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19回日本家庭医療学会 学術集会・総会

企画概要
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一般演題
発表者の方へ
一般演題抄録 施設・研修プログラム
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当日参加の方法
タイムテーブル

一般演題抄録

一般演題発表時間早見表

11月6(土)  4階市民ホール(南401+402号室)
14:00〜 口演1 木村 琢磨 診療現場における外来研修指導〜
14:10〜 口演2 伊達  純 プライマリ・ケアの現場で身体化〜
14:20〜 口演3 山下 大輔 メーリングリストを中心とした〜
14:30〜 口演4 宮崎  景 医学生・研修医のための予防医療〜
14:40〜 口演5 石丸 直人 「私はあなたの主治医です。」ラ〜
14:50〜 口演6 北村 和也 大学総合診療部でのプライマリ・〜
15:00〜 口演7 宮崎  仁 「訴えの多い患者」に対するSSRI
15:10〜 口演8 竹中 裕昭 診療所で行う調査研究〜診療所〜
15:20〜 口演9 竹中 裕昭 家族が家族面接に望むこと〜診〜
15:30〜 口演10 鈴木 正典 ライフサイクルに即した援助・高〜
15:40〜 口演11 奥井 伸雄 婦人泌尿器科外来の現状〜
15:50〜 口演12 奥井 伸雄 米国での外科系臨床研修(クリニ〜
16:00〜 口演13 津田 順子 健康に対する住民の思い:基本住〜

11月7(日) 大宮ソニックシティビル6階(602号室)
9:10〜 口演14 一瀬 直日 経管栄養中に起きた反応性低血〜
9:20〜 口演15 尾藤 誠司 重症患者ケアにおける医療者の侵
9:30〜 口演16 渡部  満 「Community as P〜
9:40〜 口演17 本村 和久 沖縄県地域離島医療情報ネット〜
9:50〜 口演18 森  壽生 宮ヶ谷小学校児童の身体計測値〜
10:00〜 口演19 長  純一 地域で「医療」の出来ることと出〜
10:10〜 口演20 細田 俊樹 Auditによる急性中耳炎診療〜
10:20〜 口演21 門松 拓哉 病状説明、医学用語に対する患者〜
10:30〜 口演22 鶴岡 浩樹 臨床の知を築くために:ジェネラ〜

      会場 大宮ソニックシティビル6階(603号室)
9:10〜 口演23 矢崎 弘志 初期臨床研修中での家庭医として
9:20〜 口演24 斉藤 康洋 英国在住日本人のGPへの診療〜
9:30〜 口演25 土田正一郎 「話し易さ」の考察〜
9:40〜 口演26 寺本 敬一 オーストラリアでの家庭医療学〜
9:50〜 口演27 喜瀬 守人 半年間のFaculty Development
10:00〜 口演28 田頭 弘子 FDによるセッション作成、実施〜
10:10〜 口演29 岡田 唯男 指導医養成コースのアウトカム〜
10:20〜 口演30 土谷 良樹 東葛病院における訪問診療の報〜
10:30〜 口演31 椛島 友子 東葛病院付属診療所における訪〜
10:40〜 口演32 津田 順子 訪問診療における継続性について

11月6(土) 4階市民ホール(南403+404号室)
14:00〜 ポスタ1 奥井 伸雄 まんが『排泄ケア研究会セミナー〜
14:10〜 ポスタ2 矢田 篤司 診療所におけるwork bas〜
14:20〜 ポスタ3 松井 善典 関西の医学生による家庭医療勉〜
14:30〜 ポスタ4 本山 哲也 当院における外来研修1年間の〜
14:40〜 ポスタ5 大橋 博樹 家庭医を志す若手医師たちのMi〜
14:50〜 ポスタ6 奥野  誠 中小病院における「家庭医療科外〜
15:00〜 ポスタ7 寺田  豊 ICPCエピソードケアが有効で〜
15:10〜 ポスタ8 神白麻衣子  離島診療所から発行した診療〜
15:20〜 ポスタ9 足立誠 司 中学生の通学方法と体力・生活習〜
15:30〜 ポスタ10 宇田 哲也 市中病院における屋根瓦方式〜
15:40〜 ポスタ11 細谷  工 東京慈恵会医科大学付属病院・〜
15:50〜 ポスタ12 御前 秀和 組合員とともにすすめる医〜
16:00〜 ポスタ13 御前 秀和  閉塞性睡眠時無呼吸症候群〜
14:00〜20:00 (懇親会終了まで)

(※ 施プ=施設・研修プログラム紹介)
施プ1 尾形 和泰 『勤医協中央病院総合診療教育部〜
施プ2 高柳  亮 前橋協立病院群初期臨床研修プロ〜
施プ3 石川 鎮清 自治医科大学附属病院総合診療部〜
施プ4 濱野  淳 筑波大学附属病院総合医コースに〜
施プ5 岡田 唯男 亀田メディカルセンター家庭医診〜
施プ6 松岡 角英 船橋二和病院の研修の特徴につい〜
施プ7 長  純一 佐久総合病院の施設紹介〜
施プ8 菅野 哲也 東京ほくと医療生協 王子生協病〜
施プ9 伊達  純 研修施設紹介 城南福祉医療協会〜
施プ10 森永 太輔 みなと医療生協 協立総合病院初〜
施プ11 宇田 哲也 病院紹介(総合診療科の研修につ〜
施プ12 錦織  宏 “総合する専門医”へ −ジェネ〜
施プ13 飛松 正樹 三重大学総合診療部における家庭医〜
施プ14 原田 幸枝 倉敷医療生協 総合病院水島協同〜
施プ15 森  敬良 栄光の架橋 −出雲家庭医療学セ〜
施プ16 福島  啓 耳原総合病院での初期臨床研修の〜
施プ17 御前 秀和 愛媛生協病院研修紹介 日本一小〜


11月6日(土) 14:00〜14:10
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演1)
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診療現場における外来研修指導の問題点・改善点に関する探索
木村 琢磨1
松村 真司2、鈴木  亮1、福島 龍貴1、高原 野草1、
尾藤 誠司1、鄭 東孝1、青木 誠1
1東京医療センター 総合診療科  2松村医院

【目的】診療現場における外来研修指導の問題点・改善点に関する探索を行う。
【対象・方法】東京医療センター総合診療科の外来診療教育は、卒後4年目以上の医師が研修医の外来研修の指導を診療現場で行い、終了後にスタッフがカンファレンスを行う形式である。今回我々は、あらかじめ作成した外来診療教育の一般目標・個別目標をもとに、診療現場における外来研修指導の教育方略を作成した。作成は1回20〜30分のセッションを計12回、時に医学生・研修医も参加し行った。記録された内容をもとに、診療現場における外来研修指導の問題点・改善点について検討した。
【結果】診療現場における外来研修指導の問題点として、「研修医の診療の様子を直接観察しながら指導するが、研修医にある程度の臨床能力があると考えられる場合は、研修医の自律性を考慮し観察を少なくすることがある。その結果、身体診察法などの形成的評価に限界が生じうる」、「指導医が外来研修ごとに変わるため、学習者である研修医の到達度の把握が不十分となる」などが指摘された。対策として、指導の流れをある程度標準化し、外来研修指導の記録ノートに指導やフィードバックの内容を記録するようにした。その他、“診療現場で患者を前に、どの程度のフィードバックをするか”などの問題も明らかになったが、外来教育では、患者診療と共に“研修医自身の医師としての威厳も重視した対応が重要”との意見がみられた。
【考察】外来研修における診療現場での直接指導の問題点・改善点がある程度明らかになった。今後、教育効率が良く、患者診療上も問題のない診療現場における外来研修指導法について更なる実証研究が必要である。


11月6日(土) 14:10〜14:20
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演2)
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プライマリ・ケアの現場で身体化をどのように診るべきか?
病状・慢性化の度合・医師の因子について、患者管理方針を検討した1例

伊達 純
高岡 直子、石丸 直人、加村 梓、木村 宗一郎
城南福祉医療協会大田病院内科

プライマリ・ケアの現場で身体化症状を管理することは多い。身体化症状の固定は心理療法専門家の紹介を要する状態といわれるが、どの時点で紹介をするか判断することが難しい。
【症例】19歳の女性、ふらふらする、頭痛がすることを訴え、外来管理開始。小学校時代にいじめに遭い、小6から中学校時代を引きこもりで過ごす。その時期に両親が離婚。現在夜学に通学し、同級生と交際をしているが、彼は虐待の経験があり、うつ病と診断。引きこもりになり、彼の母が向精神薬を届けている。患者は「彼から「見放すなら死んでやる」など、言われる言葉が怖い」という。患者の彼への好意は前ほど強くないが、彼の具合が悪いと、責任を感じ、離れることができない。約1年間の面接を通じて、医師患者関係を築き、介入の時期を探っていた。03年11月に患者がクラミジア膣炎を発症した時期に、「彼にも治療を勧め、する気がないのなら、あなたのことを大事に考えているとは言えない」「彼の治療は医師の責任で行われるもので、あなたが責任を負う必要はない」という介入を行った。その後彼への気持ちの言語化ができるようになったが、やや身体化症状は強くなり、関係は大きくは変わっていない。04年7月症例検討を行った。1.病状 2.慢性化の度合 3.医師側の因子 について検討、1.症状は軽いが、虐待、共依存のリスクがある 3.診療時間を圧迫していず、医師に陰性の逆転移は生じていないが、1年以上の面接を行った時点で、大きな変化を認めていない という理由から、心理療法の紹介/併診が望ましいと考えられた。
【まとめ】患者、医師に関する3つの因子について、身体化患者の治療方針を検討した。


11月6日(土) 14:20〜14:30
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演3)
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メーリングリストを中心とした家庭医を志す若手医師の活動
山下 大輔1
大橋 博樹2、大平 善之3、喜瀬 守人4、齊藤 裕之5、
田頭 弘子2、高山 研6、中村 明澄7、西岡 洋右2、濱野 淳4
1 聖マリアンナ医科大学総合診療内科  2亀田メディカルセンター家庭医診療科  3千葉大学医学部附属病院総合診療部  4筑波大学附属病院総合診療科  5奈義ファミリークリニック  6湘南鎌倉総合病院救急総合診療科  7国立病院東京医療センター総合診療科

