災害医学・抄読会 081010

災害現場医療(診療指針) トリア−ジ

溝端康光:プレホスピタルMOOK4号 Page 94-104, 2007


災害医療におけるトリアージ

1.トリアージの概念

 日常の医療行為においては、重篤な一人の傷病者に最大限の医療資源が投入される。これは、個々の傷病者に対して最良の結果をもたらすことが、日々の救急医療の目標だからである。

 これに対して大規模災害の時には、スタッフや器材、薬剤が不足する。そのため、災害時における救急医療では目標を、個々の傷病者ではなくて最大多数の傷病者に最良の結果をもたらすことに切り替えなくてはならない。この目標を達成するためには、優先順位を付け、限られた資源を有効活用する必要がある。

2.トリアージ作業と担当者

 災害時に行われるトリアージには、2種類ある。一つ目は、傷病者の状態を評価して一定のカテゴリーに分類する。これは様々な場所(災害現場・待機所・搬送車内・医療機関)や様々な職種(救急隊員・医師・看護師)によって行われるので、シンプルなアルゴリズムと迅速な再現性を兼ね備える必要がある。

 二つ目は、災害医療対応の全体像を把握して、治療と搬送の優先順位を決定する作業である。これは医療指揮官が担当し、災害医療に精通し地域の救急医療体制を熟知した経験豊富な医師が就くのが望ましい。

3.トリアージカテゴリー

 トリアージは重傷度と緊急度によって4つのカテゴリーに振り分けられる。赤は最優先治療群で、救命ために緊急の治療を必要とするものである。黄は待機的治療群で、ある程度治療を遅らせても救命に影響しないものである。緑は軽症群でより優先度の高い傷病者を対応してから治療しても問題ないものである。黒は死亡群で、死亡と判断されるものである。また、死亡予測群として、日常の救命医療においても救命が困難だと思われるものを分類することもある。

4.トリアージの進め方

 トリアージは、災害現場から医療機関まで、傷病者が移動するたびに何度も行われる。災害現場では迅速に一次トリアージを行い、以降はより詳細に2次トリアージを行う。

 原則として、トリアージ中は治療や応急手当は行わない。ただし、気道確保と外出血の止血治療だけは許容される。また、自己主張の強い歩行可能傷病者は混乱の原因になりやすいので早急な隔離が必要である。災害医療の知識を持つ傷病者を活用したり、それ以外でも明確な指示をしておくと良い。

5.アンダートリアージとオーバートリアージ

 アンダートリアージとは、重症傷病者を黄や緑にカテゴリーすることで、オーバートリアージとは、重症でないのに赤にカテゴリーすることである。日常診療においてもアンダートリアージは防ぎ得る死の一因である。これを予防するため、オーバートリアージは許容されている。しかし、災害現場ではオーバートリアージも防ぎ得る死の原因となる。だから、両方を回避しなくてはならない。

トリアージアルゴリズム

1.標準的トリアージアルゴリズム

 一次トリアージの標準的アルゴリズムはSTART(Simple Triage And Rapid Treatment)法が用いられている。歩行可能ならば緑。歩行できず、呼吸数が10~29回で、CRTが2秒以内で、命令に従えるならば、黄。自発呼吸がなく、気道確保をしても自発呼吸がないものは黒。それ以外を赤に分類する。

 二次トリアージは、第一段階として、意識、呼吸、循環の生理学的評価をする。第二段階は全身の損傷を解剖学的に評価して、該当するものがあれば赤に分類する。さらに受傷機転と災害弱者を考慮する。

2.その他トリアージアルゴリズム

 一次トリアージは他にも、SieveやCare Flightがある。それぞれイギリスとオーストラリアで採用されている。  二次トリアージにはSAVEやSortがある。SAVEはヘリ搬送などで救命の可能性が高まる群を選択でき、Sortでは重症度をスコア化できる。

3.小児のトリアージアルゴリズム

 小児では、心拍数や血圧、呼吸回数などの正常値が成人とは大きく異なっているため、成人と同じトリアージアルゴリズムを用いると多くのオーバートリアージが発生する。そのため、小児用のトリアージアルゴリズムが必要になる。

