災害医学・抄読会 091016

災害急性期の看護 被災地病院における看護の役割

(酒井、小原真理子ほか監修 災害看護、東京、南山堂、2007、p.118-131)


 災害医療は、医療ニーズと医療サービスの不均衡状態の中で行われる医療です。そして、この不均衡を平時の状態に近づける努力を行って最善の災害医療を実現しようと、システムの構築やマニュアルの整備、備蓄、そして教育や訓練が行われます。災害にも多くの種類があり、また規模の違いなどもあるため、そこで起こりうる現象は様々です。そのため、ある特定の状況を想定していないと多岐にわたる混乱を招く恐れがあります。

1.患者及び職員の安全の確保、情報収集

2.避難・誘導

3.救急外来など多数傷病者の受け入れの初期対応

4.トリアージ・各エリアの対応

5.災害対策本部

6.職員参集

7.院外機関・マスメディアなど


手術室

(上農喜朗、丸川征四郎・編著 経験から学ぶ大規模災害医療、大阪、永井書店、2007、p.217-226)


1.災害発生時の影響

 大地震などの災害では、電力・水道・ガス・通信といったライフラインの被害が医療機関にも大き なダメージを与える。

1)電力

 地震直後には、地震の直接被害をあまり受けない遠隔地域においても、電力供給が 不安定となる。

 手術室は電力供給を絶たれるとその機能の大半が失われてしまう。対策として非常下発電装置や自 家発電装置を整備していても、短時間で発電が再び停止してしまうのが現状である。非常時の発電が停止しないために、不必要な電力消費を避けるような対策をとることが重要である。

 手術部独自の対策として、非常灯などの設備の点検はもちろん、懐中電灯やバックバルブマスク の各手術室内での常備、停電マニュアルの作成が必要である。さらに手術室独自に小型可搬式発電 機と電源ケーブルの配備を進める意見もある。

2)水道

 断水による給水の回復にはかなりの長時間を要する場合が多い。手術室での手洗いや中央材料室 での滅菌作業に障害を及ぼす。

3)医療用ガス

 医療用酸素をはじめとする医療用ガスは、ほかに取って代わることができない医薬品である。定 地式超低温容器(CE)は耐震設計なので被害を受けることは少ないが、可搬式超低温容器(LGC) は転倒破損により被害を受けることがほとんどだ。

 災害発生時、多数の重症患者を管理する必要から医療用ガスの使用量が増加したり、病院設備に 被害を受け配管からの漏出が生じたりして、予定以上に早く充填が必要になることが多い。しかし、 災害時には被災地域内に生産拠点や充填施設が含まれるので、その供給確保が困難になると予想さ れる。そこで日本医療ガス協会では各地域本部が都道府県の地域防災計画に基づいて協定を締結す ることを推進している。

 手術室においては、院内配管の破損などによりCEからの供給が受けられなくなる可能性もある ため、最低限必要な酸素ボンベの備蓄を行う必要がある。

2.災害発生時の対応

1)地震災害発生時の対応

 災害の直接の影響から患者を守ることが医療従事者の第一の使命である。また、清潔を維持する よう術野を保護すること、大きな医療機器の移動・転倒・落下の防止も必要である。

2)災害発生直後の対応

 地震直後、手術室内にいるスタッフは、患者の状態、手術室の損傷などの状況を把 握し、患者の保護に努める。前述のように停電や医療用ガスの供給停止に対する対応も必要である。また、手術室火災などの二次災害にも備えるべきである。

3)状況の把握

 手術部の責任者は各手術室と連絡し、手術部全体の被害状況を収集・分析する。建物倒壊の危険 や火災など、緊急に避難する必要があるかどうかの判断を迫られる場合もある。手術を続行すべき か、中止に向けた準備を始めるのかの指示を各手術室に伝える。手術室内の被害状況に応じて必要 人員の再配置も行う。また、緊急避難に備えて避難路の確保を行う。

4)報告と情報収集

 院内災害対策本部へ手術の実施状況、手術部の被害状況の報告を行い、同時に他部署の被害状況 に関しても情報収集を行う。周辺地域の被災患者の人数、障害の程度などの情報収集も同様に行う。