【背景・目的】最近のプライマリ・ケアへの関心の高まりを受け、家庭医を志す若手医師(以下、若手医師)が増えている。しかし、初期臨床研修後の家庭医療後期研修ガイドラインは統一されていない。若手医師は将来に不安を抱きつつ孤軍奮闘しているのが現状である。そこでメーリングリスト「にっぽんの家庭医」(以下、本ML)を創設し、そこでの議論を基に若手医師の問題意識と展望を提示する。 【方法】2003年11月の本ML創設以来、卒後3〜5年目の医師82名(平均年齢28.3±4.5歳)が登録している。本MLでの自由な発言内容を量的質的に整理し提示する。 【結果・考察】本ML上の主な議題を多い順に示す。(1)「家庭医療後期研修に関する話題」が最多で、家庭医の将来について不安と期待が論じられている。対策としてa)本邦での家庭医療研修の現状把握アンケート調査を企画し、b)家庭医療後期研修ガイドライン構築に反映することが提案されている。(2)「自己紹介」では全国多施設からの参加が目立ち、「地域差」より「家庭医療の存在を知りそれを求めていた」とする「家庭医への関心の高さ」が反映されている。(3)「国内外の学会等への参加記」がつぎに多く、このことを受けて、(4)「新たな活動や勉強会などへの提言」が論じられ、a)海外家庭医療レジデントとの交流、b)STFM(Society of Teachers of Family Medicine)やWONCA(World Organization of Family Doctors)など国際的活動への参画が具体化しつつある。 【結論】本MLから、若手医師は「家庭医療後期研修に関する制度」の構築に建設的な姿勢を示しており、さらに国内外の家庭医を目指す同志との連携を確立することで、より視野を広め、これらの手法によって本邦の家庭医療の発展に寄与したいと考えている。


11月6日(土) 14:30〜14:40
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演4)
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医学生・研修医のための予防医療セッション報告
宮崎  景1
北村 和也2、向原 圭1、大村 さやか3 
1 名古屋大学医学部附属病院総合診療部  2国民健康保険川上村診療所(岐阜県)  3船橋市立医療センター

【報告の背景と目的】予防医療の実践は,地域の第一線で働く家庭医にとって必須の臨床能力である.しかし,一般臨床医の予防医療に対する意識は低く,予防医療の実践という視点からの学生,研修医に対する教育は殆ど行われていないのが現状である.我々は本年8月に行われた、「医学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」にて医学生のための予防医療セッションを行う機会を得たので,その内容と評価について報告する.
【セッションの目標と方略】目標として,1) 予防医療が家庭医の大事な仕事の一つであることを知る.2) 予防医療こそ科学的根拠が必要であることを知る.3) 家庭医が現場でどのように予防医療を実践していくかを考える.の三つを掲げた.方略として,スライドによる講義とロールプレイを活用した少人数グループによる討論,全体討論を組み合わせた.
【セッションの結果と評価】当日の参加者は、医学部3年生から卒後5年目の医師まで幅広い層から20名が集まった.参加者の満足度に関する3項目の評価では,満足度が高く(4点満点で平均3.2点),「予防医療に対する意識が変わった.」「予防医療に科学的根拠が必要であることを認識した.」との回答が多くみられた.一方で、「ロールプレイ後のディスカッションに充分な時間がとれなかった.」といった(セッションの)方略における改善点があげられた.
【結論】今回のセッションは医学生に対する予防医療の実践の教育として,初めての試みであったが,参加者の満足度も高く,今後の改善への知見も得ることができた.同様のセッションを全国的に広めていく上で参考になるものと思われた。


11月6日(土) 14:40〜14:50
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演5)
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「私はあなたの主治医です。」ライフイベントに対する心理社会的アプローチが重要であった?型糖尿病患者の1例
石丸 直人
大田病院内科

【症例】52才女性、糖尿病、慢性C型肝炎、高血圧、橋本病。'99.1月糖尿病初診。2月、HbA1c14.3にて、糖尿病教育入院。抗GAD抗体陰性。インスリン強化療法を施行。'00.3月まで食事、運動療法、トルブタミド250mg内服によりHbA1c7台であった。6月内服中断し、HbA1c10.6。9月HbA1c7.5と改善。10月通院中断。'01.5月再来院時HbA1c13.3であったが、内服中断。9月教育入院。インスリン療法再開。12月HbA1c8.5となった。'02.2月HbA1c11となり、教育入院。食事、運動指導のみで、HbA1c8台となった。外来では、徐々にHbA1c10台に上昇。'03.3月教育入院時、抗GAD抗体陽性化したため、インスリン4回法に変更。HbA1c8-9台で推移している。【ライフイベントの変化と心理社会的アプローチ】夫婦で自営の工場を経営。36才時、バブル崩壊と共に仕事の受注が減り、夫はアルコール依存症となり、性的虐待を含む家庭内暴力、夜間の盗癖を行うようになった。'99.1月、夫の性的虐待により、次女が多重人格障害を発症。6月夫から逃れるため、長女が家出し、長女の縁談話が破談となった。9月夫入院。'00.10月長女の縁談再度破談となった。'01.9月教育入院中、生活保護申請、退院後転居し、離婚の準備をした。'02.2月夫と離婚成立したが、次女が少年院にいる彼との間に妊娠発覚。次女の夫が、家庭内暴力を起こすが、多重人格障害の次女は夫を拒むことができないでいた。保健センターを通して、次女は精神科に通院、次女離婚。患者の抑鬱症状に対し、抗不安薬処方、心理療法士による治療開始。'03.1月次女出産し、出産した孫は乳児院に入所。【結語】病棟外来主治医として、種々なライフイベントに対して行った心理社会的アプローチが重要であった一例を報告した。


11月6日(土) 14:50〜15:00
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演6)
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大学総合診療部でのプライマリ・ケア教育を考える
−大学外来とモデルクリニックの患者比較から−

北村 和也1
宮崎  景2
1国民健康保険川上村診療所(岐阜県)
2名古屋大学医学部附属病院総合診療部

【目的】大学総合診療部外来と地域の診療所に持ち込まれる健康問題を比較し,大学総合診療部でのプライマリ・ケア教育の有用性を検討する.
【方法】2004年6-7月の間に名大総合診療部新患外来を訪れた患者334名と,同年4-7月の間に川上村診療所を訪れた新患患者252名について,ICPC-2(プライマリ・ケア国際分類第二版)を用いて受診理由をコード化し,患者の年齢層,受診理由を比較検討した.
【結果】年齢層の割合:総合診療部と診療所でそれぞれ0-12歳;0%と41.3%、13-18歳;3.9%と4.4%,19-65歳;84.4%と25.4%,66歳以上;11.4%と28.5%%であった。受診理由(臓器別):総合診療部と診療所に共通して多かったのは,呼吸器(18.6%と34.2%),全身と部位不定(18.2%と19.9%),消化器(16.8%と12.8%),筋骨格系(7.4%と6.5%)で,神経は(17.9%と4.2%)で大学に多く,皮膚は(2.2%と13.1%)で診療所に多かった.受診理由(愁訴別):総合診療部は,頭痛(8.5%)、発熱(7.8%),咳(7.6%),全身脱力/倦怠(4.5%),心窩部痛(4.0%)の順で,診療所は,咳(12.8%),くしゃみ/鼻閉/鼻水(11.9%),発熱(9.2%),咽頭の症状/愁訴(7.1%),健康維持/予防医学(6.0%)の順であった.
【考察】大学総合診療部は,診療所と比べて若い年齢層における頭痛,倦怠感,しびれなど一見捉えがたい複雑な症状に対するアプローチを学ぶのに適しており,診療所は小児や高齢者のよくある健康問題を学ぶのに適していると考えられた。


11月6日(土) 15:00〜15:10
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演7)
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「訴えの多い患者」に対するSSRI/SNRIとサイコセラピーの効果:家庭医による治療的介入
宮崎  仁
宮崎医院

【目的】症状を説明する特異的疾患がないのに、多彩な身体的愁訴を持つ患者に対して、SSRI/SNRIによる薬物療法と、支持的なサイコセラピーを併用した治療の効果を検討する。
【対象】「倦怠感」、「嘔気」、「めまい」など、多数の身体症状を訴えるが、診察、臨床検査、画像診断等を行っても異常を認めない26例(男3:女23、年齢32-95歳、中央値65歳)。
【方法】薬物療法:塩酸パロキセチンを第一選択薬としたが、症状の改善が乏しい場合は、マレイン酸フルボキサミン、塩酸ミルナシプランのいずれかに変更。不安、焦燥を伴う場合は、ベンゾジアゼピン系抗不安剤を併用した。サイコセラピー:診察時にBATHE法による「15分間のサイコセラピー」を実施。患者の背景、感情状態などを把握するとともに、共感や支援の気持ちを積極的に伝えた。
【結果】治療効果:症状がほぼ消失した「有効例」21、症状の改善により日常生活の苦痛が軽減された「やや有効例」3、治療前と症状が不変であった「無効例」2。無効例は精神科に転医し、2例とも「身体表現性障害」と診断された。副作用:眠気、口渇、便秘のみであり、薬剤の用量調整等により対応可能であった。
【考察】「訴えの多い患者」の背景には、家族関係の葛藤などに由来する「軽症うつ」、「身体化」などの病態が潜んでいる。SSRI/SNRIとサイコセラピーによる治療により、80%の患者に症状の著明な改善を認めた。患者にとって身近な存在で、家族の状況も把握している家庭医による治療的介入の有用性と、継続的なケアの重要性が示唆された。


11月6日(土) 15:10〜15:20
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演8)
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診療所で行う調査研究
〜診療所医師の家族アプローチおよび患者・家族の実態に関する研究より〜

竹中 裕昭1
田坂 佳千2、木戸 友幸3、白浜 雅司4、武田 伸二5
1竹中医院・名古屋大学医学部附属病院総合診療部  2田坂内科小児科医院  3木戸医院  4三瀬村国民健康保険診療所  5東町ファミリークリニック

【目的】今回我々は「診療所医師の家族アプローチおよび患者家族の実態に関する研究」において、本部設置も調査も診療所で行い、大学はほとんどタッチしないというめずらしいケースを経験した。その中で生じた利点、欠点について報告したい。 【方法】1)調査経過において生じた利点、問題点を本部でその都度記録した。2)調査終了後、調査担当医師に電子メールで以下の項目についてアンケート調査を行った。(対象者4名,100%回答)(1)調査に参加してよかった点 (2)調査に参加して悪かった点 (3)他に気づいた点 (4)その他 【結果】1)調査進行中にわかった点は、今回の調査では日常診療の中で十分なインフォームドコンセントを行い実施する対象者は1日2〜3人、調査期間は約1ヶ月間が限度であった点、倫理的検討と現場とのギャップ、文献収集面、調査用紙作成や物品調達面、調査担当医師との連絡は電子メールで良好であった点が挙げられた。2)調査担当医師へのアンケート結果から、調査における利点は、被験者に対して家庭医の役割の啓蒙になった点、患者家族について知らないことや自分の診療についての見直しができた点、電子カルテ応用の可能性について検討できた点が挙げられた。悪かった点は、1日2〜3人でも混み合った時間帯には負担になった点、助成が受けられなかったための調査の限界、症例の選択についてが挙げられた。 【結論】診療所で研究を行う場合、大学や研究機関からわからない制約が多いのが現実であると思われるが、それを十分踏まえた上で研究を実施すると、「家庭医の役割の啓蒙になる」など思いがけない利点も生まれる。


11月6日(土) 15:20〜15:30
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演9)
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家族が家族面接に望むこと
〜診療所医師の家族アプローチおよび患者・家族の実態に関する研究より〜