 PTT(pediatric atriage tape)を用いたSieveは、傷病者の横に伸ばし、身長のところの基準値で判断する。

 JumpSTARTでは、STARTに加え、気道確保後に無呼吸であっても、脈拍があれば5回の人工呼吸を行い、再度呼吸の評価を行う。

トリアージタッグ

 トリアージタッグとは、トリアージ内容を記録に残し、その後のトリアージ内容を伝えるためのものである。そのため、書式の標準化が必要である。

 また、実際の災害現場で想定どおりに活用された例は少なく、有効に活用するには、普段からトリアージタッグを使用することに慣れておかなくてはならない。

おわりに

 実際の災害現場は極めて混乱しているので、適切なトリアージを行うには、日常の救急医療の中で十分なトレーニングを積んでなくてはならない。


災害における各組織の役割

石原 哲.救急医学 32: 150-160, 2008


 大災害が発生した際、初動時の機動力や各組織の横の連携などがスムーズに機能できるかどうかが「避けられた災害死」(preventable death)を低率にする要因になる。また、災害緊急医療援助を行うにあたり、被災住民の生命の保全を第一とし、災害発生時の被害の緩和や、災害に対する予防・準備などにおいては組織化された活動が必要となる。今回は、災害時の各組織の体制と役割についてそれぞれの組織の方々に述べていただく。

【消防活動】

東京消防庁では、平成7年に消防救助機動部隊(ハイパーレスキュー)を創設
国においては緊急消防援助隊を組織し、広域的な相互救援体制を確保
東京都は全国に先駆け、災害現場で早期に医療救護チームを派遣することを目的とし、平成16年に災害現場で救命処置などに対応できる災害医療派遣チーム「東京DMAT」を創設。

【警察活動】

被災地における治安に万全を期する。
被害実態の把握および各種情報の収集、被災者の救出および避難・誘導、行方不明者の調査、死体の見分(検視)、交通規制、公共の安全と秩序の維持

【自衛隊活動】

被害状況の把握、避難の援助、被災者の捜索救助、水防・消防活動、応急医療・救護、人員(救急患者)および物資の緊急輸送、炊飯・給水、危険物の保安・除去、被災地域内の自衛隊病院におけるなどにおける医療活動

【日本赤十字活動】

医療救護、救援物資の備蓄と配分、血液製剤の供給、義援金の受付と配分、その他災害救護に必要な業務

【自治体活動】

初動時の医療救護活動(医療救護班の派遣、DMATとの連携)
後方医療体制(災害拠点病院の指定・拡充、施設の耐震化整備)
広域医療連携(近県市と相互応援体制)

【保健所・保健師活動】

災害医療コーディネーターを保健所長が努め、医療班・資材の調整にあたる。
保健師は医療班、保健班に役割分担し、医療班は巡回診療の調整、医師会など関係機関との連携を取り、保健班は派遣保健師の調整、避難所の管理、避難所および地域の健康状況把握を行う。

【被災地医師会】

行政からの要請による活動として、救護所への医師派遣、医療相談所の設置、インフルエンザワクチンの集団接種などを行う。
医師会としての活動として、医師会員の安否確認、診療所および病院の被害状況の把握、緊急の医師会招集、対策協議、マスコミ対応などを行う。
医療コーディネーターの役割として、災害支援医療チームとのミーティング、医療支援チームの受け入れ・配置・撤収対応などがある。

【災害支援医師会】

応援救護班の確保、医薬品・医療資器材および食糧などの準備を行い、被災地医師会の支援を中心に活動する。

【看護協会活動】

災害看護研修を行い、看護師に災害医療および看護の基礎的事項を理解し、災害看護に必要な知識・技術を習得し実践できる能力を養ってもらう。
災害発生時には情報収集を行い、被災地看護協会の支援要請に応じて災害支援ナースの派遣調整を行う。

【薬剤師会活動】

日本災害医療薬剤師学会を設立し、災害現場で活躍できる薬剤師の養成を行っている。
災害時には、情報収集、被災地薬剤師会への協力、避難所への薬剤供給、避難所での保健衛生の関与などを行う。

