災害医学・抄読会 090213

多数傷病者受け入れ時の初期対応

(寺師 榮、EMERGENCY CARE 22: 26-31, 2009)


 災害拠点病院は被災地の疾病者の受け入れと被災現場外への転送が主な役割である。災害派遣医療チーム(Disaster Medical Assistance Team; DMAT)隊員の育成システムは整備されてきているが、病院内の災害対応マニュアル、訓練などは国家レベルで統一されたものはなく、各病院により異なる。2006年に神奈川県災害医療拠点病院連絡協議会が公表した災害医療対応(実践)マニュアルガイドラインがあり、現場における具体的なものとして参照する。以下、病院が災害時、多数疾病者を受け入れる際に整備しておくべきシステム、資機材、などについて述べる。

病院として整備しておくべきシステム

●CSCATTT

1. Command & Control
 対策本部を立ち上げ、疾病者受け入れ、現場救出・救助、病棟への対応。

2. Safety
 施設内の患者・家族、職員の安全確保。(医療を行うスタッフ、職員を優先)

3. Communication
 災害状況、病院受け入れ状況、被災患者数等の情報の集約、関連機関へ伝達。

4. Assessment
 Cで得られた情報をもとに患者の受け入れ可能か、職員招集の必要性等を評価。

5. Triage, Treatment, Transport
 災害対応の3Tである。即応できるシステムを直ちに立ち上げることが求められる。

●災害時の組織体制

 災害時の組織図は院長をトップとして診療部、看護部、事務部といった階層となる。昼間であれば、普段の通りに物事を進めることが可能である。ただし、予め担当者が即座に行うべきことを箇条書きにしておく(アクションカードの作成)ことが必須である。災害時は直ちに本部を立ち上げ、それぞれの役割におけるアクションカードに基づいて行動する。問題は夜間の人手がない時である。そういった時は院長の代わりにトップの代理を明示し、夜間勤務者に夜間の役割・責務と権限を知らせる。夜間においても医師、看護士、事務の管理代行者がいることが望ましい。

 また、夜間・休日の人数が非常に少ない病院組織では連絡網が重要である。時々平常時にも抜き打ちチェックを行い、どれだけの人数が招集できるかの検証と、災害への意識を高めるために必要な訓練である。

実際の初期対応

 病院での被災者受入が決定したら、即座に本部を立ち上げ診療部門リーダーを決める。スタッフの配置、応援体制、役割はあらかじめ決めておく。それぞれの部署ではリーダーの指示のもとにCSCATTTの考えで決められた役割をアクションカードに沿って行動する。混乱時は各自の役割を責任持って遂行することが求められ、情報交換、リーダーへの報告を徹底し、リーダーは情報を分析、判断していく。

●資機材

 病院がどれだけの患者を受け入れるかで決まるが、最低3日間の備蓄が望まれる。診療材料を院内で備蓄しない病院が多くなっているが、そういった場合は業者との提携、協力体制が必要となる。緊急時に業者手配が可能になるまで必要最低限の物品をストックしておく。また、緊急時に使用する資機材は、誰もが熟知できるようにすることが必要である。

●職員の配置

 本部は各部署の配置を常に把握している必要がある。職員は割り当てられた仕事をそれぞれ担当のリーダーの下、こなすことが求められる。災害に備えて、院内だけでなく部外者とも顔のみえる関係作りが推奨される。

まとめ

 災害は予期しないときにやってくるものであり、その時にいかに動くことが出来るかは、日頃の訓練によるところが大きい。どこの場所指揮命令系統は一元化すること、CSCATTTのもとひとりひとりが責任を持って業務を遂行することが大切である。


現場の救急医療

(小林誠人、丸川征四郎・編著 経験から学ぶ大規模災害医療、大阪、永井書店、2007、p.152-159)


はじめに

 災害現場における急性期医療には 1)多数の傷病者が対象、2)限られた人的、物的医療資源、3)病院外(日常診療とは異なる場所)での医療、4)1人でも多くを救命する、5)指揮命令系統に従う、といった特異性があることを認識しなければならない。

