者の搬入に備えて、必要な個所(外来受付や外科処置室)が提供できるように体制を作る必要がある。
大事故災害の救出作業が開始されたら、病院の対応は各部門の責任者によって構成される病院運営チームに任される。チームのメンバーは各責任部門で受け入れ態勢を準備する。受け入れが進につれ、各責任者はスタッフや人的・物的資源を調製しつつ、最終的には通常の診療体制に戻していく。
負傷者の受け入れ
トリアージ責任者は患者が到達するに従い再度トリアージを行い、受付で患者を重症度別に並べ直す。外科系トリアージ医師と内科系トリアージ医師は応急処置を指導すると同時に、その後の治療と手術の緊急度と必要性について割り振りを行う。
手術の体制
負傷者が様々な異なる場所から運ばれてくる場合、手術の受入態勢の調整は難しくなる。トリアージの時、手術が必要かどうかはひとりのトリアージ医師(外科系トリアージ医師)が取り仕切る必要があり、また、その判断は正確でなければならない。手術は生命と手足の救助に最低限必要なものに限り、手術時間は最小限とする。
病院外での活動体制
医療チームは救急救助チームと密接に連携し、その為にも医療災害担当官と救急隊災害担当官とは頻繁に連絡を取る必要がある。医療スタッフが現場出動し、負傷者を救助する場合ではなくとも、これらの人員は必要に応じて準備召集されなければならない。最良の結果を得るためには、病院の受入態勢のみならず、現場での質の高い応急処置が重要である。
要約
震災の中の小児病院
―被害状況と今後の対策―
村田 洋、臨床麻酔 19: 950-5, 1995要旨
病院の被害状況
想定しておかなければならない状態及び対策
災害時の小児病院の特殊性
まとめ
被災地における初期医療活動
小林 久、外科診療 12: 1399-1405, 1995救急医療活動
単独外傷(76%)
脊髄損傷 (18%)
圧挫傷 (14%)
四肢骨折 (10%)
骨盤骨折 ( 8%)
胸部外傷 ( 5%)
頭部外傷 ( 4%)
泌尿器損傷( 2%)
打撲、切創(15%)
多発外傷(14%)
骨盤骨折他( 6%)
脊髄損傷他( 3%)
圧挫傷他 ( 3%)
腹部外傷他( 2%)その他 (10%) 日数
(日)外来
患者入院
患者CPA
患者1 324 83 41 1〜7 1005 109 *55 転送
日数
(日)救急車 ヘリコ
プタ−1 0 1 1 0 1 2 7 1 3 3 2 4 4 0 5 1 1 6 0 1 7 0 0 8 1 1 9 1 0 合 計 17 7 応援チームの受け入れ
災害医療における外科医の役割
国際赤十字の災害医療への取り組み
東浦 洋、日本集団災害医療研究会誌 3: 114-21, 1999
→ 「最弱者層の状態の改善」
災害対策、災害救援、及び災害復旧の各段階での危機管理能力を強化
大規模な災害 → ・被害など情報の収集
・各国に向けての情報提供、救援要請
|医療(治療)|
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|公衆衛生(予防)|
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|給水・衛生・食料(栄養)|
------------------------大事故災害:第4章 医療サービス
小栗顕二・監訳、大事故災害の医療支援、東京、へるす出版、1998年、p.29-32