【社会福祉協議会の活動】

「災害ボランティアセンター」を立ち上げ、避難所の運営支援、全国からのボランティア希望者のための情報収集や提供、受け入れを行っている。
災害発生時には、全国ネットワークを利用して国内各地から被災地にボランティアコーディネーターが派遣されるシステムを整備。

【生活協同組合連合会活動】

被災者への治療対応、避難所を巡回し、健康相談、心的ケアを行う。
地域生活支援では、炊き出し、洗髪などを行う。全国の医療生協からの支援の受け入れと配置

【NPO活動】

法的な縛りが少なく、組織が小さいため小回りがきき、動きが速いなどの利点をいかし公的機関の活動の隙間を埋める形で活動を行う。

【日本医師会活動】

被災地の医療確保、被災した地域への医療支援を実施。
必要に応じて災害派遣医療チームを直ちに派遣できる環境を整備。


災害を迎え撃つ―未来へ (3)災害時要援護者(身障者)に対する災害対策の方向性

丸山直紀:臨床透析 22: 1565-1570, 2006


 平成16年2004年に発生した一連の風水害への対応に関して、高齢者、障害者等の災害時要援護者の避難支援についての課題が明らかとなった。

 このことから、内閣府では、要援護者情報の収集・共有等についての取組指針を示した「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」を平成17年3月に取りまとめた。そして同年9月に有識者からなる検討会を立ち上げ、避難所における要援護者用の支援のあり方や、保健師,看護師等の広域的な応援等の関係機関等の間の連携についての検討を進め、平成18年3月に今回の新ガイドラインを充実させたところである。


 まず、「避難支援プラン」を作成するに際して、要援護者の避難支援体制の整備を進めていくためには、地域のどこに、どのような要援護者が移住していて、災害時にどのような支援が必要となるのかについて具体化することが重要である。また、そのうえで要援護者本人と避難支援を実施する者の間でこのプランを日頃から共有し、避難訓練を実施しておくことが重要である。共有していく方法として、新ガイドラインが推奨しているのは、関係機関共有方式であり、これは要援護者本人から同意を得ずに平常時から関係機関等の間で共有する方法である。ただ関係機関共有方式を利用するにあたって、情報を受ける側の守秘義務を確保することを忘れてはならない。


 次に、災害時における支援については要援護者支援班を設けること、福祉避難所に対して、市町村・都道府県・国の機関が理解を深めることの二つに焦点を当てている。

 要援護者支援班については市町村が中心となって自主防災組織や福祉関係者、そして避難支援者の協力を得つつ、各避難所に要援護者班を設けることを推奨している。そして災害時に要援護者班は、各避難所内に要援護者用の窓口を設置し、要援護者からの相談対応、確実な情報伝達と支援物資の提供等を実施することが重要であるとしている。

 福祉避難所については現時点では平常時、災害時に十分な取り組みがなされていないため、市町村・都道府県・国は研修や実践的な訓練を実施、促進するなど、福祉避難所についての理解を深めていくことが重要である。


 三つ目に、新ガイドラインは関係機関等の間の連携について記載している。

 近年の災害においては、ケアマネージャー等の福祉サービス提供者が中心となって献身的に担当利用者の安否、移住環境を確認し、ケアプランの変更、緊急入所時等の対応を行うなど重要な役割を担っている。そのため、新ガイドラインでは、「災害時における福祉サービスの継続(BCP)」をはかるべく、被災市町村は、福祉サービス提供者のニーズを積極的に把握し支援していくことが重要としている。

 また、避難所での要援護者に対する医療の確保、健康状態の把握、トイレ・会談への手すり設置等のさまざまな支援活動に関し、医師・保健師・看護師・薬剤師・社会福祉士・福祉関係者等の果たす役割が大きいことから、これらの広域的な応援とともに、「要援護者避難支援連絡会議(仮称)」を設置し、関係機関等の間で緊密な連携を図ることが重要であるとしている。


