京都大学大学院医学研究科 環境衛生学分野
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研究概要
心および脳血管疾患(以下循環器系疾患)は死因の上位を占め、その基盤には遺伝的要因と環境要因による攪乱が共通してみられる。本研究においては、循環器系疾患に注目し、環境変異(高シアーストレス、低酸素下、炎症)への血管内皮細胞(EC)の適応応答、引き続く血管平滑筋細胞(SMC)の脱分化および増殖の一連のプロセスを理解する。我々は、閉塞性血管病の代表的疾患としてもやもや病を検討する。もやもや病は、ウイリス動脈輪近傍動脈の閉塞を必発として、全身の動脈にも頻繁に閉塞性病変が認められる。感受性遺伝子としてRNF213を同定し、日中韓の創始者変異である R4810Kを見出し、1500万人の未病状態のキャリアーが存在することを見出した。R4810Kは浸透率が低く(1/150)、遺伝子変異単独では閉塞性病変の惹起を説明できない。そこで、R4810Kキャリアーは、炎症など環境要因の曝露により発病すると考えられる。

我々は、interferonによりRNF213は発現誘導を強く受け、R4810Kの過剰発現ECあるいはヒトもやもや病患者由来のiPSECsにおいて、Angiogenesisが抑制されていることを見出した。さらに、低酸素曝露により野生型マウス個体では脳のAngiogenesisを促進させる適応応答を顕著に駆動させ、代償的に血流を確保しようとするが、R4810Kを過剰発現する個体では、ECの適応機能不全を起こし、適応応答を発動できないことを見出した。

このようにRNF213は、環境要因曝露による適応応答を制御しR4810Kは応答不全により、未病から血管閉塞性病変を引き起こすと考えられる。時間経過、臓器特異性および環境要因との相互作用の分子メカニズムを解明することで、閉塞性血管病変の一般的理解につながること可能性を提起した。
研究グループ
  1. 研究代表者
    小泉 昭夫 京都大学医学研究科 名誉教授
  2. 研究分担者
    S Youssefian 京都大学医学研究科 教授
    手塚 徹    京都大学スーパーグローバルコース医学生命系ユニット 特定講師
    原田 浩二   京都大学医学研究科 准教授
研究期間
平成29年度―令和3年度
研究経費
91,520千円 (直接経費: 70,400千円、間接経費: 21,120千円)


研究概要[Japanese][English]
研究グループ
対象疾患
成果
(11/07/21)
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 本課題は平成21年度で終了しました。
 [研究報告書]

 この研究は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(A)「もやもや病の感受性遺伝子の機能解明と1次予防の展開」に引き継がれています。

研究概要
くも膜下出血は、脳動脈瘤と脳動静脈奇形を原因として生じ、全死亡の2%を占める。特に脳動脈瘤は、過労死の原因として社会的にも注目されている。一方、もやもや病の罹患率は10万人年あたり3名であり、若年性脳出血の原因となる。

これら疾患はともに遺伝的素因の関与が疑われるものの原因は不明であり、脳血管の特殊な機能・構造上の特性を"場"として、遺伝子による感受性の高い個体が、より発症しやすいと考えられる。また三疾患とも欧米先進国には少なく、わが国に多い特徴をもつ。脳動脈瘤については、我々が見出した17番染色体、19番染色体、X染色体連鎖領域を走査し、感受性遺伝子を特定する。Moyamoya病については、既に我々が研究協力を得ている家系と本研究期間内に参加協力を得る家系を用い連鎖解析をもとにPositional Cloningを行い、感受性遺伝子を得る。脳動靜脈奇形については、同祖性の仮定できる人口集団において患者と対照者を募集し、全ゲノム相関研究を行い感受性遺伝子を特定する。

3疾患について、ハイリスク者を抽出する最適な方法を見出し、遺伝的素因の強い脳血管疾患の1次・2次予防の確立を行う。
期待される成果

  1. 感受性遺伝子の特定:我々が研究の対象とする三疾患について、感受性遺伝子が特定される。
  2. 遺伝子異常から推測される脳血管の特異性解明:見出された感受性(原因)遺伝子群の機能解析により、病態発症に至る病理的過程が解明され、予防、診断および治療に有用な情報が得られる。
  3. ハイリスク者に対する公衆衛生学的予防対策の確立:三疾患について、職域・地域において、ハイリスク者を抽出し、2次予防を行うための最適な方法が確立される。また頻度の高い脳動脈瘤においては、喫煙、高血圧と感受性遺伝子との相互作用について1次予防のエビデンスが得られる。
研究期間
平成17年度―平成21年度
研究経費
67,300,000円


特定領域研究「応用ゲノム」
公募研究 家族集積性の強い脳血管疾患の遺伝解析
文部科学省特定領域研究 ゲノム研究のホームページ

研究概要
 本研究は、日本人に多い脳血管疾患の内、遺伝的負荷の強い脳動脈瘤およびMoyamoya病の感受性遺伝子の同定を目指す。
 脳動脈瘤については、家系の追跡調査を行い、未発症者については、再度MRAを行う。新たに見出された発症者を加え遺伝解析を行う。
 Moyamoya病については、発症者が3世代に渡る家系の発掘を行い、候補遺伝子を検索する。脳動脈瘤では参加協力は家系群31家系273名、弧発例患者群469名、対照群416名の血液の寄贈を受けている。Moyamoya病は、現在の9家系に増やして検討を行う準備が完了した。
 倫理的検討については、既に京都大学医の倫理委員会の承認を得ている。
研究期間
平成18年度―平成19年度


Department of Health and Environmental Sciences
Kyoto University Graduate School of Medicine