公益社団法人 日本小児保健協会

協会からのお知らせ

(掲載:11.8.24)

RSウィルス感染予防と小児保健指導

菅原美絵 ( 国立成育医療研究センター看護部 )

 RSウィルス(respiratory syncytial virus: RSV)は、乳幼児急性気道感染症(細気管支炎、肺炎など)の主な原因ウィルスで接触や飛沫を介して気道に感染し、2-5日の潜伏期の後、発熱、鼻水、咳などで発症、通常1-2週間で軽快する。しかし2歳以下の乳幼児では上気道炎から下気道炎に進展し細気管支炎、肺炎を発症し6ヶ月以下の乳児では入院加療を必要とすることが珍しくない。免疫不全児、低出生体重児や呼吸器・循環器に基礎疾患をもつ乳幼児は重症化しやすく、特に注意が必要である。日本では主に乳幼児の間で冬季に流行し、通常10月から12月にかけて流行が始まり、3月から4月頃まで続く。現在予防方法として、接触・飛沫予防策として手洗いの励行、マスクの着用が有効である。また、遺伝子組み換え技術を用いて作成された、RSVの表面蛋白の一つであるF(Fusion)蛋白に対するモノクローナル抗体製剤であるパリビズマブ(Palivizumab(シナジス))がある。シナジスは日本においても、2001年1月に承認された。RSV流行開始前から流行期の間、重症化しやすい対象に対し(表)、1回15mg/kgを1カ月毎に筋肉注射することにより、予防効果が期待できる。
 小児保健に関わる人は、その年の流行状況を十分に把握し流行開始期〜流行期間中のパリビズマブ接種と接触予防策の推奨を行っていく必要がある。
 
(表)パリビズマブの適応