竹中 裕昭1
田坂 佳千2、木戸 友幸3、白浜 雅司4、武田 伸二5
1竹中医院・名古屋大学医学部附属病院総合診療部  2田坂内科小児科医院  3木戸医院  4三瀬村国民健康保険診療所  5東町ファミリークリニック
【目的】家族がどのような時に医師との家族面接を望むのか、また家族面接の際にどのようなことを尋ねたいのかを明らかにすること。
【方法】
研究デザイン:郵送式質問紙法を用いた横断研究  対象:全国4箇所の診療所に通院する外来患者  期間:2004年4月5日から5月15日まで  手順:担当医師が口頭によるインフォームドコンセントを行った後、調査用紙を配布した。対象者には帰宅後、再度、説明文書に目を通してもらい、本研究の主旨に同意すれば、署名の後、調査用紙に記入してもらうことにした。記入後は調査用紙を封筒に入れ、郵便ポストに投函してもらった。
【結果】対象者は272名(男女比:117:155)。医師との家族面接を望む時は、家族に気になる症状がある時、家族が病院へ行きたがらない時、家族の治療内容がよくわからない時、入院中の費用など経済的問題が生じた時、急変をはじめ病状が変化した時などが挙げられた。
 家族面接の際に、家族として知りたいことは、くわしい病状、今後の経過、病名、原因、必要な検査などであった。治療に関しては、治療内容よりもむしろ生活全般について、家族に何ができるのかに関心があるようだった。
 また家族面接の際には、専門用語を用いずに、ゆっくりと、聞こえるように話すことが望まれていた。
【結論】現在、家族面接の際の注意事項は、欧米の教科書からそのまま抜粋した内容が指導されがちであるが、今回明らかになった患者、家族の声を取り入れながら、日本にあった家族面接法を構築するべきであると思われる。


11月6日(土) 15:30〜15:40
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演10)
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ライフサイクルに即した援助・高齢者ケアにおける回想法の有用性
鈴木 正典
森 敬良、 奥野 誠
出雲家庭医療学センター

【緒言】ライフサイクルでは成人後期にあたる高齢者にたいして、限られた生を充実して生きる価値を見出し、また、自分の一生をまとめその意義を認知し死を受け入れることができるよう援助していくことがもとめられます。回想法はそうした高齢者ケアの場面でも有用性が認められつつあります。
【目的】
@回想法をグループあるいは個別に行い高齢者の心理行動面での改善を図る A新しく開発した写真とシナリオによる「写真で見せる回想法」の効果を検討する。
【対象・方法】04年7月より出雲市民病院療養病棟に入院中の高齢者(82才、84才、79才、62才、75才、88才)6名を対象に週一回 1時間計5回のセッションで昭和20−30年代の写真(写真で見せる回想法 弘文堂 鈴木正典ら著)を用いて実施しその結果を東大式観察評価スケール(言語的コミュニケーション、非言語的コミュニケーション、注意・関心、感情で20点満点)を用いて客観評価し、セッション終了後 参加者の感想・評価も伺った。
【結果・結論】痴呆軽度の女性はこの評価スケールではほぼ満点になるため改善の評価は参加者の自己評価によったが全員「楽しかった」「昔のことが話せてよかった」「また参加したい」などの積極的評価が見られ。痴呆のない方2名、程度の軽い方3名は前後とも満点であった。また途中個別に対応した重度痴呆の一名は評価スケールが8点から18点に改善した。回想法は高齢者のケアの一つとして有用であり 本書はそれに適したものである。


11月6日(土) 15:40〜15:50
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演11)
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婦人泌尿器科外来の現状
奥井 伸雄1
レイモンド・J・ライリー2、ケヴィン・R・ラフリン2、奥井真知子1、
吉田久美子1、川口百子1、沼田 裕一1、川原田 恒3、小山 秀樹1、
森崎 篤1、船越 樹3、杉田 義博3、吉新 通康3
1地域医療振興協会・横須賀市立うわまち病院  2ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院  3地域医療振興協会
【目的】婦人泌尿器科は、泌尿器科と婦人科をつなぐ新しい概念として誕生した分野である。この分野を専門として行うことは、泌尿器科と婦人科だけでなく、女性の排泄ケアそのものを統合的に診察する必要がある。【対象・方法】横須賀市立うわまち病院にて婦人泌尿器科外来を月・水・木・土に実施した。米国で臨床研修したことが新聞などにのったこともあり、ほぼ関東全域から患者が集った。患者に対しては、新しい分野であることから、まんがを用意して、自分に似た症状のストーリーを読むことで、治療に対する理解があげられるように工夫した。その結果、多くの患者が満足した治療をうけ、症状改善につながった。これら患者の特徴を分析した。【結果】1年間の治療件数は、婦人泌尿器科分野のみで、尿失禁手術56例、頻尿治療手術(膀胱拡張))37例、陰部神経ペインクリニック422例に及ぶ。年齢別の特徴は、20-40歳は子宮内膜症や子宮筋腫に随伴した膀胱部痛や膣知覚過敏、40-60歳は閉経に伴う尿道狭窄・膀胱萎縮、60歳以上は尿道狭窄・膀胱萎縮や性器脱にともなう排尿困難などであった。若年者の随伴症状などはHRTの適応でもあるが、婦人科医に認められず、ペインクリニックで改善した神経部位から診断をつけることが多かった。性器脱に伴う症状は性器脱手術をおこなう際に尿道の吊り上げを必要としたが、メッシュやプローリンテープなどを挿入しなくても運動療法で改善した。肛門狭窄の症例には拡張術を行った上食事内容と過剰になりがちな下剤の使用方法を指導した。 【考察】婦人泌尿器科分野に注目すれば、治療の前後での運動療法や排泄ケアを十分にすべきであり、家庭医との連携が必須である。現在、尿失禁といえばすぐに泌尿器科医がテープ挿入手術を検討することが主流になってきているが、大切なのは総合診療科・泌尿器科・婦人科・リハビリの知識を総合して治療を進めることである。婦人泌尿器科こそ家庭医療の新分野として重要であると考える。


11月6日(土) 15:50〜16:00
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演12)
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米国での外科系臨床研修(クリニカル・フェロー)を日本でどう生かすか?
奥井 伸雄1
レイモンド・J・ライリー2、ケヴィン・R・ラフリン3、沼田 裕一1、
川原田 恒4、杉田 義博4、吉新 通康4
1地域医療振興協会・横須賀市立うわまち病院  2ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院婦人科  3ハーバード大学ブリガム&ウイメンズ病院泌尿器科  4地域医療振興協会
【目的】 米国での臨床研修を希望する医師は年々増加してきている。外科系の場合は、手術の技術習得が目的である場合が多い。折角米国で修練しても本邦の患者のニーズやシステムに合わないと、その研修が十分に生かせない場合がある。演者の経験した婦人泌尿器科分野をテーマに、米国での研修がどのように生かせるかを報告する。
【背景】 婦人泌尿器科は新しい概念で、泌尿器科と婦人科の知識で両方の接点を診療する。本邦には婦人泌尿器科として活動する医師は稀ではないが、多くは泌尿器科か婦人科の一部疾患という立場であり、対象範囲が狭く、治療は一側面のみになることが多い。大学医局の制度では、科を越えた知識取得は不可能であることが原因である。しかし、米国留学のクリニカル・フェローの立場は応用が利き、演者の場合は泌尿器科専門医として渡米したが、両科の婦人泌尿器科で勉強をできた。帰国後、地域医療振興協会の自由快活な雰囲気の中で、新しい概念を構築するために、地域医療をする医師との連携を図ることを模索した。このことが米国スタイルの診療方法を生みつつある。
【結果】 本邦で婦人泌尿器科として活動すると、日本女性はボデイスーツなどによる姿勢の悪い等の生活・習慣があるために排尿障害のある性器脱等の手術適応疾患多いことに気がつく。これらは婦人科や泌尿器科のみでは、治療方針が立たなかったものである。地域医療との連携で、在宅リハまで継続した生活改善と低侵襲手術が重要である。家庭医と連携をとりつつ婦人泌尿器科分野の主治医となる方法は習得した米国スタイルそのものである。
【考察】 米国研修の後は、その分野をどのように日本に組み込むかが大切である。米国の診療スタイルは、合理的な医療連携にあり、視点をかえれば日本への応用できるものであると考える。今後は後輩指導に米国外科スタイルを組み込むことに努力したい。


11月6日(土) 16:00〜16:10
ソニックシティビル4階市民ホール(南401+402)
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一般演題(口演13)
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健康に対する住民の思い:基本住民健診受診者アンケート結果から
津田 順子1
北村 和也2
1国民健康保険坂下病院地域医療科  2国民健康保険川上村診療所(岐阜県)

【目的】基本住民健診(以下,健診)受診者の健診への思いを把握し,現在の健診の問題点,改善点を明らかにする.
【対象と方法】平成16年度の川上村健診受診者全員に,1)健診を受けて良かったこと,2)過去の健診で嫌だったこと,3)本日の健診での改善点,について自由記載によるアンケート調査を行った.
【結果】受診者174人中160人(男性51人,女性107人)から回答を得た(回答率92%).このうち,定期的に医療機関を受診している者は81人(51%),過去に健診受診歴がある者は129人(81%)だった.各質問に対し,以下の回答を得た.
健診を受けてよかったこと:安心できる(18%),健康や体の状態が分かる(8%),病気を発見できる(7%),無記入(51%).「安心できる」と答えた25人の詳細は,「安心できる」(40%),「健康だと知り」安心(16%),「受けて」「定期的に受けて」「一年間」安心(各14%),「異常なしと知って」「相談・事後指導を受けて」安心(各12%)であった.
過去の健診で経験した嫌なこと・本日の改善点はいずれも多い順に「無記入」「なし」「時間がかかる」だった.
【考察】今回の調査では無記入が過半数を占め,住民の思いを正確に反映しているとは限らないが,回答者の多くは「安心を得るため」に受診していると考えられた.明確なガイドラインもなく,有用性も十分検討されていない我が国の健診では,住民の求める安心に応えることは難しい.今後,保健医療従事者の予防医療への意識や住民の健康感について明らかにし,根拠に基づいた予防医療が浸透する土台作りを行う必要があると思われた.


11月7日(日) 9:10〜9:20
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演14)
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経管栄養中に起きた反応性低血糖3例の報告
一瀬 直日
赤穂市民病院

【背景】経口摂取不能となった入院患者に対して,栄養管理や在宅復帰を目的に経管栄養を開始することは多い.一般に経管栄養導入の合併症として高血糖はよく知られている.ところが当院で新たに経管栄養を開始した患者に食前低血糖を起こす患者が3例みられ,在宅復帰に向けてその対策が求められた.
【目的】食前低血糖を起こす原因を調べ,在宅復帰に向けた栄養管理を行う.
【方法】食前低血糖を起こしていた経管栄養患者3例に75gOGTT検査を行い,血糖とインスリン分泌の変動パターンを確認し栄養投与方法を改善する.
【結果】これらの患者は75gOGTT検査においてダンピング症候群に似た血糖およびインスリン分泌パターンを示していた.
【考察】人間にとって非生理的な液体栄養剤が腸管内に急激に流入することにより食後高血糖を起こし,つづいてそれに反応しインスリン分泌が亢進したものと考えられる.このため,次の栄養剤が投与されるまでの間,血中に残存したインスリンが作用し食前低血糖を起こしたと考えられる.この反応性低血糖のため,患者は食前の発汗や振戦といった症状に苦しまされており,栄養投与方法の改善策として,固形化栄養剤に変更したり,栄養投与を総カロリーを変えないで分割して回数を増やしたり,また投与カロリーを減らして対処した.
【結論】今後新たに経管栄養を開始する患者に対して,その合併症として低血糖の可能性を考えて血糖値測定検査を行い,低血糖がみられれば栄養投与方法を変更する必要がある.このことは低血糖症状を訴えられないでいる患者の苦痛を解消することにつながると考えられる.


