例えば、警察は事故災害現場の統制や法と秩序の維持などにかかわるだろうし、消防局では救助と火災、化学汚染および放射性汚染のような危険の隔離にかかわり、救急隊や医療班は現場とそれに引き続いて受け入れ病院との両方で、生命の救助と保全にかかわる。その際に関係するそれぞれの機関が同一の目的や対象を持つことが必須のことである。指針の鍵となる点は、災害時のマネージメントに対する合同の対応が存在するということである(Box 2.1参照)。
上記のように、事故災害では多くの機関が巻き込まれるわけですが、適切な対応を行うために各機関ごとに指針となるマニュアルが存在します(表2.2)。では保健医療サービス指針の内容はどんなものだろうか。Box 2.2のように9つの章に分けられている。
例えば、一般原理では緊急計画において、ある一つのプログラムがあらゆる危機に対応できることが理想であることなどが述べられ、また各機関との連携や、器材の使用方法に慣れておく必要性が記されている。救急隊運営手順についてはBox 2.3を参照のこと。
指針のポイントとしては、各機関が合同の対応目的をもち、あらゆる災害に対応する危機計画を用意し、又それに習熟するため、演習を定期的に行うことであると考えられます。
平成5年10月5日大阪市営ニュートラム事故による200名近い負傷者を出す集団災害が大阪市住之江区内で発生した。総合病院南大阪病院を含め負傷者の救援に協力した体験をもとに集団災害発生時における医療機関の役割について、見直しの検討と今後の課題について報告する。
事故が起こり総合病院南大阪病院へ消防隊から通報を受け負傷者搬送の依頼があってから実際に負傷者が搬送されるまで約1時間あまりかかった。その間に一度消防隊から現地への医師派遣要請はあったものの、その後現地の状況連絡等について消防隊などから中間情報が一度も入らないまま負傷者の受け入れに至った。
事故後、この集団災害を体験した各医療機関、消防署で反省会を開催した。消防署から負傷者収容要請はあったが負傷者搬送があるまで中間情報等全く連絡がなかったことに、各医療機関は疑問を持った。また、現在の大阪市消防局の情報伝達システムを見直すべきだという意見が大多数を占めた。そのシステムとは『中央指令方式』といい、現場から一度中央指令センターに状況報告がなされ、そこから各医療機関に情報が送られるシステムになっている。消防署の指令センターは今回のような集団災害に対する救助活動に最優先に指令を出す一方、その間一般救急や、消火活動にも指令を出している。そこで今回提案されたのは、集団災害等が発生した地域内の医療機関から中核病院を決め、その中核病院がそれぞれの医療機関と互いに整理された情報を交換することである。そうすれば負傷者搬送までの時間短縮になるし、中核病院は現地と常に直結するので各医療機関へ中間情報を通報する時間も生じる。その結果、迅速・的確な負傷者の救命、援助が望めるのではないかという提案であった。
医師会から次のような『中核病院構想』が打ち出された。区内の医療機関から中核病院を設定し、災害発生時には、この中核病院から救護班が現地へ出動する。救護班は収容の必要な負傷者の振り分けを行い、各病院へ受け入れに関する詳細な指示を行う。他の病院は負傷者受け入れ態勢を確保しながら現場からの連絡を待つ。災害状況に応じて中核病院内に災害対策本部を設置し、当地区の医師会員の出動も要請する。
反省会の後、南港地区のアジア太平洋トレードセンターで火災が発生したという想定で当地区消防署が災害訓練をすることになり、中核病院構想に基づき南大阪病院が中核病院となり、当地区内の医療機関、医師会も訓練に参画し合同災害訓練を実施した。消防署から、火災発生通報を受けてから、中核病院が各救急指定病院へ負傷者搬入の連絡を入れる情報伝達訓練に要した時間は約15分であった。従来の『中央指令方式』と比較して、『中核病院構想』は大幅な時間短縮が望めた。
中核病院構想の問題点として、私的医療機関が中核病院となった場合、どの程度まで行政と関わりを持つことが出来るか、経済面の費用配分、夜間休日の職員の召集を迅速かつ的確に行うための対応、中核病院が火災現場となった場合の対応策などが挙げられる。