5)手術のトリアージ

 病院や手術室の被害が大きくない場合は、実施中の手術の継続以外に、これから入室予定の手術 を実施すべきかどうかの判断を行う必要がある。また、緊急症例や不測の事態に対応する準備も怠 ってはならない。

6)医療資源の振り分け

 手術のトリアージによって余った人員や器具・消耗品などの医療資源を、外来や病棟に振り分け て使用することを考慮すべきである。

7)手術室設備の活用

 手術室は病院施設の中でも重症患者の管理・処置に適した設備が整っている。施設の安全と電力 や医療用ガスの供給が確保されるのであれば、手術に限定せずに重度外傷患者の治療に利用するこ とも考慮すべきである。


地域DMATを視野においた災害医療における消防機関等との連携訓練:良好なメディカルコントロールのために

(重光 修ほか、日本集団災害医学会誌 14: 28-32, 2009)


はじめに

 近年、地域の比較的小規模な災害現場において地域DMATと消防機関や関係各機関との密接な連携やMedical Control(MC)が、半日常的に求められるようになってきた。大分においても大分DMATが平成20年2月4日に創設されたが、設立準備の訓練として指定候補の地域DMAT隊と合同訓練を実施した。それらの訓練を通して、災害現場における主に消防機関との連携や災害医療におけるMCについて検討を行った。

方 法

訓練1.車両多重事故

 DMATチーム派遣を想定した1回目の合同訓練を平成19年8月30日と31日に行った。訓練想定や幹線道路上で車の多重衝突が発生し要救助者が多数発生し、車両火災なども発生するとの想定であった。訓練項目は、救助救出、災害危険排除訓練及び消火、現場指揮本部設置及び運用、救護所設置、トリアージと応急処置及び搬送、消防対策本部設置及び運用、関係各機関との連携訓練などであった。

訓練2.緊急消防援助隊九州ブロック合同訓練

 平成19年10月13日に行われた緊急消防援助隊九州ブロック訓練に大分DNAT参加予定医療機関の医療班が参加し消防との連携訓練を実施した。比較的大規模な訓練で訓練内容は、調整本部運営、倒壊家屋・火災ビルからの救出・救命処置、トリアージ及び応急救護所設置、トンネル崩落埋没車両救出、津波漂流者救出、バスとタンクローリー衝突事故対応などを通じてDMATチームメンバーとの連携訓練を行った。

結 果

訓練1

 いくつかの問題点が浮かび上がった。

 1)現場に到着すると消防隊員はDMATを残しすぐに車から離れ、医療班は現場指揮本部の場所を自ら探しDMAT隊の到着を報告した。

 2)本部にて消防の現場指揮者より現場の患者救護へ向かうよう指示があったが、ハザードの有無や具体的な活動内容は指示が無く、現場の指揮官も不明であった。

 3)DMATは救護所での診療を依頼されたが、救護所での消防側指揮官はテント外にて搬出の指揮に忙しく、訓練終了までに医療班には救護所の指揮官は不明であった。

 4)赤タッグの患者用の救護所内には、黒タッグ患者が引継もないまま多数収容され、赤患者が多数収容されている中で救護に支障をきたした。別な場所への収容を依頼したが収容場所が設定されておらず、移送先が無い状態であった。

訓練2

 訓練1の反省会での検討をふまえいくつかの点が改善された。

 1)DMATに対し救急車の同乗者から現場の状況が説明なされ、また各災害現場に前進指揮所が設置されていた。指揮所への案内が搬送した救急隊よりなされ、DMATは円滑に到着報告と情報収集することができた。

