阪神・淡路大震災では、5,500人に及ぶ死者と27,000人の負傷者が出た。このように多くの死傷者が出たことを踏まえ、災害予防対策とともに災害医療体制の整備が緊急の課題として取り上げられている。災害の種類には、地震に限らず、爆発、火災、航空機・列車・船舶事故などの他、放射線物質、サリンのような毒性化学物質による汚染も含まれている。これらの災害に際して、いかにしてできるだけ多くの人を救命し、いかにして速やかに適切な治療を行うかが災害医療の課題である。
先進国の多く、特に米国の場合は、冷戦の脅威、地域的軍事紛争への関与を経験しており、戦争を意識した緊急医療体制作りが行われ、それが災害医療体制の整備に役立ってきた。しかし、わが国ではそのような理由による医療体制整備はなかった。一方、技術化、情報化した大都市に起きた地震で、今回ほどに多くの死傷者を出した大災害の経験は初めてで、災害医療体制にも多くの問題点があることが明らかとなった。その中には、他国に例をみない高齢化社会における災害医療体制整備の重要性も含まれている。
災害医療には医学的側面以外に機構的、政治的、経済的側面がある。現在国土庁、文部省、厚生省、自治省、日本医師会、自治体、関連学協会など、多くの機関による調査が行われ、具体的対策も提案されつつある。本報告では、今回の災害から得た教訓を活かして将来起こりうる災害に備え、国民の生命の安全を守るために、速やかに検討すべき方策を以下に提案する。
1)情報ネットワークの確立
2)災害医療拠点病院の整備
3)指揮命令系統の確立
4)搬送システムの確立
5)医薬品および医療資材の備蓄
6)「心のケア」のシステムの整備
7)災害訓練の重要性
8)医療関係者の教育、研修
9)被災地外からの救援
10)法規の整備等
11)多目的災害救助船の検討
以上、災害医療対策として11項目をあげた。災害対策全体としては、関係する多くの分野、 機関にまたがる事項を統合し、真に機能する体制を作らなければならない。また、災害への対応、特に初期の救助、救出活動においては、国や自治体だけでなく、国民一人一人が重要な役割を担っており、行政と国民との連携も今後の重要な課題である。大震災を契機とし、先進諸国の模範となるような災害医療体制が、わが国で整備されることを期待する。
今回、災害発動期における活動マニュアルの有用性を明らかにする事を目的に、地方中小病院で行われた災害救護訓練で、活動マニュアルがどの程度機能するかについて検討した。
2、模擬患者設定
3、訓練実施項目
4、訓練方法
5、災害活動マニュアル
6、救護活動
結果、災害対策本部の機能を最優先に考えて作成された当院の活動マニュアルは、今回の訓練で災害初期においては、全く機能しなかった。
災害活動マニュアルは、指揮命令系統だけの規定ではなく、対策本部が立ち上がる以前の混乱した災害急性期に、各病院職員がそれぞれの判断で機能できる内容に、改めることが必要であると考えられた。活動マニュアルをより実践的にするためには、活動マニュアルの再三の客観的な評価が必要である。そのためには、活動マニュアルの評価を目的の一つとした災害救護訓練は、有効な手段になりうると考えられる。
保健と医療の連携が強く求められている中で、衛生・公衆衛生学の立場 から「災害医療」のあり方について、その上での保健所の役割について、 考える。
まず、一番マンパワ-を必要とした時期(3日間)に、経験者の支援が得られなかったこと、「ボランティア」についての固定概念を持って来た人が多かったことなどである。また、震災後の時間経過とともに状況も変化し、ボランティアが実際に提供しようと思っている援助と、こちらが求めている援助が一致しなかった。