災害現場における初動活動は捜索(S;search)・救助(R;rescue)・医療(M;medical assist)といわれ、S&Rは主に消防の業務であり、医療チームの役割はMが中心となる。また、災害医療の基本は3T'sすなわちトリアージ(Triage)・治療(Treatment)・搬送(Transport)といわれ、これらの業務を他機関、特に消防と綿密な連携のもとにより効果的に実践することこそが災害現場における医療チームの最大の役割である。その医療チームの役割は災害現場内の活動場所によって異なる(表1)。
表1 災害現場における医療チームの役割
【活動区域内での役割】-
一時トリアージ
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生存負傷者の治療
- 死亡者の死亡診断と死亡宣告
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【現場救護所での役割】-
トリアージポストでの二次トリアージ
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治療エリアでの治療
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搬送トリアージエリアでの搬送トリアージ
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死亡者の死亡診断と死亡宣告
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現場救護所の医療担当官
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【現地災害対策本部での役割】-
医療チームへの任務任命
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医療チーム全体の安全の確保
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医療に関しての通信連絡の拠点
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現場における医療チームの供給と需要の把握
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医療資器材の要否の確認と調達
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収容病院の確保・選定との情報交換
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メディア対応
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医療ボランティアの統制
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1.活動区域内での役割と他組織との連携
医療チームが活動区域内でのトリアージを任命された場合に果たすべき役割は、活動区域内の傷病者の活動区域外への搬出順位を決定する一次トリアージである。基本的に安全が確保された現場救護所での活動と異なり活動区域内は完全に安全が確保されているとは限らず、活動区域内での活動には消防、特に安全管理を担当する消防の担当者と密な連携をとってその指示のもとに活動することが必要である。
また、活動区域内での生存傷病者の治療における医療チームの役割は、救命のための救出の猶予時間を医学的に評価することと、救出までに必要な最低限の医療を行うことである。ただ治療を行うこと自体に救出時間を遅らせるというマイナスの部分も存在するということを医療チームは認識しなくてはならない。したがって、傷病者の救命に向け効率よく治療と救出作業がなされるためには、消防の救助チームと十分な意見交換と意思疎通を行って連携することが重要である。
2.現場救護所での役割と他組織との連携
医療処置は、救命救急士などが行える一部の基本的医療処置を除いては医療チームしか行えない、他機関で代替不可の行為である。ただ、医療チームの人的資源が不足している場合に、最優先治療群(優先度1:赤)の治療の支援、待機的治療群(優先度2:黄)あるいは軽症群(優先度3:緑)の傷病者の応急処置や経過観察を救命救急士や救急隊員あるいは医療ボランティアにしてもらうように、消防や医療ボランティア組織と連携を取り合い協力を仰ぐことは一つの手段である。
現場救護所のトリアージポストでのトリアージは、十分な訓練を積んでその能力を有している看護師や救急救命士・救急隊員での代替も可能な業務である。医療チームの人的資源的に可能であれば、現場救護所の医療担当官を兼任ではなく単独業務として委託することが望ましい。現場救護所の医療担当官の最も重要な役割は医療指揮隊により任命されて現場救護所に派遣された医療チームの統括であり、活動区域内の活動を任命された医療チームも含めて統括する。
搬送順位を決める搬送トリアージも高度な医療知識・判断が必要とされ、他機関では代替が不可能に近い業務であり医療チームが優先的に担うべき役割である。搬送トリアージの搬送順位決定は医学的要因以外の多くの要因に左右されるために、現場救護所の治療以上に一層の他機関との連携が必要とされる。情報を消防、特に搬送エリアおよび救急車収容場の担当消防隊員から情報を入手して密な連携のもとに判断をくださなければならない。
3.現地対策本部での役割と他組織との連携
最初に災害現場に到着した医療チームは原則として医療の指揮本部における医療指揮隊としての役割を果たす必要がある。この場合、消防の現地災害対策本部に医療の現地対策本部を併設すれば情報を共有しやすく、互いの意思伝達のための労力の無駄や命令の矛盾をなくすことができ、困難な問題にも連携して対処することができる。
現地災害対策本部で医療指揮隊として活動する場合の最も重要な役割は、医療チームの需要を把握し、他の医療チームに任務を任命することである。また医療指揮隊は医療チーム全体の安全を確保することや医療に関しての通信連絡の要としての役割がある。そのためには消防の安全管理の担当官と連携をとり、危険情報を収集し、状況を適切に判断しなければならない。医療チームに任務を任命するにあたり現場における医療チームの供給と需要の把握は必須であり、医療指揮隊の重要な役割である。現場で既に活動している医療チーム、および他の機関、特に消防・警察の現地災害本部指揮官と連携をとって現場の医療需要や医療資器材の要否を適切に把握しておかねばならない。
また日本赤十字社には、さまざまなボランティアの奉仕団が存在し、医療指揮隊はそのような特殊赤十字奉仕団の医療的能力、装備などを検討し、可能であれば日本赤十字社と連携をとり必要な業務を依頼することも役割となる。
4.死亡宣告の役割
最終的に死亡を宣告する業務は医師に限られており、死亡診断も医療チームの役割である。また基本的に死亡者(遺体)の移動は、生存者への接近がより容易になる場合と遺体がより損傷を受ける可能性がある場合に限り、生存者に対する処置がすべて終了した最後に、警察あるいは消防により災害現場内の遺体保管場所あるいは災害現場外の遺体仮安置所に収容する。
おわりに
災害現場における医療チームの役割はまさに医療である。活動場所によって医療チームの果たすべき役割は異なるが、いずれの役割も他機関との連携なしには十分に果たし得ない。特に消防と線密な連携のもとに、より効果的に医療を実践することこそが災害現場における医療チームの最大の役割である。