 2)班員構成と持参した資機材などを記載し提出することで簡潔かつ正確に報告がされた。

 3)救出や救助の多彩な現場が想定されていたため、地域DMATの訓練として非常に適した訓練であった。

 また問題点としては

 1)DMATが他組織に十分認識されておらず、十分な情報や意見交換がなされなかった。

 2)トリアージポイントを救急救命士1名が担当し、タッグの色を見るだけで振り分けを行っていたが、医師が担当したほうがよかった。

 3)医療統括班の医師が診療も行っていたため、DMATが十分な組織力を発揮できず、情報収集や内部および消防機関との連携が十分ではなかった。

 4)災害現場が広範で複数個所にわたっている場合は統括DMATを設定し、現場指揮本部への参加が必要と思われる。

 5)現場指揮本部に先に出勤報告すべきであった。

考 察

 今回の訓練を通じて、黒タッグ傷病者の扱い方、二次トリアージの方法、搬送先決定方法など災害医療に対する認識が医療者と消防・救急隊員との間に違いがある場合がある事に気づかされた。また、消防側とDMATなど医療側との相互の理解と信頼関係を築く必要性がある事がわかった。

 地域DMATの出現により、災害現場においても初期より医師等による高度なトリアージや応急処置などが行われるようになった。災害現場におけるDMATや消防機関をはじめ種々の機関による災害医療の質の向上のために、災害医療に詳しい医師によるメディカルコントロール(MC)が求められるようになってきた。災害時のMCはMETHANEの情報共有、救助・救出、トリアージ、応急処置、適切な医療機関への迅速な搬送など多くの組織がかかわる。よって、組織横断的な共通認識の醸成や訓練が非常に重要と考えられる。最大多数に最善を尽くすという災害医療目的のために、災害時のMCは専門的知識と経験のある医師が医学的観点から災害医療のシステム構築と運用を担当することであると思われた。


Confined Space Medicine(閉鎖空間の医療)

(井上潤一、プレホスピタルMOOK 4 多数傷病者対応、永井書店、東京、2007、p.165-174)


1.はじめに

 CSM(瓦礫の下の医療)は阪神・淡路大震災にてその必要性が認識され、先の福知山線列車事故現場においてわが国で初めて実施され画期的な成果を挙げることとなった。

 CMSを体系的に確立したのは連邦緊急事態管理庁FEMAであり、1989年に都市捜索救助活動Urban Search and Rescue(USAR)Response Systemを設立した。その目的は、通常の消防力では対応困難な崩壊建造物などの内部に閉じ込められた要救助者に対する医療を含む包括的な検索・救助活動の提供である。これは単に瓦礫の中から救助者を連れ出し治療するということではなく、救命はもとよりその機能予後を最大限の改善させることを目指し救出活動から併行して高度な医療活動を行う総合的な救助活動として位置づけられている。一方、USARにおいては余震等により隊員自身が二次災害に遭遇するリスクも高いため、医療部門の治療歳優先順位は隊員とそのスタッフとされている。

2.Confined Space Medicine

 Confined Space はその出入りや内部での活動が物理的に著しく制限された空間であり、洞窟やマンホ−ル、排気ダクトの中など元来狭い空間と、ビル倒壊や列車衝突などにより結果として生じた狭い空間とがある。その中に負傷者が生じた災害を瓦礫災害と称し、1)暗く、狭く、立つことはおろか座ることもままならない空間である、2)鋭利な障害物、有毒ガス、酸欠、漏電などの危険物(hazard)が存在する、3)紛塵による呼吸障害や高温、低温、多湿、乾燥による体温異常や脱水をきたす、4)活動時間が長時間にわたる、5)常に二次災害の危険を伴い、極度の緊張、恐怖などの精神的ストレスを強いる。といった特徴がある。こういった非日常的・極限ともいえるConfined Spaceでの活動は日常の院内での診療活動や災害時の救護所での活動とはまったく異なるため、参加するメンバ−には十分な教育と訓練が必要不可欠である。

 このような状況下での活動の大原則は「安全第一」であり、以下の4点が挙げられる。

 A.個人保護:閉鎖空間への侵入の際はヘルメット、ライト、ゴ−グル、防塵マスク、手袋、安全靴を着用

 B.酸素濃度の低下と有毒ガスの発生に注意し、侵入前に必ず検知・測定を行い、有害環境下では自給空気呼吸器を装着する。

 C.血液・体液には感染症を有するとした前提で対処し、必ずゴ−グル、マスク、手袋を着用する。

 D.侵入に当たっては必ず退路の確保を念頭に置く。

3.CSMで見られる病態

 瓦礫災害では、その環境が発生する病態を就職することとなる。一般的な病態として、低体温と脱水がみられ、前者に対しては断熱遮断材を身体と接触物の間に入れること、後者に対しては静脈路確保による輸液を行うことが求められる、また、瓦礫災害に特徴的な病態としてクラッシュ症候群、粉塵による呼吸障害や眼障害、危険物による汚染や障害などが挙げられる。

