公開資料:救命救急センター等での歯科医研修問題について

札幌地方検察庁への要望書

(愛媛大学医学部救急医学 越智元郎)


From: Genro Ochi
Date: Tue, 22 Jan 2002 23:57:30 +0900
Subject: [eml-nc2: 0289] 札幌地検への要望書送付について(歯科医の専門外医療問題) (一部抜粋)

 eml-ncの皆様、愛媛大学の越智です。

 歯科医の専門外医療行為の問題ですが、書類送検された札幌市立 病院の職員の方が起訴されるかどうか、という時期が迫って参りま した。このことを踏まえて、札幌地検検事への要望書を作成し、このほど送付致しました。

 「歯科医の専門外医療問題」に関する私個人の考えをもう一度書か せていただきます。札幌市立病院の本問題については事実関係の全貌 が明かにはされていません。その一部に勇み足とも言うべき違法行為 があった可能性はゼロではないと思います。しかし、指導医師の指導 のもとで、歯科研修医が医科領域での研修を行うことは可能であり、 むしろ推進すべきであると考えています。歯科治療中に起こりうるア レルギー反応などへの対応能力を養うことが歯科施設だけでは困難で あることは明白です。しかし、今回の問題で札幌市立病院の職員が起 訴されることがあれば、歯科研修医の救命救急センターなどでの研修 の道が事実上閉ざされる恐れがあります。そして、歯科治療の安全性 の低下という形で国民に悪影響がもたらされると思います。このこと が、私が札幌地検検事に要望書を送付したいと考える理由です。

 皆様はどのようにお考えになるでしょうか。



【札幌地方検察庁 桜井検事正への要望書】

札幌市立病院歯科医研修問題に関する要望書

札幌地方検察庁 検事正
桜井 浩 殿

 近年、我が国では、医学の進歩と社会福祉制度の充実に伴い、従来では救命し得なかっ た重症患者の救命が可能になり、重症慢性疾患や重度身体障害を抱えて生活している患者 が急増しております。一方、QOLの概念が一般社会通念として定着し、生きている限り 、おいしい食事を充分に味わって食べたいという欲求を持つことは当然であると考えられ るようになり、口腔機能の回復・増進の重要性が強く認識されるようになっております。 このため、従来歯科治療の恩恵に浴することのなかった重症有病者や在宅寝たきり高齢者 なども、質の高い歯科治療を希望することが多くなっております。

 全身の予備能が低下している高齢者や有病者などの歯科治療に際しては、歯科治療に伴 う全身疾患の増悪あるいは偶発症の発生リスクが非常に高いため、これを回避するために 緊密な医・歯連携が必要であることは言うまでもありません。しかし、医・歯連携を適切 に行って予防処置を充分に講じたとしても、歯科治療時における全身疾患の突発的増悪あ るいは偶発症を完全に予防することは困難で、歯科医師が救命救急の初期対応をせざるを 得ないような状況が生じることは充分想定しうることであります。このような患者に安全 で質の高い歯科治療を提供してもらうためには、全身状態の把握ならびに救急時の対応法 等についての知識・技術を習得した歯科医師の存在が不可欠であり、このような人材を育 てるために、歯科医師の医科領域での研修が必要不可欠であることは当然です。

 実際、歯科医師の研修の必要性を認識している医師の善意により、これまで全国の多く の医学部附属病院や市中病院が歯科医師の研修を受け入れております。このような背景の 下に、市立札幌病院救命救急センターの松原部長は、自らの資質の向上をめざす歯科医師 の熱意に応えるべく、歯科医師の救急医療研修を受け入れてきたものと理解しております 。今回、松原部長と研修を行った3名の歯科医師が、その研修の一環として行った行為に ついて医師法違反に当たる疑いがあるとの容疑で告発され、刑事罰の対象とされているこ とについては、大きな疑問を感じます。また、彼らに刑事罰が与えられるようなことにな れば、歯科医師の研修を受け入れる医師および医療機関が皆無となることは明らかで、こ れからの社会に必要とされる高い資質を持った歯科医師の養成が不可能になります。この ような事態は、これからの社会にとって大きな損失となることは明らかであります。

   貴職におかれましては、以上のような事情をご考慮頂き、特段のご配慮を賜りますよう 御願い申し上げます。

                       平成14年1月23日

〒791-0295 愛媛県温泉郡重信町志津川
愛媛大学医学部救急医学(助教授) 越智元郎(自署)(印)

TEL 089-960-5722
FAX 089-960-5714
gochi@m.ehime-u.ac.jp


 以上、皆様の御支援をよろしくお願い申し上げます。


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