厚生省では、1995年の4月から.「阪神・淡路大震災を契機とした災害医僚体制のあり方に関する研究会」を発足させ、同年5月に出された「震災時における医療対策に関する緊急提言」を受けて、政策を進めているところです。緊急提言の発想の根底には三つのポイントがあります。それは、
ハード面では、拠点病院を地域単位に設けていこうと考えています。そのときの理念は、基本的には、地域の医療機関は自らが被災しているという状況でありながらも、まず最初に患者が行く所であろうということから、地域の医療機関が中心にあった上で、そちらをいかに支援していくかという発想の拠点病院という訳です。
ですから、基本的な発想は地城単位で強化を図っていこう、そしてソフトの面では、何か現場でのトラブルがあった場合に、保健所でいろいろな調整をしていくことを期待し、判断をいちいち上まで上げなくても、ある一定のところまでは、その地域での判断で動いていってもらうようにしようという考えです。
結局、地震があって、何かがあったときに、すぐには助けにきてもらえない、まずは家族同士、もしくは近隣の住民伺士で助け合わざるを得ないということになると、普段からの住民に対する啓発力が重要な訳です。
平常時でも救命することのできない重篤な負傷者を集団災害特に救命しようとしても所詮かなわぬことである。大きな災害の現場で多少の混乱が生じるのは仕方がない。しかし、1人でも多くの被災者の生命を救うには、災害現場の混乱をそのまま医療の現場にまでもちこまないことが肝要である。したがって「災害現場でのトリアージ」という作業がきわめて重要であるといわなければならない。
医師であれば誰でもトリアージ担当者になれるわけではない。日常重症患者を見慣れていない医師はむしろ不適当である。救命救急センターなどで働く救急専従医が望ましいが、経験を積んだ外科医、整形外科医、脳外科医あるいは麻酔科医なども適当であろう。
しかし、これらの専門の人すべて適格だということでもなく、責任感が強く、決断力があり、しかも地域の医療事情に詳しく、医療資源の有効利用を考えることができる人物が望ましい。
現場は恐ろしい修羅場の様相を呈しているかもしれないが、その惨状に目をつぶり、阿鼻叫喚の声には耳をふさぎ対処しなければならない。
平成11年9月30日に東海村のウラン加工施設にて臨界事故が発生した。この臨界事故では特に3人の作業者が高線量被爆を全身に受けた。この3例の高線量被爆者に対し、事故現場から各医療機関に至るまでどのような論理に基づき医療がなされたかを検証する。
東海村ウラン加工工場で起こった臨界事故によって医療支援を必要とした人々は以下の3つのグループに分類される。
特に1)の3人に対しては被爆線量の迅速な評価と急性放射線症候群の診断と治療が重要である。
10時35分臨界事故発発生 直ちに放射線監理委員が駆けつけた。
O氏;意識、呼吸は確認出来なかった。胃液様のものを嘔吐していた。異物除去のために口腔内に指を入れると呼吸と意識を回復した。
急性放射線症候群の前駆症状と考えられるものが出現していた。
急性前駆症状
※患者を放射線計測器で測定すると針が大きく振れたが搬送を断行した。
一般的に搬送先の医療施設で,放射線学的な支援(線量測定、危険度判断、汚染の管理)をするために原子力施設の放射線管理員が同行するのが原則であるのに今回は効果的に実行されていない。また被爆の状況や、汚染に関する情報の通知に関しても同様であった。
点滴による輸液の開始と、放射線医学総合研究所への搬送の判断、連絡をした。放射線計測装置での計測によって患者から30マイクロシーベルトの測定結果が得られ、汚染と考えたが実際は汚染ではなかった。放射線化された体内ナトリウム(Na-24)を測定したものであった。バイタルサインのチェックと採血輸液急性放射線症候群に対する当面必要な医療処置を行い麻酔科医師の付きそいのもと搬送された。ヘリコプターにて搬送。
当初医師に臨界事故であるとの情報が届いてなく、ウラン体内摂取を想定しての治療がはじめられかけた。しかし放射線測定の専門家によって患者の吐物などが検査されNaの放射化が認められたとの情報が届き、これによって初めて事故が臨界事故であると医師に認識され、急性放射線症候群の治療に方針が変更された。
II 採血による、造血幹細胞移植のためのHLAタイピング、末梢血リンパ球の異常染色体分析、リンパ球数測定。
※高線量被爆の後には、急速に末梢のリンパ球が消失するので早急な採血と血液の保存が必要である。
I.被爆線量の評価 II.患者の臨床評価 III.治療施設の決定 についてが議題になった。
I. 被爆線量の評価;末梢血リンパ球からの被爆線量の算出。血液中Na-24からの算出。末梢血リンパ球の染色体異常出現頻度からの推定。全身のNa-24をホールボデイカウンターにより測定しての推定。