[1]災害現場における医療の原則と目的

 急性期の災害現場における医療活動には、災害発生直後(Phase 0)から数ヵ月(Phase III)までの時間経過が含まれる。Phase 0は生存被災者相互による救護の時期、Phase Iは災害現場に派遣された救援チームによる系統的救出医療の時期、Phase IIは病院における緊急治療の時期、Phase IIIは被害生存者に対する社会復帰のための医療・療養指導の時期である。救命率向上にはPhase 0の短縮が必須であり、早期に複数の医療チームを災害現場に派遣できる災害医療システムの構築が必要である。

 Major Incident Medical Management and Support(MIMMS)の中で現場医療の原則として4つの遵守すべき事項が挙げられている。具体的には 1)指揮と統制、2)安全、3)情報収集・伝達、4)現場評価の4項目であり、現場活動に従事する際にはよく理解し、遵守することが重要である。

 災害現場における医療の治療対象は一次あるいは二次トリアージにおける「赤」「黄」タッグ傷病者であり、必要最低限の治療である「気道」「呼吸」「循環」の安定化を目標とする。

[2]現場救護所の設営場所

 現場救護所は原則として現場指揮本部に付置し、二次災害の危険がなく、救急隊の進入および搬出路が確保でき、地形が平坦で容易に救護活動ができる場所が推奨される。災害時における医療活動(二次救命処置)は、現場に閉じ込められた負傷者に対しては、災害現場で医療を行わなければならない状況もある。

[3]応急救護所における治療の実際

 災害現場医療に従事する者は病院前外傷救護における専門能力を習得しているだけでなく、適切なレベルの救急処置訓練を受けていることが不可欠である。Off-the-job trainingとして国際基準・資格となる病院前外傷救護教育プログラム、ITLS(International Trauma Life Support)が有用である。また、多職種混合での実地訓練は災害医療、現場医療のシミュレーションとして有用であり全国的な展開が望まれる。On-the-job trainingとしてはドクターカーシステムあるいはドクターヘリシステムが有用である。日常から病院前医療に関わることは、災害医療における大きな力となる。

 災害現場あるいは応急救護所における治療の目的・原則は、現場から病院へ傷病者を安定した状態で搬送可能にすることにある。したがって、治療は全脊柱保護の概念とともに、気道、呼吸、循環に異常のある傷病者に限定される。生命に直接影響のない処置(創被覆、外固定など)は機能障害を最小限にすることを目的にとどめるべきである。以下に災害現場で必要となる処置の適応と手技について述べる。

<1> 気道確保と全脊柱保護

 気道確保の目的は気道閉塞の解除、誤嚥の防止、有効な陽圧換気である。用手的気道確保から気管挿管までを状況に応じて選択する。気管挿管の適応は、気道の異常(気道閉塞)、呼吸の異常(呼吸不全)、循環の異常(出血性ショック、心停止)、意識の異常(GCS8点以下)、その他にも傷病者の状態により気管挿管が必要と判断した場合である。実施が困難な場合は、輪状甲状靭帯穿刺あるいは切開などの外科的気道確保を考慮する。

 脊柱保護は合併損傷の軽減という観点から極めて重要であり、特に鎖骨より頭側に損傷を認める傷病者は頸髄損傷の合併を念頭におかなければならない。気管挿管時には必ず介助者に用手的頭部保持を施行させる。

<2> 呼吸補助と胸腔穿刺

 酸素投与の他にも、傷病者の状況に応じてバッグバルブマスク(BVM)などを用いた補助換気を施行する。

 現場で施行可能であり有効な治療として、閉塞性ショックである緊張性気胸に対する胸腔穿刺がある。ITLSプロトコールでは、気胸の存在を判断したうえで、チアノ−ゼなどが観察された場合は胸腔穿刺を考慮するとなっている。胸腔穿刺の部位は鎖骨中線上の第2〜3肋間で肋間中央とし、5cm以上の長さの静脈内留置針を90度の角度で穿刺する。災害現場では穿刺に伴うリスクも考慮し、適応を決定しなければならない。