検討課題は残されているが、自然災害に対しても今後の課題として考える必要があろう。自然災害は広域に及び、電話や車両が使用不能になることもあるので、無線や船、ヘリコプターによる負傷者搬送も考慮した大構想によるマニュアル作りが不可欠である。しかし、地域の健康管理を担う医療機関として最も大切なことは、実際院内に搬入された負傷者をいかに取り扱うかであり、集団災害に備えて日々心がけ、訓練を繰り返すことである。また、中核病院構想が隣接地区との連携により、一区域内にとどまらず広範囲の地域にも活用出来るシステムとして整備、確立し災害時に万全の対応を期すべきである。
Crush Syndromeは筋挫滅を伴う外傷後に急性腎不全を呈するものである。
2)DIC が組織内に出血した血液の崩壊(溶血)を契機として起こり、次の機序により腎不全が発症する。
赤血球の崩壊産物 →
これらが組合わさり血管内凝固が発生し、ヘモグロビンと同様に腎毒性物質として作用する。また代謝性アシド−シスによるミオグロビン円柱の増加やミオグロビンが尿細管閉塞に作用することで、直接腎不全に関連する。
1)腎不全への進展予防
2)ショックに対する治療
3)DIC に対する治療
4)尿毒症に対する治療
・発生地域:南海トラフ(フィリピン海プレートが沈み込む地域)
・発生機序:海底で岩盤が跳ね上がる現象による
・特徴:最も巨大な地震を引き起こす
※南海トラフ(中央構造線の南側の日本外帯の南方沖)
2)陸のプレート内に起こる浅い大地震(プレート内地震)
・特徴:内陸の活断層に発生する大地震である
※西日本内帯(近畿地方北部とその両端に位置する北陸及び山陰地方)
3)沈み込んだプレート内に起こる深い大地震(プレート内地震)
大規模地震の長期的予知方法の基本は、それぞれの活断層が1000年に1回程度の頻度で起こす固有大地震のサイクルの今どの辺りにあるかを知ることである。また、地下構造の調査をきめ細かく行い、地殻変動を予想し、日本列島のシミュレーションを行う方法の開発が、予知精度を高めるために必要である。
このような先行現象があることから、短期的予知が可能であることが示唆される。よって、短期的予知方法の開発には、このような先行現象の発生機序を解明する基礎研究が必要である。
1.航空運送事業社の医療用具、医薬品搭載義務化までの経緯
2.プライオリティ・ゲスト(PG)について
3.医師の搭乗率
4.機内搭載医薬品・医療用具の種類
5.ドクターキットの使用例の症状
6.除細動器の有用性と問題点
有用性
問題点
今後の展望
7.おわりに
航空機内で医師等が航空会社の依頼に基づき診療行為を行い、その結果に対し、旅客から損害賠償請求がなされた場合は、当該医師等に故意または重大な過失がある場合を除き、航空会社がその責任を補填することになると通常考えられている。
Box 2.1 合同の対応の目的
Box 2.2 保健医療サービス指針――内容
Box 2.3 救急隊サービス部門の仕事
表2.1 いくつかの作業と関係する機関
作 業 機 関 負傷していない生存者のケア 警察、社会奉仕団 負傷者のケア 警察、消防局、救急隊と医療班 死者の処理 警察、医療班、検死官 災害局の運営 警察 友人や親族の取り扱い 警察、医療班、社会奉仕団、地方行政機関 避難と避難所の設営 警察、地方行政機関 社会的心理学的支援 社会奉仕団 宗教上、修養上の要請 教会のアドバイザー
表2.2 重要な指針となる文書
サービス部門 指 針 発効年度 警察 緊急手配マニュアル 1991 消防署 大事故災害緊急手配マニュアル 1991 救急隊 救急搬送運営要項:市民救急 1990 英国保険局 英国保険局の緊急計画:
放射能を含む事故を取り扱うための保健要項1989 英国保険局の緊急計画:
大事故災害を取り扱うための保健要項1990
大事故災害の死亡:病理医の役割―HC90(38) 1990
地方行政局 地方行政機関への緊急計画指針 集団災害に対する医療機関の教訓について―大阪市営ニュートラムの事故を体験して―
森崎美登ほか、南大阪医学 42: 219-24, 1994クラッシュ症候群
新藤光郎ほか、臨床麻酔 19: 961-7, 1995
1.腎不全の発生機序
2.診断・検査所見
3.治 療
4.腎不全の発生と治療方針
大地震の予知は可能か
尾池和夫、大震災における救急災害医療、へるす出版、東京、1996年、p.185-931.大地震の種類
日本海溝(太平洋プレートが沈み込む地域)
日本海東縁
2.巨大地震の長期的予知
3.直前予報と先行現象
4.筆者の提案
航空機搭載の医薬品および医療用具
山本寛八郎、救急医療ジャーナル 3 (6): p.22-7,1995