我が国の災害医療体制を考える

原口義座ほか:救急医療ジャーナル 14(4): 42-45, 2006


各医療施設間のネットワークのあり方

 大災害時には、医療施設自体の活動能力はもちろん重要だが、個々の施設あるいは限定された地域だけでは対応することは不可能である。

 その対策のひとつとして、広義の相互協力体制、つまり各医療施設間・地域間の協力体制を構築することはきわめて重要である。

 医療面での協力ネットワークに関して必要な項目を以下にまとめる。

  1. 各施設における情報収集・伝達システムの整備

     3つのC(community;地域連携、communication;通信網、coordination;総合調整)の整備

  2. 広域情報システムの確立

     この情報システムを広域に使えるように、関連する機関を含めてある程度確立したものとする必要が ある。例としてNBCテロ対処理現地関係機関連携モデル(通称NBCテロ連携モデル)がある。

  3. システムの運用

     縦割りの弊害をなくすため、相互の意見交換、研修、訓練を行う。

災害拠点病院の活動

 1995年の阪神淡路大震災を契機に、災害拠点病院体制が整備され、現在約547施設が指定されている。 現状を見直してみる。

 ほぼ二次医療健吾とに指定されたが、災害医療の中心施設としての取り組みに関しては、施設によ るばらつきが大きく、地域別の違いがあること、熱心に取り組む施設が限られていることが問題点と して指摘されている、2000年、「災害医療従事者研究会」のアンケートによると「国内災害派遣への 準備体制」という質問に対して、前向きの答えはわずか18%に過ぎなかった。

 しかし、2004年におきた新潟県中越地震における医療対応についてのアンケートでは、回答の得ら れた施設の36%(421施設中153施設)が何らかの形で医療救援・応援に赴いたとの結果が出ている。単 純な比較は出来ないが、医療施設の取り組みに大きな進歩が見られたといえる。

新潟中越地震における医療支援の成果と問題点

 災害地域で医療活動を行うための条件として下記が上げられる。

  1. 安全に活動できること
  2. 需要があること
  3. 支援のための医療資源(人的・物的)を供給できること
  4. 自己完結型・自給自足型での活動が可能
  5. 情報収集が可能:北魚沼群医師会が中心となる
  6. 自ら移動手段を準備可能:ヘリコプターと緊急車両が有用

 各医療施設の状況をみると、被災地中心部にある病院は建物の破壊が高度であり、また院内スタッフ の多くが自宅や家族の被災を伴っているため、医療支援に訪れた交代要員の役割は大きく、意義が高 かったとの報告がある。避難所での医療も重要であり、ここでは日本赤十字社の医療チームの活躍が 際立っていたとの報告がある。

 一方で問題点もいくつか挙げられる。

 これらの問題をきちんと検証・改善する必要がある。

 しかし、以前に比べ多くの施設が積極的な活動を展開するようになったことは画期的であり、わが国 の災害拠点病院体制の普及度、浸透度が上がったといえる。今後も引き続きこの姿勢が保たれ、向上 することを期待する。


六甲病院/金沢病院

多祢正雄、金沢精一:立道 清・編、検証 そのとき医師たちになにができたか、清文社、大阪、 1996、p.47-56


「六甲病院」阪神大震災における初期医療現場の状況と問題点

(1)大震災の時に病院の機能を果たすためには、マンパワーの確保が最も重要である。

作り直した災害対策マニュアルの骨子

(2)一番困ったのは断水であり、注射用蒸留水などを、備蓄しておくべきである。震災直後に 水道管に溜まっている水が出ることがあるので、汲んでおくことが大切である。また、タンク車を チャーターできれば最高であり、自家用の井戸を掘っておくことも役に立つ。また、困るのはトイ レであるが、使用する数を制限したり、川から水を汲んできたりといった工夫が必要である。

(3)停電については、自家発電が決め手になる。発電機には水冷式と空冷式があるが、空冷式 を設置しておくべきで、救援がくるまで2日ほどかかるため、48時間程度の燃料備蓄が必要であ る。

