災害医学・抄読会 2001/06/15

災害拠点病院における災害救援医療チーム派遣の準備状況

和藤幸弘:日本集団災害医学会誌 5: 109-113, 2001


目的

 1996年、厚生省は全国の都道府県に災害拠点病院を指定することを 通達した。その中には自己完結型のDMAT(Disaster Medical Assistance Team) を派遣することが盛り込まれている。今回のその整備状況と問題点、今後の課題 などについて検討する。自己完結型のDMATとは被災地での資材調達んどを 必要とせずに、一定期間被災地または近隣地域に滞在して、被災地での 救援医療を展開するものである。

対称と方法

 調査対象とした施設は、国立大学および国立病院35施設、都道府県、市など 地方自治体病院237施設、日本赤十字病院(以下、赤十字病院)53施設、その他 95施設の計492の災害拠点病院であり、郵送によるアンケート調査を行った。 調査内容は自己完結型のDMATの編成に懸かる諸問題、装備、今後の希望など とした。

結果

 回答を回収できた施設は計306(回収率:62%)施設で、回収率には設置 母体による差を認めなかった。赤十字病院ではスタッフの派遣しか行わない と回答した1施設を除く35施設で、自己完結型DMATの派遣整備が完了 しているとの回答を得た。その他の施設では、国立大学を含む国立病院 で自己完結型DMATの整備が完了していると答えた施設が多いが、 公立及びその他の施設ではスタッフのみ派遣する、 近隣の災害の搬送のみに対応できるとするものが多かった(
Table 2)。 全体では101施設(32%)のみで自己完結型DMATの整備が整っていた。自己 完結型DMATの編成、派遣に関して未解決問題があるとした施設は 計40施設(13%)で、その内容のうち40施設すべてがスタッフの不足をあげ、 9施設で方法がわからないと回答した(Table 5)。


Table 2. Styles of the relief work

 Self-supported
team
Only personal, no equipment
or transportation in local area
ImpossibleUnknown
Governmental hospitals11352
Public/Local governmental
hospitals
34493729
Japan Red Cross hospitals35100
Others2128422
Total101818433


Table 5. Difficulties in DMAT dispatch

Personnel40/40
Eauipment27/40
Insurance27/40
Funds25/40
Method9/40
Others6/40


考察

 自己完結型のDMATを派遣できる条件は、1)緊急時、派遣スタッフを速やかに 招集してチームを結成することができる、2)欠員の補充体制を整備している、 3)携帯用医療資材、テント、食料などの装備を備蓄している、4)使用可能な 車両を確保している、5)派遣費用、スタッフの負傷、事故などに対する補償を 明確にしているなどと考えられる。今回の調査で総合的にこれらの条件を満たすと 推測できた施設は前述の通り101施設(32%)であった。

 この原因として、最も大きな問題はスタッフの不足である。このことは わが国の多くの医療機関がスタッフ数と日常業務量のアンバランス、慢性 的な労働環境への不満などの問題を抱えていることや、災害拠点病院に指定 されても医師、看護婦などの増員がないことによると思われる。 よって、災害時に医療チームを派遣すれば日常業務に多大な支障をきたす 医療施設を指定することは見直すべきである。

 また、派遣費用、スタッフの保証については、派遣費用は全面的に 補填され、スタッフの事故、負傷などに関する補償も、行政から 支出されることになっている。資材備蓄の資金に関しても、 チームの派遣準備費用として不足ではない。よって、必要な装備、 派遣費用やスタッフの労災補償まで災害拠点病院指定実施に懸かる 文章を明確にして通達すべきである。

 本調査の欄外には赤十字に所属する病院間や都道府県ごと の病院間などで連携するとの書き込みが多いが、同時に 設置母体の意向が非常に強いため、 設置母体別の系列の協調、調整関係に不安があるとのコメントもあった。 よって、災害現場の管理、救援に関しては、国立、公立、赤十字 などの枠を外して、災害拠点病院 → (都道府県) → 厚生省 という 系統的図式が望まれる。また、全体でのDMAT編成、派遣に関するガイドライン を作成した上で整備を行い、国家レベルでの情報提供や連携のための 役割分担などを行うDMATをコントロールする部署も必要である。さらに、 災害拠点病院は県などの指定ではなく、各医療機関が自主的に行った 救援準備を厚生省が評価して認定するという制度も推奨される。


集団食中毒(カレー毒物事件)