11月7日(日) 9:20〜9:30
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演15)
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重症患者ケアにおける医療者の侵襲的医療行為についての判断、および患者側との協議プロセスについての研究
尾藤 誠司1
浅井  篤2
1東京医療センター総合診療科  2京都大学医学部大学院医療倫理学

【目的】:悪性疾患以外によって死亡する患者への侵襲的医療介入に関する診療方針決定に関して、医療者側から見た思考・論理プロセスを記述し、判断の重要な根拠になっているもの、判断にいたる過程での情報と、その流れについて、明らかにする。
【方法】:14名の医療者に対し個別インタビュー、さらに、12名の医療者に対しフォーカス・グループ・インタビューを行った。インタビューの内容は、重症患者のケアにおいてジレンマとなった経験を語ってもらい、意思決定を行ううえでの問題点に関する意見を伺った。さらに、特定の診療行為に関しても判断のポイントとなる事象について伺った。インタビュー内容を逐語化し、質的に概念構築を行った。
【結果】:医療者は重要な意思決定をする際に、侵襲的な医療介入により、患者の予後は改善するか、患者は終末期なのか、侵襲的治療により、患者の何が悪くなるか、侵襲的な医療介入を患者は望んでいるか、侵襲的な医療介入を行う義務が自分にあるか、などについての根拠を常に模索し、その上で、自分や患者、家族のスタンスについて考察していた。しかしながら、侵襲的医療に関する判断を行ううえで、医学的な根拠や倫理的・社会的・法的な根拠・背景も非常に脆弱であるため、医療者個人の裁量で重要な判断を行うことに関しての困惑が見られた。判断根拠となるものは、より明確な、病院における医療者が持つ、生や回復への希求を絶やさないというミッションや、家族の意見を最終的に優先するという慣習的なものであった。
【考察】:現場での解決されるべき問題点は多く、今後よりよい患者中心のケアに向けて、難しい判断に関する根拠を明確にしていく必要がある。


11月7日(日) 9:30〜9:40
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演16)
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Community as Partner モデルを用いた出雲市今市地区の地域診断
渡部  満
森  敬良、奥野  誠
出雲市民病院/出雲家庭医療学センター 

【背景】家庭医は「患者個人と住民全体との両方を診る」と言われている。出雲家庭医療学センターは地域住民の健康ニーズ調査を目的に、出雲市今市地区で行われているアーケード市で「健康よろず相談」を実施した。その際には、老々介護の悩みや、1人暮らしの高齢者から生活に関する相談を多く受け付けた。さらに正確なニーズ把握のために、多面的な地域診断が必要と思われた。
【目的】出雲市今市地区の健康レベルアップを目的に、Community as Partner モデルを用いた地域診断を行う。この結果にもとづき今後の医療活動、地域への介入方法検討の足がかりとする。
【方法】島根県出雲市今市地区において、住民基本台帳、町史、行政の地区担当保健師やコミニュティーセンター職員からの聞き取り、基本健診データなどをもとに、Community as Partner モデルを用いて地域診断を行った。
【結果】今市地区の高齢化率は27.2%(市平均21.2%)、宅地の飽和状態や都市再開発計画により、核家族化が進み独居老人数は出雲市で最も多く、高齢者夫婦世帯数は3番目に多かった。サブシステムでは「経済」、「行政」の部分が注目された。「経済」は、商店街が特徴であるが、ドーナツ化現象により商工業者の移転から集落の変貌が見られた。「行政」は、市役所やコミニュティーセンターが中心になり、独居老人、高齢者世帯のコミュニケーション作りに力を入れていた。
【考察】出雲市今市地区は高齢化率が高く、独居または高齢者夫婦世帯が多い地区だった。これらが住民の生活に影響を与えていると思われる。今後も継続した取り組みとして行いたい。


11月7日(日) 9:40〜9:50
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演17)
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沖縄県地域離島医療情報ネットワークについて
本村 和久
田仲 斉、高良 剛 ロベルト、山川宗一郎、神白麻衣子
沖縄県立中部病院 地域救命救急センター

【目的・対象】沖縄県には18の県立離島診療所(各離島とも医師は1名のみ)と県立中部病院をはじめ6中核病院がある。1995年より、孤立しがちな離島医療現場に対し、相互に質疑応答・情報交換・自己の医療の評価が行える場を提供することを目的とした中核病院、離島診療所間での電話回線(現在はインターネット)による情報システム(沖縄県地域離島医療情報ネットワーク)が構築された。今回、その実績につき報告する。
【結果】会議日程等の事務連絡からヘリコプター搬送症例の検討など医学的な話題まで、この10年間で送信件数は約1万件であり、本年より看護師も利用可能となっている。離島医師がデジタルカメラを用いて、病変やレントゲン写真を撮影、その画像を中核病院の皮膚科、整形外科、放射線専門医などが診断する、いわゆる遠隔医療も各医師のボランティアで行われている。離島診療上の様々な問題を共有、解決する場として、沖縄県の離島診療に不可欠なものとなっている。


11月7日(日) 9:50〜10:00
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演18)
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宮ヶ谷小学校児童の身体計測値についての考察 −第2報−
森  壽生
横浜相鉄ビル内科医院

【目的】近年、生活習慣病の低年齢化が危惧されている。肥満予防の観点から身体計測値を整理、評価する.
【対象】横浜市立宮ヶ谷小学校1年生から6年生までの児童
【方法】春の定期健康診断で得られた身長、体重、ローレル指数を用い、また各児童の保護者に児童の食生活・間食・運動に関するアンケート調査を依頼し、男女間を比較した.計測値は平均±SDで表し、推計学的検討はSPSS Ver 11を用い、t ? test、χ2 検定、一元配置分散分析とその後の多重比較検定を実施した.有意水準はP<0.05である.
【結果】全学年の男子児童は375人、女子は386人であった.各学年の身長、体重、ローレル指数について男女間に有意差はなかった.やせすぎ、やせ、標準、やや肥満、肥満の体格5分類についても、全学年を通して男女間に有意差はなかった.ローレル指数は男女共に高学年になるに従い減少する有意な負の相関(p<0.001)を示したが、ローレル指数は男女間に有意差を認めなかった.過去2年間のローレル指数を参考にしても、男女間にローレル指数の差を認めるとはいえない.また、各児童の保護者に依頼したアンケート調査を検討したが、食生活・間食・運動の全体から男女間に大きな差はなく、男女間のローレル指数、体格5分類に有意差のないことと符合した。
【考察】今後、各児童の食生活・間食・運動と身体計測値を検討し、特にやや肥満・肥満児についてのローレル指数と食生活・運動の関係を個々の観点から解析し、その関係を説明できるか、検討する必要がある.


11月7日(日) 10:00〜10:10
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演19)
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地域で「医療」の出来ることと出来ないこと
−当村の在宅死の検証から見えること−

長  純一 
国保川上村診療所長 佐久病院地域診療所科

【目的】戦後近代医療が発展を遂げたことや国民皆保険により、多くの国民が病院医療を受けるようになった。その結果、結局病院で死ぬことが当たり前になった。1960年には在宅死は7割であったが、現在は1割強である。特に癌の場合は6%である。国民調査などでは「家で死にたい」という希望は多いにもかかわらず、実際家で死ぬことは困難になっている。地域医療のメッカ・在宅医療の先進地といわれ、長らく在宅死率日本一を続けていた長野県でも、近年在宅死は急減する傾向にある。
演者は、以前より在宅医療、中でも在宅ターミナルケアに強い関心を持ち、それに合わせ医師としての経験をつんだ後、5年半前より佐久病院から派遣される形で、国保診療所に派遣されている。そして在宅ターミナルケアに力を入れてきた。演者赴任以後の変化につき村内の全死亡を検証し、その特徴や問題点を探り今後に生かすことを目的とする。
【方法】村の全死亡者リストを検証し、死因および死亡場所を確認した。在宅死に関しては、どのようなサービス(訪問看護・デイサービス・ヘルパー)を受けたかも確認した。
【結果】村における在宅死は当初増加したが、その後年によって変化はあるものの3〜4割である。
老衰的な在宅死は減少傾向にあり、癌による死は5割が在宅死であり増加傾向にある。
【考察】入院機関である佐久病院および分院との連携が極めていい事を背景に、「医療」が在宅死に力を入れると、癌の在宅死は増加すると考えられる。しかし、家庭内介護力の低下に起因すると思われるが、老衰的な在宅死は、介護サービスの充実なかでも居住福祉(「2015年の高齢者介護」での第3類型)の充実がないと減少していくものと考えられる。


11月7日(日) 10:10〜10:20
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演20)
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Auditによる急性中耳炎診療の質向上への取り組み
細田 俊樹
草場 鉄周、葛西 龍樹
医療法人 社団 カレス アライアンス・北海道家庭医療学センター

【背景】当センターの診療・教育の拠点である本輪西サテライトクリニック(以下当院とする)では、複数の指導医と臨床研修医によるグループ診療が行われている。
【目的】Auditにより、当院の急性中耳炎診療の質を評価する。
【方法】2004年7月末で、レセプト病名に急性中耳炎と表記された外来患者33名を抽出し、そのデータを収集した。Criteria(評価項目)は、American Academy of PediatricsとAmerican Academy of Family Physiciansが2004年に発表したガイドラインをもとに作成した。それぞれのCriteriaについてStandard(期待される行動レベル)を設定し、各診療行為の達成状況を検討した。
【結果】Criteriaの達成状況は、診断の確かさ39%(Standard 100%)、痛みの評価45%(同100%)、抗生剤の選択67%(同80%)、抗生剤を使用しない判断の確かさ66%(同80%)、インフルエンザ予防接種18%(同70%)、禁煙の勧め58%(同70%)であった。
【考察】診断の確かさ、痛みの評価、インフルエンザ予防接種に関して特に達成度が低かった理由として、当院における急性中耳炎診療のCriteriaについてコンセンサスが乏しく、それらの項目でのカルテ記載が不十分だったことが考えられる。今後の診療の質向上には、1)診療プロトコールを作成する、2)プロトコールの内容を踏まえて診療内容記載を徹底する、3)Criteiraのエビデンスについて勉強会をする、ことが必要である。


