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(掲載:11.8.26)
ロタウイルスワクチン 〜現状と今後の課題〜
津川 毅(岩見沢市立総合病院小児科、札幌医科大学小児科)
わが国ではロタウイルス胃腸炎は冬から春にかけて流行し、5歳までに殆どの子供が罹患する。1?2日の潜伏期後に、激しい下痢と嘔吐で発症し、約40人に1人の割合で重症化し、5歳未満の急性胃腸炎による入院の半数程度がロタウイルスによるものとされる。発展途上国では重症脱水による死亡が問題だが、先進国では入院治療費などの経済的負担や、稀だが脳症などの合併症が問題となっている。
1973年にロタウイルスが発見されてから、先行するロタウイルス感染は再感染を防がないが、軽症化させる現象が知られており、重症化(入院、死亡)を防ぐためのワクチン開発が進められてきた。経口弱毒生ワクチンである単価ヒトロタウイルスワクチンのロタリックス(GSK)と5価ウシ・ヒトロタウイルス組換え体ワクチンのロタテック(Merck)は、重症化に対して85%以上の有効性を示し、2009年に世界保健機関(WHO)は全ての国で乳児へのロタウイルスワクチン定期接種を勧奨し、現在120ヶ国以上で承認されている。
わが国でも2011年7月にロタリックスが製造承認され、ロタテックも承認間近であるが、発売は11月以降が予定されている。標準的な投与スケジュールは生後6週以降に4週間以上空けて、ロタリックスは2回、ロタテックは3回経口接種する必要があり、接種時期の重なる他のワクチン(DPT、肺炎球菌、Hib、ポリオ、BCG)とのスケジュール調整や、接種費用の問題が残されている。
参考資料
中込治、中込とよ子:ワクチンによるロタウイルスの感染制御.ウイルス 60:33-48.2010.