災害時に特徴的な看護ニーズ 看護ニーズに関与する要因

渡邉智恵、南裕子ほか・編:災害看護学習テキスト 実践編、日本看護協会出版会、東京、2007、p.2-18


 災害は規模、強さ、季節や発生時間帯、発生場所の人口密度・地震・地形、建築構造・強度、経済基盤、医療事情などによって死者数や看護ニーズは異なる。

1.災害看護学

 災害とは「天災や人災と呼ばれるもので不時に多くの人々の生命や肩甲が著しく脅かされる状況」と定義されており、災害看護、災害看護学は以下のように定義できる。

災害看護;災害に関する看護独自の知識や技術を体系的に、かつ柔軟に用いるとともに、他の専門分野と協力して、災害の及ぼす生命や健康生活への被害を極力少なくするための活動を展開すること

災害看護学;災害看護活動を展開できる知識・技術の開発とその成果の啓蒙を目指すもの

 災害看護を構造で見る場合、原因もしくは経時的に分類できる。原因別災害分類では台風洪水、地震などの自然災害と化学爆発、大火災などの人為火災に分けられる。一方、経時的災害分類では i)災害に備える時期、 ii)災害発生時、iii)復旧・復興時期の3つの時期に分けられ、各時期の看護活動には看護独自の機能がある(表)。

災害に備える時期災害看護教育の実施
広範な防災訓練
防災物品やマニュアル、危機管理体制の点検
災害ネットワークの形成と確認
災害発生時災害発生直後の段階災害救急看護
救命・救急看護の初動活動
死者とその家族へのケア
災害発生後中期の段階二次災害予防看護 被災者の生活面への援助
被災者の心のケア
災害後保健活動
健康立て直し支援活動
復旧・復興時期長期的看護活動
長期的こころのケア(被災者および救援者に対して)
長期的健康立て直し支援活動
地域社会立て直し支援活動


2.災害看護の対象者とそのケア

1) 子供

 子供の場合、災害によって傷ついていても大人と比較して自分の受けた心の傷を表現することが難しく、また周囲の大人たちも混乱しているため微妙な変化に気づかないことが多い。そのため周囲の人々は子供の気持ちを否定せず傾聴し、幼児の場合にはストレス反応である退行現象が出現しても怒ったりせず話しかけ抱きしめるなどのスキンシップを増やすなどして、精神的な安定を与えることが必要である。また乳児に対しては災害時ライフラインが途絶するためにミルク用のお湯の確保、哺乳瓶の清潔、スキンケアなどの指導が必要になる。

2)高齢者

 高齢者は不便な避難所生活や不慣れな環境のために急速に活動力が低下し、寝たきり状態や疾患を引き起こしやすくなる。そのため生活リズムが取り戻せるような活動をする、あるいは機能訓練や環境整備をすることにより、精神の安定化を図り心身の機能低下を防止することが重要である。

3)患者

 慢性疾患の患者は治療継続や食事・運動などの自己管理が非常に重要になる。そのため平常時から災害時を含めた緊急時の対応について患者教育をしておくことが大切であり、医療を円滑に継続するため健康手帳などに内服薬や食事内容などについて記録するよう習慣づけることが必要である。

 災害時要援護者や難病患者については医療ケアが継続されているかを確認し、必要に応じて受け入れ可能な医療機関などの情報を患者及び家族に提供すると共に、生活支援の相談活動を行う。また清潔保持や体位変換などのケアおよび指導を行うことも必要である。

4)救助者(看護者)自身

 被災地内の管後職に当たるものなどの救助者は、社会からその役割を期待されているため弱音を吐きにくく、むしろ救援活動に参加しないまたはできないことに対して罪悪感を持ちやすい。そのため被災者としてのストレスのほかに救助者としてのストレスが加わることがありケア提供者自身へのケアは重要になる。

3.結語

 近年の災害多発に伴い、災害看護教育の必要性が大きく叫ばれている。看護職にあるものが社会の要請に応え、災害時に人々の生活と健康を効果的に支援することが出来るようになるためには、基礎看護教育から現任教育、そして大学院教育へと一貫した教育体制の整備とカリキュラムの建築・確立が急務である。