11月7日(日) 10:20〜10:30
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演21)
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病状説明、医学用語に対する患者の理解度
門松 拓哉1
大野 毎子2、松村 真司3、藤沼 康樹2
1東京ほくと医療生活協同組合 王子生協病院  2東京ほくと医療生活協同組合 北部東京家庭医療学センター  3松村医院・東京医学教育国際協力研究センター

【目的】医学用語を用いた病状説明と医学用語をほとんど用いない病状説明では、どれだけ患者の理解に差が出るのか、また病状説明の際に用いられる医学用語を患者はどれほど正しく理解しているのか、明らかにする。
【方法】2003年の9月から2004年の1月の期間、北足立生協診療所の外来患者または王子生協病院に隣接する調剤薬局(あすか薬局)に来局した患者で同意が得られたものに対し、急性上気道炎という設定の2種類の病状説明のテープ(説明A:医学用語をほとんど用いない説明/ 説明B:医学用語を用いた病状説明)A,Bどちらかを1つ無作為に選んでもらい、カセットフォンステレオでテープを聞かせ、その後で質問紙に記入してもらった。質問紙では、病状説明に対する理解に関する項目(病名、病気の原因、処方された薬の種類と数)および理解度、満足度について尋ねた。分析は説明の種類とこれらの質問項目についてχ2乗検定を用いて検討した。
【結果】有効回答者は50名(平均年齢44.38才)、説明A 25名(内訳:男性 15名/女性 10名)、説明B 25名(内訳:男性 8名/女性 17名)であった。病状説明の理解度について、説明Aを聞いた人のうち「非常に」もしくは「ある程度」理解できたと答えた人は22名(87%)、説明Bを聞いた人のうち「非常に」もしくは「ある程度」理解できたと答えた人は11名(44%)で、有意な差(p=0.002)が見られた。また医学用語の理解については、病状説明Bの中で使用した「頓服」、「抗生剤」の2語の意味について自由記載で解答してもらったところ、「頓服」の意味を正しく答えた人は3名(6%)、「抗生剤」の意味を正しく答えた人は4名(8%)といずれも低い正解率となった。
【結論】医学用語を使わない病状説明(説明A)のほうが、患者の理解度は高いことが示唆された。また病状説明の際、医学用語の使用には細心の配慮が必要であることが考えられた。


11月7日(日) 10:30〜10:40
ソニックシティビル6階602号室
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一般演題(口演22)
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臨床の知を築くために:ジェネラリスト・ウィールの実践
鶴岡浩樹1,2
鶴岡優子1.2
1自治医科大学地域医療学センター地域医療学  2ケース・ウェスタン・リザーブ大学家庭医療学

2000年、米国のKeystone会議でスタンギ、マクウィニーらによってジェネラリスト・ウィール(Generalist Wheel)と呼ばれる知のモデルが考案された。これは、臨床で生じる現象をいかに理解し、探究し、統合し、患者に還元していくか、すなわち臨床の知をいかに構築するか論じた車輪の理論である。本発表の目的は、臨床の具体的な疑問をジェネラリスト・ウィールに適用し、その重要性を日本の家庭医に紹介することにある。
我々はこれまで「相補代替医療(complementary and alternative medicine: CAM)を利用する患者にどう対応すべきか」というテーマで活動を続けている。1995年から2004年に、我々が多角的に取組んだ研究、臨床、教育、啓蒙活動を列挙し、これらをジェネラリスト・ウィールに適用した。この作業により現時点での研究の進行状況が把握でき、今後探究すべき研究内容に気づき、その探究方法を知ることができた。我々の10年の活動を振り返ることで、ジェネラリスト・ウィールで家庭医が実践すべき行動として挙げられているジャーナリング(journaling)とリフレクション(reflection)がいかに重要であるか再確認することができた。
ジェネラリスト・ウィールは、臨床の知を築く上でいかなるトピックでも適用可能なモデルのひとつである。ひとりでも多くの家庭医がジャーナリングとリフレクションを実践し、ジェネラリスト・ウィールを意識すれば、欧米を中心に展開しているBuilding Research Capacityにつながり、臨床の知が飛躍的に発展するに違いない。


11月7日(日) 9:10〜9:20
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演23)
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初期臨床研修中での家庭医としての診療所研修の有効性
矢崎 弘志1
寺田  豊1、尾形 和泰2
1道東勤医協 桜ヶ岡医院  2勤医協中央病院総合診療教育部

【目的】家庭医の研修には、診療所研修が有効であると考えられている。北海道勤医協では、通常3、4年目の医師に対して診療所研修が行われているが、初期研修中に診療所研修を行ったのでその有効性について発表する。
 卒後2年目の時期に、副所長として研修を行い、慢性疾患管理の中で、介入が必要と感じた問題を提起し、独自のプロジェクトを展開した。急性期疾患が中心である初期研修の中で、慢性疾患の管理、そして副所長としてのチームリーダーとしての役割を学べる研修形態とした。
 その他の診療所研修のプログラムとしては、外来研修、往診診療、健康診断及び結果判断、地域住民への医療懇談会、地域保健予防活動(糖尿病食事会、ウォ−キング)参加、訪問看護同行、デイサービスへの参加、エコー研修を行い、診療所スタッフと総括を行った。
【方法】桜ヶ岡医院においてウィルス性肝炎として慢性疾患管理されている患者約60名に対してアンケートを実施した。
アンケートを実施した理由
外来で慢性肝炎の患者を診察する中で、医療側では肝炎の経過について説明の難しさ、患者側では病気に対する理解不足を実感した。意識調査を行うことにより、患者の「病の物語」を知り、背景にある問題を抽出し、慢性疾患管理の再構築の基礎データとする。
アンケートの内容(抜粋)
● いままでに肝臓病にかかったことや肝機能が悪いと言われたことはありますか?
● 肝炎の方が10人いたとして、そのうち何人の方が、一生の間に肝硬変・肝臓癌になると思いますか? など
【結果】アンケート作成にあたり、慢性疾患管理の重要性、コミュニケーション技術、慢性疾患患者の「病の物語」へのアプローチを学ぶ必要性を知るうえで有用であった。現在、アンケートを回収、分析中であり、結果、考察は当日,発表予定である。


11月7日(日) 9:20〜9:30
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演24)
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英国在住日本人のGPへの診療満足度に関する調査
斉藤 康洋1
松村 真司2
1独立行政法人国立病院機構東京医療センター呼吸器科  2松村医院

【目的】GP(General Practitioner)が医療制度の中の主要な役割であること確立されている英国において、英国在住日本人患者のGPの診療に対する満足度の現状を明らかにすることを目的とした。また、この結果を以前行われた日米での調査と比較し、今後の参考とすることを目的とした。
【対象】ロンドン在住の英国日本人会会員129名および英国人と国際結婚をした妻の会(なみの会)会員134名
【方法】2002年11月から2003年1月の間にロンドンにおいて、郵送法による自己記入式無記名調査を中心とし、一部は直接手渡しによる調査を併用して行った。
満足度の測定はConsumer Assessment of Health Plan Survey (CAHPsR)質問票のうち、医師への満足度の項目を邦訳し一部改変したものを利用した。
【結果】有効回答数は英国日本人会 83名(回答率64.4%、平均年齢60.53才)、なみの会 90名(回答率67.1%、平均年齢38.9才)であった。回答者全員がGPをかかりつけ医だと答え、6年以上かかりつけ医であると答えた回答者が46%であった。GPの性別は56.5%が男性で、グループ診療が87.8%であった。診療頻度は年4回以下が86%であった。「待ち時間」、「診察にかけた時間」「あなたの言う事を尊重した」「言う事を注意深く聞いた」「理解できるように説明した」について「とても満足」とこたえた回答者はそれぞれ21.9%,22.6%,37.2%,40.1%,32.6%であった。0-10点でのGPの評価は平均7.20点(SD1.93)であった。以前の日本・米国在住日系人の調査と比較すると、日本人・日系人より低かった。(日系人は9.0点、日本人が8.1点)
【考察】以前の調査と比較して、英国在住日本人はGPに対する満足度は、日本人や米国在住日系人のかかりつけ医への満足度よりやや低い傾向にあると考える。


11月7日(日) 9:30〜9:40
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演25)
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「話し易さ」の考察
土田正一郎
倶知安厚生病院精神神経科

 診察が終わり,見送る患者さんのその背中.振り返り一礼するその瞳.
そこに語れなかった苦痛や悲しみ,そして伝えることを躊躇した喜びの断片を見出すことはないだろうか.けれども「あっ!ちょっと・・・」と呼び止めるのを思い止まらせるのは,傍らに積み重なったカルテの山である.
「話し易い」という感覚は,患者‐医師間の不必要な遠慮や恐れを取り払い,患者の持つ問題へのアプローチを容易にするために必要な要素であると考える.また「話し易さ」を規定する因子としては,@患者側因子 A医師側因子 B環境因子の3つがあり,それらの相互作用によって,診察の場での「話し易さ」が規定されていると考える.患者側因子(性格,勇気,言語化能力など)や環境因子(診察室,診療時間など)は,他者依存的因子であり,改善案の提示が机上の空論に陥る可能性があるため,今回,臨床現場におけるA医師側因子に焦点を絞り,演者の日常臨床での試みを基に,検討,考察を加え,「話し易さ」の向上への提言を試みる.まず,演者の日常診療における非言語化された「話し易さ」への試みを言語化し,第1仮説とする.次に,外来通院患者の協力を得て,診察現場における話し易さの実感についての聞き取り調査を行う.調査結果より,「話し易さ」へ影響を与えると考えられる医師側因子を抽出し,それを用いて第1仮説の妥当性を検討し,修正を加える.ここで得られた仮説を「話し易さ」への試みの第2仮説とし提示する.
現在,聞き取り調査を継続中であり,調査結果ならびに仮説の提示は,当日発表とさせていただきたい.