 瓦礫災害では、被災地内の要救助者もとにたどり着き治療を開始するまでに多くの時間が経過し、活動自体も長時間に及ぶ可能性があることより、病態が重篤かする恐れがある。また、瓦礫により要救助者に十分に接触できないこともあるうえ、安全装備が活動の自由を奪うことにもなる。

4.クラッシュ症候群

 CSMで対応すべき最重要の病態であり、わが国では阪神・淡路大震災のいて瓦礫の下に閉じ込められながらも一見元気だった人が、救出した直後に急変して亡くなった症例がみられたことより知られることとなった。日本語では圧挫症候群といい、ビルや家屋の倒壊現場などの重量物により下敷きになっり挟まれたりする状況で起き易く時に致死的となる。

 発生機序としては、圧力による外力と虚血により傷害された骨格筋に、圧迫解除後の再灌流障害が加わることで生じる。圧迫解除直後の急性期には傷害された細胞から流出したカリウムによる高カリウム血症と代謝性アシド−シスによる致死的不整脈および挟まれた部分以下への血流移動による相対的低容量性ショックにより心停止に至る場合がある。さらに筋細胞から流出したミオグロビンによる腎障害に圧挫組織の血管透過性亢進に伴う大量の体液シフトによる脱水が加わり急性腎不全となったり、腫脹をきたした四肢でのコンパ−トメント症候群、DIC、SIRS、MOFが合併する。クラッシュ症候群の重症度は挟まれ時間と骨格筋の障害程度による。2時間以上の圧挫、骨格筋の30%以上の障害で重症度が高くなるといわれている。

 診断する上で何よりも重要なのは、受傷状況からその存在を疑うことであり、trapされた状態で2時間以上経過している場合は必ずクラッシュ症候群を疑う。救出直後は所見に乏しいことが多い。四肢の運動知覚障害が認められたり、ミオグロビンによる褐色尿がみられたり、血液検査でCK高値、代謝性アシド−シス、ヘマトクリット上昇、高カリウム血症、低カルシウム血症などを認めるため、見逃さないことが必要である。

 治療としては、現場での急変を防ぐための治療として生理食塩水1500ml/時の投与をし各種薬剤の準備及び気道確保、徐細動の準備が望まれる。、医療機関においては全身的な集中治療が必要となる。

5.現場での活動

 現場における医療活動の基本はABCDEの確保と実施である。さらに、Cではクラッシュ症候群への対応、Dではペインコントロ−ルとしてのDrag、緊張性気胸に対する drainage、急変に対する徐細動 defibrillationを考慮する。また、バイタルサインの安定化のための保温、骨折部の固定、ペインコントロ−、精神的サポ−トも必要であり、強い不安感や恐怖感、無気力感に襲われている負傷者に対してボイスコンタクトを可能な限り試みることが求められる。

 また、現場においては気管挿管や輸液路確保のほか、最終手段として四肢切断を施行する場合もあるが、基本はあくまでも温存である。現場での死亡確認は救助活動を迅速化することが出来る。

6.閉鎖空間での医療活動のポイント

 活動の成否は侵入前の徹底した計画と準備で決まる。内部の状況や要救助者の状態を可能な限り正確に把握し、行う処置や手順を計画し、必要なものを準備した上で侵入する。また、消防隊員、医療者、要救助者の3者の連携が不可欠である。

 医療処置のポイントはあくまでも救出であり、治療ではないということも頭に入れておく必要があろう。また、多数傷病者が存在する場合は、まずはトリア−ジや重症患者の現場救護諸活動に力を向ける方が、現場活動全体としては有効である。

 過酷な救助現場では救助者にも強いストレスが加わることから、組織として適切なストレス対応策がひつようとなる。日常の研修、派遣中の対応、活動終了後のケアなどを行い、必要であれば専門家による対応が取れる体制をつくる。