(4)最も困ったことのひとつは情報不足であり、ラインによるものは、一ヶ所が断絶すると機 能を失うので、無線を活用すべきである。また、病院、消防署、警察署が携帯電話を持って、番号 帳を互いに所有し、災害時には必ずスタンバイ状態にしておけば、役に立つであろう。

(5)道路はラインであり、輸送能力は激減するため、ヘリコプターを用い、ひとつの区内で 二、三ヶ所の学校や公園で離発着できるように制度作りをすべきである。

(6)天災は忘れぬうちにやってくるかもしれないため、対策は早々に立てておくべきである。

「金沢病院」

<大震災を経験して気づいたこと>

 医療機関や行政、地域住民、医師会、警察署などがそれぞれの役割を分担し、相互の連携を確立さ せることが重要である。また、複数の指揮系統・指令塔が必要で、優先回線、ホットライン、イン ターネット、マスコミなどの通信による情報網を確立すべきである。基幹病院と複数の拠点病院の 整備も必要である。備蓄は数箇所に分散して行い、三日分を目安にし、他院(他都市)の分も考え ておくべきである。また、各自がすべき基本点として、自分の安否を必ず拠点に知らせ、定めた拠 点に集まり、自分から行動をおこすといった事がある。


警察における生物・化学テロ対策

生物化学テロ災害対処研究会:必携―生物化学テロ対処ハンドブック、診断と治療社、東京、 2003、p.199-204


 近年、一般人の犠牲を厭わない無差別大量殺戮型のテロの脅威が高まりつつある。こうしたなか 警察においては、生物・化学テロを含む各種テロの未然防止に全力を挙げると同時に、万一テロが 発生した場合の対処能力の向上に努め、生物・化学テロ対策に万全を期しているところである。

1.生物・化学テロ対策組織

 重大テロ事件の初動対処にあたっては、事件発生地を管轄する警察署員のほか、警備部門、事件 捜査のために刑事や鑑識、交通・雑踏整理のため交通部門や地域部門などから、関連する本部執行 隊を派遣し、組織横断的に対応することとなる。

 特に、全国の機動隊には生化学防護服や簡易検知器、除染器等が配備されており、初動対処にお ける中核として活動しているが、加えて8都道府県警察(北海道警、宮城県警、警視庁、神奈川県 警、愛知県警、大阪府警、広島県警、福岡県警)には、NBC対策車、化学防護服、生物剤検知器等の 高度な装備資材を保有する"NBCテロ対応専門部隊"が設置され、より高度な対処能力の発揮が可能と なっている。

 このほか、警視庁の付属機関である科学警察研究所(千葉県柏市役所)や全国の警察本部に設置 されている科学捜査研究所においても、化学物質の分析や検知方法の研究を行う部門が設置されて おり、物質の鑑定の実施その他の技術的な支援を行っている。

2.生物・化学テロの未然防止

 重要施設に加え、公共交通機関やスタジアム等不特定多数が集まる場所等についても、自主警察 と連携した警戒を行っている。また、国内における関連情報の収集や各国治安機関との緊密な情報 交換を通じ、各種テロに関連する情報を集約・分析し、違法行為を計画段階で検挙することによる 生物・化学テロ等の未然防止に努めている。

3.生物・化学テロ発生時の対応

a)基本的な対応

 警察では、生物・化学テロ容疑事案を認知した場合、警察本部を設置するなど指揮体制を整える とともに、生化学防護服等の必要な装備を着装した部隊を投入して、被害の状況(負傷者の有無、 人数、程度等)、現場および周囲の状況等を確認し、必要に応じ、被害者の救助、原因物質の検 知・拡散防止、現場付近への立ち入り禁止、交通規制等の初動措置をとる。併せて、各種の状況を 総合的に判断し、事件性の有無についての確認を行い、テロ等の事件の可能性が認められる場合に は捜査本部を設置し、現場鑑識活動や関係者からの事情聴取等の初動捜査活動を開始する。

b)生物テロの場合の対応

 生物剤を使用したテロでは潜伏期間により発症までの時間がかかるため、犯行声明が出された場 合等を除き、保健・医療機関による感染症サーベイランスにより、不審な疾病の発生と言う形で認 知されることが多い。このため、平素よりこれらの機関と緊密に連絡を取り、発生を早急に認知す ることが重要となる。

