震災により起こる問題として、まず外傷が挙げられる。家屋や家具の下敷き・打撲による受傷は古典的・典型的受傷機転であり、近代建築では、犠牲者は建物自体の崩壊よりも建築構造物以外の落下物や転倒物によることが多く、また、揺れに伴う交通事故・列車事故によって多数の負傷者が発生するという推測がなされている。具体的な部位としては、四肢・軟部組織・脊柱の順で多いが、これらの致命率は低く、クラッシュ症候群や頭部・胸部・腹部外傷による臓器損傷の方が問題となる。これらはまた、救命可能な最重症例でもあり、これらの受傷者を他の外傷と区別して、高度の医療体制の整っている病院に搬入することが大切である。
外傷以外で集中治療が必要な震災直後の疾患としては、エモーショナルストレスによる不整脈や虚血性心疾患、交感神経過緊張による心不全や脳出血、粉塵による喘息発作などがあり、これらの急性疾患の発症率と家屋の被害状況との間には有意な相関を認めた。また震災後に増加した疾患としては、脱水とそれを契機とした脳梗塞、肺炎などの呼吸器感染症、出血性胃潰瘍といった重篤なものが多く、これらもまた、地震による被害の大きさが強く影響していた。
この震災直後の患者転送状況をみてみると、震災地内の大規模病院はクラッシュ症候群や臓器損傷といった外傷患者と共に心筋梗塞などの重篤な急性疾患患者を受け入れ、それにより周辺の大規模病院は慢性疾患患者や軽傷患者で占有されてしまった。突然の震災であり、殺到する患者に対応するためにも妥当な判断ではあるが、理想的には高度の医療体制を必要とするクラッシュ症候群や臓器損傷は、機能低下の少ない後方病院に搬入するべきであろう。そしてそのためにも、初期交通規制と移送手段の確保が重要となってくる。今回も、交通規制の遅れが救援、避難、そして患者の転送に影響を及ぼした。また、救急車・ヘリコプターといった患者搬送手段の確保が十分でなかったため、自家用車などの私的手段で受診した方も多く、それが交通渋滞に拍車をかけたばかりでなく、選別搬送や患者集散状況の把握を難しくしてしまった。
阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制のあり方に関する研究会 研究報告書より) 1. 都道府県・市町村 ・ 広域応援体制の整備 ・ 災害時に備えての研修・訓練の実施 ・ 災害医療に関する一般住民に対する普及啓発 ・ 災害医療支援拠点の整備 2. 保健所 ・災害医療における各機関の連携体制整備 3. 医療機関 ・ 地方自治体の防災訓練への参加 ・ 死体検案のための研修やマニュアル作り 4. 消防機関 ・ 傷病者の搬送システムの把握 ・ 応急手当の普及啓発 5. 国 ・ 医療体制・施設・設備の整備 ・ 災害時の連絡体制
また、死亡例に対してであるが、多くの死亡者が出てしまったため、監察医や法医学者のみでは困難で、臨床医も死体検案を行ったが、検案書の不備が指摘された。上述したように、一般臨床医も死体検案が行えるような研修やマニュアル作りが必要と思われる。
震災を始めとする災害はいつ起こるか分からない。「備えあれば憂い無し」と言われているように、いつ起こっても対応できるよう、常に万全の体制を整えておく必要がある。そしてそれは、医療機関だけに限らず、道路の問題や避難後のことなど、まさに地域全体の体制を整えておかなければそのシステムは機能しない。
阪神・淡路大震災では大きな被害が出てしまったが、この教訓をいかし、もう二度とあのような悲惨な災害が起こらないようにしなければならないと思った。
<参考文献>
阪神・淡路大震災を契機とした災害医療体制報告会
http://www.mhw.go.jp/search/docj/houdou/0805/67.html
平成10年8月27日、栃木県北部を中心に、大雨による被害がもたらされた。
当病院は災害に備え、医師1名・婦長1名・看護婦3名・主事2名で構成される常備救護班を、3班編成し、日頃より訓練を重ねていた。当日、午前中に、うち1班は要請により出動していた。
午後17時、混合病棟1棟(入院26名)が床上浸水し、この棟の患者全員を別病棟へ転床することとした。