 救急活動を現場活動の最先端にまで進めて行うというCSMのコンセプトは、プレホスピタルケアの質のさらなる向上につながるものであり、救急救命士この領域への積極的な関与が望まれることからも、救急救命士の処置拡大が検討されるべきである。


災害用医薬品の備蓄体制 病院の場合

(畝井浩子ほか、薬事 48: 2039-2046, 2006)


 大規模災害が発生した場合、医薬品の供給とその管理を行い、安全な医薬品の安定供給を図ることは薬剤師の責務である。1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災を契機に災害対策が再検討され、「災害時における初期救急医療体制の充実強化」策として「広域災害・救急医療情報システム」や「災害医療支援拠点病院」などの整備を進めてきた。1996年3月には、厚生省薬務局経済課より「大規模災害時の医薬品支給マニュアル」が発行され、以後このマニュアルがわが国における災害時医薬品供給体制の指針となっている。

1.災害医療支援拠点病院

 阪神・淡路大震災のとき、医療施設で診療機能を低下させた原因に、水道・ガス・電気・電話回線などのライフラインの供給停止・不足、医薬品の不足などがあげられる。2005年に全国の災害医療支援拠点病院を対象として災害時の医薬品供給体制についてアンケートを実施した。その結果、全体の42%から回答があり、そのうち災害を検討する委員会を有するのは75%、災害対策マニュアルを作成しているのは88%だった。また、災害用医薬品を備蓄しているのは83%、医薬品の供給を受けたい場合の方法・ルートを知っているのは40~50%だった。つまり、各病院への災害への備えに関する認識は高く、院内災害時対応マニュアルの整備は浸透しつつあるが、医薬品確保に関する具体的な検討は今後の課題である。

2.病院備蓄医薬品

 災害発生直後から3日までの初動期とそれ以降では需要が大きく異なり、さらに長期化した場合の3通りに大別される。特に初動期には外科系措置を必要とする多発外傷、熱傷、挫滅創、切創、打撲、骨折などが多い。初動期に必要と予想される医薬品には、細胞外輸液・維持液、また、解熱消炎鎮痛剤、滅菌消毒剤、抗生物質などがあげられる。これらは大規模災害が発生した場合に大量需要が見込まれ、「被害想定以上の確保が必要」とされている。阪神・淡路大震災の経験から、被災地外からの様々な物資の搬入は、発生後3日より可能になるとされている。したがって、病院で災害発生後の3日間に使用する量を備蓄しておくことが、災害発生直後から初動期に必要な医薬品を安全に提供できるための要件となる。

 医薬品を備蓄する方法として、通常の在庫に含んでランニングストックとして備蓄する方法と、通常の在庫とは別途に備蓄する方法があるが、不良在庫を防止する観点から多くの病院がランニングストック形式で医薬品を備蓄している。

3.軽傷者への対応

 災害医療の特徴は、限られた人的物的資源のなかで一時的かつ多数発生した患者を1人でも多く救命することにある。そのためにトリアージが行われるが、多数発生する軽傷患者に対する「災害臨時薬局」を設置し「災害時約束処方」を作成することが、医師や看護師からは迅速な診療に有効であると好評であった。しかし、一度に多数の軽傷患者が来院し混乱する中で薬を正確に交付しなければならない。薬剤部も災害訓練には積極的に参加することを勧める。

4.行政・関係機関との連携

 災害発生時、個々の病院の備えだけでは対応できない場合も想定し、平時から行政や各関係機関との連携を整備しておく必要がある。なかでもネットワークと情報伝達は重要である。2004年に全国60の都道府県・政令都市を対象に災害時医薬品供給体制についてのアンケートを行ったところ、回答があった62%のうち、主な病院や関係機関などの医薬品在庫状況・需要状況などの情報を一括して行う体制が整っていると答えたのは38%、災害時の医薬品供給に関するシュミレーションを行っているのは24%だった。

 都道府県の災害への備えに関する認識は高く、マニュアルの作成や医薬品備蓄などのハード面は整備が進んできているが、その内容や質に関する検討、周知広報、情報収集・伝達体制の整備などのソフト面が今後の課題といえる。


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