<3> 循環管理・維持

 循環管理の原則は外出血の止血、静脈路の確保、輸液療法に対する反応の評価である。外出血の止血は圧迫止血が第一選択である。また、静脈路の確保は、損傷がない四肢からできるだけ太い留置針で行う。大量輸液は却って予後を悪くするので、止血操作がなされるまでは末梢動脈の脈拍が触知され、意識レベルが保たれる程度に維持する。末梢からの静脈確保が困難な場合もあるが、災害現場における医療の目標・原則を認識し、1人の傷病者に必要以上に時間を費やすことは厳に慎まなければならない。

[4]瓦礫の下の医療(CSM)

<1> CSMの概念

 CSM(Confined Space Medicine)とは、閉じ込められた空間、制限された空間での医療を意味する。特に困難を極める状況が、崩壊した建物の下(瓦礫の下)で行われる活動である。CSMは暗く、狭い空間で通常の活動が困難であること、障害物・危険物の存在、粉塵・湿度・温度などの環境因子の関与、二次災害発生の危険性と厳格な安全管理、長時間に及ぶ現場活動など、通常の病院前救護とは大いに異なるものである。

<2> CSMの活動

 CSMの従事者は肉体的、精神的ストレスにさらされるため、複数チームによる交代制での活動が原則となる。またCSMは捜査・救助・医療の3部門が一体となって展開されるものである。従事する者は豊富な病院前救護の経験と技量を備えた者でなければならず、活動の大原則として自身の安全を第一とする。

 CSMの目的は、閉じ込められた要救助者に対する捜査、救助および医療の提供であるが、傷病者の救命はもちろん、機能予後をも最大限に改善することにある。CSMの対象となる傷病者は、挫滅症候群、環境因子や危険物による障害などの特異的な病態を合併している可能性がある。CSMにおける治療は気道、呼吸、循環のみでなく、除痛や挫滅症候群に対する救出前からの大量輸液、炭酸水素ナトリウムの投与を行い、急性循環不全や高カリウム血症による不整脈、心停止を緩和あるいは防御するのである。また、傷病者に対し声をかけることで精神的援助を行うこともCSMの1つの治療内容である。さらにCSMに医師が参加することで死亡確認から遺体搬出までが迅速化され、生存者にいち早く接触することが可能となる。

<3> 本邦におけるCSMに対する現状

 国家レベルでCSMに対する教育、実践がなされている米国と比較して、わが国では実際の活動に対する保証制度すら不透明である。国家として社会として取り組むべき問題であると指摘したい。

<4> 本邦におけるCSMの実際

 2005年4月のJR福知山線列車事故では、本邦初の複数機関によるCSMが行われた。12時間に及ぶ活動時間で、3つの医療機関が交代で活動にあたった。車内に閉じ込められた3名の生存者に対し、挫滅症候群の観点から救出前より酸素投与、輸液、薬剤投与などが行われた。3名とも救出直後の心停止は回避できたが、2名の傷病者は意識障害、呼吸障害、循環障害を呈し、換気補助、急速輸液などの治療を行いながらの搬送となった。CSMがなければPreventable Trauma Deathを生じた可能性が高かった。本活動は、医療チームと救急隊で意思の統一と安全確保に十分な配慮がなされていた。

おわりに

 災害現場で医療に従事する者は、現場で供給すべき医療および行うべきでない医療を熟知し、実行する能力をもたなければならない。

米国、NDMSとDMAT

(村山良雄、プレホスピタルMOOK4号 Page 207-214, 2007)


  米国の災害医療の重要な要素のNDMS(National Disaster Medical System)やDMAT(Disaster Medical Assistance Team)を理解するには、米国の行政システム(政権交代によりシステムや職員の変化が大幅に生じる)や災害、大規模事故・事件などの危機管理システムや医療制度を知ることが不可欠であるためい、以下のポイントに沿ってNDMS、DMATについて説明していく。