11月7日(日) 9:40〜9:50
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演26)
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オーストラリアでの家庭医療学研修
寺本 敬一
たんご協立診療所、京都府

【はじめに】オーストラリアの医療は、国民皆保険制度下で、家庭医(GP)へのアクセスは自由に選択でき、高い健康水準を誇っている。家庭医専門医制度が1960年代から整備されてきた歴史がある。
【発表目的】2003年3月から2004年1月に、オーストラリアで家庭医療学を研修する機会を得たので、その内容を報告する。
【内容、結果】私の研修目的は、@家庭医のロールモデルを知るA家庭医の教育システムを知るB家庭医としての力量をあげるC臨床研究を行う。研修内容は、@英語学校AGPREP(海外医師の専門医試験受験用のプログラム)B複数の診療所に継続的に通い、外来見学と適宜意見交換を行う方法を取った。オーストラリア家庭医療の優位点は、@制度上、家庭医が最初の接点となるA品質保証、向上への努力。研修カリキュラム、厳格な専門医制度と更新制、診療所の認証制度、監査、診療内容のフィードバック、生涯教育研修、診療ガイドラインなどの整備B実践的な家庭医の卒後教育Cグループ診療化、IT化、医療面接技術の高さDセルフケアの重要視。オーストラリア家庭医療の問題点は@医師の偏在Aステータスが専門医と比べ相対的に低い
【考察】日本で今後家庭医療が浸透するには、@学会主導で卒前卒後を通したカリキュラム、厳格な専門医制度を整備する。A現在活躍中の先生は、専門医として認定し更新制度で、水準を維持すること。B積極的な臨床研究で、家庭医の有用性を証明する。C医療保険制度で家庭医に最初に受診することを制度上誘導することも必要と思われます。
【まとめ】オーストラリアでの家庭医療学研修の報告を行った。


11月7日(日) 9:50〜10:00
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演27)
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半年間のFaculty Development(FD)
―指導医養成コースの経験から(1)―

喜瀬 守人
田頭 弘子、岡田 唯男
亀田メディカルセンター家庭医診療科

【背景】家庭医を志す研修医・医学生は急速に増加しており、良質な指導医の養成が望まれている。昨年、亀田メディカルセンター家庭医診療科では、米国で家庭医療学およびFDを修了した指導医のもと、1ヶ月のFDコースが実施された。その成果から、2004年4月から半年間のFDコースが実施され、2名のフェローが参加している(同年9月末修了予定)。
【目的】日本で数少ない体系的なFDの経験を紹介し、今後のFDの位置付けを考える。
【方法】上記期間、FDの様々なcompetencyについて学習した。修了要件として、(1)医学教育をテーマとした学会発表、(2)総説の執筆、(3)カリキュラム開発、(4) Curriculum vitaeの作成、(5)当科後期研修医へのティーチングが設定された。系統講義は1回につき半日を使って月2〜3回行われた。(1)〜(4)については自己学習を中心としながら、適宜フィードバックを受けた。シニア・レジデントへのティーチングは学習者2名がそれぞれ月1回、1回90〜120分を担当、計画段階から終了後まで適宜フィードバックを受けた。
【結果】同コースは実践を前提としており、実用性の高い知識・技能・態度が数多く含まれていた。学習者たちは、必要な時期に学んだことを実践する機会を与えられた。
【考察】FDは教育分野だけでなく、学術的活動や組織運営、コミュニケーション・スキルなどの幅広い分野を扱っており、発展途上の日本の家庭医療学において、指導医の養成のために非常に有用なツールである。今後、日本においてもFDを積極的に取り入れることが、効率的で体系的な指導医養成の一助になると考える。


11月7日(日) 10:00〜10:10
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演28)
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FDによるセッション作成、実施、評価内容への変化と学習者の学び
−指導医養成コースの経験から(2)−

田頭 弘子
岡田 唯男
亀田メディカルセンター家庭医診療科

【背景】家庭医を志す研修医・医学生の数は急速に増加しており、良質な指導医の養成が望まれている。昨年、亀田メディカルセンター家庭医診療科では、米国家庭医療学及びFD(Faculty Development:指導医養成)を修了した指導医のもと、1ヶ月のFDコースが施行された。その成果から、2004年4月から半年コースが実施され、2名のFellowが参加、9月末終了予定である。 
【目的】家庭医療学研修医が指導医を目指す過程で、学習者の研修意欲と後輩の指導法向上、更にProfessionalとして必要な自己指示的学習への変化にFDが与えた影響を、実例を通じて紹介する。
【方法】発表者が依頼された第15・16回 本学会夏期セミナー低学年向けセッションを題材に、作成過程、実施内容、実施後評価の3要素について、カリキュラム開発の各段階で比較する。また、コースで学んだコンピテンスのうち,有用であったもの、さらに全過程を通じた本Fellowの学びを挙げる。
【結果】FD学習の前後で、カリキュラム開発の各段階で前述の3要素に変化が見られた。また全過程で、学習内容の理解、自らの客観的評価、メタ認知を行う上で、FDが効果的であった。セッション実施中には5 microskillsやFeedbackの手法を利用し、セッション参加者の高い満足度と学習効果が得られた。
【考察】FDは、指導医として携わる内容に質的変化を与え、自身の客観的評価を促し、次への学習意欲をもたらす。FDは、自己指示的学習者への変換に大きく寄与し、家庭医療学指導医を目指す医師のみでなく、全ての医師にとって効果が期待できると考えられる.


11月7日(日) 10:10〜10:20
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演29)
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指導医養成コースのアウトカム評価
−指導医養成コースの経験から(3)−

岡田 唯男 
亀田メディカルセンター家庭医診療科

【背景】家庭医を志す研修医・医学生の数は急速に増加しており、良質な指導医の養成が望まれている。昨年、亀田メディカルセンター家庭医診療科では、米国家庭医療学及びFD(Faculty Development:指導医養成)を修了した指導医のもと、1ヶ月のFDコースが施行された。その成果から、2004年4月から半年コースが実施され、2名のFellowが参加、9月末終了予定である。 
【目的】滞在型の長期FDコースが受講者の指導医として必要なコンピテンスの獲得に与える影響を評価する.また,今後に向けて,コースの改善点を探る
【方法】FDコース修了時における,アンケートを用いた受講者の自己評価.アンカーを用いた段階的評価と,自由記載部分を含めたmixed methodとする.
【結果】【考察】受講者からの8月末現在の非公式な感想はおおむね良好である.正式な評価は9月末に実施予定であり,詳細な考察も含めて学会当日発表予定である.


11月7日(日) 10:20〜10:30
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演30)
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東葛病院における訪問診療の報告(1)若手医師が担う訪問診療
土谷 良樹
椛島 友子
東京民医連 東葛病院 

【目的】東葛病院は、流山市(人口15万)の中核病院であり、地域で起こっている健康問題を総括的に担っている。訪問診療を、健診、外来、病棟という、一連の医療の一環として位置づけ、初期研修に於いても医師が獲得するべき能力の一つとしてとらえている。今回は、青年医師が担う訪問診療の実態を検討し、訪問診療の意義について考察する。
【方法】一研修医2年目の2002年11月より4年目2004年7月までの21ヶ月間の訪問診療の記録をカルテよりレトロスペクティブに分析し、評価した。
【結果】平均往診期間10.1ヶ月、往診患者数25名、のべ往診回数322回、一人あたり平均往診回数12.9回であった。主病名は脳梗塞後遺症が最多だが、悪性リウマチ、ダウン症、全身性ジストニアなどもあり、多彩であった。気管カニューレ留置3例(12%)、胃瘻チューブ留置5例(20%)、尿道カテーテル留置5例(20%)、在宅人工呼吸器3例(12%)、在宅酸素療法3例(12%)と、医療処置が必要な例も多かった。死亡例は3例で、全例が東葛病院に入院しての死亡であった。
【考察】東葛病院付属診療所における訪問診療の実態を、一青年医師の症例を通して分析した。疾患は多岐にわたり、完全型心内膜床欠損症によるアイゼンメンジャー症候群や在宅人工呼吸器装着例など、重症なケースも少なくなかった。こういった在宅医療は、患者を一人の人間として時系列でとらえる医療の実践である。訪問診療が、外来医療の一環として多くの医師に取り組まれることを期待する。


11月7日(日) 10:30〜10:40
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演31)
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東葛病院付属診療所における訪問診療の報告(2)訪問看護師からみた、訪問診療という医療
椛島 友子
土谷 良樹
東京民医連 東葛病院
【目的】東葛病院は、15万都市、流山市の中核病院であり、地域で起こっている健康問題を総括的に担っている。訪問診療を、健診、外来、病棟という、一連の医療の一環として位置づけている。訪問診療担当看護師を2名配置し、200名の在宅患者を管理している。今回は、その中でも特別な介入を行った2症例を報告し、訪問診療のあり方について考察する。
【方法】東葛病院付属診療所における訪問診療の記録を、カルテからレトロスペクティブに検討した。その中でも、在宅医療における看護的アプローチの色彩の濃い2症例を選択した。
【症例1】C6レベルの脊髄損傷患者と介護者(娘)の間の確執に気づき、聞き取り方によるアプローチを用いることで、よりよい療養環境を両者と共に創造しえた一例。
【症例2】慢性膿胸による片肺と慢性肺炎のため在宅人工呼吸療法をしている患者様。増悪時にさえ入院せず、在宅で治療を受けたいという強い希望を持っており、これに対して応えていった一例。
【考察】訪問診療に携わり半年間を経験した、一看護婦の経験を報告する。在宅医療を支える家族には、この社会で生活していく中では、社会的な不安や問題が多く存在する。そういった問題を解決するために、訪問診療スタッフだけではなく、訪問看護ステーションやヘルパーステーションなどとの連携を大切にし、多角的な視点から、患者様がより生き生きと療養のできる環境作りを模索し、実践してきた。今回は、会場の方々と、そういう医療のすばらしさを共有したい。


11月7日(日) 10:40〜10:50
ソニックシティビル6階603号室
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一般演題(口演32)
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訪問診療における継続性について考える−患者・家族へのアンケートから−
津田 順子1
北村 和也2
1国民健康保険坂下病院地域医療科  2国民健康保険川上村診療所(岐阜県)

【目的】訪問診療を受ける患者および家族が,医療者や訪問診療に対して抱いている思いを把握し,訪問診療の抱える問題点,改善点を明らかにする.【対象と方法】平成16年6月に坂下病院地域医療科医師が訪問診療を行った患者22人またはその家族に対し,1.訪問診療でよかったこと,2.困ったこと,3.担当医が替わることに対する思い,4.急変した場合の家庭での対応と今後望む体制について対面調査した.
【結果】25人(複数回答あり)から回答を得た.患者の平均年齢は77.6±0.89歳,性別は男性10人,女性12人だった.患者本人は3人(12%)で,他は家族だった.各質問に対し,以下の回答を得た.
よかったことは,多い順に「通院不要」「医師の来訪が嬉しい」
困ったことは, 多い順に「特にない」「来訪されることに関する問題」
担当医が替わることについて:一人の医師に担当してほしい(23.7%),引継ぎがあれば可(22%),仕方ない/可(共に11%),希望しない(11%)
急変した場合の家庭での対応:訪問看護師に電話(46%),救急車を呼ぶ(19%),病院に電話(15%),隣人を呼ぶ(12%)
急変時安心できるために希望する体制:スタッフが来る(40%),スタッフと連絡が取れる(28%),病院到着後速やかに診察が受けられる(14%)
【考察】人事異動による担当医の交代に対し,患者家族から担当医の継続を望む意見と交代を構わないとする意見がほぼ同数見られた。また急変時には,スタッフによる対応と後方病院との連携を望む声が聞かれ,訪問診療の担当者が医師間,医療施設間の連絡による継続性を維持する必要があると思われた。


11月6日(土) 14:00〜14:10
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ1)
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まんが『排泄ケア研究会セミナー』の効果
奥井 伸雄1
奥井 真知子1、吉田 久美子1、川口 百子1、沼田 裕一1、
川原田 恒2、畑中 良子2、杉田 義博2、吉新 通康2
1地域医療振興協会・横須賀市立うわまち病院泌尿器科  2地域医療振興協会