II. 患者の臨床評価;全身状態、血液生化学検査、肺機能、呼吸状態、感染に対する評価、消化管障害の有無、中枢神経系への影響、皮膚及び口腔粘膜の変化の程度について検討がなされた。その結果O氏とS氏の骨髄の機能に廃絶の危機があり、造血機能の確保と感染症対策が必要であること。O氏には集中治療が必要である事が確認された。
III.治療施設の決定;
O氏;被爆後6日、7日目に末梢血幹細胞移植が行われた。その後呼吸状態悪化と不穏状態のために気管内挿管と充分な鎮静処置がなされた。第4週目くらいから多量の水溶性下痢出現、第5週目くらいから躯幹全面を中心に皮膚から滲出液が大量に漏出し始めた。さらに第7週目の終わりには大量の下血が起こった。超集中治療が行われたが82日目に死亡した。
S氏;被爆後9日目に臍帯血幹細胞移植が行われた。口腔内疼痛と出血といった炎症症状が数ヶ月続いた。皮膚の放射線障害は被爆後3ヶ月後から顕著になり、皮膚移植が行われた。被爆後5ヶ月後くらいから肺炎を合併するようになり気管切開を行った。多臓器障害のために東大病院に転院した。しかし、中間期組織障害と考えられる皮下組織の繊維化が起こり、消化管出血も生じた、209日目に多臓器不全にて死亡した。
Y氏;被爆後2〜3週までの間末梢リンパ球、好中球の低下がみられたが、治療により改善し4週目には一般病棟への移動が可能になった。3ヶ月後に軽快退院した。
1995年1月17日午前5時46分、神戸で震度7の大地震が起こった。今回のレポートは神戸市立中央市民病院看護部部長であり、自らもこの大震災の被災者となりながらも医療活動に当たった一看護婦の体験を通しての意見をまとめる。
生活の中では最も大切なのは水である。水の役割というのは?飲用水、?トイレなどの雑用水、?自家発電装置の潤滑油冷却水、?医療ガス用圧縮エアコンプレッサー冷却水、?蒸気(消毒、厨房、暖房)、?PAC型空調機(コンピューター冷却)、?空調設備(自動制御用圧縮空気源冷却水)など、多岐にわたっている。意外なことに飲用水は救援物資などにより日本や世界の名水が飲めるほど質、量共に豊富であった。しかし最後まで困ったのがトイレの問題である。水洗トイレは水量があれば流れるというものではない。流水の圧力があってはじめて流れる。今回のような震災の場合電気が使えないことなどから固形物を流せるだけの流水の圧力を得ることができず、便と紙などの固形物は新聞紙に包んでビニール袋に入れて尿だけを流すようにした。この様な取り決めをしてもうまくいかないことが多く、水不足と寒さのため不衛生になり、易感染状態になりがちであったので、感染面には十分配慮しアルコール綿やウェルパスでの消毒を励行する必要があった。
2.管理運営体制・施設の使い方等
被害情報・安否情報等
2.救出・遺体の安置等
1.トイレ・清掃
このような災害時には、お互いの協力が大切であることを改めて感じた。
2. 反省点の整理
トリアージ
鵜飼 卓、救急医学 1997◇トリアージ分類とタッグ
◇トリアージ担当者
◇トリアージの実務
◇トリアージの実務上の問題
◇終わりに
臨界事故の初期医療
衣笠達也、日本集団災害医学会誌 5: 157-63, 2001
S氏:39才 男性
Y氏:54才 男性臨界事故後の経過
S氏; 嘔吐(60分後から)
Y氏; 嘔気(4時間後から)
S氏;6〜8Sv
Y氏;2〜3Sv
O氏;東京大学医学部付属病院救急部、実妹のHLA一致によって末梢血幹細胞移植が可能であると判断されたため。
S氏;東京大学医科学研究所付属病院、同様に適合臍帯血が見いだされたため。
Y氏;放射線医化学総合研究所、造血障害が中程度までであると予想され急性放射線症候群の治療を継続することが重要であるため。学生の考察
被災地病院での対応 3.災害看護―被災病院看護婦の対応―
山本春美、エマージェンシー・ナーシング 2001年新春増刊 319-326, 2001
1.危機時の自己管理について
2.組織への結集について
3.対策会議について
4.生活の工夫について
5.自らも被災者であるということについて
6.防災マニュアルの見直しと訓練について
第1章 発災直後からの避難生活の現状及び課題 (1)発災後 2日目
(地震防災対策研究会、自主防災組織のための大規模地震時の避難生活マニュアル、(株)ぎょうせい、東京、1999, pp.33-47* 管理運営*
* 情報*
* 救護*
* 居住環境*
* 食糧物資*
2.生活必需品(毛布・衣料品等)
<考察・感想など>
豪雨災害対策のための情報提供の推進
加治屋 強、月刊消防 22巻8号(通巻252号): 73-7, 2000はじめに
報告書の概要
提 言
まとめ