今回は、松本サリン事件という特殊な事例での対応についてまとめることに なりましたが、いついかなる災害に対してもその時代に合った対応が出来るよ うに、体制を整えておかなければなりません。
第二次協議会平成2年6月19日設立準備会が立ち上がり、第一回設立総会が 平成2年8月29日に行われた。これ以降平成6年6月27日深夜に松本サリ ン事件が発生するまで、年に2回のペースで会が開かれる。
松本市地域包括医療協議会とは以下の通りである。
松本サリン事件の対応としては、松本市地域包括医療協議会を中心として、個 別に連絡を取り合っていた治療担当者が相互意見交換・情報交換の場を設ける ことを決定した。その他、松本サリン事件に対する働きとしては、住民へのア ンケート調査や健康診断を実施し、また、それに先立って住民の代表に対する 説明会を開催した。その後、地区住民へアンケート・健康診断の結果、報道関 係者への対応について説明し、また追跡調査や数度のアンケート・健康診断、 そして心療内科相談を現在も行っている。
まとめとして、サリンという特殊な事件であったが、住民の不安解消と多面 的な健康調査をすばやく行うことが出来たのは、市長の即断と松本市地域包括 医療協議会の協力があったためであった。そして、事件翌日から住民に対する 情報伝達としての回覧、アンケートの配布、回収など短時間に町会組織を通じ てできたことは、町会長さんはじめ住民の多大な協力が得られたおかげであ る。被災されたかたがたは、年月が経つにつれ身体的症状が軽減されてきてい る。また近頃は、精神的にも明るくなられた方も多くなってきているとゆう。 しかし、身体的・精神的苦痛が取り払われたわけではない。後遺症とは診断が つかないが全身の疲れ、頭痛、目の疲れ等、自覚症状のある方や将来子供の出 産に対する不安など、癒されることなく生活を脅かされている方々のいること は忘れてはいけないことだと思う。松本市地域包括医療協議会とゆう組織の 下、健康調査を毎年行ってきたことによって、医療機関、行政との関係がさら に密接となり健康危機管理、環境問題、健康づくり等いろんな分野への広がり ができている。
災害医療の目標:preventable deathおよびprotracted deathを可能な限り
低下させること。
※ preventable deathとは定量数値によって評価した重症度が高くない
のに死亡してしまう予防可能な死亡、protracted deathとは救援救出の遅れによる死亡。
時間経過;
災害地での救援医療の目的;
(1)初期治療
最も問題となるのは、災害発生から救出までに要する時間である。
(ex)過去の報告:
重症度、救出困難度による受傷者のタイプ分類;
救命率の向上のためには、Type2の者の早期救出と、Type3の者に対する専門的な早期治療が必要。過去の災害では、死亡数や死亡率は構造物の下敷きになった場合に高値となる。
(ex)阪神・淡路大震災での直接死因で高率にみられたものは、胸部圧迫による窒息、圧死、打撲・挫滅。また、瓦礫の下敷きとなった場合には損傷を受ける率が有意に高いことも報告
されている。したがって、ここでは特に構造物の下敷きとなって救出された場合を想定し
て、一般市民による初期治療として、LSFA(BLS=basic life supportと同義)について述べられている。
LSFA(life supporting first aid):
この一次救命処置を行うことで、救命率のみならず、重症負傷者の予後も改善
しうる。
致命的な病態に対する救命処置についてのみ、ATLS(advanced trauma life support)の内容に則して述べる。
a.気道確保と頚椎保護
b.呼吸補助
c.循環維持
d.神経学的所見disability
e.全身観察と除染
f.挫滅症と挫滅症候群
g.心肺停止例 cardiopulmonary arrest(CPA)
SRM(Search and Medical Assist)とは、
「検索救助医療」と訳し、阪神・淡路大震災を契機に、SRMチームの必要性
が考えられた。
SRMチームの目指すものは、72時間以内の急性期の検索と救助医療であ
る。これは要救助者の検索・救助と堅く連携して、その場より高度な救命医療
を目指すチームである。欧米では、災害現場から救急医療が開始される。
1994年4月26日に名古屋空港でおきた中華航空機墜落事故に関しての座談会
が、平成6年6月11日に愛知県医師会館にて行われた。ここで取り上げられた
様々な問題点についてレポートする。
この座談会において各出席者から提示された問題点には以下のようなものが
あった。
1、救護者の出動時の問題点
2、現場の医療救護での問題点
3、患者収容病院での問題点
4、トリアージの問題
1.避難者名簿の作成
「避難者名簿」は、食料その他の物資の公正な配付等に資するために作成。安
否照会への対応にも活用する事ができる。避難者名簿に関しては、避難者名簿
の整理、退所者の管理、入所者の管理、外泊者の管理といった業務が有る。
2.郵便物・宅配物の取り次ぎ
3.安否確認その他の問い合わせ等への対応
避難者の安全及びプライバシーの保護に配慮するため、受付を一本化し、部外
者は原則として避難所内にむやみに立ち入らせないようにする。
4.マスコミ取材等への対応
避難者の安全及びプライバシーの保護に配慮して、スポークスマン等