篠崎正博、エマージェンシー・ナーシング 10:517-20, 2001


1.事件の概要

 平成10年7月25日18時頃、和歌山市園部地区の夏祭り会場において 出されたカレーを食べた住民らが嘔吐などの症状を呈し、 50名が救急車で11の2次、3次救急病院へ搬送され、17名が 直接病院を受診した。被害者:67名(入院53名、外来通院14名、死亡4名)。 当日はほとんどの病院が食中毒として対応。翌朝6時30分に警察が 吐物から青酸が検出されたと発表、24名に対し青酸中毒に対する 治療が行われた。最終的に毒物がヒ素であると判明したのは、事件から 1週間以上経過した8月2日であった。


表.急性期の症状及び異常検査所見の発生頻度


消化器
嘔気 92.1%(58/63)
下痢 93.7%(59/63)
腹痛 31.7%(20/63)
神経症状
脱力感 31.7%(20/63)
頭痛  42.9%(27/63)

心電図
QT延長 51.1%(23/45)
T波平低・
陰性化 42.2%(19/45)
ST低下 22.2%(10/45)
血液
白血球  増多 60.0%(27/45)
循環器
低血圧 34.1%(14/41)

皮膚粘膜症状
紅疹  19.0%(12/63)
結膜炎 17.5%(11/63)
丘疹  11.1%(7/63)

血清電解質
低K 59.6%(28/47)
高P 25.0%(9/36)

腹部X-p
消化管内
粟粒影  100%(63)
 


2.本事件で浮かび上がった問題点

  1. 事件発生後初期段階では、行政、消防署、警察署、医療機関等の間に情 報交換がなく、被害者数、重症度などの全体的な情報が得られなかった。

  2. 急性期の症状のみからは砒素中毒の診断をすることは非常に 困難である。薬物の分析が遅れ、結果的に適切な治療が行われなかった ことや、治療開始が遅れたことが被害の拡大を招いた。

  3. 多数の患者が発生したにも関わらず、行政では災害としての対応が なされなかった。

3.事件後にとられた改善策

  1. 災害救急医療関係のネットワークが構築され、県行政、保健所、医師が 登録された。このシステムは2000年に和歌山市の化学工場で起きた 硫化水素爆発事故での情報交換に役立った。

  2. 救命救急センター、県衛生公害センター、市役所、日赤医療センター に中毒物質分析機器が備えられた。

  3. 市では健康危機管理対策委員会が設立され、行政、保健所、消防署、 医療機関の協議体制が整えられた。また、化学物質テロについての セミナーなどが開催され、啓蒙活動にも努めている。

4.考察

 15名以上の患者が同時に発生した場合に災害医療として対応が必要 となる。医療資源が枯渇した状況で、同時に多くの患者に対して 医療を提供しなければならない状況に陥る。このような場合に行政、 警察署、消防署、保健所及び医療機関が情報交換し、 対応について協議するシステムが今後必要となるだろう。また役割分担をはっきり させ、緊急時において混乱なく各期間がスムーズに行くように しなければならない。医療機関に関して言えば、各二次医療圏に対して 1つの災害拠点病院、および各都道府県に1つの基幹災害拠点病院 が指定され、今後の災害時の医療を担当する体制が整備され つつある。さらに我が国では本例のようなテロ災害に関する危機意識 が低く、災害マニュアルの整備、啓蒙活動などが必要である。

 医療従事者側の経験不足もまた問題である。我が国では砒素中毒の 症例を経験している医師はほとんどいなかった。ただ現実的には 全ての医師に全ての中毒物質について精通することを求めるのは 不可能であり、医師が直ちに情報を入手できるような情報ネットワーク が必要である。

 * 学生によるコメント:

 本例とは全く異なる 事例であるが、1995年に600人以上が死亡したシカゴ猛暑の時、 病院に搬送された58人の熱中症患者のうち、30分以内に氷水で 体を冷やしたのは、1人だけであったという。多くの患者は、 種々の検査に時間をとられて、治療開始が遅れ、生存の可能性を失ったと されている。体温上昇による脳、腎、心血管系の障害のため、 12人が病院で死亡し、少なくとも9人がその後死亡したという。シカゴ では、80年間にこれほどの熱波を経験したことがなく、医療従事者側が 無知であったのも問題とされている。