<ポイント>

  1. 2001年(=WTC同時多発テロ)以前の災害対応
  2. 2001年(=WTC同時多発テロ)以降の災害対応
  3. 日本と米国との相違点
  4. まとめ


1.2001年(=WTC同時多発テロ)以前の災害対応

<基本的な対応法>

1)地方(市・郡など):発災直後は地方が最初に行動する

2)州(県):規模が大きい場合には州の救援を要請する(責任者:州知事)

3)連邦(国):州単独で対応困難、大規模災害・事故・事件では州知事が大統領に救援を要請する

⇒ 大統領は直属機関である連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management Agency;FEMA)に直接命令し、FEMA長官は決められた連邦対応計画(Federal Response Plan;FRP)に従って米国の関係する全行政機関の対応を統括・調整していた。必要経費はFEMAより連邦災害基金から各官庁の災害業務に対して支払われる。

※ FRP:合衆国法の下に連邦災害救援の特殊な過程を確立する公式文章で、FEMA長官、米国赤十字会長、国防疔長官を含む25の官庁の長により合意され、各長が署名したもの。
連邦が対応すべき様々な緊急事態・災害などを想定し対応するため、運輸、医療、食糧など、災害で必要な緊急支援機能(Emergency Support Functions;ESF)と呼ばれる12の主な業務に分類されている(詳細は表3を参照)。
(利点) ・縦割り行政の弊害を軽減(全ての行政官庁の長により合意・署名されたため)

<米国の災害医療対応>

● 災害医療:FRPの中でのESF#8に規定されている。

(手順)

  1. 責任官庁のDepartment of Health Human ServicesHHS、厚生労働省に相当)が NDMSを発動する。

  2. 各地軍事基地内に設置された全国65箇所の連邦コーディネーションセンターFederal Coordination Center;FCC)が必要な被災地に災害医療支援チームDisaster Medical Assistant Team;DMAT)を派遣する。

  3. 現場付近に緊急作戦センター(Emergency Operetion Center;EOC)が設置され、現場の状況を把握しながら調整を進める。

NDMS:災害により医療資源が不足したり、機能が低下した被災地の医療機関などに医療サービスや(医療)資源を提供するための連邦、州・地方政府、私的商業団体、市民ボランティアの間の協力的な歯原の共有計画。

 (目的)単一の国の医療対応能力を統括すること
 (例:大災害時の州や地方の支援、海外の紛争地域から避難した被災者の治療の支援)

DMAT

(主な業務)

2.2001年(=WTC同時多発テロ)以降の災害対応

多くのシステムが現在流動的

(指揮命令系統)

3.日本と米国との相違点

1)明確な指揮命令系統の整備:日本では指揮命令系統の確立前にDMAT導入されたため非機能

2)日本ではDMATは災害現場での第一線の救急医療が重要な業務

(理由)

4.まとめ

● 指揮命令系統を含めた包括的なシステムの整備が早急に必要

● その下での実働部隊であるDMATの整備を行う

● 災害医療の本質を理解する(救急医療だけでなく、長期支援、二次災害への対策・調査・研究)


災害時のボランティア活動を考える

(中村安秀、救急医療ジャーナル 16(6): 38-43, 2008)


はじめに

 1995年の阪神淡路大震災は、ボランティア活動に注目が集まった日本で最初の大災害であった。災害時におけるボランティア活動において、保健医療の分野では、医師をはじめとする専門性の枠組みが強く、多くのボランティアが活躍した事態は未曽有であった。その後、新潟中越地震などの災害現場では、日本各地から集まったボランティアの姿が認められた。このように災害現場においてボランティアの活躍事例はあるが、全体として災害支援活動とボランティアの協働が円滑に行われるに至るまでには、まだまだ課題が少なくない。以下に、筆者自身の個人的な体験と、海外での事例を紹介する。

