まず、全体的には、ほとんど全ての施設で。自ら現在の災 害対策は十分ではないと考えているにもかかわらず(78/87施設、90.9%)、現在 までその準備を行って来ている施設は全体で47施設(54.O%)でしかなかった。し かも、これら準備が行われてきているとしている47施設でも、果たしてその内容が災 害時に役能するのかについては十分に検討されてはいない。災害に対する準備状況も 決して一様ではなかった。
1:災害経験の差について
災害に対する準備は、災害経 験施設では27/40(67.5%)が既に行っていると解答しているのに対し、災害経験 のない施設では20/47(42.6%、P<O.05)と明らかに少ない。この詰果から、実 際に災害の実情を経験することが災害対策の重要性と、災害前期に準備を行う必要性 を認竃させる契機となっていると考えられる。逆に、阪神・淡路大震災のような大き な災害が起こっても、災害を実際に経験しない限り災害に対する対策の重要性は認識 できていないことも示された。
2:国立病院と私立病院の差
個々の施設の背景の違いとして、国立病院と私立病院間での災害準備の差 について比較検討されたが、今回の検討では明らかな差は認められなかった。
3:病床数の違い
1000床以上の病院群(24)でも、「大量の負傷者用に病床を確保している 」では5.0%、「災害医療に対する専門家が病院にいる」では45.0%、「外来や検 査、或いは患者家族などに災害時の対応を説明している」では5.O%などとなってお いた。これらの中小規模の施設より有意に高い項目に関しても高い値は得られておらず 、決して大規模な病院の災害準備が充実しているのではなく、概してそれより中小規模 の病院ではさらに災害準倫が考盧されていないために明らかな差を認めた結果とさ れた。
しかし、災害準備を 災害だけのために、機器や薬剤あるいは医療空間、人員などの準傭をするのは非効率 的である。非災害時の通常業務でも活用されてきているものが災害時に利用されるべ きであろう。一般に、災害時の医療では時間経過により必要とされる医療の質と量は 変化していくが、まず急性期には効率の良い救援医療が行われる必要がある。従って 、非災害時における救急医療での十分な診療体制を確立して、災害時には救急医療の 延長線上で対応することがcost−benefitの面から考えても望ましい。本論文では、 実際、通常の業務で慣れ親しんだ手順などだけが、突然襲ってくる混乱した現場で行 いうる手段となりうる、としている。
以上のことから、本論文は、今後は現行の救急 医療体制と地域防災計画を効率よく遺合させ、その中で災害時に有効な機能を有する 大学病院の役割を明らかにして、新たな準備を早急に行う必要がある、としている。
1.非常時予備電源の確保
2.通信回線のループ化
3.通信ケーブルの地下埋設
4.通信手段の多重化
などがある。前2つに関してはどのような船舶でもその機能を有しており、実際に阪神・
淡路大震災の際
にも多くの貢献があった。しかし、その他に関してはそれぞれ専用の設備が必要であ
り、現在日本にはその設備をすべて備えた災害用船舶はない。海路からの救援は、陸
路からの救援が困難な場合には、さらにその有用性を発揮する。四方を海に囲まれたわ
が国では、災害救助船はきわめて有用であると考えられる。
また、災害時救助船を実現するに当たって解決すべき次の点がある。
(1)国土庁―国内災害に備える船の検討(1986)
今日までに以上のような構想があったが、先に
述べた災害救助船の役割を全て備え、問題点を解決し得たものはない。
・スペースの大きい客船、タンカーなどの船を改装している
(1)目的
(2)規模
(3)設備:ここでは医療設備について記載する。
(4)運営
阪神・淡路大震災で災害救助船の役割が認叢された。今後起こる災害に備えて、自衛
隊の艦船のような既存設備を最大限に利用して、一刻も早く多目的災害救助船の整備
を行うべきである。
人口が集中し過密化が進めぱ、都市という巨大システムは便利さと経済力の集中とは
裏腹に災害の規模や危険性が大きくなり、都市の機能、環境、特に安全の確保が重要
な問題となる。阪神淡路大震災で被災した神戸大学には、地震、水害のような自然災
害に限らず都市ゆえに危険性が大きい疫学的あるいは大災害に対する防災・安全に関
する総合的研究を推進する拠点として、都市安全研究センターが創設された。
この都市安全研究センターの創立理念は、自然災害に対処し得る部市計画の立案を始めとして
、近代都市の持つ人口集中、過密化ゆえに生じる危険や機能不全への対策を多面的な
視点を持って研究することである。
都市安全研究センターは現在、次の6つの研究分野こより構成されている。
この中で都市安全医学においてほ基本的な研究テーマとして、
1.のテーマについては、公衆衛生学的アプローチは都市安全医学研究の基本をなすものであるとの考え方を意味する。例えぱ、災害の人的被害に関しては今後疫学的研究を更に展開する必要があると思われる。
2.のテーマは、阪神淡路大震災からの大きな教訓の一つである災害対応の医療情報システムの必要性を受けて設定されている。
3.のテーマにおいては、阪神淡路大震災により高まった医学的な安全とリスクを分析していく予定である。リスクの分析は、結局はどのようにしてリスクを低減する行動を選択するかといった意思決定同題と非常に密接な関係がある。このようなリスク下での医学意思決定の同題を研究するのがテーマの4.である。
工業化の進展に伴って都市への人口集中を生じ、部市化が拡大し発展する傾向は今や世界的な問題になりつつある。とくに、開発途上国の急激な都市化に懸念が生じてくる。このような傾向の中で、今後ますます、都市化と集団災害、都市化と健康といった同題の童要性が増していくものと思われる。
我が国は地震のみならず、風水害も多い災害大国であることは言うまでもない。人口の集中、市街地の拡大、高層建築物と地下街の増加、その他建造物施設構造の複雑化、危険物の混在といった条件が災害の発生及ぴ拡大を助長している。また、都会ほど地域連帯意欲の欠如と、一方では多数の人間集団による混乱が生し易く、発生した災害の対応に欠陥を露呈する。せっかく量的質的に十分な医療体制を有していても組織的対応や違携の上で機能しかねているのが現状である。
このような社会構造の変化を反映した都市の拡大、変化に対応可能な危機管理対策立案の一翼を担う研究を推進し、その成果を社会に還元し、より安全な市民生活の実現に寄与することが都市安全研究センターの責務であると考える。
災害時における通信
宮本正喜ほか、大震災における救急災害医療、へるす出版、東京、1996年、p.165-72<はじめに>
<被害の現状>
<災害対策>
<おわりに>
災害救助船構想
武下 浩、大震災における救急災害医療、へるす出版、東京、1996年、p.173-831、災害救助船の役割
2、短所、問題点
3、現在までの病院船あるいは災害救助船構想
(2)日本医師会など―多目的病院船(1991)
(3)造船重機労連―災害救助船(1993)
(4)防衛庁―輸送艦(1993)
(5)海上保安庁―災害対応型巡視船(1995)
(6)防衛庁―潜水艦救助船(1995)
(7)関西造船協会―災害救援司令船4、外国の病院船
・ヘリによる輸送設備が重要とされている5、多目的災害救助船
神戸大学都市安全研究センターの創設と課題
鎌江伊三夫、日本集団災害医療研究会誌 3: 18-21, 1998
(2)都市基盤(都市地盤施設、都市地盤環境)
(3)都市地震(地震発生機構、地震災害)
(4)都市安全医学(都市災害医療情報・計画)
(5)都市行政産業基盤
(6)都市情報システム
の4本柱に取り剖んでいく予定である。