【参考】砒素および砒素化合物について

  1. 毒性
    亜ヒ酸ナトリウム NaAsO2:ヒト経口最小致死量 2 mg/kg―シロアリ駆除剤、 除草剤など

    亜ヒ酸カルシウム Ca3(AsO3)2:ヒト経口最小致死量 5mg/kg―殺虫剤、 除菌剤、カタツムリ駆除剤など

    有機ヒ素よりも無機ヒ素の方が毒性は強く、三酸化ヒ素が最も毒性が強い。

  2. 吸収、分布、排泄
    亜ヒ酸塩は消化管から吸収され、血中グロブリンと結合、再分布する。 4日以内に尿中排泄されるが、数週間持続する。一部はリンと置換、 毛髪、爪、骨に残留する。爪に生じた白線を特に Mess線という。毛髪中の ヒ素の定量によって診断が可能である。

  3. 薬理作用
    アミノ酸のスルホヒドリル基と結合し、種々の酵素を不活性化、 細胞の酸化的リン酸化を傷害する。

  4. 症状
    経口摂取30分以内に悪心、嘔吐、腹痛を伴う水溶性下痢、咽頭灼熱感、 頭痛、めまい、痙攣などが起こる。重症例では激しい嘔吐、下痢に よる脱水、血管拡張、血管透過性亢進など、Hypovolemia shockを起こし 死亡。心電図上、QTの延長、T波の反転を認めることがあるほか、希に 心室性頻脈、心室細動を合併するとの報告がある。また遅発症状として、 摂取1〜2週間後に末梢性、左右対称性の感覚障害をみることがあるが、 徐々に軽快する。

  5. 治療
    胃洗浄、循環維持、解毒薬 BAL(British Anti-Lewisite:ジメルカプロール) 筋注―キレート剤。ヒ素と結合し尿中に排泄される。

【参考文献】


バスジャック事件

(金子高太郎、エマージェンシー・ナーシング 10:521-26, 2001)


<事件の概要>

 2000年5月3日、佐賀県内の九州自動車道を走行中の高速バスが、 17歳の男子高校生によってバスジャックされた事件。高速バスは そのまま中国自動車道から山口県内に入り、さらに山陽自動車道 を通り広島県に侵入した。山口県内で、車両後方に乗車していた 乗客数人が脱出し、警察に通報し事件が発覚した。広島ICを越えた ところでようやく、警察車両により 走路をコントロールされるようになった。

<被害規模>

 バスの乗客は約100名。男性運転手以外は全員女性(男性乗客は山口 県内で降ろされた)で既に死亡は1名(後刻)であった。

<事件に対する救急チームの対応>

 今回のバスジャックの現場活動に、市内4病院(日赤病院、県立広島病院、 大学病院、市立病院救命救急センター)が出動要請を受けた。 中でも、他の病院と比べて日赤病院の対応は迅速で、東京の 日本赤十字社本社からの指令に基づき、他の病院よりも 30分以上も早く広島支部から災害時医療救護班(医師1名、看護婦2名、 事務1名、薬剤師1名)と小型バス1台が直ちに派遣された。

<現場の活動状況>

相談内容

〇常時

  1. 重傷者蘇生担当:県立広島病院・広島大学
  2. 止血・創処置担当:日赤

〇警官突入時

  1. 一次トリア-ジ担当:県立広島病院 金子医師
  2. 軽症、中等症担当:救急隊員にて圧迫止血
  3. 重傷者の創傷処置、止血担当:広島日赤
  4. 重傷者の輸液・蘇生処置担当:県立広島病院、広島大学

<対応上の問題点>

  1. 医療救護班出動要請や指令は誰が出すのか?
    今回は厚生省 医療対策指導課と県立広島病院救命救急センターから各病院に 出動命令が出された。

  2. 現場での医療班の数はどれくらい必要か?
    今回の事件では、人質の数は10人程度で、数名同時に負傷する可能性があり、 最低3隊の救護班が必要と考えられた。

  3. 現場での救急隊員や警察との連携は?
    今回は、広島県内の事件で救急隊員と捜査員ともに顔見知りが多かった ため、困難は少なかった。他の県との連携を考えた場合、それぞれの 窓口となる人を決めておくべきではないか? また、複数の 医療班を指揮する者も必要となるのではないか?