【目的】排泄ケアは、高齢者を診療・ケアする上で、大切な要因のひとつである。しかしながら、排泄ケアのスキルは医師・看護師・介護士のすべての分野の専門家が協力しあいながら行う必要があるためわかりにくいという欠点がある。この欠点を補うことを目的として、演者は2001年から『排泄ケア研究会セミナー』を、インターネット上や、各地で実際に開催してその効果を調べてきた。その結果より理解を高めるには、セミナーの方法を検討し、よりわかりやすく、かついろんな視点から理解できるものを必要とすると考えた。今回は、セミナーの手段として、まんがを用いて、その効果を検討した。 【対象・方法】横須賀市立うわまち病院にて2004年に実施した『排泄ケア研究会セミナー』に参加した医師・看護師・ヘルパー・一般の人に対して、まんがセミナーでの理解度と、講習会後半年を経ての効果について調査した。また、まんがは、演者が原作を作成して、オークラ出版『ホームヘルプ』(隔月)にて発表された。全国誌であるため、毎回のストーリの人気投票にてヘルパー層の興味についても分析した。 【結果】講習会ではおおくの参加者が、まんがにより症例を提示して、ストーリーを追いながら理解することは大変記憶に残り効果があると答えた。半年経過しても面白いストーリーは覚えていることが多い。特にヘルパー層では、『おむつ』『夜間頻尿と転倒』などが注目された。【考察】まんがは大変有効な手段である。まんがにより、複雑な排泄ケアのスキルを理解できるものと期待できる。


11月6日(土) 14:10〜14:20
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ2)
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診療所におけるwork based learningの経験
矢田 篤司1
尾関 俊紀2、野々上 智2、夏目 俊彦2、森永 大輔2
1みなと診療所  2協立総合病院

【目的】プライマリケアをになう診療所において,診療での最大の効果を上げるためには,それぞれのスタッフの力量,チームワークがより大切である。そこで,診療所で他職種のスタッフとともに,チーム医療の質を上げるためのWork based learningの実践を試みた。
【方法】日常診療の中で起こってくる疑問、問題を題材として定期的に学習会を行った。毎回学習会の担当者を決めて、担当者が事前に資料等の準備を行い1-2時間程度の学習会を行った。担当者は医師、看護師で必要があれば医師は担当者に参考資料の提供を行った。また、学習のニーズを引き出すために看護師の仕事の満足度に関する簡単なアンケート調査も行った。
【結果・考察】これまでに行った学習会のテーマは狭心症の診断、ユニバーサルプレコーションなどであった。こうした試みの中で、インターネットを利用して疑問を解決しようとする姿勢や、スタッフ教育用の疾患の治療薬の説明資料を作成する自発的な取り組みが見られた。異なる職種のスタッフの教育計画,評価についての責任の所在が明確でない事がサテライトクリニックでのチームでの学習の障害となる事が考えられた。


11月6日(土) 14:20〜14:30
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ3)
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関西の医学生による家庭医療勉強会(FPIG関西)の立ち上げについて
〜家庭医療に興味を持つ学生による活動の報告〜

松井 善典1
宮地純一郎2、太田 浩3、三澤 美和4
1滋賀医科大学6年  2大阪大学医学部6年  3奈良県立医科大学6年

【はじめに】滋賀医科大学の学生による勉強会FPIG(Family Practice Interest Group)滋賀が以前より活動していた。そこを母体に、学生による家庭医療の勉強会を関西で立ち上げた。今後このような勉強会が広がるため、立ち上げと現状について紹介したい。
【目的】
1.家庭医療を学生に広める
2.身近で家庭医療を勉強できる環境を作り、継続させる
3.家庭医療への学びを通して、学生時代からのネットワークを広げる
【背景】医学生に広く家庭医療を広める場として、「学生・研修医のための家庭医療学夏期セミナー」が毎年開催されている。しかしそれ以外で、家庭医療に興味を持つ学生同士での学びの場や、ネットワークが乏しいことを感じ、その現状を解決する一つの形として、関西での家庭医療勉強会を立ち上げた。
【現状】月に一度、大学やクリニックで学生を集めてセミナーを開催し、その後懇親会やメーリングリストでディスカッションを重ねる。
第1回:講師を招待してのディナーセミナー(5大学より10名が参加)
第2回:診療所の先生をスーパーバイザーとした学生によるプレゼンテーション(10大学より15名が参加)
第3回:シネメデュケーション(予定)
第4回:家庭医の外来見学・ビデオレビュー・ディスカッション(予定)
【今後の展望】関西のPCFMネットの診療所の先生や、学生がお願いした先生によるレクチャーの開催と、学生による実習や勉強の報告を継続していく。各大学や各地域にFPIGが作られ、年に一度の家庭医療学夏期セミナーだけでなく、学生の学生による家庭医療の定期的なセミナーが開催できる時代を創りたい。
協力:雨森正記先生(弓削メディカルクリニック),滋賀医科大学総合診療部


11月6日(土) 14:30〜14:40
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ4)
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当院における外来研修1年間のまとめ
本山 哲也
原田 幸枝、里見 和彦
水島協同病院

【目的】当院は岡山県倉敷市(人口44万人)の郊外にある310床の市中病院である。当院ではこれまでも初期研修医を受け入れてきたが、定式化された外来研修は行われていなかった。卒後臨床研修義務化を前に、新しいシステムでの外来研修を開始したので、1年間のまとめについて報告する。
【方法】平成15年9月より卒後1年目研修医(4名)を対象に、週1回午前1単位(実質1.5時間)の内科外来研修を開始した。指導体制は外来担当医とは別に研修担当医を配置し、研修医と同時に診察できる体制をとった。また研修担当看護師を配置し受付時点での受診者の振り分け、説明を行った。
【結果】1単位での患者数は3~6人。症例としては、上気道炎、胃腸炎が多く、他には高血圧、糖尿病などの生活習慣病も見られた。研修実施期間は、研修医間でばらつきがあり、最短で5ヵ月(ローテート研修の関係で中断)、最長は1年間で現在も継続中である。アンケート結果では、概ね肯定的な意見が多かったが、目標設定が明らかでない、指導内容に差があるといった意見も見られた。また、指導医側の意見として、業務の軽減が無いことによる負担増があげられた。
【結論】近年、外来医療研修の重要性が指摘されている。今回の様に指導体制を整備することにより卒後早期から安全かつ有意義な外来研修が実施可能であった。今後は、研修目標の設定、ローテート研修中の継続性、指導技術の向上などが課題と思われた。


11月6日(土) 14:40〜14:50
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ5)
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家庭医を志す若手医師たちのMission Statements
〜家庭医療の後期研修が受けられる環境づくりへの参画〜

大橋 博樹1
山下大輔2、大平 善之3、喜瀬 守人4、齊藤 裕之5、田頭 弘子1、
高山 研6、中村 明澄7、西岡 洋右1、濱野 淳4
1亀田メディカルセンター家庭医診療科  2聖マリアンナ医科大学総合診療内科  3千葉大学医学部附属病院総合診療部  4筑波大学附属病院総合診療科  5奈義ファミリークリニック  6湘南鎌倉総合病院救急総合診療科  7国立病院東京医療センター総合診療科

【活動の背景】最近のプライマリ・ケアへの関心の高まりを受け、家庭医を志す若手医師が増えている。しかし、『家庭医になるにはこのようなトレーニングをすればよい』、という統一した研修ガイドラインは存在せず、独自の家庭医療研修プログラムを有する施設がわずかにあるのみである。多くの若手医師は初期臨床研修の後に、孤軍奮闘しながら家庭医になることを模索しているのが現状である。そこで、2002年家庭医療学研究会総会の場でこのような同じ悩みをもつ若手医師(卒後3〜5年目)が集まり、活動を開始した。 【これまでの活動】T.「にっぽんの家庭医」メーリングリストの創設:若手医師たちが悩みを共有しディスカッションする場として2003年に発足。現在82名が登録。U.日本における家庭医療研修の現状把握調査:家庭医療研修施設の施設数・プログラム内容・指導医数などについてアンケート調査を準備中。V.海外の家庭医療研修プログラムの実態把握:米国家庭医療研修ガイドラインの翻訳・出版。W.海外の家庭医療レジデントとの交流:STFM(Society of Family Medicine)、WONCA(World Organization of Family Doctors)などの学会に参加。 【今後の展望】T.日本家庭医療学会の内部組織として「若手医師の会(仮称)」を設立:初期臨床研修を終えた若手医師をつなぐ公式な組織の発足を目指す。U.家庭医を志す若手医師の意識調査:若手医師の家庭医療後期研修への要求や障壁を掌握する。V.家庭医療専門医研修プログラム創設への提言:家庭医を志す人は誰もが専門医研修を受けられる環境づくりについて、若手医師にできることを模索し実行する。W.このMission Statementsに賛同する若手医師を募り、さらに活動を発展させる。


11月6日(土) 14:50〜15:00
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ6)
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中小病院における「家庭医療科外来」の取り組み
奥野 誠
 森 敬良、小松 泰介
  出雲市民病院/出雲家庭医療学センター

【目的】中小規模の病院において、家庭医療学を活用した外来診療がどのように有効であるかを検討する。
【対象・方法】出雲市民病院(一般病床120床、療養型60床)では2004年7月1日より「家庭医療科」外来を開設し、月曜日から金曜日まで午前中の診療を行っている。外来では医師二人による継続した診療と、それに加え看護師による患者・家族へのインタビューを適宜行っている。とくに「家族図」「ライフイベント」「ファミリーライフサイクル」などを中心課題として診療を行っている。また、他職種との合同カンファレンスを定期的に開催し、患者宅への訪問や家庭医療学の学習にも取り組んでいる。この中で「家庭医療学」が医師、看護師をはじめとした職員および患者、地域に対してどのような影響を与えたかを検討する。
【結果・考察】医師、看護師においては、これまで十分には検討できなかった患者の生活背景や職業上の問題などに取り組むことができ、一定の満足感が得られた。また患者においては「何科にかかっていいかわからない」「いつも担当する医師が違うのが不安だ」という悩みを解消することができた。今のところ受診者数の減少などはみられず、患者、地域においてもニーズがあると思われた。
【まとめ】「家庭医療科」外来は、患者の病いに影響を与える背景や文脈に迫るだけでなく、職員や患者双方の満足度を高めるという点でも有効であると思われた。今後も家庭医療学を実践している多くの施設から学び、出雲地域で求められる「家庭医療科外来」を実践していきたい。


11月6日(土) 1500〜1510
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ7)
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ICPCエピソードケアが有効であったナラティブ外来の事例
寺田 豊
道東勤医協 桜ヶ岡医院