阪神淡路大震災におけるボランティア活動からの教訓

 阪神淡路大震災では現地に入る交通手段のほとんどが途絶したため、実質的に災害直後の緊急医療の基本は地元の保健医療機関が担うべきであること、そして隣接地における搬送受け入れ体制の確立が重要であることが認識された。また、ボランティア団体と違い、一部の個人ボランティアが熱意だけで駆けつけ、現地の保健医療スタッフの足手まといになったことは反省点であった。さらに、ボランティアスタッフの交代が頻繁であり継続性に欠けることや保健医療ニーズの収集が不十分であったことも問題点として挙げられる。これらの点からも分かるように、災害時に中心として働くのはやはり地元の保健医療機関が担うべきであり、ボランティアスタッフは継続期間を十分に検討し上で、地元の期間との連携により、一時的に低下した保健医療サービスを補うことが重要であると考えられる。

イラン・バム地震におけるボランティア活動

 2003年12月26日に、バム市周辺を直撃した直下型地震は、政府公式発表で26000人の死者、30000人の負傷者を生じ、市街の90%以上の建物を崩壊させた。地震の直後から、多くの国際機関、政府機関、NGOなど世界128ヶ国216機関の支援があった。また現地では、このように救援に駆けつけることを前提に、組織的に担当者と地区割りを行い、効率的な緊急支援を行った。緊急支援NGOや外務省などで構成されるジャパン・プラットフォームは、総額3.3億円の助成資金を提供し、生活物資配布や通信などで効率的な支援が出来た一方で、緊急支援からの復興への移行期に対する基本戦略が欠けていたため、中長期的なビジョンを持つプロジェクトの構築が困難であったという課題も残した。筆者自身はこうした活動を通じ、ボランティア活動とは、支援する人、支援される人が峻別される行為ではなく、ボランティア活動に赴いたつもりで、被災した人から勇気と温かさをもらうことを痛感した。

共同人道支援研究班によるボランティア評価

 文部科学省「世界を対象としたニーズ対応型地域研究推進事業」の「人道支援に対する地域研究からの国際協力と評価」では、ボランティア活動に対する評価を行っている。この研究では災害に関する人道支援において、被災社会とどのような「協働」が行われたのかを検証し、NGOなどが持つ情報をデータベース化することにより、被災社会との「共生」を可能にする人道支援のあり方について具体的かつ実現可能な社会提言を行うことを目的としている。検証の一例として、2004年12月に起きたインドネシアのスマトラ沖地震・津波における人道支援の在り方を取り上げる。北アチェ州の村では、日本人宣教師が被災した村を訪れ、敬虔なイスラム教徒に有機農法を指導する、ということがあった。共同人道支援とは、悲惨な災害がなければ、おそらく絶対に出会うことがなかった地元民と、“よそ者”がつむぐ織物であり、ボランティアによる緊急人道支援とは、人々の生活状況を単に復興前の状態に戻す復旧作業ではなく、必要なものを新しく興隆させるという意味での復興の過程を内包する営みであるといえる。

迷惑ボランティアにならないために

 最後に、海外での緊急支援における最近の動向をもとに、国内の災害現場におけるボランティアとの協働に関して、いくつか提案をする。1点目として、緊急支援のときは物資を送らずに、金銭的な支援に限るということである。緊急時に古着や雑貨を仕分けすることは物理的に不可能であるからであるからである。2点目として、医療や看護などの専門技術を持った者がその技術を生かすために、これらの専門職をマネジメントする管理能力が必要である。彼らの能力を最大限に活かすべく、統制のとれた緊急保健医療計画を立てることが求められる。3点目として、Do No Harmの思想が挙げられる。医療に関する古い規範であるギリシア時代の「ヒポクラテスの誓い」において、害となる方法を行わないことが挙げられているが、この医療の原則は災害現場においても適用される。善意の行為だからといって、「害を与えないこと」が保証されるとは限らない。災害現場でボランティアを行う人は、自分の正義感や善意に酔いしれることなく、他人に迷惑をかけてないかどうか、自分のしていることが間違っているのではないかと自問しながら、地元の保健医療機関や行政の意向を確かめながら、謙虚に、そして着実に活動を続けていきたいものである。


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