  4. 病院の選定をどうするか?
    今回は、全員が軽傷であったため問題がなかったが、複数の重症患者が いるとき、対応できる病院の選定をする必要がある。また、マスコミの 取材が激しくなることが予想されるので、それに対応する環境の 病院が望ましいと考えられる。

  5. ヘリコプタ-の使用について
    今回は、現場着陸こそなかったが夜間中ずっと現場から5分の距離の広島 空港でスタンバイしていたが、着陸場所や夜間使用などの 問題から、超重症患者の救命は困難であると考えられた。

<著者の進言内容>

  1. 今後テロや凶悪犯罪の増加が予想され、医療スタッフが現場へ出動する 機会は増加すると考えられる。

  2. 病院から離れた場所で生じた重症の傷病者は、救急ヘリコプタ-の 搬送がないと救命できないこと。

  3. 今回は高速道路のSAという絶好の場所にありながら、現場着陸できなかったこと。

  4. 捜査上の支障はあるだろうが、ヘリコプタ-の現場着陸は警察の協力 なくしては不可能であるので、患者の救命のために現場着陸が できるような体制整備が必要であること。


第6節 名古屋空港視察報告

大場 清、名古屋空港における中華航空機事故と医師会活動 1994、111-113


 近年、航空機の大型化、ジェット化は大量輸送時代をもたらし、 人間は国際的な交流やレジャーなど、さまざまな恩恵に浴している。 しかし、最近の過密ダイヤによる離発着の増加など事故につながる要因も 少なくなく、一度事故を起こすと瞬時に多数の犠牲者が発生し、 大惨事になる可能性を秘めている。統計では航空機事故の8割が離発着 時の10分前後に集中していることから、空港およびその周辺において 発生する可能性が極めて高いことを指摘している。

 欧米の主要空港では、現場の救急医療から収容医療機関に至るまで、 空港独自の綿密な計画が作られており、定められた指揮系統のもとに すべての機関が一体となり、活動が展開され、また慣熟のための訓練は 実際に近い想定で実施されている。一方、わが国では救命のための空港救急医療 体制は未だに確立されているとは言えない(平成4年当時)。

 しかし、昭和57年2月9日の羽田沖日航機墜落事故での反省 が契機となり、わが国でも空港 救急医療体制の整備が行われるようになった。 運輸省航空局は昭和60年度から救急医療器材ならびに 運搬車、屋外治療用テント等の整備を行い、 平成5年度までに28空港に対し、航空機材に対応 した救急医療資機材等を順次整備している。昭和41年11月13日に全日空 YS-11が、着陸復航中に松山伊予灘に墜落し、50人の犠牲者を出した松山 空港でも、平成元年に60人分の医療資機材10式、平成4年に中型搬送車4台 が整備された。

 空港救急医療体制での重要なポイントは、1.負傷者の収容施設、2.救護班 の空港の出入口(臨時出入口を含む)、3.空港周辺の医療機関および 基幹病院等の配置状況、4.空港内の診療所の4点が挙げられる。

 以下、名古屋空港のケースについて具体的に検証する。

  1. 万が一、航空機事故が発生した際には、負傷者の収容施設として、 格納庫2カ所と建物脇、滑走路脇の空地に緊急医療救護所の 設営を予定しているが、事故現場の位置、状況に応じてテント の設営は滑走路脇の平坦化地、空地利用を適宜考慮して 使用すると考えられる。もし増改築の計画が あれば、一例としてオランダのアムステルダム・スキポール 空港の空港救急医療施設とその機能が 参考になる。ここでは空港内に、通常はスポーツ施設として 利用しているスポーツホールを緊急時に救急医療対策本部 施設として兼用している。その内部は、緊急時には 負傷者を選別、応急処置用 に使われる酸素供給口が壁に配管され、 受付兼用の通信機器(テレックス、電話、移動電話等)が 配置された連絡司令室、薬品、担架、酸素ボンベ等の 置かれている倉庫がある。

  2. 救護班の空港への出入口を夜間でも判りやすくする為に、看板表示(蛍光塗料、 照明等)の設置が 必要である。

  3. 空港周辺の医療機関及び基幹病院等の配置状況は、空港の西側に少なく東側に多くみられて いるが、逆に出入口は西側に多く東側に少なく、アンバランスになっている。東側には 出入が一カ所のみで 当然混雑が予想される。負傷者の迅速な搬送を必要とする 緊急時の臨時出入口をもう1カ所程増設する必要がある。

  4. 外国の主要空港では空港内に診療所を設け、診察、防疫、緊急時に備えて 諸々の対策、整備 を進め緊急時の救急医療班の主導、協力をしている。航空機災害の救急 医療体制は各国概ね空港周辺の基幹病院、医療機関との連携を基に、 緊急医療救護と負傷者避難搬送体制をとっている。