【目的】家庭医の研修には、診療所研修が有効であると考えられている。北海道勤医協で行われている3,4年目医師の診療所研修の有効性について検討する。
 地域での患者の受療行動の把握を行う為に、診療所の外来診療の中でICPC(International Classification of Primary Care)コーディングを利用している。ICPCコーディングは,診療所における主訴分析などによる健康問題の把握に有効であるが、さらに個々の患者の受療行動を分析することにより、エピソードケアも実践が可能である。
 今回、このICPCによるエピソードケアを利用して、主訴が多岐にわたる高齢者患者に注目し、時間外に1時間程度の時間をかけて、患者の健康問題を始めとして、社会環境、様々な思いを把握するためにNarrativeアプローチを行い有効であったケースを紹介する。
【方法】Narrativeアプローチを用いる基準
1) ICPCコーディングにより主訴が多岐にわたる患者(Variant ICPC case)
2) 2)癌告知など時間をかける必要がある患者(Bad news telling case)
3) 慢性疾患のコントロールが悪く患者(Difficult patient case)
【結果】いつも、表情が暗く、注射を希望してくる87歳女性の事例
時間に余裕のない外来診療の中で、今まで患者の希望通りに治療行為を受けていたが、ナラティブインタビューの中で,家族問題が背景にあることが分かり、患者-治療者との新たなナラティブを形成することにより、その後の受療行動に変化がみられた。


11月6日(土) 15:10〜15:20
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ8)
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離島診療所から発行した診療情報提供書の検討
神白麻衣子
沖縄県立中部病院(元 大原診療所)

【目的】離島診療所から発行した診療情報提供書を分析する事により、離島(西表島)の紹介症例の特徴を検討し、スムーズな病診連携のための方策を考える。
【方法】平成13年5月より平成15年4月まで、医師3、4年目に当たる時期に、西表島にある二つの診療所のうちの一つ、県立八重山病院附属大原診療所に医師一人で赴任した。平成14年1月から平成15年4月の16ヶ月間に、大原診療所より発行した診療情報提供書を紹介先病院、紹介科、患者プロフィール、紹介目的、転帰等において分析した。
【結果・考察】直近であり、親病院でもある県立八重山病院(石垣島)への紹介症例が最も多く70%以上を占めていた。紹介科では内科、整形外科が多かったが、耳鼻科も一割近くに達していた。また特徴として、観光客など島民以外の紹介が多いということがあげられた。その他の結果も含めて紹介症例から病診連携、診療所において必要な知識、技能などについて考察する。


11月6日(土) 15:00〜15:20
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ9)
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中学生の通学方法と体力・生活習慣・欠席との関係
足立 誠司1
小谷 和彦2
1鳥取県立中央病院総合診療科  2鳥取大学医学部臨床検査医学

【はじめに】徒歩による通学が基礎体力を向上させアレルギー疾患の発症頻度に影響するという小学生を対象にした報告がある。保護者による自動車通学は,学校医活動や教育現場で問題視される。
【目的】中学通学生において通学方法を調べ,それと疾病による欠席(急性疾患),体力,生活習慣に関係があるかどうかを調査する。
【対象と方法】中学1−2年の163名(男70名,女93名)に対し,2002年1月の10日間の通学方法と疾病による欠席について自己記述式票を用いて横断調査を行った。体力測定・生活習慣については毎年行われる全国調査の結果を利用した。回収率は100%で,スクールバスや汽車通学生を除外した148名を最終解析した。10日間毎日自動車で登校した者を自動車群,それ以外を通常群とし2群で比較した。
【結果】自動車群41名,通常群107名で,性差、学年差はなかった。疾病による欠席の割合は自動車群が有意に多かった(通常群9.3% vs.自動車群 26.8%)。体力測定結果は2群で違いなかった。生活習慣についての単変量解析では,清涼飲料水をよく飲む習慣は自動車群が有意に多かった(通常群 43% vs. 自動車群 70.7%)。また,通常群に比べ自動車群は保健室でよく休むことが多い,睡眠時間や勉強時間が少ないという傾向を認めた。
【考察】自動車群は,疾病による欠席の頻度が高く,その背景として食生活のバランスが悪く,不規則な生活をしている可能性がある。不規則な生活習慣は免疫力を低下させ,疾患に関与し得る。教育現場と協力してさらなる実態調査が必要と思われた。


11月6日(土) 15:30〜15:40
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ10)
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市中病院における屋根瓦方式研修 導入の検討
宇田 哲也
総合病院南生協病院 総合診療科

【背景】臨床研修義務化のなかで地域の中小病院においても研修の質が問われている。名古屋市内に位置する300床規模の病院である南生協病院でも2003年度より急速な研修改革を行い屋根瓦方式の研修を取り入れた。結果として学生や研修医から一定の評価を得るに至ったが、その過程でさまざまな問題も生じてきた。
【目的】急速な研修改革のもたらした良い点と悪い点を明らかとし、中規模病院におけるより理想的な研修とは何かを検討する。
【方法】総合病院南生協病院の研修医10人のグループディスカッションを行い、得られたキーワードを元にアンケートを行い分析した。
【結果】詳細は当日発表する。良い点としては 相談しやすい雰囲気がある、一日の方針が分かりやすい、他の研修医の症例が共有できた、他の研修医が刺激になる、勉強会の回数が多い、一つの症例を深めることができる など屋根瓦方式の長所が出ていると考えられた。また悪い点としては手技の練習不足、研修チーム以外の医師とのコミュニケーション不足、ナースとのコミュニケーション不足、重症や難解症例の共有が難しい、研修医が担当する症例数が不足した などが挙げられた。
【考察】屋根瓦方式は研修の雰囲気や症例を深め共有する点で優れている。研修チームの中の密なコミュニケーションが初期研修には必要であると考えられる。しかし研修医以外のスタッフとコミュニケートする機会が減ることになり、チーム医療を学ぶという点では不十分であると思われる。今後はナースとのコミュニケーションをより重視してカンファレンスを頻回に行うこと。研修チーム以外の医師と、より積極的に関わることが必要であると考えられた。


11月6日(土) 15:40〜15:50
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ11)
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東京慈恵会医科大学付属病院・総合診療部における頭痛の現状
細谷 工1,3
松島 雅人1,2,法橋 建2
1東京慈恵会医科大学 臨床研究開発室  2同 内科学講座 総合診療部  3同 内科学講座 糖尿病・代謝・内分泌内科
【目的】慈恵医大附属病院・総合診療部外来における,頭痛を主訴とした患者の初期診断名につき調査し明らかにする.
【方法】2000年1月から2003年11月までの当院総合診療部外来の頭痛を主訴とした初診患者について,プライマリ・ケア国際分類を用いた受診記録に基づき調査した.
【結果】総患者数は24,090例,初診患者数は11,139例で,主訴(受診理由)が頭痛となっていた者は762例(男性333例,女性429例)であった.診断名なしが270例(35.4%)で最多,次いで急性上気道炎116例(15.2%),緊張型頭痛106例(14.1%),片頭痛55例(7.2%)が続いた.重要な症候性頭痛としては,脳卒中・脳血管障害10例(1.3%),頭部外傷4例(0.5%),神経系新生物3例(0.4%),髄膜炎・脳炎3例(0.4%)であった.また,762例全例を国際頭痛分類に従って分けると,一次性頭痛167例(21.9%),二次性頭痛285例(37.4%),神経痛・顔面痛など19例(2.5%),疾患なし21例(2.8%)であった.一次性頭痛167例のうちの各診断名の割合は,緊張型頭痛64.7%,片頭痛32.9%,群発頭痛2.4%であった.
【結語】当科における頭痛の初診患者では,急性上気道炎が多くプライマリ・ケア領域での診療特有の傾向と考えられるが,その他では緊張型頭痛が最も多く,他院の神経内科専門外来からの報告に近い傾向を示した.最終診断について現時点では不明であるが,診療録に基づいた詳細な検討を重ねることで,プライマリ・ケア領域での頭痛の診療における何らかの指標が示せることが期待される.


11月6日(土) 15:50〜16:00
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ12)
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組合員とともにすすめる医師養成 〜医療生協の特徴を生かして〜
御前 秀和 
 穂高、舟戸 督力
  愛媛生協病院

愛媛生協病院は医療生協の病院である。医療生協とは、「元気で長生きをするために、自分や家族の健康づくりをすすめたい。いざという時、安心してかかれる病院がほしい。」という思いをもつ人達が「出資金」を出し合い、運営に参加している組織である。その出資金を出し合っている人達を組合員と呼ぶ。当院では、地域の組合員とともに、健康づくりや健康チェック、子育て支援や保健講座などに取り組んでいる。
本年度より卒後臨床研修が必修化され、当院でも2名の研修医を迎えることができた。研修医の養成について組合員は、研修医採用の面接に参加する。研修医は支部を担当し、その地域の組合員と接していく中で、地域の健康問題や社会問題について考える機会を得る。組合員は「信頼できる自分達の医者」、「自分達の病院の医者」を自分達が養成する!という気持ちで、研修医に接する。このような研修医と組合員の交流の中で、地域からの声を聞くことができ、要求に応えることができる医者へと研修医が成長することを目標とする。また、一般の方々に医学的な内容を分かりやすく説明ができるようになることも、獲得目標の一つである。そして指導医だけでなく、組合員も参加して研修医の研修評価を行うことにより、地域に根ざした医療のできる医師を養成する一助としている。
現在、研修医は健康チェックや子育て支援への参加や、班会で疾患などについてのミニレクチャーを行っている。特に本年は研修医が2名とも県外出身であるため、当院の診療圏の地域特性を学ぶという面でも有益であると考えている。


11月6日(土) 16:00〜16:10
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)
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一般演題(ポスタ13)
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閉塞性睡眠時無呼吸症候群における家庭医の役割
 〜当院の取り組みの紹介〜

御前 秀和
原 穂高、舟戸 督力
愛媛生協病院

【はじめに】03年2月の山陽新幹線居眠り事故以来、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下OSAS)が注目されている。当院では01年10月〜04年6月に258名の患者をOSASと診断した。当院のOSAS診療の取り組みを紹介し、家庭医の役割について考案する。
【当院のOSAS診療】
1)外来診療:医療面接、血圧測定、口腔咽頭の観察、ESS(Epworth Sleepness Scale)、簡易ポリグラフ、ホルター心電図 2)入院診療:フルポリグラフ、心エコー、負荷心電図、呼吸機能検査、PWV/ABI、セファログラム、TSH, FT4、auto-CPAPによるtitration(適正圧設定) 3)フォローアップ外来:在宅持続陽圧呼吸療法管理加算
【当院におけるOSAS】SAS診断のうちOSASは94%(n = 274)。OSAS患者(AHI≧20)のBMI (n = 318:当院185、中川循環器科内科OSASセンター133)。BMI≦25 30 %, 25<BMI≦30 39 %, 30<BMI≦35 25 %, 35<BMI 6 %
【OSASの合併症】高血圧67 % 、高TG血症72 %、糖尿病33 %、逆流性食道炎15 % (n = 318)。緑内障 7 % (n = 1142) 、他に中心性肥満・動脈硬化・狭心症・心筋梗塞・脳梗塞・肝機能障害
【結語】“We believe that the presence of overweight or the metabolic syndrome also should suggest the possibility of OSA.”( Lakka et al JAMA 289 ; 1241 : 2003 )。家庭医は治療の必要なOSAS患者を見つける最前線である。OSAS診療において、まず医療面接が最も重要である。今後もOSASの診断、治療と同時に啓蒙活動に取り組んでいきたい。


11月6日(土) 14:00〜懇親会終了まで
ソニックシティビル4階市民ホール(北403+404号室)


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