造血幹細胞のストレス記憶

心不全は一度発症すると、急に心不全の状態が悪くなることを繰り返しながら病気が進んでいきます。また、慢性腎臓病やサルコペニア、がん等の他の病気を進めたり、逆のこれらの病気に影響されて一段と悪化していきます。このような心不全だけでなく、他の病気にも影響を与えて多病の原因となる全く新しいメカニズムとして、造血幹細胞のストレス記憶が大事であることを明らかにしました。造血幹細胞は身体の中の血液細胞を作り出す細胞ですが、この細胞が心不全になると変化し、その結果生じてくるマクロファージが、組織を守る働きから、炎症を進めたり組織の機能を損なうように働きを変え、心不全や慢性腎臓病、サルコペニアを進めることを見いだしました。心不全のストレスは骨髄に行く交感神経を障害して造血幹細胞に記憶を刻むことも明らかにしました。この結果は、心不全が他の病気と関わり合いながら進行していくメカニズムの一端を明らかにしただけでなく、全く新しい治療や診断の対象となるメカニズムや分子の同定につながりました。

Science Immunology