    また、平成3年度には災害現場に医療資機材が供給できる空港用医療作業車 が導入された。

 航空機災害の緊急医療体制は消防、警察、自衛隊、各市町村、行政との 連携協力を進めさらに図上演習、消火救護演習の実施計画を練り空港側 と調整して、実効の上がる救急医療体制の強化を図る必要がある。

 


発災直後の初動期の避難所の開設

(地震防災対策研究会、自主防災組織のための大規模地震時の避難生活マニュアル、(株)ぎょうせい、東京、1999, pp.125-139)


 大規模地震が発生した際、被災者の生命及び身体の安全を確保するために。 地方公共団体では避難所を開設する必要がある。発災直後には消火活動、 救助活動、救急活動などの応急処置が優先されるため 、避難場所の迅速な開設には困難が予想される。しかし、このような 状況の中で、被災者の生命及び身体の安全を図りながら、当面の避難生活に 必要な緊急物資の確保や、安否情報などの情報提供などを図らなければ ならない。そのためには、市町村のほか、避難場所となる学校、 公民館等の施設の施設管理者、自主防災組織が、事前に協議して、 避難場所の迅速かつ円滑な開設方法、例えば避難所の開設手順、 避難者の収容手順、リーダーの選出方法、緊急広報などに関する 計画を予め定めておくことが重要である。

 地震が発生した初動期の手順については、一般に次のようになっている。

1.避難所となる施設の施設管理者はただちに当該施設の安全を 確認、二次災害の防止

当該施設の被害状況、落下物・転倒物の状況、ガス漏れの有無などを 把握し、立ち入り禁止区域の指定、危険物の処理、出火防止対策を行う。 また、電気、ガス、水道などの施設機能の確認を行う。

2.災害対策本部による現地の避難情報の収集

市町村またはその出先機関の災害対策本部は、住民の避難状況、 地域防災計画指定避難所の状況などの避難情報を現地の施設 管理者などから把握する。また、指定避難所以外の場所に 避難者がいる場合については、情報が不足しがちであり開設状況の 把握が困難であるため、電話、来訪者からの聞き取りなどにより、 積極的に情報を収集する必要がある。

3.災害対策本部から現地避難所への担当職員の派遣

市町村またはその出先機関の災害対策本部は、収集した情報を基に 所定の職員派遣基準以上の災害の発生が認められる場合には、あらかじめ 職員派遣要請などで指定しておいた担当職員を、直ちに現地の避難所へ 派遣する。ただし、担当職員が避難所に到達する前に 避難者が押し寄せてきた場合には、施設管理者及び 自主防災組織の長などが話し合いながら、避難者をとりあえず安全な 場所に待機させるなど、臨機応変に当面の対応をうることが必要である。

4.災害対策本部から担当職員への指示に基づく避難所開設の 決定・周知

 避難所に派遣された担当職員は、市町村またはその出先機関の災害対策本部 の指示を受けて、施設管理者とともに避難所施設の所定の部屋を開錠し、避難所の 開設を行い、収容人数や緊急に必要な物資などを災害対策本部に報告する。避難所が収容 さらたことについては、担当職員などが屋外スピーカーにつながる放送設備 を用いて、屋外避難者を含む地域の住民に広報する。

5.担当職員・自主防災組織の長等による避難者の屋内、 屋外収容スペースの確保

施設管理者は、施設の中で避難者収容スペースとして活用できる空間が 使用可能かどうか、応急危険度判定結果から見て当該空間が安全かどうかを判断し、 現地に派遣された職員に報告する。報告を受けた担当職員は、体育館、講堂、 校庭などを屋内・屋外スペースとして確保し、指定する。

6.担当職員・自主防衛組織の長などによる避難者の受入・誘導など

担当職員・自主防衛組織の長は、校庭などに待機していた避難者を居住組単位に編成した上で、避難者収容スペースに誘導し収容するとともに、避難者名簿登録用紙に記入してもらって登録を行い、併せて行方不明者の把握に努める。

7.担当職員から災害対策本部への避難状況の報告

収容した避難者の人数及び増減見込み、避難者の収容場所の状況、飲料水・食料その他の物資要請の有無、火災、ライフラインの被災状況などの周辺状況などを災害対策本部に報告する。

8.担当職員から被災者への当面の災害関連情報の伝達

担当職員は、災害対策本部からの情報、ラジオからの情報などを収集し、被災者に提供する。

 大地震などの大災害が発生した際は混乱が予想されるが、このようにあらかじめ避難場所の開設の手順を指定しておくことで、迅速な対応をすることができ、被災者の生命及び身体の安全を確保することができると考えられる。


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