小児保健とHTLV-1(ヒトT細胞性白血病ウイルス1型)総合対策
庵原俊昭(国立病院機構三重病院小児科)
ヒトT細胞性白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、本邦の成人型T細胞性白血病(ATL)患者から発見されたウイルスで、ATL、HTLV-1関連脊髄症(HAM)、HTLV-1関連ぶどう膜炎(HAU)などの発症に関与している。2010年度から、本邦からのHTLV-1根絶を目指してHTLV-1総合対策が開始された。
輸血のスクリーニング検査が行われている現在、HTLV-1は主として母乳および性行為により感染する。母乳による母児感染率は、母乳で育児しない場合3%、母乳育児期間3か月以内3%、母乳育児期間6か月以内8%、6か月以上20%である(表)。凍結融解した母乳を飲ませた時の感染率も3%である。
妊娠期間中の検査で妊婦がHTLV-1キャリアと診断された場合、産科医療機関では、妊婦にキャリアであること、出産後の母乳育児期間とHTLV-1の感染リスクについて伝えられ、妊婦が出産後の育児方法を選択することになっている。
小児保健に関わる人たちのHTLV-1総合対策における役割は、キャリア妊婦の育児方法や長期的な予後について相談にのること、出産後の子どもの成長発達を見守ると同時に育児について相談にのること、児が3歳になったらHTLV-1感染状況について調査すること、もし児がキャリアと分かった場合、告知時期(輸血が許可されている15歳以降が推奨されている)について相談にのること等が示されている。
(表)HTLV-1感染ルートと対策による感染頻度
参考資料
1)平成21年度厚生労働科学研究「HTLV-1の母子感染予防に関する研究」報告書(研究代表者:斎藤 滋)
2)平成22年度厚生労働科学研究「HTLV-1母子感染予防のための保健指導の標準化に関する研究」報告書(研究代表者:森内浩幸)