 他方、事前に犯行予告が出された場合や不審郵便物事案等では、110番通報等により警察が認知 し、生物剤の有無等について確認することとなる。この場合、現場の状況や警察の保有する検知機 材による簡易検知結果等に基づき、生物剤である可能性がある場合には、地方衛生研究所、国立感 染症研究所等の協力を得て、鑑定を行っている。

c)原因物質の検知

 "NBCテロ対処現地関係機関連携モデル"においては、原因物質に関する情報を関係機関から警察に集 約するとともに、鑑定結果について警察から関係機関に対して情報伝達することを定めている。

 具体的には、警察は検知機材を用いて、現場における簡易検知を試みるとともに、必要に応じ検 体を科学警察研究所、科学捜査研究所、地方衛生研究所、国立感染研究所等、事案に応じて適切な 機関に搬送して、これを鑑定する。

 鑑定結果については、可能な限り早急に、自治体、消防、保健所等の関係機関を通じ関係医療機関 に伝達するほか、鑑定中であっても、簡易検知の結果が出ている場合には、医療機関等における被 害者の処置の参考にするため、関係機関に情報提供をしている。

4.生物・化学テロ対処能力の向上

a)体制・装備資機材の整備・充実

 地下鉄サリン事件や米国における同時多発テロ事件を受け、各都道府県警察の機動隊等に防護 服、各種検知機材、除染器等を順次配備し、警視庁、大阪府警、北海道警、宮城県警、神奈川県 警、愛知県警、広島県警、福岡県警に高度な装備資機材を配備したNBCテロ対応専門部隊を設置し、 対処体制の充実を図った。

b)鑑定能力の向上

 警察庁の付属機関である科学警察研究所においては、生物・化学テロ対策に関し、高度の技術力 を活かした研究・開発、都道府県警察からの鑑定嘱託を受けた鑑定・検査等を実施しており、これ までに、各種現場検知器の性能評価、ガスクロマトグラフィー・質量分析計を用いた化学物質や分 解物の迅速・高感度な検出・特定化法、簡易検査法の開発等に取り組むなどしている。

c)各種訓練の推進

 NBCテロ対応専門部隊や機動隊等の部隊が、平素から具体的な事業を想定して現場対処訓練を徹底 するとともに、消防・自衛隊・保健医療機関等との合同訓練や、警察署員を対象とした初動対処に 関する教養や防護服等装備資機材の習熟訓練を行うなどして、万が一の事態に平素から備えてい る。


保健衛生管理(感染症対策・保健指導)

山崎達枝:黒田 裕子・酒井明子監修、災害看護、東京、メディカ出版、2004、p.162-169


 なぜ災害発生後に保健衛生管理が重要なのだろうか。「災害医療」と聞くと被災地での医療機関 における救急医療・看護が考えがちである。しかし、災害サイクルからみるとその期間はほんの一 部分であり、その後は保健インフラの損壊に伴う保健医療活動の支障、保健衛生問題が主となり、 その期間が長く続く。

 災害医療において感染症対策は亜急性期に位置しているが、被災地で「命からがら助かった」被 災者の感染対策と精神衛生の戦いは災害の発生と同時にはじまっている。よってプライマリー・メ ディカルケアとして救助された被災者を二次災害から守り、感染症等の新たな疾患により死亡者が 増えないよう、保健衛生管理を積極的に行うべきである。また静穏期に災害発生後の健康被害を予 測した保健衛生対策、住民への教育を病院施設、また、地域社会において行うことが災害発生後の 二次災害における死亡者の減少につながっていく。よって感染症対策・看護指導は災害医療・看護 において重要な分野であるといえる。