の責任ある立場の代表者の対応が必要となる。
5.避難所外の情報の収集
5-1.情報収集の為の連絡先の貼り出し
5-2.行政機関からの情報収集
5-3.地域・他の避難所との情報交換
5-4.各種マスコミからの情報収集
6.被災者への情報提供
6-1.被災者への情報提供の基本的考え方
6-2.避難者全体への情報提供
6-2-1.掲示板への掲示
6-2-2.口答による伝達
6-2-3.館内放送による伝達
6-3.個々の避難者への情報提供
6-4.地域への情報提供
7.行政機関等への情報発信
7-1.行政機関等への情報発信の窓口の設置
7-2.行政機関等への情報発信の内容
7-3.行政機関等への情報発信の手段
現在、世界各国で死ななくていいはずの人の命が奪われ、傷つかなくていい
人が身体あるいは心に傷を負っている。たとえば、ベネゼエラを襲ったラニー
ニャ暴風雨のように自然災害が人為的な問題により被害が拡大した自然災害
や、アフリカを中心に広がるエイズなどの感染症によるものである。
べネズエラを99年に襲った暴風雨は3000人の死者を出したが、この災
害は自然現象以外に都市部への急速な人口流入、森林の伐採などの人為的な理
由により被害が拡大した。政府が十分な対策を講じていれば、これほどの被害
は出なかったと思われる。また、自然災害によるPTSD(心的外傷後ストレ
ス)も大きな問題となっている。98年に起こったトルコ大地震では、地震後
死体からコレラが伝播するというデマが流れ、死体はすぐに焼却されたり、海
に遺棄されたりと家族の悲しみをより深いものにした。メンタル・ヘルスケア
という考えが浸透していれば、防げた心の傷ではなかったか?
こうした自然災害よりも防ぐ事ができたであろうし、被害者の数が膨大であ
るのが感染症による損害である。サブ・サハラ地域ではエイズ、マラリアなど
が蔓延している。こうした感染症を防ぐ方法はいくつか挙げられる。飲料水の
正しい取り扱い、コンドームを使用した安全な性行為を徹底させる事などの教
育の充実、ワクチンの予防接種、正しい治療法などである。感染症対策にはこ
のように総合的な戦略が必要とされるが、これがなかなか実行できないいくつ
かの要因がある。まず、アフリカ各国は経済的に貧弱で、自国だけでの対策に
は限度がある。そこで、先進国政府やNGO組織の援助が必要となるが、これ
らの援助計画は「場当たり的なもの」になってしまうことが多い。さらに政府
はこうした援助組織に依存して保健医療活動を放棄してしまうなど、現地住民
の自助努力を抑制してしまう。
人為的災害、感染症への対策での共通の問題は先進国、途上国共にその予防
にお金をかけないことである。保健医療インフルには莫大な金を使うが、公衆
衛生には金を小額しかまわしていない。その比率を逆にすれば、被害は激減す
るに違いない。また、先進国は援助金を送るだけでなく、人的援助を送るのは
もちろんの事、政府・民間がパートナーシップを発揮して、現地住民のボラン
ティア活動を支えていきながらの援助が求められる。そうしていけば、継続し
た総合的な地域保健が途上国でも確立されるだろう。
第 II 章 災害現場における救命医療はどこまで可能であるかに関する研究
杉本勝彦、平成8年度 災害時の救助・救急活動への医療支援に関する研究委員会報告書 p.15-31, 1997
1.はじめに
2.災害救援医療活動
↓
solo-treatment area 医療者がそれぞれ独自に行うtriage、一次・二次救命処置
↓
Phase 1 医療器材設置場所への搬送
↓
Phase 2 救助隊員などによるより専門的な医療
災害地での救援医療の原則;生命の維持に最低限必要な処置のみを行う。
(2)災害地における専門家による救命処置
Type2―
Type3―
Type4―3.まとめ
第 III 章 レスキューチームと救急医療チーム(SRM)の連携システムに関する研究
浅井康文、平成8年度 災害時の救助・救急活動への医療支援に関する研究委員会報告書 p.34-53, 1997
1.SRMチームの連携のあり方
日本においてトリアージを行うことは、まだ十分に認識されていない。実
際、日本の災害例でトリアージタックが使用されたのは、中華航空エアバス墜
落炎上事件(1994)、地下鉄サリン事件(1995)など、数例しかな
い。2、指揮命令系統
3、連絡体制の確立
4、SRMチームの合同訓練
5、ヘリコプターの活用による搬送体制の確立
6、後方支援病院
第2章 座談会:中華航空機事故医療救護に関する座談会
名古屋空港における中華航空機事故と医師会活動 1994、pp.28-54
以上のような問題についての改善策をかんがえてみる。
当然のことであるが、災害時の医療救護には正確で迅速な対応が求められる。
そしてそれを実行するために、このような事故を教訓にして制度やシステムを
改善しておくことは当然であるし、救護に携わる個人もいざというときにたい
して心構えや準備をしておくことが大切であろう。 (7)情報収集・伝達関係業務(情報班の担当業務)の執行
(地震防災対策研究会、自主防災組織のための大規模地震時の避難生活マニュアル、(株)ぎょうせい、東京、1999, pp.178-191第1章 公衆衛生:取り組みが後退してしまったのか?
(国際赤十字・赤新月社連盟.世界災害報告 2000年版、p.8-29)