国際医療班の活動

浅井康文ほか、丸川征四郎・編著 経験から学ぶ大規模災害医療、大阪、永井書店、2007、p.379-384


 JDR(Japan Disaster Relief:国際緊急援助隊)医療チームは、国際協力機構(JICA)に所属し、国公私立病院の職員のみならずあらゆる医療機関の医療従事者などから希望者を事前登録しておき、世界のどこかで大災害が生じたときに、登録者の中からメンバーを選びチームを作って、約二週間の期間、国の費用負担で派遣される。登録メンバーは年に2回の導入研修(2泊3日)と導入研修を終えた登録者にブラッシュアップとして行う年に3回の中級研修によって、海外活動で必要とされる知識・技術の習得と向上が常に図られている。

 その歴史は、カンボジア難民医療チームの三年間に渡る活動をもとに1982年3月に発足した。その後1987年に国際緊急援助隊に係る法律(JDR法)やPKO法によってPKOは戦争や紛争に起因する難民に対して、JDR医療チームは主として自然災害に対して派遣されるように役割分担された。

 JICAの災害時援助体制についてであるが、JICA国際緊急援助隊事務局は、JDR法に基づいて国際緊急援助隊の派遣と緊急援助物資の供与という2つの大きな活動を行っている。国際緊急援助隊の派遣は 1)医療チーム(医師、看護師、薬剤師、調整員などからなり被災国の医療水準にあった診療活動や防疫活動を行う)、2)専門家チーム(災害応急対策および災害復旧に関する助言、指導)、3)救助チーム(警察庁、海上保安庁、消防庁)、4)自衛隊の部隊(医療活動、輸送活動、給水活動)の4つに分けられる。

 出動は災害時の被災国の要請に基づく「要請主義」である。緊急物資の供与は、備蓄倉庫からの必要物資(毛布、テント)の緊急輸送や、民間援助物資の輸送がある。

 実際の国際緊急援助隊の活動の例としてエルサルバドル地震やスマトラ島沖地震が挙げられる。2001年1月に起きたエルサルバドル地震では外務省団長以下、医師3名、看護師6名、薬剤師や調整員3名、JICA職員など5名の計18名のチームで、9日間に1573名の患者を診察した。エルサルバドル政府からの情報では負傷者が多く外科・整形外科医が必要であるとのことであった。しかし、実際には事前の情報に反して、外傷の患者は少なく呼吸器、消化器疾患、精神症状、寄生虫などが目立っており、衛生状態の悪さから伝染病の恐れもあった。このため、むしろ生活基盤の整備が早急に求められた。2004年12月におきたスマトラ島沖地震では邦人の死亡者が出た周辺の国に世間の眼 が向き最大の被災地であるインドネシアへのJDR医療チームの派遣は最後になった。特にバンダアチェは政治的な事情により派遣が遅くなった。この派遣は1次隊から3次隊まで行われ、最終的にJDR医療チーム初の自衛隊へのサイトの引継ぎがAll Japanとして行われた。また、バンダアチェではこの災害をきっかけにゲリラとインドネシア軍の和平が実現したのであった。

 JDR医療チームの今後の課題として、災害対応能力の向上(メンバー各人が1人で自立して仕事を遂行できるといった自己完結型活動の検討)、復興に向けて切れ目のない援助、登録者の人数・分野の拡充、援助隊の広報機能の強化があげられ、今後はGO(政府機関)やNGO(非政府機関)といった国際的な機関との協力関係を模索することや、災害の種類や状況に合わせて国際的な医療装置(X線、超音波、血液生化学分析器など)の導入も課題となっている。

 わが国の災害援助で求められているのは、被災国における被害の軽減、支援体制の強化、各国チームやNGOとの連携・協力、切れ目のない災害支援(緊急援助、復旧・復興、予防・防災)、わが国と被災国との友好関係の発展などがある。国際緊急援助隊の目的は、被災国の人的被害の軽減、日本の国際社会への貢献・存在感、日本国民の国際協力参加の推進が挙げられる。この国際緊急援助隊の組織活動を通して、国内外の災害においてメンバーが中心的な役割を果たしている。国際協力は国境、民族、文化、慣習、宗教などを超えた人間と人間のかかわりであり、その中で互いに相手の文化、歴史、宗教、慣習などを尊重し共存、協働するものである。その活動は協力する領域の専門的知識や技術を要するのみでなく、人間的に1人で自立して仕事を遂行するための普遍的な一般的な能力を有していることが必要である。


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