 災害発生時には災害により環境衛生の変化が健康保持へ影響を及ぼすことが考えられる。そこで まず、流行の危険性が考えられる疾病の調査をするとともに、予測される疾病の予防を積極的に行 う必要がある。その際必要となる情報には「災害の種類と規模」、「災害発生の季節、地域の特 徴」、「ライフラインの破壊状況と復旧状況」、「被災(避難)者および負傷者数」、「災害時に支 援優先度高い人、年齢層の把握(特に高齢者・乳幼児数)」、「地域保健医療活動状況」等があげら れる。

 また災害時には避難所での集団生活を余儀なくされる。そこでは入院を必要としない傷病者、慢 性疾患患者、精神疾患患者など、狭い場所に多くの人が集まり生活をしなければならないので潜在 した感染症が流行するリスクは非常に高くなる。看護者は被災者に最も近い関係で支援しているた め健康状態、感染リスクの早期発見が可能である。よって感染防止対策や改善点について具体的に アセスメントを行い感染防止に努めなければならない。避難所では医療より看護が求められるので 多角的に避難所を見渡すことが重要である。そのためには次のようなことを把握しておかなければ ならない。

  1. 過去の避難所生活者数 (例:阪神淡路大震災では32万人(最高))

  2. 避難所で把握確認すべき事項 (避難所内連絡本部、定期的連絡会の開催、周辺の医療機関 と福祉施設の連絡と協力体制、ライフラインの破壊状況と復旧状況、避難所生活者の登録(数や性 別、連絡先など)、環境(避難所)の構造・設備状況、食事(内容や回数)、健康状態のチェック(睡 眠、食事量、排泄回数など))

  3. 避難所で考えられる問題点と個人に及ぼす弊害 (換気および清掃が十分に行われないこと や食事・寝床が一緒の場所、入浴の制限、ごみの収集が不十分などや、トイレの数が避難所では避 難者数に比較し少ない(最低20人に一ヶ所)といった衛生上の問題が挙げられる。トイレの数に関し ては排泄行動の制約によって、便秘、膀胱炎などになりやすいなどの問題もある。次にライフライ ンの途絶により水不足、飲料水・生活用水が確保されないといったことや、電気(冷暖房調節設備) が稼動できるかどうか(阪神淡路大震災では冬季であり暖房設備が整ってなかったことによって急性 上気道炎が流行した)が問題となる。また個人用医療器具や治療薬の不足により慢性疾患(血糖コン トロールや透析、精神疾患など)が悪化することが考えられる。他にも食生活の変化やプライバシー 欠如や情報不足によるストレスの蓄積などもあげられる。)

  4. 災害発生当初の対応から復興期における医療支援の流れ (発生当日の集団的な対応から早 い時期に個別的対応、また個人の医療ニーズを可能な限り応えられるように取り掛かることが重要 である(集団から個別的へ、画一化から多様化へ)。)

  5. 被災者の集まる避難所での保健衛生最終目標:看護師(職)の役割 (感染対策が重要な鍵で あり、治療よりまず予防を積極的に行い看護活動を展開していく(1.被災者を感染から守る、2.被災 者間の感染の防御、3.訪問者からの感染の防御、 4.医療者の感染からの防御)。)

  6. 感染予防の基本主義の指導と感染管理 (基本的な考え方は健康の増進・予防・治療・社会 復帰である。次のような基本的な生活環境の整備をすることが大切である。1.疾病や被災による外 傷の適切な治療、2.必須医薬品・衛生材料の準備、3.含嗽、手洗いの励行、4.清潔な飲料水、生活 用水の確保と供給、5.手洗い設備の確保、手指消毒、6.体の清潔、7.室温調整、8.避難生活者の健 康管理、9.食品衛生管理、10.治療食の確保、11.ごみ処理問題、12.トイレ、13.環境の清浄化、14.スト レス)

 また病院施設における災害時の感染管理として、まず予防対策の決定、次に滅菌機能停止への対 応、ライフライン停止への対応、そして手術再開の決定といったように感染対策の優先順位の決定 行うことが重要である。

