大震災時での政府の危機対応の遅さ、危機管理の低さを反省し、首相官邸の地下室に対策室がつくられ、内閣府に危機管理室が設置された。これによりJR事故時に政府は素早い対応ができた。これは大災害が発生することを想定し、大災害時に政府がとるべき役割が明確化され、危機管理は迅速な対応が不可欠であると認識するなど、災害対応に政府・官僚に意識変革があったと考えられる。
また筆者の医療施設で両事故災害の対応の違いは顕著である。大震災時には医師の大多数は大破した研究室や医局の復旧整理に専念し、院内の対応に追われ対策会議後に被災地への救護斑派遣も8日後になってようやく実施された。一方JR事故災害では発災から32分後には被災傷病者の受け入れ準備が整い第1例目を受け入れた。
この対応の違いは大事故災害における地域機関病院の果たすべき役割、迅速に適切な行動を起こすべき責任についての認識にあるとおもわれる。大震災での基幹病院としての役割を果たせなかった事への反省によって毎年行ってきた災害対応訓練、災害現場への救護斑派遣などの積み重ねによるものと思われる。
著者の施設では非番のスタッフは近隣で開催されているスポーツやイベントをテレビ観戦することが指令されている。
さらに効果的な情報収集手段として、全職員とその家族にも情報提供を依頼するシステムが望まれる。多くの関係者が災害に関心をもち、災害情報を病院に通報する重要性を啓発し、通報24時間受けるシステムを設置することが望まれる。
この場合に大事なことは個々人が置かれた状況で最適な行動が何かを判断することである。事故災害は1つとして同じ状況がではないことを認識し理解したうえで、各職場では発災時に勤務している職員の取るべき最適な行動指針を行動計画表としてまとめて、誰もが見えるところに表示するべきである。この行動計画表は職場だけでなく家庭においても実践すべきである。
われわれは非常時に医療従事者として取るべき行動を決定する前に、人間として隣人の命を慈しみ、自分の命と同じように愛し守る固い信念がなければならない。この隣人への人間愛は平時の生活の中で、医療従事者しての義務の中に芽生え、毎日すこしずつ成長し強固な信念となるものである。非常時にこそその人の本性が見える。災害対応は病院においても個人においても特殊なものと考えるべきではない。平時と災害時は不連続である。
搬送トリアージとは、現場の救護所などで治療の優先順位を考慮し、患者搬送の順位づけを行うトリアージのことである。現在、搬送トリアージとして用いられているものには以下の3つがある。
具体的な方法と資器材
搬送に向けての要点
本来の耐震設計のあるべき姿として、順番に 1)人の安全、2)物の安全、3)財産保全、4)機能維持の4つがある。アメリカノースリッジ地震において免震構造の病院は4つ全ての保全が可能であったが、耐震構造の病院は人の安全を確保できたのみである。これら4つを満足させることを目標にして、免震構造のストラテジーを考える必要がある。
免震建物では、建物と地盤の間に、この水平方向の可動クリアランスを確保することが必要不可欠であるが、免震の性能をどの程度に設定するかにより、その範囲は大きく異なる。したがって、敷地面積の狭い土地では免震建物の設計は大変な困難を伴うこととなる。また、免震構造は、本来固有周期の短い短周期構造物にたいして、固有周期を数秒のゾーンにシフトさせることにより、応答加速度を劇的に低減させる構造方式である。したがって、本来、固有周期の短い超高層ビルでは、免震構造のメリットが少なくなる。
この免震機能設定は最大地動速度90〜165カインを記録した震度7の阪神・淡路大震災はもちろん、今まで起こった大型地震、1946年の昭和南海大地震(震度8.4)・1854年安政南海地震(8.4)、さらには今後発生が予想されている南海大地震(8.4)もし東南海地震と同時に発生した場合にも対応している。
また、免震設計のコストの問題であるが、大地震と遭遇した場合には建物・収容物ともに無損傷であるなど経済的優位性が明確かつ圧倒的に高性能免震が有利である。
しかし、そうでない場合でも、建築基準法を満たす通常の耐震構造の建物コストを100とした場合、制震構造で100〜115程度、免震構造は100〜120程度と考えられる。また、イニシャルコストにおいて、8階建て以上の高層ビルでは、在来よりもコストダウンが可能であるといわれている。コスト抑制のためには、確かな免震設計技術力(適切な免震構造・免震工法の採用)および免震構造と建築計画との調和・工夫が不可欠であるとされる。
(1)医療チーム(医師、看護師、医療調整員、業務調整員)
(2)専門家チーム(災害応急対策および災害復旧に対する助言・指導)
(3)救助チーム(警察庁、海上保安庁、消防庁)
(4)自衛隊の部隊(医療活動、輸送活動、給水活動)
現地での活動にあたり、最も重視している点は、被災国の人的被害の軽減、日本の国際社会への貢献・存在感、日本国民の国際協力参加の推進が挙げられる。また、危険地帯や紛争地帯への派遣もあるが隊員の安全を第一としている。
インドネシアは海洋性熱帯気候に属し、流行している病気は、コレラや細菌性赤痢、アメーバ赤痢、食中毒のような消化器系感染症のほか、局地的に熱帯・亜熱帯地域特有の感染症であるマラリア(ハマダラカが媒介)やデング熱(ネッタイシマカが媒介)などがあり、注意しなければならない。
一次隊による診療は9日間行われ、患者は以下のようであった。
一次隊は以下のような理由から、二次隊派遣の必要性をJICA本部に伝えた。
トリア−ジとパッケージング
(森野一真:プレホスピタルMOOK4号 Page 114-124, 2007)1 搬送トリアージ
2 パッケージング
災害を迎え撃つ―未来へ (4)究極の対策:ノースリッジ地震に学んだ免震病院
(湯浅健治:臨床透析 22: 1571-1577, 2006)I.はじめに・ノースリッジ地震から学んだこと
II.耐震・制震・免震について
III.100カイン無損傷設定とは
IV.高須病院における免震装置について
の3種類の免震装置を適切に混用・配置することで、126〜243カインの地震動にも安全超高性能免震構造の設定を実現している。おわりに
国際緊急援助隊におけるJDR医療チーム派遣の実際
(浅井康文ほか.救急医学 32: 231-235, 2008)【はじめに】
【国際緊急援助隊の歴史】
【JICAの災害援助体制】
【JDR医療チームの実際】
【JDR医療チーム派遣の実例】
【おわりに】