看護部長の、とっさの判断により、副院長(院長は出張中)に連絡、副院長は、直ちに現場へ駆けつけ、自ら搬出状況を総括。多数の医師を集め、「看護部の主導で行動すること」とし、看護部長、救護担当婦長および数人の婦長は、他病棟の空床状況を把握し、病状に応じた病棟選択をし、搬送係となった医師たちに伝達。医師たちは指示にしたがい、素足になり、患者一人一人を背負ったり、車椅子を持ち上げ階段を昇ることを、繰り返し行い、5名を担送、9名を護送、12名を独歩にて搬出した。他の看護婦や、職員は、患者の不安の有無の確認や、患者の荷物等の配慮をおこなった。
当時、災害対策本部を設置する場所である、本館玄関、および、救急センターも浸水し、事務職員たちは、その対処に、おわれていた。
このときの活動がスムーズ進行した要因は、
である。これらは、日頃のコミュニケーションとチームワーク、訓練が定期的に行われ、危機管理が実践的なものであったためと考えられる。
反省点としては、
である。これらは、当院の防災マニュアルにある、災害対策本部を、設置しなかったことに、起因するものと考えられる。
情報を入手した段階で、院内組織に従った連絡網を使い、災害対策本部を設置し、全体的な詳細な状況を把握し、必要に応じて伝達することが必要であり、そのためには、実践に即した、防災マニュアルが必要で、それは、全職員が、緊急時に、適切な行動が取れる、具体的なものであることが、大切であるということが、この災害をとおして認識された。
だが、もしこれが、病院全体に及ぶような大災害であったとしたら、ここまで、全体的な情報網が確立されていなかったことと、十分な人手が得られなくなることを考慮すると、ここまでスムーズには、いかなかっただろうと考えられる。
しかし、 大災害でなかったとはいえ、今回の搬送活動が、迅速におこなえたことは、ひとえに、現場での人の動きがしっかりしていたからであろう。
患者と病棟の状態を十分に理解して、判断・指示を下せる指令系統と、実践力となる人手が存在していたこと、平素から訓練がなされていたことが、大事にいたらなかった所以だと思う。
2.関係各機関の現場到着時間設置
3.現場出動医師及び看護職員について
4.模擬患者の設定
2.自衛隊と消防機関の連携
3.訓練方法に関して
【今回のJMTDR派遣目的】
【医療チーム】
【協力者】
【活動地域】
【災害被害(洪水被害)】
【受診者】
女性の特徴として15−49歳で多くこの層の9.7%が産婦人科的愁訴を訴え、また男性より泌尿器科的愁訴、腹痛が多くなっておりこれに対する地域に応じた保健・医療が重要である。
自然災害による被害を最も被るのは貧困者、特に女性や小児、高齢者といった社会的弱者であり今回もその傾向がみられる。
【疾患頻度】
感染症のリスクを増す要因:(1)災害による人の避難、(2)人口の密集、(3)衛生環境の悪化、(4)通常の保健活動の中断 がありヌエバ・ビダ地区では被災民キャンプでの通常保健活動がないこと、人口増による伝染病が持ち込まれる危険があったが行政の監視やマスコミの注目で早急に対処できた。今回の活動対象が都市の低所得層や貧しい農村地域の人々だったが被災による健康への影響は比較的小さく抑えられた。
【調査活動(1200人に対し)】
【自然災害の早期影響】
【今後のJMTDR】
病院の火災
藤井千穂:エマージェンシー・ナーシング 13: 1459-66, 2000事故概要
火災 16階(電話交換室の内部のみ)防災設備の作動状況
発災時の対応
職員の動員と活動
災害対策本部のその後の仕事
看護婦の的確な判断
幸運であった側面
問題点
水 害
上杉みつえ:エマージェンシー・ナーシング 13: 1467-71, 2000概 要
考察・感想
現実に即した設定を行った空港災害対応訓練の成果
早川達也ほか:日本集団災害医学会誌 5: 29-33, 2000方 法
結 果
考 察
ニカラグア共和国ハリケーン災害
高木史江ほか:日本集団災害医学会誌 5: 34-44, 2000−救済期から復興期にかかる時期の医療救済活動−
(2) 津波:死者多く、 重症外傷少ない
(3) 洪水:死者少ない、重症外傷少ない といった特徴があり死者や重症外傷は少なく、内科系や小児科系の疾患に対する治療が主であった。