 避難所での看護は与えられた環境の中で人としての清潔・安全・安楽な人的環境、生活のための物 的・住的環境を考えた個人への支援ができるかが重要である。災害発生から2、3日後には医療関係 者も落ち着き被災者個人にあった場所の提供が必要である。

 生命の安全確保→生活の環境作りの安全確保→心理的に満足が得られるよう生活の復旧→人として の基盤の調整ができるような生活の復興へと考えて支援を行うことが重要である。そして次にやっ てくるであろう災害に備え、訓練・予防対策を地域住民や各医療機関との連携により強化しておく べきである。高齢社会の中、災害発生により新たに支援が必要となる人(要介護者)も多くなると考 えられる。時間的経過、必要とされるニーズに合わせた支援が必要となる。


院内LANを使用した災害時職員・患者情報登録システム(エマレジスター)の災害訓練における応 用

堀内義仁ほか:日本集団災害医学会誌 10:270-274, 2006


 大地震や列車事故などの災害、大事故はいつ起こるかわからない。このような緊急時に病院で多数 傷病者の受け入れを行う際に管理すべき情報のうち、どのような緊急度の患者が運びこまれてい て、どこでどのような状態にあるのかを個々に、また全体的に把握するのは困難である。また、総 動員された職員についてもその配置状況を掌握することは難しい。しかし、必要な職員を適材適所 に過不足なく配置し、必要な患者に必要な部署で適切な治療を施すことはpreventable deathを防 ぎ、より多くの傷病者を救うためには不可欠である。そのためのシステムには以下のようなものが ある。

  1. ホワイトボードやネームプレート、トリアージタグを利用したシステム

     職員用には2枚のホワイトボードと各人のネームプレートを利用した在院登録・配置登録システム を、患者用には院内用トリアージタグとホワイトボードを利用した登録システムの運用を行う。し かしこのシステムでは、情報は1ヶ所のホワイトボード上では見ることはできても各部署ではリア ルタイムに見ることはできない。そのため、頻回な情報伝達が必要となり、院内通信の混乱を招 き、本部への情報伝達を行う人員が必要となる。

  2. ICタグを利用するシステム

     患者や職員が携帯するICタグから発せられる情報を院内の主要部署に特設した専用アンテナでとら えて、主要箇所に特設したモニター画面上に映し出すシステム。しかし、このシステムを病院全体 で有効なものにするには莫大な費用がかかり、ICタグへの情報の入力の煩雑さが問題である。

 これらのシステムは最新の情報を迅速に得られなかったり、莫大な費用がかかるという問題があ る。そこで院内LANを利用した職員・患者情報登録用のコンピュータソフト(エマレジスター)を利 用したシステムが開発された。

 エマレジスターは既設の院内LANを利用して、リアルタイムにどこでも入力、表示ができるようにと いう目的で作成された。機能としては患者登録版と職員登録版がある。

I)患者登録版

II)職員登録版

 実際にエマレジスターを訓練に使用すると、使用方法や練習時間がほとんど無かったにもかかわらず、事務職員を中心に活用され災害時に対応するための有用なツールの一つであることが検証された。

 エマレジスターにより、院内すべての部署で必要な職員・患者情報を必要な形で簡便にリアルタイムで見ることが可能になった。これらの情報は適切な患者治療を行うための適切な人員配置を指示するうえで非常に有用である。さらにマスコミや家族に対しての説明も円滑になった。治療を行っている現場部署にとっても、マンパワーの調整が理想に近い形で行われ、かつ情報連絡に費やされる労力が軽減されれば、より多くの労力を傷病者に傾けることができる。ただしこのシステムが機能するためには、コンピュータシステムが稼動していること、人による入力が正確に行われていることが前提である。日頃から本システムを迅速・正確に使用するための訓練を行っていく必要がある。またコンピュータダウン時に備えた従来のホワイトボードなどを使用する方法も錆び付かせないようにする事も忘れてはならない。


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