南アフリカ蘇生協議会、2008年4月30日

最近のCPRの研究成果に関する立場表明
(Position Statement)


RCSAホームページ上の原文 (最終更新:2008年11月16日、ウェブ担当者への連絡先

 最近の研究知見が改めて次のことを立証した。心肺蘇生法(CPR)は簡便、かつ、確かに効果がある! これは、バイスタンダーによるCPRに関するアメリカ心臓協会(以下、AHA)とヨーロッパ蘇生協議会(以下、ERC)が最近提出した声明1,2に対して表明されたものである。南アフリカ蘇生協議会が行ったこの立場表明(Position Statement)が最も意図する所は、より多くのバイスタンダーが CPRに取り組むように訴え、啓発することである。CPRなくして、突然卒倒して呼吸をしていない傷病者に生存のチャンスはない

 AHAの声明は、「全ての心停止傷病者は、少なくとも質の高い胸骨圧迫(具体的には、適切な速さと深さ、かつ、最小限の圧迫中断) を受けるべきである」と推奨している。CPR訓練の有無にかかわらず、バイスタンダーは少なくとも救急医療対応システム(南アフリカでは携帯電話は112番、固定電話は10177番)に通報し、質の高い胸骨圧迫を開始し継続すべきである。質の高い胸骨圧迫は、胸部中央を強く速く押し、圧迫中断を最小限にして行う。

 AHAは、CPR訓練の有無にかかわらず、バイスタンダーが突然卒倒した成人を目撃した際は、少なくとも“ハンズオンリー”CPRを開始すべきであると提唱した。南アフリカ蘇生協議会は AHAならびにERCと同視点に立って双方を支持し、2005 Guidelines for CPR and Emergency Cardiovascular Careに則り、CPRは30回の胸骨圧迫と2回の口対口人工呼吸を交互に行なうよう勧告する。唯一、救助者が口対口人工呼吸を行ないたくない、あるいは行なえない、または自信がない場合に、胸骨圧迫のみのCPRを実施すべきである。胸骨圧迫のみのCPRであっても、全くCPRをしないよりもよい。

 バイスタンダーは、突然倒れた成人を目撃したら、直ちに傷病者訳注1の反応を評価すべきである。傷病者が全く反応しない場合には、直ちに救急医療サービス(EMS)<訳注:Emergency Medical Services>へ通報する。携帯電話では112番固定電話では10177番で EMS につながる。傷病者を固く平らな床面に寝かせ、通常の呼吸がなければ、口対口人工呼吸を2回行なう。人工呼吸を2回行なった後、胸骨圧迫を実施する。両手掌を、乳頭と乳頭の間の胸部中心に置き、100回/分(およそ2回/秒)の速さで30回押す。胸骨圧迫30回と口対口人工呼吸2回を交互に行なう。この胸骨圧迫と人工呼吸のサイクルを、自動体外式除細動器(AED)<訳注:Automated External Defibrillator>が到着して使用可能になるまで、あるいは EMS が到着するまで続ける。

訳註1:原文では「patient」が使われているが「傷病者」と訳した。「victim」の反復を避けたものと思われる。本来「patient」は病院内での治療対象者、「victim」は病院外での処置や手当の対象者に対し使われる言葉であろう。

 とはいえ、もし救助者が口対口人工呼吸を行なえないか、行ないたくない場合には、胸骨圧迫のみのCPRは次善の選択肢である。強く速く、傷病者の胸部中央を圧迫し、しかも中断を最小限にすることが、CPRを実施するにあたり生死に関わる最も重要な要素である。

 最も単純なCPRとして、救助者には次のことが求められる。
 ・傷病者に反応がなければ直ちに救急通報をする。
 ・傷病者が通常の呼吸をしていなければ胸骨圧迫を行う。
 ・AEDが利用可能なら除細動を試みる(訳注:Recharge the heart)

 この「単純なCPR<訳注:“Simply CPR”>アプローチは Witwatersrand大学救急医学講座の Efraim Kramer教授が提唱したもので、効果的なCPRを行うのに不可欠なキーコンセプトを強調している。これらのキーコンセプトは容易に学ぶことができ、また実行に移すことができる。そして、地域および医療現場にいる全ての人に対し、CPR訓練を受けることを強く勧める

 この声明は、CPRの実施法を知ることが緊急に必要であることに注意を喚起している。CPRは誰もが教えてもらうべき命の技である。CPRを教わることで、急に心停止を起こした傷病者をより多くの人が助けることができ、実際に命を救うことができる! 訳註2。もしもバイスタンダーがこの状況で何もしなければ、傷病者は命を失うだろう。もしバイスタンダーにCPRを行う意志・訓練経験・自信があるならば、傷病者に対し、胸骨圧迫30回毎に2回の吹き込みをしなさい。もしもバイスタンダーが口対口呼吸をするのに気がすすまない、あるいは実施できないならば、次善の選択として胸骨圧迫のみのCPRは許容されうるもので、全く何もしないよりも著しく有益である訳註3。連続して胸骨を圧迫するという単純な行為こそが、傷病者を救命するために必要なのかも知れない。

訳註2:原文は「It is a life-skill that should to be taught to everyone」となっている。should to の to は余分であり、誤植ではないか。
訳註3:原文は「and will be significantly more beneficial that attempting nothing at all」となっている。ここの「that」は「than」の誤植であろう。

 南アフリカ蘇生協議会は、公衆と医療従事者に対して同様に、CPR訓練を推進する。効果的なCPRは傷病者の生存の可能性を2〜3倍にすることができるので、この技術の訓練を事前に受けた上で実施することが欠かせない。あなたの地域のトレーニングセンターやインストラクターの詳細については、当協議会のウエブサイトwww.resuscitationcouncil.co.zaを参照されたい。あなたがもし突然の心停止傷病者を助けられなかったら、その日をあなたが忘れることはないだろう! あなたはあなたと傷病者の運命を変えることができる、CPRを学んで!訳註4

訳註4:原文は「You can make a difference - learn CPR! 」。下線部は訳者の意訳。

Martin Botha
Vice Chairman
Resuscitation Council of Southern Africa


参考文献

1.[全訳]The American Heart Association statement can be found at: http://circ.ahajournals.org/cgi/reprint/CIRCULATIONAHA.107.189380

2.[全訳]The European Resuscitation Council statement can be found at: http://www.erc.edu/index.php/docLibrary/en/viewDoc/775/3/


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